• 「勝つ」ということについて考える


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    5月の倭塾は、5月14日(日)13時半から、場所は富岡八幡宮の婚儀殿です。テーマは「徳川家康と未来の日本」です。参加自由で、どなたでもご参加いただくことができます。皆様のふるってのご参加をお待ちしています。
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    試合で一本を取ることが勝つことではない。自らを鍛え、鋼鉄の信念を持し、すべてにおいて準備万端怠りなくし、常住坐臥、常に心胆を戦場に置く。それが武人の心得です。

    20220506 塚原卜伝
    画像出所=https://rokko-navi.media/culture/kashima-bokuden/
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    日本をかっこよく!

    戦国時代に、可児才蔵(かにさいぞう)という豪傑がいました。
    宝蔵院流の槍(やり)の名手で、戦(いくさ)の場では、討った敵将の数が多すぎて、首を腰にぶら下げきれない。
    そこで背中にいつも笹(ささ)を背負い、自分が討ち取った敵将の首に、必ず笹の葉を咥(くわ)えさせました。
    そこからついたあだ名が「笹の才蔵(ささのさいぞう)」です。

    ある日のこと、才蔵に試合を申し込む武者が現れました。
    約束の日、相手の武者が試合場である河原で待っていると、笹の指物を背中に指し、甲冑(かっちゅう)で身を固めた才蔵がやってきました。
    さらに才蔵の部下10名が鉄砲を持ち、火縄に火をつけて、後ろに控えました。

    相手の武者は驚いて、
    「これは実戦ではない。試合だ」と抗議しました。すると才蔵は、
    「俺の試合は実戦が全てだ」と笑いながら答えました。

    この時代の試合は、そのまま命のやりとりです。
    ですから試合とは言っても、ほとんど実戦と変わりません。
    違うのは、一対一で行われて、そこに邪魔が入らないくらいです。

    実戦ですと、そうはいきません。強敵と戦っている間に、横から別な敵が打ちかかってくることもあれば、矢が飛んでくることもあります。
    こちらが剣で戦っていても、相手は銃を使うかもしれません。
    結局のところ、試合は試合でしかないのです。

    近年、試合で勝つことが強いことであるかのように思い込む人がいます。
    少し違います。

    たとえば柔道にしても、背負投で一本が決まったとしても、投げた側は、相手が頭部を損傷しないよう、相手が畳に落ちる寸前に相手の頭部を引き上げます。
    剣道でも、あくまで防具を用いるし、使う道具は、当たっても怪我をしにくい竹刀です。レスリングやボクシングでも、試合を行うのは柔らかなマットの敷かれたリングの上ですし、試合中に休憩時間もあれば、相手の男性選手が股間を怪我しないようになどのルールもあり、反則をチェックする審判もいます。

    塚原卜伝といえば、戦国時代の剣豪として有名です。
    鹿島流と香取流の両方を学び、八十三年の生涯で、
    武者修行に全国行脚が三回。
    戦場に三十七回立ち、そのうち二十二回敵と干戈を交えて、すべて勝利しました。
    討ち取った大将首が十二、武者首が十六、斬り倒した相手の数は二百十二人と伝えられます。
    しかもこの間に自分が受けた傷は、ささいな矢傷がわずかに六ヵ所。
    まさに大剣豪と呼べる人物です。

    そんな塚原卜伝に、次のような逸話があります。

    ある日のこと、塚原卜伝が琵琶湖で渡し船に乗っていると、その船中に乗り合わせた若い剣士が、卜伝と知って決闘を挑んできました。
    あまりに腕が違いすぎるので、卜伝がのらりくらりとかわそうとするのですが、血気にはやった若い剣士は卜伝は、そのうち卜伝が臆病風に吹かれているのだと思い込み、卜伝を罵倒してきました。

    このままでは周囲に迷惑がかかってしまうと、卜伝はその剣士に「船を降りて決闘を受ける」と告げ、剣士と二人で小舟に乗り移りました。
    小舟が近くの小島に近づくと、その若い剣士は、水深が足の立つ程になるやいなや、舟を飛び降りて島へと急ぎました。

    すると卜伝、なにくわぬ顔で、櫂(かい)を漕(こ)いで島から離れて行きます。
    取り残されたことに気付いた若い剣士が大声で卜伝を罵倒すると卜伝、
    「わはは、戦わずして勝つ、これが無手勝流だ」
    と言って、大笑いしながら去って行きました。

    また卜伝は、梶原長門(かじわらのながと)という武芸者と決闘したとき、相手が刃渡り七十五センチの小薙刀(こなぎなた)を使うと知り、自らの得物を八十五cmの太刀に変更することで、間合いの深さでの優位を築き、立ち合いでは一刀のもとに相手を斬り倒したことも有名です。

    試合であっても、命のやり取りともなれば、必ず勝てるよう、あらかじめ準備万端整えておくのです。
    もちろんそれ以前に日頃の鍛錬が必要であることはいうまでもありません。
    けれど実戦では、勝か負けるかは紙一重です。
    本気で殺そうとする相手が来れば、練達者であっても、良くて相打ちともいわれます。
    実戦のスポーツと違う厳しさがそこにあります。

    日本武道は、スポーツのように、試合に勝利することに目的を置いていません。
    自らを鍛え、鋼鉄の信念を持し、すべてにおいて準備万端怠りなくし、常住坐臥、常に心胆を戦場に置いて、「勝つ」ということの意義をさらに深める。
    そこに日本武道の心得があります。

    いまメディアを見ると、つねに自分たちは矢のあたらないところにいながら、ただ批判の毎日です。
    日本武道の精神は、その対極にあります。
    つねに命がけの責任を持って、世を「たける」のです。
    そのために勝利する。
    そういう日本の精神性の復活が求められています。


    ※この記事は2022年5月の記事のリニューアルです。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

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