• 赤染衛門 やすらはで 寝なましものを さ夜更けて かたぶくまでの月を見しかな


    次回倭塾は7月17日(土)13時半から富岡八幡宮婚儀殿、テーマは「幻の極東共和国と古代の日本」です。
    詳細は→https://www.facebook.com/events/884676452313311


    赤染衛門のこの歌は、単に、友人の代作をしたというだけではありません。
    思いやりをたいせつにすることによって、きわめて安定した社会が築かれたこと、
    そしてひとりの女性の小さな思いやりの歌が、ひとりの男をたくましく成長させ、その男の未来を開いたこと、
    そこにこそ、この歌が500年の歴史を描いた一大抒情詩としての百人一首の中盤に置かれた意味があるのだということができます。
    いやあ、百人一首って、本当に奥が深くておもしろい。


    20170729 赤染衛門
    画像出所=https://blogs.yahoo.co.jp/tcfhj507/19197588.html
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    歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
    小名木善行です。


     やすらはで
     寝なましものを
     さ夜更けて
     かたぶくまでの
     月を見しかな


    小倉百人一首五十九番にある赤染衛門(あかぞめえもん)の歌です。
    歌を現代語訳しますと、
    「あなたが来ないとわかっていたら
     さっさとやすらいで寝てしいましたものを、
     夜が更けて、
     西に傾く月を見てしまいましたわ」
    といった意味になります。

    たいへんにわかりやすい歌で、この現代語訳は、たいていのどの本をご覧頂いても、同じ訳が書かれています。
    なぜならこの歌には、後拾遺集に詞書(ことばがき)があり、そこに次のように書いてあります。
    「中関白少将に侍りける時、
     はらからなる人に物言ひわたり侍りけり。
     頼めてまうで来ざりけるつとめて、
     女に代りてよめる」です。

    「女に代りてよめる」ですから、赤染衛門は、誰か、他の女性に代わってこの歌を書いているわけです。
    現代語に訳すと、
    「後に中関白にまで出世することになる
     藤原道隆さまが
     まだ少将だった時代に、
     自分の『はらから』
     つまり姉妹同然の女性の友達のところに
     来るといって来なかったので、
     その女性に代わって
     詠んであげた歌です」
    となります。

    それで、
    「朝まで起きて待っていたけれど、
     さっさと寝てしまえば良かったわ」と詠んでいるわけです。
    ただそこから、ただの皮肉や愚痴しか読み取らないのでは、この歌がすこしもったいないです。

    というのは、この歌は、百人一首の59番という、1番から100番までの歌の、ちょうど真ん中、つまり500年続いた日本の安定と繁栄の時代の、まさにそのピークとなった中盤を代表する、9首の女流歌人の歌の中のひとつとして、百人一首は紹介しているからです。
    つまりこの歌は、平和と繁栄の、ひとつの象徴の歌でもあるわけです。

    この歌を詠んだ赤染衛門は、清少納言よりも10歳年上、和泉式部や紫式部からみるとおよそ20歳年上にあたる先輩女性です。
    藤原氏の全盛期を築き、有名な
     この世をば わが世とぞ思ふ 望月の
     欠けたることも なしと思へば
    と即興歌を詠んだ、藤原道長の妻である源倫子(みなもとのりんし)に仕えました。
    この二人の夫妻の娘が中宮である藤原彰子(ふじわらのしょうし)で、その彰子に仕えたのが、紫式部や和泉式部です。

    その紫式部が、赤染衛門について、紫式部日記で次のように書いています。
    「丹波守の北の方をば、宮、殿などのわたりには、匡衡衛門とぞ言ひはべる。ことにやむごとなきほどならねど、まことにゆゑゆゑしく歌詠みとてよろづのことにつけて詠み散らさねど、聞こえたるかぎりは、はかなき折節のことも、それこそ恥づかしき口つきにはべれ。
    ややもせば、腰はなれぬばかり折れかかりたる歌を詠み出で、えも言はぬよしばみごとしても、われかしこに思ひたる人、憎くもいとほしくもおぼえはべるわざなり。」


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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: nezu3344@gmail.com
電話:080-4358-3739
出身:静岡県浜松市
住所:千葉県野田市
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「明治150年真の日本の姿」、「日本と台湾の絆」、「奇跡の将軍樋口季一郎」、「南京事件は4度あった」、などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。
日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
《著書》
『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』
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