• 歴史にIFは禁物という嘘


    第87回倭塾 令和3年10月16日(土)13:30開催
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    歴史の授業も実は「諸外国の歴史授業」と「戦後日本の歴史授業」は根本的に異なります。
    「戦後日本の歴史授業」は、単に年号と事件名・人物名をただ丸暗記するためだけのものです。
    「諸外国の歴史授業」は、歴史上の出来事のストーリーをまず学び、次いでそこから今度は生徒それぞれが歴史上の当事者となって、自分ならそのときどう判断し、どう行動したか。仮にもしそのように行動したら、歴史はどのように動いて行ったであろうかなどを、生徒たちそれぞれに考えてもらう授業です。
    つまり、戦後の日本では「歴史にIFは禁物」とか言われますけれども、諸外国では「歴史をIFで考える」ことが授業になっているのです。

    20181028 大和絵
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    歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
    小名木善行です。

    戦後は「日本史」という呼称が一般的になりましたが、実はこれはおかしな話です。
    英国史、米国史、ローマ史なとといった外国の歴史と、国史が同列に呼ばれているからです。
    外国の歴史は、それぞれの国の成り立ちを理解し、同外国への親近感を養おうとするものです。
    しかし自分の国の歴史は、他国の歴史を学ぶことと違い、子供達に国民としてのアイデンティティ(共同体への帰属意識)を養うとともに、それぞれが生きる上での価値判断の物差しを学ぶためのものです。

    歴史の授業も実は「諸外国の歴史授業」と「戦後日本の歴史授業」は根本的に異なります。
    「戦後日本の歴史授業」は、単に年号と事件名・人物名をただ丸暗記するためだけのものです。
    「諸外国の歴史授業」は、歴史上の出来事のストーリーをまず学び、次いでそこから今度は生徒それぞれが歴史上の当事者となって、自分ならそのときどう判断し、どう行動したか。仮にもしそのように行動したら、歴史はどのように動いて行ったであろうかなどを、生徒たちそれぞれに考えてもらう授業です。
    つまり、戦後の日本では「歴史にIFは禁物」とか言われますけれども、諸外国では「歴史をIFで考える」ことが授業になっているのです。

    もちろん歴史上の出来事について、何があったか、実際にはどうであったのかを調査する段階では「IF」は禁物です。
    そこに「IF」を持ち込んだら、歴史が、ただの「ファンタジー」になってしまうからです。

    先日の韓国の観艦式で、韓国は韓国が秀吉の朝鮮征伐で大功のあったと決めつけている李舜臣の旗を掲げましたが、李舜臣は負けてばかりいた将軍で、唯一勝ったといえるのは日本の輸送船団を待ち伏せして襲ったときだけです。
    それ以外は負け続け、日本が朝鮮征伐から引き上げるときが李舜臣の最後の戦いとなったのですが、これもまた待ち伏せしの奇襲攻撃をして、返り討ちにあってこのとき死んでいます。

    また韓国は、李舜臣が亀甲鉄船と呼ばれる船上を鋼鉄で覆った船で、日本軍の攻撃をものともしなかったとしていますが、これまたファンタジーで、実際に当時そのような船が使われたという記録もありませんし、下の絵も、ただの夢物語の想像図でしかありません。
    なぜならこの船の大きさと櫓の数では、どうみても船の推力が足りず、また帆も小さすぎてこれでは船は進みません。
    また船体上部にそれだけの鉄を置いたら、重量バランスが上に行き過ぎて船は簡単に転覆してしまいます。
    韓国は李舜臣へのこだわりから、想像上の船を復元しましたが、結局、船体上部にわずかな鉄板しか貼れなかったし、そのため重量バランスが悪くて、これに人が乗ると、ベタ凪の水面ですら転覆の危険があり、さらに帆も船体に比べて小さすぎて、これでは推力を得られない。
    結局この船は、人を乗せず、海にも浮かべず、陸上展示のみとなりました。
    嘘はバレるのです。

    20181030 亀甲船1
    20181030 亀甲船2


    あたりまえのことですが、事実に嘘を持ち込んだら、それは歴史になりません。
    歴史は、ただしく得られた過去の事実と事実の間を、関係式で結ぶものです。
    その関係式やストーリーが、歴史の解釈になります。

    したがって解釈は、幾重にもあるものです。
    その幾重にもある解釈を通じて、
    「では自分ならどう判断したであろうか、
     またその場合、
     結果はどうなっていたであろうか」
    を考えるのが、歴史授業なのです。

    たとえば、米国の初代大統領のジョージ・ワシントンは、大地主であったにも関わらず他人に奉仕することを選択したため生活は常に貧しく質素で、大統領に就任したとき、議会から年収2万5千ドルという当時としては破格の高額の大統領給与を与えられることが決定されるけれど、これさえも辞退し、さらに職務の華やかさや作法には慎重に臨み、肩書きや衣装が共和制者として適切であるように配慮して、決してヨーロッパ宮廷を真似するようなことはしなかったといったことを、まず教師から学ぶわけです。

    そのあと、
    「ではもし米国大統領がヨーロッパ宮廷のような贅沢な道を選んだとしたら、その後の米国社会はどのようになっていたかを、みんなで考えてみよう。さあ、ジョン君、君はどうなっていたと思うかね?」
    と授業が続くわけです。



    これがもし日本なら、たとえば織田信長は今川義元を桶狭間で破っているわけですけれど、もし今川義元が勝利していたら、その後の日本はどのように動いていったかを、生徒たちみんなで考える。
    あるいは、源頼朝は鎌倉に幕府を開いたけれど、それはなぜだったのかを、生徒たちひとりひとりに、歴史の当事者となって考えさせる。
    それが歴史の授業であるわけです。

    こうした授業のやり方は、戦前の日本ではごくあたりまえに行われていたもので、もちろん試験は年号や事件名、人物名が出題されますが、授業そのものは、生徒たちが歴史の当事者となって考えることに重きが置かれる方式になっていました。

    みなさんも不思議に思ったことがあると思うのですが、戦後日本では、日本史の授業は、小学校、中学校、高校と、同じ内容の授業が3回繰り返して行われます。
    いずれも、ただ年号と事件名、人物名等の暗記授業です。
    なぜ、ただ漫然と同じことが三度も繰り返されているのでしょうか。

    実は、要するに形骸だけが残っているのです。
    小学生は、子供達の記憶力が抜群に良いですから、ポイントになる事件や人物についてを歴史の流れの中で学びます。これが基礎になります。
    そして中学校になると、歴史の当事者となって、「君ならどうする?」が授業の柱になります。
    高校になると、それを踏まえて「もし、歴史が違う選択をしていたら、その後の日本はどうなっていかか」が授業の柱になります。
    大学では、それをさらに深く掘り下げるために、事実関係の詳細な調査や再検証が行われます。
    要するに段階的に、歴史の授業がどんどん深いものになって行っていたわけです。

    ところが戦後、GHQが日本人への歴史教育を禁止しました。
    歴史は国民のアイデンティティを形成するために不可欠な教育です。
    ですから当時の教育者や国会議員たちが必死で運動して、なんとか歴史の授業を復活させるのですが、その際に、「ただし、年号と事件名、人物名といった歴史上の事実のみについて教育すること」とされてしまったわけです。
    そのため、小中高と、同じ授業がただ漫然と繰り返されることになりました。

    要するに歴史教育の根本に「歴史にIFは禁物」という重石が置かれてしまったわけです。
    これにより、我が国の歴史授業は、きわめて無味乾燥なものになってしまいました。

    逆に欧米では、なぜ日本が、東洋の小国ながら抜群に強くて国民が立派に育つのかが戦前から深く研究されてきました。
    そしてその中で、日本にある江戸時代から続く日本の歴史教育の深さがきわめて重要なファクターとなっていることが知られるようになりました。
    そして欧米では、日本型歴史教育の仕組みが採り入れられて、いまではすっかり歴史は考える授業に発展し、また歴史認識は、国際戦略上も極めて重要なものとして位置づけられるようになっているわけです。

    人が生きるということは、判断の連続です。
    それこそ今夜のおかずを何にするかから、会社の稟議の決裁をする、何かを買ったり売ったりする、子供の学校をどこにするか決める等々、人生は判断の連続の上に成り立っています。
    国や組織も同じです。あらゆることは判断によって形成されていきます。

    その判断は、常に刺激に対して行われます。
    刺激に対して判断して行動するわけです。
    刺激に対して、判断抜きで行動することは反応です。
    これはパブロフの犬と同じです。条件反射とも言います。

    国政やメディアの偏向や近隣国の失礼な態度を見聞きする。
    それらは刺激です。
    それで腹を立てて、テレビに向かってモノをぶつけたら、それは条件反射であり、ただの反応です。
    パブロフの犬が、ペルがなったらよだれをたらすのと、まったく同じ行動でしかありません。

    けれど人であれば、刺激に対して、それをどのように捉え、その刺激からどのように行動すべきかを選択し、選択に基づいて計画し、行動していくことができます。
    つまり刺激と反応の間に、判断という物差しを置くことで、人はより良い選択と建設的な行動ができるようになるのです。

    人の一生は、日々判断の連続と書きましたが、その連続する判断を、生涯、ただの反応だけで済ませるのか。
    それとも、そこに冷静な判断という物差しを入れることで、ひとつひとつの判断を建設的なものにして、自分の生涯を建設していくのか。
    これは選択の問題です。

    もし単なる反応的な選択肢しかしないような企業や組織なら、決してそれは長持ちしません。
    近年のTV番組の視聴率が、きわめて低レベルなものになっているのも、考えてみれば、テレビ番組の多くがきわめて反応的なものでしかなくて、そこに何の建設性も見出すことができなくなっているからということができるかもしれません。

    判断は、そもそも価値観によって選択されます。
    ですから判断するためには、価値観が必要になります。
    その価値観を育成するのが、まさに歴史教育であるということが、いまでは世界の標準になっているわけです。

    我が国の歴史は、学べば学ぶほど、調べれば調べるほど、努力と美しさに満ち溢れています。
    そのことは、調べれば調べるほど、学べば学ぶほど、情けなさばかりが募る、どこかの国とは大きな違いです。
    ですから我が国においては、歴史にファンタジーは必要ありません。
    必要なことは、ファンタジーではなく、「歴史はIFで学ぶもの」というより深い歴史教育です。
    私達は、本物の、我が国にもとからある歴史教育をしっかりと、まずは個人レベルからでも取り戻していかなければならないものと思います。


    ※この記事は2018年10月の記事の再掲です。
    お読みいただき、ありがとうございました。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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