• 花さそふ比良の山風吹きにけり


    ■□■━━━━━━━━━━━━━■□■
    3月の倭塾は、3月26日(日)13時半から開催です。
    場所は今回から富岡八幡宮の婚儀殿です。
    テーマは「日本精神を築いた十七条憲法」です。
    参加自由で、どなたでもご参加いただくことができます。
    皆様のふるってのご参加をお待ちしています。
    https://www.facebook.com/events/458686826358362
    ■□■━━━━━━━━━━━━━■□■

    八百年前の日本も、今の日本も、日本です。
    その日本人の心に明かりを灯す。
    それは何も大上段に振りかぶることではなくて、ほんのちょっぴり「日本ていいな」と思っていただくだけで良いのだろうと思います。
    その小さな積み重ねが、やがて大河となって日本を覆い、日本の正気を取り戻すのです。
    これが「積小為大(せきしょういだい)」です。
    日本の大きな改革は、この「積小為大」によってこそ成し遂げられるものです。


    川面の桜
    画像出所=http://gazou777.blog.shinobi.jp/Entry/56/
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    画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)



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    そろそろ桜の季節ですね。
    そこで宮内卿の歌をご紹介したいと思います。

     花さそふ比良の山風吹きにけり
     漕ぎ行く舟の跡みゆるまで


    (はなさそふ ひらのやまかぜ ふきにけり こきゆくふねの あとみゆるまで)

    この歌は新古今集に掲載された歌です。
    宮内卿(くないきょう)というのは、右京権大夫(うきょうごんのたゆう)であった源師光(みなもとのもろみつ)の娘です。
    13世紀はじめの女性です。

    宮内卿の歌は、たいへんいビジュアル性に富んでいるといわれています。
    母方の祖父が高名な絵師であったことの影響かもしれません。

    上の句の「比良(ひら)の山」というのは、琵琶湖の南岸、大津から高島にかけての山並みです。
    「花誘ふ」は、比良の山から吹いてくる山風が、桜の花びらを散らしている様子です。
    風が吹き寄せてきて、向こうに行ってしまう。
    そんな風君が、桜の花びらに、
    「ねえ、一緒に行きましょうよ」と誘っています。
    風も花も、ともに擬人化していて、とてもやわらかくてあたたかです。
    そんなあたたかさが、歌にうららかな春の陽光を添えています。

    そこに下の句の
    「漕ぎゆく船の跡」が絶妙な味を添えています。
    川面に一杯に散った桜の花びらをかきわけながら、和舟が一艘、進んでいくと、その航跡の桜の花びらが退いて、そこだけ水の面が現れる、そんな様子です。

    陽光うららかな春の日、
    比良の山からの吹き下ろした風君が、桜の花びらに「一緒に行こうよ」と誘っています。
    誘われた花びらが風に舞い、小さな小川の川面いっぱいに広がります。
    その川面に和舟が一艘、川面の桜の花びらをかきわけるようにすすんでいるます。
    すると和舟が通ったあとにだけ水面があらわれます。
    実に見事な風景描写です。

    そして「花を誘う風」というところに、大勢を率いた(誘った)、ひとりの男、といったイメージも重なります。
    そこからこの歌は、おそらくどなたかのお誘いで、大勢で行ったお花見の模様を詠んだ歌とわかります。

    この歌を本歌取りして詠んだ歌があります。
    それが、浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)の辞世の句です。

     風さそふ 花よりもなほ 我はまた
     春の名残を いかにとやせん


    ここでは「花誘ふ風」を、「風誘ふ花」としています。
    つまり誘う側である主役の男性が強調されています。
    そんな爛漫と咲き誇る桜花よりも、自分はもっと春の名残をとどめたいのだ、どうしたらそれができるのだ?
    というのが、この歌の趣旨です。

    ここでいう「春の名残」とは、播州赤穂家の持つ皇室尊崇の心です。
    室町将軍家の時代から、天皇の名代である勅使よりも、将軍の方が上座に座ることになっていました。
    それが伝統となり、江戸時代になっても、そのまま続けられていました。
    けれど、天皇の名代であれば、将軍より上座に座るのが世の中の道理というものです。
    だから「それをなんとかしたかった」。
    その思いを「いかにとやせん(どうしたらよいのだろうか)と、浅野内匠頭は歌に遺して、これを辞世としたのです

    もともと席次のことを「殿、これはおかしゅうございます」と、殿に詰め寄ったのは浅野の家中の武士たちです。
    その思いを受けて、殿が腹を斬らされるという事態にまで及んでしまった。
    だから浅野の家中では、城を枕に討死しようという議論にもなったし、藩がお取り潰しになった後には吉良邸討ち入りにまで至っているし、全国の名士と呼ばれる人たちが、この浅野の家中の行動を後に高く評価しているのです。

    浅野内匠頭の歌は、宮内卿よりも500年もあとの時代のものです。
    こうして歴史と文化は、ちゃんとつながっていいます。

    八百年前の日本も、今の日本も、日本です。
    その日本人の心に明かりを灯す。
    それは何も大上段に振りかぶることではなくて、ほんのちょっぴり「日本ていいな」と思っていただくだけで良いのだろうと思います。
    その小さな積み重ねが、やがて大河となって日本を覆い、日本の正気を取り戻すのです。
    これが「積小為大(せきしょういだい)」です。
    日本の大きな改革は、この「積小為大」によってこそ成し遂げられるものです。


    ※この記事は2015年4月の記事のリニューアルです。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

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