十七条憲法第四条「以礼為本」



4月17日(土)13時半から第82回 倭塾を開催します。
詳細は↓から。
https://nezu3344.com/blog-entry-4847.html


「礼」の意味は、相手を心底敬(うやま)うことです。
ひとりひとりを大切に。それは十七条憲法以来の、日本人の精神性と社会秩序の根幹です。
また、「礼を失った者は、必ず悪事に走る」ということも、とても重要な箇所ですので、ぜひとも覚えておきましょう。

20210321 礼儀
画像出所=https://www.irasutoya.com/2018/09/blog-post_98.html
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)



人気ブログランキング
応援クリックこちらから。いつもありがとうございます。

歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行です。

十七条憲法の逐条解説です。
これまでの解説《総合解説第一条第二条第三条
第四条は「以礼為本」です。

第四条
《原文》
四曰
群卿百寮 以礼為本
其治民之本 要在乎礼
上不礼而下非斉 下無礼以必有罪
是以
群臣有礼 位次不乱
百姓有礼 国家自治


《読み下し文》
群卿百寮(ぐんけいひゃくりょう)
礼(うや)をもって本(もと)とせよ
それ民(たみ)を治(おさ)むるの本は、かならず礼にあり。
上(かみ)に礼なきときは下(しも)斉(ととの)わず
下(しも)礼なきときは、もって必ず罪あり。
ここをもって群臣に礼あるときは位次(いじ)乱れず。
百姓(ひゃくせい)礼あるときは国家自(おのずか)ら治(おさ)まる。


《現代語訳》
国家の官僚や議員は、礼を根幹としなさい。
民衆を治めるための根幹は、必ず礼にあります。
上に立つ者に礼がなければ、下にまとまりがつかず、
下にある者に礼がなければ、必ず罪が生まれます。
国家の官僚や議員に礼があるときは、世の中の秩序は乱れず、
百姓(ひゃくせい)に礼があるときは、国家はおのずから治まるものです。



 最新刊
 
《解説》
上の現代語訳では、群卿百寮(ぐんけいひゃくりょう)を「国家の官僚や議員」と訳させていただきましたが、文意は、むしろ「人の上に立つ者」という意味に近いかと思います。
なぜなら企業や、集団をなす組織や団体においても(つまり組織規模の大小に関わらず)、礼を根幹に置くということは、大切なことだからです。

この「礼」は、上の読み下し文では「うや」とふりがなを付けさせていただきましたが、もともとの書き方は「ゐや」です。
「ゐ」は、現代語では「い」と表記されますが、発音的には、わ行で「うぃ」に近い発音になります。
たとえば、「ウイスキー」は本当は「うゐすきー」で、発音は「ううぃすきー」のような感じになります。
同様に「礼(うや)まふ」は「うやまう」ではなくて、「うぃやまう」のような発音が日本語本来の正しい発音であったわけです。

日本語は、もともと一字一音一義の言語ですが、「ゐ」と発音された漢字は「井・胃」などで、井戸は「うぃど」、胃袋は「うぃぶくろ」と発音されていました。
つまり「ゐ」は、深い穴を意味するニュアンスを含むものに当てられたわけです。

「礼」という漢字の訓読みは「ゐや(うぃや)」ですが、
 ゐ=深い穴
 や=飽和、あまねく行き渡ること
ですので、簡単にまとめれば、
「相手への思いやりや尊敬の心で、
 心身がいっぱいになった状態で行うのが礼(ゐや)」
ということになります。

日本人にとっての礼節は、単に頭を下げたり、両手をついたりする儀礼ではなく、
「相手への思いやりの心で満たされた心の発露として、
 相手に対して明示的に行われる作法
と理解されてきたわけです。

ですから「国家の官僚や議員は、礼を根幹としなさい」というのは、
「人の上に立つ者は、
 下にいる者への思いで心をいっぱいにし、
 十分な尊敬の心を持って
 下の者たちと接しなさい
という意味である、ということになります。

続く言葉は「其治民之本 要在乎礼」です。
民衆を治めるための根幹は必ず礼にあるというのですが、「礼(ゐや)」が相手への尊敬の思いから全身全霊で発するものであれば、これは当然のこととなります。

我が国は天皇のシラス国であり、民衆は国家最高権威である天皇の「おほみたから」なのですから、その「おほみたから」に全身全霊を込めて、彼らが豊かに安全に安心して暮らせるようにしていくことが群卿百寮(ぐんけいひゃくりょう)の仕事であり、それが天皇にお仕えする者の根幹となる心得とされてきたわけです。

そして文は、
「上に立つ者に礼がなければ、下にまとまりがつかず、
 下にある者に礼がなければ、必ず罪が生まれます」
と続きます。

「ゐや(うぃや)」が、相手への思いやりや尊敬の心で心身がいっぱいになった状態で行うものであれば、これは当然のことです。
上に立つものが、民衆のことを本気で思いやらなければ、民衆にまとまりはつきません。
単に仕事だから、権限を与えられているからと、機械的に下のひとたちを取り仕切ろうとしても、民衆は、そのような事務的な人物には、すぐにそっぽを向いてしまいます。

現代では、ポストがもたらす権限があれば、人を動かすことができると履き違えている人が多いですが、これは部下を持ったことがある人ならば、きっとおわかりいただけることだと思うけれど、部下は上司の本気についてくるものです。
上司が生半可な気持ちや態度でいれば、部下はすぐに面従腹背になります。

この点、最近の若い人でセミナーなどを自ら開催して成功している若者たちを見ると、彼らの顧客への向き合い方は、まさに本気ですし、一生懸命ですし、常に笑顔を絶やさない。
ポストが与えてくれる権限に甘えるのではなく、人間として本気で顧客(セミナー参加者)と接しようとしているわけです。
これは日本社会の、大きな構造変化のひとつを示すものであろうと思います。

一方、下の人の側に「礼(ゐや)」がなければ、そういう部下は、必ず罪をつくると十七条憲法は説きます。
これは単に面従腹背になるということを意味するだけでなく、礼が意味するものが「相手への思いやりや尊敬の心で心身がいっぱいの状態」であり、それが下にない、ということは、ハナから上司のことを尊敬していないし、言うことを聞く気もないということです。
そうなれば、世の秩序が乱れます。
そして秩序が乱れた世の中では、あらゆることに必ず奪い合いが起こります。
つまり公然と悪事が行われるようになるわけです。

だからこそ、「国家の官僚や議員に礼があるときは、世の中の秩序は乱れず、百姓に礼があるときは、国家はおのずから治まるもの」となるわけです。

ここで「百姓(ひゃくせい)」について、触れておかなければなりません。
最近では「百姓」は差別用語だとバカな学者さんが主張しているそうですが、文武百官という言葉があるように「百」という字は「数え切れないくらいたくさんの」という意味です。
そして「姓」とは「かばね」のことです。

氏姓制度というのですが、
「氏(うじ)」というのは、いわば地方ごとの血縁集団です。
「姓(かばね)」というのは、身分や地位ごとに与えられた姓です。
ですからたとえば、
「氏」が、千葉県の千葉氏の一族の血縁集団であり、
「姓」が、千葉県内の織物会社で勤めているから
「私は、千葉氏の一族の、織部(おりべ)の三吉と申します」
なんてことになるわけです。

そしてこの姓は、庚午年籍のような戸籍制度によって、ひとりひとりの民が国に登録され、国に登録された民は、そのまま公式な天皇の「おほみたから」とされたわけです。
つまり、日本国内に数ある姓氏は、天皇の「おほみたから」であることを示す、立派な由緒を持つわけです。

だからこそ江戸時代においても、百姓一揆というのは、
「オラたちは天朝さまから認められた天下の百姓だ。
 木っ端役人なにするものぞ」
という気概に基づくものでした。

その百姓という、栄えある言葉を、差別用語と決めつけるような人は、日本戸籍があっても日本人ではありません。

ちなみにこの戸籍制度ですが、最初に行われた戸籍は、6世紀の中頃の欽明天皇の時代に作られた戸籍(へのふみた)で、そこには「秦人の戸数7053戸について、大蔵掾(おおくらのふびと)が戸籍(へのふみた)をつくり、登録された秦人たちを『秦伴造(はたのとものみやつこ)』とした」という記録があります。
つまり我が国の戸籍制度の、ことはじめは、もともとは外国人の登記からはじまったわけです。

当時の秦氏の一族は、これをとてもよろこび、秦氏の一族は、そこから全国に、秦国に伝わった絹織物の技術や武道を伝え、広めていきました。
秦氏は、戸籍がしっかりすることで、ひとりひとり素性が明らかになり、これがために職業集団として日本各地の村落に受け入れられるようになり、秦氏が日本社会に溶け込むことができた一因となっています。

戸籍を得ることで信用と信頼を身に付けて日本中に親しまれて1400年以上にわたって日本で繁栄を続けている秦氏と、戸籍を否定し、悪行の限りを尽くしても、それらを曖昧にしようと画策する昨今の渡来系の人たち。
果たして戦後の渡来人たちの未来は、どうなっているのでしょうか。

さて、話が脱線しましたが、この第四条の原文には「礼」という漢字が6回も出てきます。
漢文というのは、基本的に同じ文字の繰り返しをきらいます。
ですから、同じ漢字が二度繰り返されたら、それは重要語だということになるし、三度繰り返されたら、それは最重要語ということになります。
ところがこの第四条で「礼」は6回です。
つまり、十七条憲法は、「礼」という語と概念を、ありえないほど重要視している、ということです。

そして繰り返しになりますが、「礼」の意味は、相手を心底敬(うやま)うことです。
ひとりひとりを大切に。
それは十七条憲法以来の、日本人の精神性と社会秩序の根幹です。

また、「礼を失った者は、必ず悪事に走る」ということも、とても重要な箇所ですので、ぜひとも覚えておきたいところです。


お読みいただき、ありがとうございました。
日本をかっこよく!! むすび大学。


人気ブログランキング
↑ ↑
応援クリックありがとうございます。

講演や動画、記事などで有償で活用される場合は、メールでお申し出ください。
nezu3344@gmail.com

 最新刊
 

《塾・講演等の日程》
どなたでもご参加いただけます。
第80回倭塾 2月21日(日)13時〜17時 富岡八幡宮婚儀殿2F
第81回倭塾 3月21日(日)13時〜17時 富岡八幡宮婚儀殿2F
第82回倭塾 4月17日(土)13時〜17時 富岡八幡宮婚儀殿2F



20200401 日本書紀
◆ニュース◆
最新刊『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』2020/9/19発売。
『[復刻版]初等科国語 [高学年版]』絶賛発売中!!
『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』絶賛発売中!!
『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』絶賛発売中。


『ねずさんのひとりごとメールマガジン』
登録会員募集中 ¥864(税込)/月  初月無料!


             
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
\  SNSでみんなに教えよう! /
\  ねずさんのひとりごとの最新記事が届くよ! /

あわせて読みたい

こちらもオススメ

コメント

-

やはり戦後の政治家や政治屋、仕事をしていない。
◆下にある者に礼がなければ、必ず罪が生まれます。
→ イミン党も、今の与野党も、消費増税、コロナの禍いに対して、下に礼どころか何の政策もせず、米中の『日本犬はステイしとけ!』だけは礼を尽くして守るのな。
→ あと、バブル期よりも多いと言う、若い子に多いのが、開口一番『タメ口で良いです!上にも下にも僕は言ってます☆すぐに仲良くなりたいので、堅っ苦しいの嫌いだし』
 ↑やはり親しき仲にも礼儀あり、タメ口利き始めるのは、本当に心が打ち解けてからだろうが。と、私はいつも言い返しますが。
 ↑これ、ねず先生、思い当たるエピソードがございましたら、お聞かせ願いたいものです。


◆最初に行われた戸籍は、6世紀の中頃の欽明天皇の時代に作られた戸籍(へのふみた)で、そこには「秦人の戸数7053戸について、大蔵掾(おおくらのふびと)が戸籍(へのふみた)をつくり、登録された秦人たちを『秦伴造(はたのとものみやつこ)』とした」という記録があります。つまり我が国の戸籍制度の、ことはじめは、もともとは外国人の登記から。
→特定永住者問題。これをちゃんと受け継いでいれば、ザイニチ問題やら通名問題、安倍政権からのイミン問題インバウンド問題って、起こったのか。学べば学ぶほどに自警団が必要になってくる、今日この頃です。
以上
非公開コメント

検索フォーム

ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

講演のご依頼について

最低3週間程度の余裕をもって、以下のアドレスからメールでお申し込みください。
むすび大学事務局
E-mail info@musubi-ac.com
電話 072-807-7567
○受付時間 
9:00~12:00
15:00~19:00
定休日  木曜日

スポンサードリンク

カレンダー

05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

最新記事

*引用・転載・コメントについて

ブログ、SNS、ツイッター、動画や印刷物作成など、多数に公開するに際しては、必ず、当ブログからの転載であること、および記事のURLを付してくださいますようお願いします。
またいただきましたコメントはすべて読ませていただいていますが、個別のご回答は一切しておりません。あしからずご了承ください。

スポンサードリンク

月別アーカイブ

ねずさん(小名木善行)著書

ねずさんメルマガ

ご購読は↓コチラ↓から
ねずブロメルマガ

スポンサードリンク

コメントをくださる皆様へ

基本的にご意見は尊重し、削除も最低限にとどめますが、コメントは互いに尊敬と互譲の心をもってお願いします。汚い言葉遣いや他の人を揶揄するようなコメント、並びに他人への誹謗中傷にあたるコメント、および名無しコメントは、削除しますのであしからず。

スポンサードリンク