• 10月23日 第95回 倭塾 開催のお知らせ


    20221003 倭塾
    画像出所=https://zuuonline.com/archives/193497
    (画像=Pixeljoy / Shutterstock.com)
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    歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
    小名木善行です。

    10月の倭塾のテーマは
    「壊れた日本を修復するには」
    です。

    世界では諸物価が高騰し、株価が下落し、いまやDSがやりたい放題の様相を呈しています。
    日本もその影響下にあり、安倍元総理を失ったいま、日本はフィリピンなどと同じように、これから民間から大金がむしり取られる状況となっていくといわれています。

    いま日本人は、世界最古の神の国として、世界を修復する道へと進むのか、
    それとも世界の潮流に飲まれて沈没していくのかの境目にあります。

    この世界はパラレルワールドにあるとも言われていますが、我々がこの先、泥舟に乗るのか、安定した大型船で航海するのかは、中今にある私たちの選択にかかっています。

    では、いま私たちは何をどうすればよいのか。
    これを日本の歴史から、考えてみたいと思います。

    かなり内容の濃い、そして熱い倭塾になります。
    万障お繰り合わせの上、ぜひとも、お越しください。


    《第95回 倭塾開催のご案内》
    1 日 時
      令和4年10月23日(日)
      13:00 開場
      13:30 開講
      16:00 終了
      16:30 撤収終了
    2 場 所
      富岡八幡宮・婚儀殿2F
      〒135-0047 東京都江東区富岡1丁目20−3
      電車 東京メトロ東西線 「門前仲町」駅より徒歩3分
         都営地下鉄大江戸線「門前仲町」駅より徒歩6分
    3 テーマ 「壊れた日本を修復するには」
    4 講 師 塾長 小名木善行
    5 定 員 25名
    6 参加費
     ☆参加費
      (1) ご新規      2500円
      (2) 倭塾参加経験者  2000円
      (3) ご夫婦で参加 お二人で2000円
      ※事前振込は必要ありません。当日会場でお支払いください。
      (4) 未成年者       無料
      (5) ご家族お友達招待特典
       これまでに一度でも倭塾にご参加されたことのある方が、倭塾初参加となるご家族・ご友人などをお連れの場合、そのお連れの方を人数に関わりなく初回参加のみ無料とします。
    7 参加方法
      直接会場にご来場ください。
    8 Facebook参加ページ
      お手数ですが↓のページの「参加」ボタンをクリックしてください。
       ↓
     https://www.facebook.com/events/1041364216516794
    9 主催 小名木善行
      協力 日本の心をつたえる会



    【次回倭塾】☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
    次回倭塾(11月開催)は、場所がいつもと異なり、秋葉原になります。
    初めて使う会場ですので、場所をお間違えにならないようにしてください。
    開催時間は、10月度と同じです。
    ○第96回(次々回)倭塾 11/20(日)13:30〜16:30
     〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町2-15 秋葉原加藤ビル 6階
    10月はいつもの富岡八幡宮ですので、お間違えにならないようにしてください。
    秋葉原加藤ビル開催は、あくまで11月のことです。
    なお、11月の倭塾は、今年最後の開催となります。

    v(^∀^*)ノ*:。。.:*ヽ(*^∀^)ノ*:.。。.:*


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    【次回以降の倭塾】
    第95回倭塾 10/23(日)13:30〜16:30 富岡八幡宮・婚儀殿2F
    第96回倭塾 11/20(日)13:30〜16:30 東京都千代田区神田佐久間町2-15 秋葉原加藤ビル 6階


                         

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  • 十七条憲法と治(し)らす


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    日本は、神代の昔から高い文化性を保ち、その高い文化性を国の根幹にしてきました。
    日本が世界に類例のないほどの高い民度を保つことができたのは、そこに歴史があるからです。
    その根幹にあるもの。それが「シラス(知らす、Shirasu)」です。

    20180607 聖徳太子



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    十七条憲法は、聖徳太子が推古12(604)年に制定した我が国最古の憲法です。
    日本書紀に、
    「夏四月の丙寅の朔戊辰に、
     皇太子、
     親ら肇めて
     憲法十七條作りたまふ」
    として、その全文が掲載されています。
    ここでいう「皇太子」は「廄豐聰爾皇子」すなわち聖徳太子のことを指します。

    最近では一部の左巻きの学者さんの中に、聖徳太子の存在そのものを否定する方もいるそうです。
    バカな話です。
    日本の優れた歴史を批判し否定し、奇抜な説を唱えて目立つことが学問だと勘違いしている。
    聖徳太子の実在は、法隆寺の釈迦三尊像の裏に
    「この像は聖徳太子に似せて作った」
    とちゃんと書いてあることでも証明できることです。

    そもそも十七条憲法は、なぜ十七条なのでしょうか。
    よく言われるのは、
    「8と9と17は縁起が良い数字」
    「七緒(ななを)が「たくさんの紐」で、これに人握りを意味する「十」を加えた」
    「十七は割り切れない素数だ」
    「十七は中国で神聖な数だから」等々です。

    しかし、なぜ縁起が良いのか不明ですし、憲法と紐がどのように繋がるのかかわらないし、素数なんて他にもあるし、中国で神聖といっても具体的に何経にそのように説かれているのか不明です。
    つまり、どの回答も帯に短したすきに長しで、これという決め手に欠けています。

    これは憲法なのです。
    ということは十七条であるということは、十七条でなければならない我が国としての明確な理由がなければならないのです。
    誰もが納得する具体的な根拠がなければならないのです。
    ではその理由は何だったのでしょうか。

    実は答えは極めてシンプルです。
    そしてこのことは、かつては誰も知る、考えるまでもない常識だったことです。
    それが何かというと、記紀に書かれた創世の神々の数です。
    それが十七柱です。
    ですからそれにちなんで17条の憲法にしたのです。
    そしてその十七条は、それぞれの創世の神々と相対しています。

    十七条憲法が制定されたのは西暦604年のことです。
    それまでの支那は、小国が分立して覇権を競い合う状態が400年以上も続いていました。
    彼らが彼ら同士で争っているうちは、日本にとってなんの脅威もないのです。

    ところが589年に、隋という巨大な軍事帝国ができあがり、隋は次々と周辺国を脅かし始めていました。
    そうしたなかにあって、我が国がひとつの国としてまとまり、独立自尊を保とうとして604年に公布されたのが十七条憲法です。

    記紀が編纂されたのは、そのおよそ100年後ですが、あたりまえのはなしですけれど、創世の神々は、記紀によって創作されたのではありません。
    もともと上古の昔から語り継がれ、神代文字で書き記されてきたものを、あらためて漢字を使って書き表したのが記紀です。
    古事記序文にも明確にそのように書かれています。
    そして我が国の神話の冒頭には、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)に始まる17柱の創生神々が記されています。
    そして十七条憲法は、各条項の意味も、17という数も、そのまま創世の神々に対応しているのです。

    創世の神々は、まず特別な天の神様として5柱の神々がおわします。

    初代 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
    二代 高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
    三代 神産巣日神(かみむすひのかみ)
    四代 宇摩志阿斯訶備比古遲神(うましかしかひひこちのかみ)
    五代 天之常立神(あめのとこたちのかみ)

    天之御中主神は、文字通り、天空のど真ん中の神様です。
    ありとあらゆるものの中心です。
    そして十七条憲法の第一条は、「以和為貴(和を持って貴しとなす)」です。
    すべての中心に、和を置きなさいというのです。
    意味はしっかり対応しています。

    二代目の神様は、高御産巣日神です。
    高御産巣日神は、後に高木神となって天照大御神を輔弼される神様です。
    政治上の上にある権威そのものの神様です。
    十七条憲法の第二条は「篤敬三寳(あつく三宝を敬え)」です。
    三宝とは仏と法と僧のことです。
    政治よりも、政治の根幹となる神や仏、法理、それを護る者を大事にしなさいということです。

    政治は、利害の衝突を生みます。
    衝突を回避して、よりよい方向に持っていくためには、政治以前の課題として、ともに共有する文化的価値観が必要です。
    根幹がブレていたり、なかったりしたら、政治は対立しか生まなくなり、結果として戦乱を招き、人も国家も不幸を招きます。
    利害の衝突や政治的対立よりも以前に、まずは価値観を共有しなさいということです。

    しかもここで「篤く仏法僧を敬え」と述べています。
    日本にはもともと縄文以来の神道がありますが、蘇我氏と物部氏の争いにあるように、その神道と渡来仏教との諍いも当初は現実にあったのです。
    ところが、この第二条では、争うのではなく「敬っちゃえ」としているわけです。
    しかもその心は、高御産巣日神です。
    お名前にあきらかなように、争うのではなく、高い次元で全てをむすんでしまわれるという神様です。
    「争うのではなく、結んでしまう」
    その心がこの第二条です。

    三代目の神様は神産巣日神です。
    読んで字のごとく、日の神様との産巣の神様です。
    第三条は「承詔必謹(みことのりを受けては必ずつつしめ)」です。
    たとえどのような意見の違いがあろうと、ひとたび詔(みことのり)が発せられたら、それは神からのお言葉であるのだから、たとえどのような事情、意見、見解、対立があろうと、謹んでこれをお受けしなければならないというのが「承詔必謹」です。

    日の神様というのは、天照大御神です。
    その天照大御神の直系のご子孫であり、神々と人の最高の接点であられるのが天皇です。
    ですから天皇のお言葉は、天照大御神様のお言葉です。
    ひとたび日の神様との産巣をお勤めされる天皇から詔が発せられたら、謹しまなければならないということです。

    四代目の神様は宇摩志阿斯訶備比古遲神(うましあしかひひこちのかみ)です。
    たいへん、難しい漢字が並んでいますが、「宇摩志」は立派な、「阿斯訶備」は葦の芽、「比古」は男性、「遅」は泥を表わします。
    泥の中から生き生きと延びる葦の芽のようなたくましく強い生命力の神様とされています。

    第四条は「以禮為本(うやまうことを根本とせよ)」です。
    ここには「群卿百寮。以礼為本(群卿百寮(ぐんけいひゃくりょう)、礼をもって本(もと)とせよ)」と書かれています。
    どんな人にも、人であれば間違いを犯すこともあります。
    失敗は常についてまわります。
    けれど一度の失敗で、都度クビをはねることが良いことにはなりません。
    この世にそもそも完全無欠などないのです。

    それに人は成長するものです。
    特に男性は行動的な分、およそ誰もが若いころから失敗続きです。
    ですからだいたいどこのお宅でも、結婚当初は、旦那は「俺は亭主関白でいるぞ」と威張っているし、新妻も「そんなアナタが好き♡」なんて、のんきなことをやっていますが、だんだん歳を重ねるに従って、男性は外での失敗を、都度、女房に頭を下げて許しを乞うことになり、中高年になる頃には、すっかり女房に頭が上がらなくなっているというのが、世の常です。

    それで良いのです。
    数限りない失敗を重ねながら、男性は成長していきます。
    「男子三日会わずば刮目して見るべし」なのです。
    この言葉は、もともとは三国志演義にある「士別れて三日なれば刮目して相待すべし」から取られて慣用句化した言葉ですが、男は成長するのです。

    先の大戦の頃は、戦闘機のドッグ・ファイトが行われた時代でした。
    その中には、敵戦闘機を撃墜した数から、世界の撃墜王と呼ばれる人が誕生しました。
    第二次世界大戦における1位はドイツのエーリヒ・ハルトマンで352機、2位がドイツのゲルハルト・バルクホルンで301機と続き、15位までをドイツ軍が独占しています。そしてようやく16位の202機で日本海軍の岩本徹三中尉が登場します。

    ところが一点大きな違いがあります。
    ドイツ軍は、撃墜されたパイロットはパラシュートで脱出し、飛行機を乗り換えて何度でもまた出撃したのです。
    これに対し日本軍は、基本、その脱出がありません。
    つまり、ドイツ軍の撃墜数は、じゃんけんで言ったら、勝ったり負けたりしながらも、とにかく勝った数であり、日本軍の撃墜数は、じゃんけんなら、勝ち続けた数、つまり連勝記録なのです。
    どちらが可能性として国家にとって有利かといえば、答えは明らかだと思います。

    人は、失敗を重ねることで成長するのです。
    だからこそ、一度の失敗をあげつらって地位ある人の足をひっぱるのではなく、「以礼為本(礼をもって本(もと)とせよ)」というのです。

    五番目の神様は天之常立神(あめのとこたちのかみ)です。
    天の常に立つところです。そこに十七条憲法は「絶餮棄欲」を置いています。
    「貪りを絶ち欲を捨てよ」という意味です。
    人の上に立つもの、政治や行政の長となる者は、まずは自己の欲心を捨てよというのです。

    以下、創世の神々は、伊耶那岐神(いさなきのかみ)、伊耶那美神(いさなみのかみ)までで、合計17柱です。
    そして十七条憲法も十七条あって、そのひとつひとつの条文が創世の神々と対応しています。
    6番目以降まで解説すると長くなりますので、別な回にお話します。

    日本は、神代の昔から高い文化性を保ち、その高い文化性を国の根幹にしてきました。
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  • 王政国家と国民国家


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    歴史を学ぶことは、よりよい未来を迎えるためです。
    戦争ほど悲惨なものはない。
    掠奪ほど凄惨なものはない。
    そのような悲劇を、絶対に繰り返さない、繰り返させない。
    そして、本当の意味で、民衆が豊かに安全に安心して暮らせる未来を招く。
    歴史は、そのための石杖です。

    20221001 三十年戦争
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    王政国家と国民国家

    西洋では十九世紀に成立した国民国家の運動によって、軍隊が正式に国有化されるようになりました。
    それまでは王たちが行う戦争の担い手は常に傭兵(ようへい)です。

    王の周囲には、常に近衛兵がいました。
    近衛兵は特別に美しい鎧(よろい)をまとった規律正しい素敵な王の側近兵です。
    その近衛兵になる人達は、王の部下である貴族たちの跡継ぎ息子でした。
    父親が他国との戦いの遠征に出たとき、万一裏切ったら息子を殺すために人質として王の手元に置かれていたわけです。

    支配するというのはそういうことです。
    相手の急所を握り、裏切れないようにして言うことをきかせる。
    アメとムチの使い分けです。
    世間でもっとも優美な国王の直轄軍とされる近衛兵ですらそのようなものであったというのが、ウシハク世界の現実の姿です。

    西洋では少なくとも18世紀までは絶対王朝の時代でした。
    その後市民革命によって王権が否定され、次いでナポレオンが、国民こそ主役という「国民国家」という概念を打ち出してヨーロッパ最強の軍隊を持つに至りました。
    そしてナポレオンの軍隊の強さが、国民が主役という、それまでにない民主主義国家を成立させています。
    つまり西洋における民主主義は、まだ二百年余の短い歴史しかもっていないわけです。

    では、その前の時代まではどうだったのかというと、王が各地を割拠して支配していました。
    王の権力が及ぶ範囲が王国の版図です。そして王国というのは、王がいる王城と、その周辺であって、王城から離れた隣国との堺のあたりになると、その辺り一帯は、A国、B国、どちらの王様の領土なのか、曖昧になります。曖昧で境界がはっきりしないから、そこは度々紛争地帯となります。

    紛争が起きると、そこで王は互いに兵を出して戦をしました。
    このときに王たちが用いたのが傭兵です。

    傭兵は、戦いを専門にしている人たちで、王の戦があれば、王に雇われます。
    もちろんその多くは腕自慢です。
    けれど、彼らはあくまでお金のために戦いをしている雇われ兵です。
    どんなに強くても死んだり怪我をしたら生活ができなくなります。

    体が資本なのです。
    ですから彼らは、戦いが不利になると、すぐに戦闘を止めて逃げてしまいます。
    雇っている王も、過酷な戦いは料金が釣り上がりますから、適当なところで妥協します。
    戦いを、適当なところで切り上げるのです。
    この繰り返しが、中世ヨーロッパの王国の戦いの歴史です。

    傭兵となる人たちがどのような人たちだったかというと、
    「戦いでしか生きることができない地上のあらゆる国からやってきた堕落した野蛮人」です。
    その「堕落した野蛮人」がどういう連中かといえば、零落した者、さすらい人、犯罪者たちが織りなす地下世界の男たちです。
    そしてこの野蛮人たちが戦いに突き動かされる動機は、掠奪の望みにありました。
    ですから彼らの欲望のはけ口としての掠奪や暴行は、彼らの給料の中に含まれていました。
    法的に、制度的に、慣習的に是認されていたのです。

    そんな中で、ドイツで昔「三十年戦争」という長い戦争がありました。
    時代は、日本で言ったら江戸時代のはじめ頃にあたる1618年から1648年です。
    この戦争をテーマとした本に、グリンメルスハウゼンの『阿呆物語』(岩波文庫)があります。
    戦災孤児となった主人公の半生を描いた小説です。
    その中に、まさに三十年戦争の時代の傭兵たちの様子が詳細に描かれています。

    すこし引用してみます。

     *

    それからはどの兵隊もそれぞれとんちんかんなことをやり始めたが、そのどれもが落花狼藉といった感じを与えた。
    これからはすばらしい酒宴を始めるかと思われるほど何頭もの家畜を刺し殺し、それを煮たり焼いたりする兵隊があるかと思うと、1階から2階を風のように駆けめぐって、便所のなかまで探しまわり、コルキスの金羊皮でも捜し出そうとするような兵隊もあった。

    一部の兵隊は布地や衣類やさまざまな家具を包みこんで大きな包みをつくり、どこかで古物市でもひらこうとするつもりに見えた。
    失敬して行くほどのものでないと考えたものは、たたき壊し、ばらばらにした。

    一部の兵隊は敷布団から羽根をふるい出し、そのあとへベーコンをつめこんだりしたが、そのほうが羽根布団で寝るよりも寝心地がよいとでもいうようだった。
    また、これからは常夏がつづくとでもいうように、ストーブと窓をたたき壊す兵隊もあった。
    銅の器物や銀の器物を打ち砕いて、折れ曲がった器物を包み込む者もあった。
    寝台やテーブルや椅子やベンチを燃やす者もあった。
    とにかく最後には鍋と皿が一つのこらず割られてしまった。

    私たちの下婢(かひ)のアンは厩でさんざんな目にあい、厩から出る気力もないほどであった。
    それをここで語ることさえ恥ずかしいほどである。
    下男は手足を縛られて地面にころがされ、口へ木片を立てられて口をふさがらなくされ、臭い水肥(みずごえ)を乳搾りの桶から口へ注ぎこまれた。
    兵隊たちはそれをスウェーデン・ビールと称したが、下男にとってはありがたくないビールであったらしく、百面相をしてもがいた。

    それから兵隊どもは短銃の撃鉄から燧石(ひうちいし)を取り外し、そこへ百姓たちの手の拇指をはさんで締めつけ、憐れな百姓たちを魔女でも焼き殺すかのように責めたて、捕えてきた百姓の一人などは、まだなんにも白状しないうちからパン焼き竃の中へ放りこまれ、火をつけられようとしていた。
    他のひとりの百姓は頭のまわりに綱を巻きつけられ、その綱を棒切れで絞られ、口や鼻や耳から血が流れ出た。
    要するにどの兵隊もそれぞれ新工夫の手段で百姓を痛めつけ、どの百姓もそれぞれお抱えの拷問者に傷めつけられた。

    しかし当時の私の眼に誰よりも運がよいと考えられた百姓は、私のチャンであった。
    他の百姓たちは痛めつけられ、ひいひいと悲鳴をあげて白状しなければならなかったが、チャンはげらげら笑いこけて白状させられたからである。
    チャンがその家の主人であったので、そのように敬意を表されたのにちがいない。

    兵隊どもはチャンを火のそばへ坐らせ、手も足も動かせないように縛り上げ、水でぬらした塩を足の裏へすりこみ、私たちの年取った山羊にそれを舐めさせたので、チャンはくすぐったがって、身をもがいて笑いつづけた。
    私はチャンがそのように長く笑いつづけるのを見たり聞いたりするのは初めてだったので、それがとても楽しい結構なことにちがいないと考え、お相伴するつもりで、もしくはほかに知恵も浮かばなかったので、一緒にげらげら笑いつづけた。

    チャンは口を割り、隠してあった虎の子を取り出してきたが、それは百姓などには身分不相応なたくさんの黄金や真珠や宝石であった。
    連れてこられた女や下婢や娘がどうされたかは、兵隊どもが私にそれを見せようとしなかったから、私にもよくわからない。
    しかし、あちらの隅やこちらの隅から悲鳴がきこえたことは、今もよく覚えている。

    【望月市恵訳『阿呆物語』岩波文庫・上巻】

     *

    同じ時代、というか、この時代よりも少し前の戦国時代においてさえも、日本では、武士は戦をするに際して民家を襲うことは著しく卑怯な振る舞いとされました。
    それどころが合戦のために田畑が荒れるとわかれば、その会戦予定地に、あらかじめ両軍から使節を送り、付近の作物を高値で買い集め、近隣のお百姓さんに、戦のあとの遺体の始末や遺物の身内への送付などを依頼するまでしていました。

    「民のために」戦っていた日本と、
    「王のために」戦っていた西洋との違い。
    それはとても大きな違いといえるものです。

    傭兵の制度は、19世紀の国民国家の成立時期から姿を消しはじめました。
    戦いが始まると逃げてしまう傭兵より、国のために戦う正規兵の方が、はるかに働きが良くて強いということがわかったからです。

    きっかけとなったのはナポレオンです。
    ナポレオンはフランスの人ですが、フランス革命でパリの市民が王を倒したとき、パリ市民は王の財産をパリ市民で分け合おうとしたのです。
    これにNOを突きつけたのがナポレオンで、フランス王は、フランス全土の王なのだから、その財産は、フランス全土の民で分け合うべき、としてパリ市民に対して軍を起こしたのです。

    ナポレオンは勝利し、さらに周辺国を平らげていきました。
    ここはすこし補足説明が必要です。

    当時のヨーロッパにおける王や貴族の領土というのは、実はその国の内側にあるだけではなくて、ヨーロッパ中に飛び地があるというものでした。
    ですからフランスの王であれば、パリに王宮があるというだけで、その領地はフランス国外、言い換えればヨーロッパ中にあったのです。
    王が倒れたあと、そこは当然にフランス国民の土地と考えられましたら、ナポレオンはその土地の摂取に向かいました。
    けれど、そのあたり一帯を治める他国の王にしてみれば、それはナポレオンが軍を率いて自国の領土に侵入するという事態を意味したのです。
    当然に周辺の国王は、ナポレオンの軍隊と戦いました。

    ところが、ナポレオンの軍隊は、フランス国民がフランスのために戦っています。
    ですから、どこまでも戦う、いつまでも戦う。怪我しても戦う。勝つまで戦う。
    周辺国の国王が用いているのは昔ながらの傭兵です。
    勝ちそうなときだけ戦う。少し不利になったら逃げ出す。
    これでは勝敗は自明の理です。
    そこでヨーロッパ諸国は、王政をやめて、立憲君主制を採用することになりました。
    国民は、王の民ではなくて、はじめて国の民となったのです。
    このことが、ヨーロッパをして、世界最強の軍隊を築くもととなりました。
    19世紀以降、ヨーロッパ諸国が世界を支配するに至ったのも、ヨーロッパ諸国が世界に先駆けて国民国家を形成したからです。

    ところが東洋の一部の国では、いまでも正規兵によって、阿呆物語に描写されているのと同様な掠奪や拷問、強姦、殺人が続けられています。
    いまも昔も変わらない。
    軍とヤクザと暴徒は、今も昔も同じものなのです。
    ひとくちに東洋とはいっても、日本人と周辺国では、国情が違うのです。

    日本の自衛隊や、オトモダチ作戦の米軍、その他親日国の兵隊さんたちは東日本大震災において、瓦礫の中で夜を徹して人命救助を行ってくれました。
    けれど日本の近くにある某国では、その国の奥地で起きた巨大地震で、救助に行ったはずのその国の正規軍の兵士たちが、被災者たちから略奪の限りを尽くしました。

    歴史を学ぶことは、よりよい未来を迎えるためです。
    戦争ほど悲惨なものはない。
    掠奪ほど凄惨なものはない。
    そのような悲劇を、絶対に繰り返さない、繰り返させない。
    そして、本当の意味で、民衆が豊かに安全に安心して暮らせる未来を招く。
    歴史は、そのための石杖です。


    【参考文献】
    『初期近代ヨーロッパにおける掠奪とその法理』山内進著
    『国民の歴史』西尾幹二著

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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

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