文化とは、それぞれの国の、それぞれの風土の中で培(つちか)われてきたものです。 地震のない国と、常に地震の脅威にさらされている国では、その建築文化に違いがあるのは当然です。 内陸部で海がなく、塩分は動物の肉からしか取れない国や民族と、四方を海に囲まれて、いつでも塩分もタンパク質も摂取できる国では、食文化だって異なります。 要するに文化は、必然なのです。そこに上下はありません。 |

画像出所=https://hiroshimatimes.com/2018/05/23/hitujikumo-urokokumo/
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歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに 小名木善行です。
風がめっぽう秋めいてきました。
「天高く馬肥ゆる秋」とはよく言ったもので、あの暑かった夏はどこへやら。
だいぶ涼しくなってきて食欲も旺盛になるし、空を見上げればなんといっても雲の位置が高い。
夏の雲といえば、積雲に入道雲(積乱雲)ですが、積雲というのは、だいたい高度が2千メートルくらい。積乱雲(入道雲)は、その積雲がもくもくと上空に立ち上がった雲で、てっぺんのあたりは高度が1万メートルくらいに達するのだそうです。
夏は、湿度が高いので低い位置に雲ができやすく、これが夕方になると雨雲になって夕立を降らせていました。
このときの雨雲は乱層雲で、高度は2千メートルあたりの低い雲です。
これが秋になりますと、空気が乾燥してきますから、雲の位置がぐっと高くなります。
秋の雲といえば、巻雲、巻積雲など。
これらの高度は、1万3千メートルくらいに達します。夏の入道雲のてっぺんより、もっと上なんですね。
なかでも巻雲は、雲の仲間の中で一番高いところにできる雲です。
「すじ雲」とも呼ばれます。ハケで掃いたみたいなスジになっている雲です。
夕焼け雲になるのが、巻積雲です。
巻層雲は、見え方によって、「ひつじ雲」、「うろこ雲」、「いわし雲」、「さば雲」などと呼ばれます。
「ひつじ雲」や「うろこ雲」は、空一面に巻積雲がひろがって、まるで空全体が魚のウロコみたいになったもの。
「いわし雲」は、よく水族館などの水槽内で、イワシの大群がまるで巨大なモニュメントみたいにみえたりしますが、あのような感じで空に見える雲です。
「さば雲」は、まるでサバの背中のように、巻積雲が波打ちます。
巻層雲は、位置が高いので、それだけ日没後も長く夕陽を浴び続けます。
これが秋の美しい夕焼け雲になります。
この巻層雲を、天皇の大喪の礼のときの弔問客に見立てた歌が万葉集にあります。
第41代持統天皇の御製です。
北山につらなる雲の青雲の
星(ほし)離(さか)り行き
月も離(さか)りて
(原文:向南山 陳雲之 青雲之 星離去 月矣離而)
この歌は、夫の天武天皇が崩御されたときに、皇后であられた後の持統天皇が、挽歌として詠まれた歌です。
歌にある「つらなる雲(陳雲)」というのが、まさに「うろこ雲」のことで、大喪の礼に参列したたくさんの弔問客を、空いっぱいにひろがったうろこ雲に例えています。
意訳すると次のようになります。
北枕でご安置された天武天皇の涙のご遺体 向南山
空に浮かぶ羊雲のように連なった参列の人々 陳雲之
高い徳をお持ちだった天武天皇は 青雲之
世を照らす光となって離れ去られました 星離去
歳月もまた過ぎ去りました 月矣離而
偉大な夫を失なわれた持統天皇の深いお悲しみと、夫の偉業を受け継いで、これからは自分が天皇としてすべてを背負っていかなければならないという決意を込めた、悲しく、美しく、それでいてとっても力強い響きの歌です。
うろこ雲ができる秋は、雲が空高く、だから「天高く馬肥ゆる」ともいいます。
この言葉が杜審言(としんげん)の『贈蘇味道(そみどうにおくる)』という漢詩から生まれた言葉だという説がありますが、これはとんでも説です。
なぜなら、杜審言の漢詩が持つ意味と、日本語の「天高く〜」では、意味がまったくことなるからです。
杜審言という人は、7世紀の軍事大国「唐」の官僚で、「国破れて山河あり」の詩を書いた杜甫の祖父です。
杜審言の書いたこの漢詩は、原文に「雲淨妖星落 秋深塞馬肥」とあり、
「秋になって雲が高くなって空気が澄んで来る季節になると、北方の遊牧民である匈奴たちの馬は、夏草をいっぱい食べて、今頃は太ってきているであろう。そうなると、匈奴がまた南に下って攻めて来るので、気をつけてくれよ」と友人に伝えた詩です。
杜審言が所属した唐の国は、最終的に匈奴の襲来で国力を落として滅んでいますから、彼らにとって、北の匈奴の動向は死活問題であり、そのことが歌に読み込まれているわけです。
この歌の中に「馬肥」の二字が入っているから、昔の日本人が杜審言の詩の意味を取り違えて、「天高く馬肥ゆる秋」という慣用句を造語したのだというのが、いまの主流となっている説です。
しかし、たまたまチャイナの古典漢詩に「馬肥」の二字があったからといって、そこまでこじつけるのは、かなり無理があると言わざるを得ません。
むしろ、稔りの秋を寿ぐ習慣が、日本には古代からあり、秋の空は高いし、馬たちも食欲旺盛になるし、人間もそれと同じように、みんな食欲がモリモリとわいてくる。
そのことについて、たまたま「馬肥」の二字が杜審言の漢詩にあったから、それも含めて日本流に楽しんだ、というのが実際のところであったろうと思います。順番が逆なのです。
こうしたこが起こるのは、我が国がチャイナ以上に深い文化を持っていたからです。
ただ外国のものを、やみくもにありがたがるのは、むしろ明治以降の日本人の高学歴者に見られる偏向です。
また、近年増えてきた自称「上級国民」の半島系の人も、すぐに「どちらが上か、どちらが下か」というように思考回路が働くようです。
そうなると、「天高く馬肥ゆる」も「父にあたるチャイナ様が発祥であり、それを我々半島人が兄として、オクレた日本に教えてやったのだ」と言い出してもいるようです。
ですが、まったくの間違いです。
チャイナで生まれた老麺(ろうめん)が、日本で「ラーメン」として発展し、さらに美味しくなって世界に広がり、現代チャイナでも、日本式ラーメンが、とても美味しいと喜ばれる。
あるいは、中国生まれの餃子が、日本でさらに美味しい食品となり、チャイナでも、その美味しさの秘宝をさらに工夫して、また新たな餃子が誕生する。
カレーは、もともとインドの食品だけれど、いまや世界中で食され、英国風カレーもあれば、フランス風のカレーもあるし、我が日本のカレーライスもある。
大切なことは、日本では、常に「民衆のよろこび」に置かれている、ということです。
そのために、日本人は外国からのものも、日本人向けに加工し、工夫するのです。
つまり「根底に日本人としての文化がある」から、外国のものも日本化できるのです。
その根底となる日本文化が形成されていなければ、「外国のものこそがありがたい」という思考になります。
そして、そうであれば、外国のものをそのまま使用することになります。
工夫し加工し日本人向けにすることは、禁忌となるのです。
自動車は、1769年にフランス陸軍の技術大尉ニコラ=ジョゼフ・キュニョーが製作した蒸気自動車がその原型であったとされていますが、だからフランスが上だとか言い出したら、それこそ世界の物笑いです。
フランスで生まれ、米国でこれがガソリンエンジン車へと発展し、フォードが量産型の自動車を出し、さらに世界中で工夫や改善が施されることで、いまや自動車は世界各国の主要産業です。
もちろんいまでは、チャイナ産の自動車もあれば、コリア産の自動車もあります。
それをフランスが、大本はフランスの蒸気自動車(当時は時速3キロでしか走行できなかった)なのだから、フランスが上だと言い出したら、それこそ世界の物笑いです。
工夫し、加工し、発展させる。
そこにその国の文化性があります。
そもそも文化に上下などありません。
文化とは、それぞれの国の、それぞれの風土の中で培(つちか)われてきたものだからです。
地震のない国と、常に地震の脅威にさらされている国では、その建築文化に違いがあるのは当然です。
内陸部で海がなく、塩分は動物の肉からしか取れない国や民族と、四方を海に囲まれて、いつでも塩分もタンパク質も摂取できる国では、食文化だって異なります。
要するに文化は、その土地で人々が生きるための必然です。
そこに上下を言うのは、カツ丼と牛丼に上下を付けるようなもので、意味がありません。
我が国に住む一部の日本人のような顔をして日本語を話す日本人でない人たちは、文化に上下を付けたがりますが、それは彼の国が、そういう上下と支配と隷属の文化(それが文化といえるものであったかはともかく)構造が長く続き、いまだに社会が古代のままに据え置かれていることによります。
哀れなものです。
だから日本がうらやましい。
その羨望が、逆ギレして「俺達が上だ」と我を張っているだけのことです。
幼児の我執性と同じです。
日本人が、そのような幼児にかまける必要はありません。
所詮は他人事でしかないからです。
私たちは、私たち日本が太古の昔から築いてきた日本の文化を、取り戻すだけです。
そうすることで日本が変わり、世界が変わります。
※この記事は2014年9月の記事のリニューアルです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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