サイパンの戦いと日本的「忠」



ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!第二巻「和」と「結い」の心と対等意識
2014/04/12発売 ISBN: 978-4-434-18995-1 Cコード:C0021 本体価格:1350円+税 判型:四六 著者:小名木善行 出版社:彩雲出版 注文書はコチラをクリックしてください。
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サイパン0701


ちょうど今の時期、つまり昭和19(1944)年6月15日から7月9日にかけて行われたのが、サイパンの戦いです。
ロバート・シャーロットという従軍記者が書いた「死闘サイパン」という本に、米軍上陸第一日目の午後遅くにシャーロット自身の目の前で起こった出来事が書かれています。
すこし引用します。

==========
チャラン・カノアの未完成の滑走路の端で、その夜のためにタコツボをせっせと掘っていると、突然けたたましい叫び声が聞こえた。
「あの穴のなかに日本兵がいるぞ!」
そう叫んだ海兵隊員たちは、私がタコツボを掘っているところから約3メートルばかりはなれた、丸太でおおわれた砂丘の方を指さした。その声が終わるやいなや、穴にひそんだ一人の日本兵が、われわれの頭上に乱射をあびせながら飛びだしてきた。
彼はそのとき銃剣で武装しているだけだった。
一人の海兵隊員が、この小男の日本兵を目がけて手榴弾を投げつけた。

その日本兵は痩せていて、身長1.5メートルにも足りなかった。
彼は爆裂によって吹きたおされた。
するとこの日本兵はふたたび立ちあがって、手にしていた銃剣を敵に向けないで自分の腹に差し向けた。
そして彼は、自分で腹を掻き斬ろうとしたが、まだハラキリをはじめないうちに、海兵隊の誰かが撃ち倒してしまった。そのため、だれも切腹をおわりまで見られなかった。

しかし、日本兵はじつに頑強であった。彼はまたもや起きあがった。
カービン銃を持った海兵隊員が、この日本兵にまた一発、撃ちこんだ。それからさらに三発も撃った。
その最後の一弾は、この日本兵の真っ黒な頭の皮を3センチばかりはぎとった。
彼は苦しみでのたうちながら死んだのである。
==========

いまとなっては、このときに勇敢な戦いをした日本人が、誰であったのかはわかりません。
水際作戦のために、海岸沿いに掘った穴のなかで、米艦隊からの猛爆をじっと堪え、おそらく戦友たちは全員爆撃にやられておなくなりになったのでしょう。
彼は、米兵たちが上陸してくるのを、タコつぼの中でじっと待ち、夕方の薄闇を待って、たったひとりの斬り込み突撃を図りました。
当時としても、身長150cm足らずというのは、かなり小柄です。しかも、痩せこけていました。
もしかすると艦砲射撃のために、体中に大怪我をしていたかもしれません。

シャーロットは、「乱射をあびせながら飛びだしてきた」と書いています。
ですが当時の日本人が持っている銃は、速射できるサブマシンガンではありません。三八式歩兵銃です。
明治三八年制のこの銃には、米軍の銃のような速射能力はありません。一発ごとにガチャンと弾をこめる。
なんと幼稚で古臭い銃を使っていたのかと、笑う人もいるかもしれません。
しかし、軍の装備にはその国の哲学が反映されます。美意識といった方が適切かもしれません。

米軍のハンディタイプの歩兵用機銃は、5.5ミリ弾を用います。連射するから反動を抑えるために、弾が小さくなる。そして弾が小さい分、敵兵を容易に殺さず、重傷を負わせます。
戦場は過酷なところです。平時とは違います。
軍にとって、死亡した兵はそれまでですが、戦傷者は、救助しなければなりません。
そして戦傷者の増加は、軍の機動力を損ね軍の敗北を招きやすくします。悲しいことだけれど、それが現実です。しかも大怪我をした兵士の多くは、結果としてはほとんど助かりません。
長く、痛い思いをして苦しみ抜いたあげく死ぬのです。

これに対し、三八式歩兵銃は、6・5ミリ弾を用います。この弾は殺害力が大きい弾丸です。
当たった相手は、まず即死します。
卑怯な真似をして敵に余計な負担をかけさせない。戦う時は健常者同士で、正々堂々と戦う。
敵兵を殺すときは、一気に殺して、敵兵を苦しませない。

残酷なようだけれど、戦地においては長く苦しむよりは、即死した方が、撃たれた本人にとっては、幸せなことといえます。しかも三八式歩兵銃は、連射や速射には向かないけれど、命中率が極端に高い銃です。
敵軍に対し、正々堂々、最小の被害で戦意そのものを削ぎ、降伏に導く。
古臭いとか、連射力がないとか、後世の人たちからはボロカスに言われる三八式歩兵銃だけど、そこには、いかにも日本人らしい明確な哲学があります。

シャーロットが目撃した日本人が持っていたのは、その三八式歩兵銃です。
おそらく、タコつぼから這い出した日本人の兵隊さんは、歩兵銃で二発撃ち、二人の米兵を倒し、そのまま銃剣突撃して、敵をひとりでも多く倒そうとしたのでしょう。
身長わずか150cm、敵の米兵は、190cm台です。
オトナと子供くらいの体格差があり、しかも敵は多数です。

しかしその日本人の若者は、たったひとりでも戦いました。
手榴弾で吹き飛ばされても立ち上がりました。
重傷を負い、万事休すと、腹切って戦友のもとに行こうとすることも許されず、銃で撃たれて転倒し、さらに3発を撃ち込まれ、頭の皮をはぎとられて(顔の傷はものすごい血が流れます)、そして「苦しみのうちに死んだ」と書かれています。

当時、サイパン島に立て篭もった日本の兵隊さんたちは、その戦いに勝ち目がないことは、とっくに知っていました。場所は島、敵は海上を征圧し、圧倒的な火力で陸、海、空から攻撃をしかけてくるのです。
誰がどうみても、不利な状況であり、全滅させられるかもしれないくらいのことは誰だってわかります。
彼らはそれでも降伏などせず、戦いました。

なぜ日本人は、米軍のいうハラキリをしたのでしょう。
上官に忠義を尽くした? 違います。その上官はとっくに艦砲射撃でやられています。
軍に忠義を尽くした? 違います。軍の指揮命令系統自体が、すでに破壊されています。
彼は、たったひとりになっても尚、戦おうとしたのです。
これは西欧の常識ではあり得ないことです。
さらに、敵わぬとなったとき、腹を切ることは、もっと理解できないことでした。
でも、その日本人の若者は、腹を切ろうとしました。
なぜなのでしょう。

答えは、誰のためでもない。彼は、みんなのために戦っていたからです。
みんなを守るために彼は戦いました。
そしてそれが叶わぬとなったとき、みんなにたいする責任で彼は腹を切ろうとしたのです。

このことは、Chinaの漢字の「忠」では説明がつきません。
なぜなら、Chinaには、「忠」の漢字はあっても、こうした日本人のような行動はないからです。
では、日本人は、なぜ腹を切ったのか。
その答えは、「忠」という字の訓読みにあります。

「忠」の訓読みは、「ただし」です。そして古くはこの字を「まめなる心」と読みました。
まめというのは、たとえば彼女を口説くためにまめに尽くすというように、相手のために自分が気がつくすべてのことを細々と気遣い、行動することです。
その心が、まめなる心です。
対象となったのは、彼の場合、彼女ではなく、祖国にいるみんなであり、家族であり、仲間たちであり、島にいる日本人のすべてであり、彼を取り巻く彼のすべてです。
そのすべてのために、彼は戦い、どうにもならないとなったとき、その責任を一身に負って腹を切ろうとしました。

沖縄戦の牛島中将、硫黄島の栗林中将も、玉砕戦を営み、最後に腹を切っています。
戦国時代にも、また江戸時代にも、武士は腹を切りました。
その心は、常に「みんな」のために「まめ」に尽くすところにあったのです。
そしてその「みんな」の中には、後世を生きる同胞たち、つまり、いまを行きている日本人ひとりひとりも含まれているのです。
つまり、彼らは、わたしたちのために戦ってくれたのです。

では、彼らは戦って何を守ろうとしたのでしょうか。
当時の世界は、白人の植民地主義、覇権主義が世界を覆い、有色人種は「人間」とさえ認識されない、ただの「ヒトモドキ」と認識された時代です。
そして500年続いた白人植民地支配が世界全体を覆いつくし、その中で実際に有色人種を現地支配していた人々が、白人貴族であり、世界の人類の中の特権階層をなしていた時代です。
日本人は、白人種ではありません。私たちはカラードです。そしてカラードは人ではなかったのが当時の時代です。

けれどわたしたち日本人は、古代から、民衆をこそ「おおみたから」としてきた民族です。
「ヒトモドキ」どころか、「たからもの」としてきたのが、日本です。
白人至上主義でも、有色人種至上主義でも、国粋主義でもない。
ひとりひとりが、民衆をこそ宝として大切にする。いわばこれこそ究極の民主主義といえるものです。

考えてみてください。
どんなに有能な君主がいようが、どんなに素晴らしい統治が行われようが、あるいは逆にどんなに厳しい苛斂誅求の治世が行われようが、民衆が劣悪ならば国は乱れます。
逆に、ひとりひとりの全員が、それぞれみんなのためにと、力を尽くす社会なら、みんなが幸せになれます。
そういう社会を、文化を、そしてそういう国を守ろうとして、若き日のわたしたちの祖父は戦ってくれたのです。

「戦争反対。世界に平和を」、そういう標語に右も左も関係ありません。
誰もがそう思う、それは万人の願いです。
ただ、ひとついえることは、対立と闘争をそれぞれの国や個人の中心に置いたら、結果はどこまでいっても、対立と闘争になるし、それが国家規模になれば、結局は戦争を是認することになる、ということです。

日本は、太古の昔から和と結いの国です。
人と人は、人として常に対等であり、また、対等な自分になれるように、ひとりひとりが一生を通じて努力し続ける、そういう文化を育んで来た国です。

そういう日本の心を取り戻す。
英霊達の真の願いも、まさにここにあるのだと私は思います。



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コメント

ゴルゴ14

力の篭った投稿記事に感謝いたします。日本人の何たるか?がよく理解できました。

日本国民なるがゆえに

その勇気を愛でてあげたい
亡くなった戦友の仇を取ること、自分の家族達を護ること、そして、自らが犠牲になってでも、祖国日本とその子孫繁栄をだれよりも願い、そして、天皇陛下万歳という日本人にしか伝わらぬ赤誠が、目の前にいる大勢のアメリカ軍に、たった一人でも突っ込んでいった俺達のおじいちゃん。

これは、自分だけかもしれませんが、そんなおじいちゃんがいたということ、その勇気を心底愛でてあげたい。

そして、このすばらしい日本民族が、天皇陛下の御心を、世界に拡めていくような国家民族になるために、どうすればよいのか真剣に考えてなければと思う。

本当の歴史を知れば知るほど、どんなに俺は、大東亜戦争で散華された俺達のおじいちゃんや日本国側に協力された外国人に対して、どれほどの無知とそれを邪魔者扱いしてきたことか・・・

知らないでは、すまされないです。

一国民として。

陸上自営業

 本文に一部間違いがあると思うのですが、
 まず5.56mm弾はベトナム戦争からなので第二次世界大戦では使われていないし、日本軍も太平洋戦線で使用したのは口径7.7mm の99式短小銃です。(38式は主に中国戦線)
そもそも5.56mm 弾は高初速と弾丸の横滑りでダメージを与えるというコンセプトの弾丸なので殺傷能力はけして低くありません。
 99式小銃の口径でもわかるように兵器はまず目的をクリアする事が大前提です。美意識などは三の次、四の次だと思います。
 ちなみに38式の名誉のために、ボルトアクションはけして稚拙でも幼稚でもなく当時の世界のスタンダードです。(イギリス、ドイツ、ソ連etc. . .)セミオートのアメリカだけが異常なのです。

-

No title
忠は、孔子・孟子の段階では「まごころ」「己の心を尽くすこと」「良心に忠実であること」「自らを偽らないこと」なんですけどね。宋代以降に隆盛を極める朱子学は「大義名分論」「正統論」に重きを置いたので、君使臣以礼、臣事君以忠(君、臣を使うに礼を以てし、臣、君に事うるに忠を以てす)を読み違えたのか……。

-

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にっぽんじん

成果主義は日本には合わない
日本の経済界のトップは勘違いしています。成果主義にすれば企業業績が良くなると。戦後の日本が経済発展したのは成果主義のお陰でしょうか。日本的経営で経済発展してきたのです。

成果主義は「個人プレー」です。自分さえよければ報酬が上がります。これは西洋的な考えであって日本には合いません。日本は「チームプレー」で伸びてきたのです。お互いが助け合い、問題点を共有化して皆で解決していく。それが日本の家族的な経営でした。

「個人プレー」になれば自分のノウハウは他人には教えません。後輩の指導も不要です。後輩が伸びれば脅威になってきます。結果、足の引っ張り合いになり全体としての業績は伸びません。

私の子供も成果主義の会社にいました。年度初めに目標を立て、それを達成すれば評価されました。次年度は新しい目標が必要です。子供はが言いました。力いっぱい頑張って目標を達成しても新たな目標が要求されるから、力いっぱい頑張れば出来る目標を分割していると。手抜き目標です。

今はその会社を辞め、独立しています。成果主義で伸びるはずであったその会社は倒産してなくなりました。

日本の財界トップの方々は「日本的経営の良さ」を全く理解していません。外国資本の軍門に下ったのでしょうか。残念です。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: nezu3344@gmail.com
電話:080-4358-3739
出身:静岡県浜松市
住所:千葉県野田市
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「明治150年真の日本の姿」、「日本と台湾の絆」、「奇跡の将軍樋口季一郎」、「南京事件は4度あった」、などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。
日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
《著書》
『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!和と結いの心と対等意識』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!日本はなぜ戦ったのか』
『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』日本図書館協会推薦
『ねずさんと語る古事記 壱〜序文、創生の神々、伊耶那岐と伊耶那美』
『ねずさんと語る古事記・弐〜天照大御神と須佐之男命、八俣遠呂智、大国主神』
『誰も言わない ねずさんの世界一誇れる国 日本』
最新刊
『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』
『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』

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