• 国語教育が失っているもの


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    3月の倭塾は、いよいよ明日3月26日(日)13時半から開催です。
    場所は今回から富岡八幡宮の婚儀殿です。
    テーマは「日本精神を築いた十七条憲法」です。
    参加自由で、どなたでもご参加いただくことができます。
    皆様のふるってのご参加をお待ちしています。
    https://www.facebook.com/events/458686826358362
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    責任ある社会人とって大切なことは、自分の頭で考え、行動し、同じ共同体の一員としてコミュニケーションをとることができることです。国家が行う教育はそのためにあります。それができない日本人が増えています。
    国会の高市大臣の発言をめぐる予算委員会与野党の質疑では、与野党の議論はまったく噛み合っていません。日本がこれほど大変な情況にあるなかで、そもそも国会でそんなつまらないことを延々と議論することなど、おそらく国民の誰も求めてなどいません。
    このようなことが公然と起こるのも、戦後の国語教育の大罪です。

    20210308 国語
    画像出所=https://kyoiku.sho.jp/41127/
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    最近の老人(主に70代以上)の方は、若者の話す日本語の単語の8割が理解できないという話があります。
    8割という数字の根拠になるものまでは知りません。
    興味もありませんが、若者言葉が年寄りの話す日本語と、かなり違ってきているというのは事実として賛同します。

    代表的なものをいくつかあげてみたいと思います。
    店員「レジ袋はご利用ですか?」
    お客「はい、大丈夫です」
    (必要なのか必要でないのか、どっち!?)

    若者「最近さあ、この情報がバズってんだよね」
    老人「???」
    (バズるというのは、情報があっという間に広がることをいいます)

    老人「君たちは仲間同士なの?」
    若者「俺たちクラスタさ」
    老人「コロナですか?!」
    (クラスタは単に集合体とか仲間の意味で使われている)

    若者「みつです」
    老人「え、二人だよ?」
    (若者言葉で「みつです」は、距離が近いという意味)

    若者「今度の土日でおしゃピク行かない?」
    老人「それどこのお店?」
    (おしゃピクはおしゃれなピクニックの意味)

    早く帰ろうとする若者に
    老人「君、もう帰るのかい?」
    若者「今日はいえきゃんっす」
    老人「何のキャンセル?」
    (いえきゃんは、自宅でキャンプするという意味)

    若者「ちーぎゅう食べてえ」
    老人「それどこの牛?」
    (ちー牛は、チーズ牛丼の意味)

    老人「彼女はどうして泣いてるの?」
    若者「ぱおんですよ」
    (ぱおんは悲しみに沈んでいるという意味)

    若者「おじさん、すぱだりだよね〜」
    老人「うん。スパゲティ好きだよ」
    (すぱだりはスーパーダーリンの意味)

    この他にも色々あるのでしょうけれど、昔はこういった言葉は、一定のコミュニティの中だけの隠語(いんご)という扱いだったものが、最近では、若者の間には一般用語として定着しています。
    SNSやネットをしない高齢者には、もうまったく言葉がわからないし、通じません。

    世代間の断絶ということ言われるようになって久しいけれど、最近では、お年寄りと若者の間での共通の情報になるものさえも、疑わしくなっているようです。
    早い話、最近の若者は新聞を読まないし、テレビも観ない。
    テレビについていえば、一人暮らしの若者で、テレビを持っていない子の方が、いまや多いといわれています。

    そして次々と新しい造語がネットのなかで生まれ、それが拡散され、若者の間では一般用語になる。
    新聞やテレビしか情報源のないお年寄りは、時代から完全に隔離されてしまい、若者たちと共通の言葉での会話さえも怪しくなってきているというのが、昨今の日本の情況です。

    おもしろいことに、アメリカの場合、こうした言葉による世代格差がほとんどありません。
    理由はひとつにはキリスト教の教会が世代間の取り持ちをしているとともいいますが、やはり教育の影響が大きいと思います。
    日本の場合は、教育そのものが崩壊しており、世代間を取り持つ共通の文化そのものが壊れています。
    そうしたなかでいったん言語格差がはじまると、世代間で、言葉が通じないといった問題に直結します。

    幕末までは、外国語を用いる場合でも、わざわざそれを日本人にわかりやすいように、日本語に翻訳して用いていたものが、明治の中頃から、欧米崇拝が広がりました。
    けれど世代間で言葉が通じないという、このおかしな現象は、戦後に蔓延した「古いものは価値を持たない」という、おかしな思想によるものであろうと思います。

    特に問題なのが「国語教育」です。
    国語教育で行われていることは、文中の「それ」は何を指すかとか、テニヲハの使い方がどうのこうのとか、テストで採点しやすいことが教育の中心になっています。
    その文意はどのようなものかとか、文中にないけれど、筆者が本当に言いたかったことは何かといった、ストーリーから筆者の想いを察し、それがなぜそのようにいえるのかを論証するといった高度な日本語教育は、いまではほとんど影を潜めています。

    日本文化というのは、その根幹にあるのが「察する文化」です。
    「おまえなんか嫌いだよ」
    と口では言っているけれど、その言葉の裏には相手のことを心から愛している、自分以上に相手のことを気遣い、大切に思っているといった感情が働いているといったことを、その全体から察していく。
    これが日本の文化です。

    阿倍仲麻呂の歌に、
     天の原ふりさけ見れば春日なる
     三笠の山に出でし月かも
    という歌があります。

    単純に文意だけ見れば「春の日に夜空を仰いだら三笠の山に月がでているらしい」となります。
    ♪月が〜出たでた、月がぁ出たぁホイホイ
    というわけです。
    新月以外の日なら、夜空を見上げれば月が出ています。
    そんなあたりまえのことを歌にして、何が面白いのか。
    阿倍仲麻呂はとても偉い人だというけれど、古代の人は、月が出たと詠んだだけで、素晴らしい和歌と言ってもらえたのだから、昔の人はアホばかりだったんだなあ・・・と思わせるような解釈だから、この歌を学ぶことがあれば、そこでは、
    「ふりさけ」とは何か、文法的にどういう使われ方がされているのか、といった文法だけが強調して教えられることになります。

    けれど阿倍仲麻呂はこの歌で、月が出た出た、わぁい♪と言いたかったのではありません。
    そのことは、歌をよく見ればわかります。
    「月かも」と詠んでいます。
    「月かも」というのは、月みたいだねえ、といった意味になります。

    遣唐使として派遣され、あまりに優秀であったがゆえに唐の国に留め置かれた阿倍仲麻呂が、35年も前に日本を出るとき、春日で送別会を営んでもらった。
    この時代は照明といえば行灯くらいしかありませんでしたから、こうした大きな宴会等は、たいてい満月の夜、つまり夜が満月によって明るく照らされる晩に行われました。
    あのとき見上げた空には、まあるいお月さまがかかっていた。

    いま、唐の国から見上げる空にも、あのときと同じ月がかかっているなあ。
    帰りたいなあ、日本に。

    そんな想いを阿倍仲麻呂は和歌に託しているとわかります。

    さらにいえば、百人一首の7番歌として藤原定家がこの歌を採用したのは、唐の国の高官としてあらゆる便宜特権を与えられた阿倍仲麻呂でさえも、唐の国より日本のほうが良い国、素晴らしい国と思っていた、それだけ日本というのは、素晴らしい国だったのだよ、という趣旨を後世に伝えたかったのかもしれない。
    そのよう強い思いを、たった31文字の和歌が伝えているのです。

    国語教育というのは、単にテニヲハを教える教育ではありません。
    もちろん正しい日本語を教えることも大切ですし、漢字や平仮名、単語の意味などを教えることも大事なことですが、それ以上に国語は、本来、日本文化の根底にある察する文化を教えるものでなければならないものです。

    けれど、筆者の想いを察する、文ではなく、文意から筆者の思いを察し、そこから何を感じ取るかといったことは、読む人によって、みんな、少しずつ違っているものです。
    正解は、ないのです。
    ということは、これはテストで採点できることではない。
    もちろん受験には関係ない。
    だから戦後教育では無視されています。

    このため、察しようとする老人と若者の会話、つまり冒頭の若者と老人の会話が、逆であれば、これは世代間の壁になってしまいます。
    たとえば、
    若者「みなさんは仲間同士なのですか?」
    老人「わしらはクラスタじゃ」
    若者「はぁ?何いってんのかわかんねえ〜」

    冒頭の会話は、こうなっていました。
    老人「君たちは仲間同士なの?」
    若者「俺たちクラスタさ」
    老人「コロナですか?!」
    老人の側は、若者の言葉の意味を一生懸命察しようと心がけているのです。
    けれど逆転した会話では、たったこれだけの会話で、若者と老人の間に壁が生まれてしまっています。
    つまり、コミュニケーションの障害が生じてしまっているのです。

    国語を失うということは、思考力、行動力、コミュニケーション力を損ねることになるのです。

    責任ある社会人とって大切なことは、自分の頭で考え、行動し、同じ共同体の一員としてコミュニケーションをとることができることです。
    国家が行う教育はそのためにあります。
    それができない日本人が増えています。

    国会の高市大臣の発言をめぐる予算委員会与野党の質疑では、与野党の議論はまったく噛み合っていません。
    日本がこれほど大変な情況にあるなかで、そもそも国会でそんなつまらないことを延々と議論することなど、おそらく国民の誰も求めてなどいません。

    このようなことが公然と起こるのも、戦後の国語教育の大罪です。


    ※この記事は2021年3月の記事のリニューアルです。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

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