「戦陣訓」全文



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戦陣訓


「戦陣訓」の全文をご紹介します。

昨日は、戦陣訓とはどういう意図で書かれたものかをご紹介させていただきました。
今日はいよいよ、その「戦陣訓」の本文そのもののご紹介です。

口語訳と原文の両方を掲載しました。
純粋で潔く戦った若き日の祖父達の心構えは、いまも燦然と光を放っている。

今年、新たな日本の建設元年となる壬辰の年を迎えるにあたり、断固とした護国のための戦いに望んで、必要な心構えのすべてが、この「戦陣訓」に書かれていると思います。

わかりやすさを優先するために、先に口語訳を掲載し、下に原文を掲載します。

経営者の方や会社にお勤めの方であれば、「軍」を「我が社」に、「軍人」を「当社社員」と読み替えて読んでみてください。
学校関係者であれば、「軍」を「本校」、「軍人」を「本校生徒」と読み替えながら読んでみてください。
きっと何かを感じられることと思います。

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【戦陣訓】

─────────

─────────
戦陣は、
 大命に基づき、
 皇軍の神髄を発揮し、
 攻むれば必ず取り、
 戦えば必ず勝ち、
 広く皇道を宣布し、
 敵をして仰いで御稜威(=みいつ、天皇のご威光)の尊厳を感銘せしむる場所です。

ですから戦陣に臨む者は、
深く皇国の使命を体現する者です。
かたく皇軍の道義を保つ者です。
皇国の威徳を四海に宣揚する者です。

軍人精神の根本は、軍人勅諭に明らかに示されています。
戦闘ならびに練習等における要綱も、典令の綱領に教示されています。

けれども戦闘が行われる最前線の環境では、ともすれば眼の前の事象に心をうばわれてしまいがちです。
このため、しなければならないことの本義を忘れ、場合によっては軍人の行動が、軍人の本分にもとるようなことがあるかもしれません。
それは、皇軍兵士として、絶対に慎まなければならないことです。

そこでこれまでの経験をかえりみて、常に戦陣に於て勅諭を仰ぎ、その服行の完璧を期せんため、具体的行動の基準を示し、皇軍の道義の昂揚を図る。
これが「戦陣訓」の趣旨です。


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本訓 其の一

第一 皇国
─────────

大日本は皇国です。

日本には、万世一系の天皇がおわします。
天皇は、国のはじめからの皇謨(こうぼ=天皇が国を統治する計画)を紹継して、とだえることなく君臨されている。
天皇のご恩は、皇恩万民にあまねく、聖徳は世界に光を覆っています。

わたしたち皇国臣民は、忠孝勇武の血を、祖先から受け継いでいます。
わたしたちは、皇国の道義を宣揚し、天の業を補佐し、君民一体となって皇国の隆昌をはかっていかなければなりません。

戦陣の将兵は、わたしたちの日本の国体の本義を体得して、牢固で、決してくじけぬ信念を持って、誓って皇国守護の大任を完遂する者たちです。

─────────
第二 皇軍
─────────

日本の軍は、天皇が統帥し、神武天皇以来の精神を体現するための組織です。
ですから、軍の将兵はみな、皇国の威徳を天下万民に示す役割を担っています。
そのことによって、日本の未来を築くという役割を担っています。

わたしたち軍人は、ですから常に、陛下の大御心を奉じ、常に正しい道を歩み、武人として人にやさしく(=仁)、世界の平和を築く役割を担っています。
これが神武天皇以来の「日本国の武人」の基本精神です。

帝国軍人は、常に「武」は厳格に、「仁」は幅広くという精神が必要です。

いやしくも皇軍に敵対する者があれば、帝国軍人は烈々たる武威をふるい、断固、その者を撃破します。
敵を屈服させたときは、降伏した敵は撃たず、従う敵には慈しみの心を持って接する。
そうでなければ、皇軍兵士としての責務をまっとうしたことにならない。

「武」は驕(おご)らず、「仁」は飾らず。
その姿勢があふれんばかりに、常に行われることが尊いのです。

皇軍の本領は、「恩」と「威」が等しく並んで行われることです。
そうすることで、天下万民に陛下の大御心を広めて行くのです。

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第三 皇紀
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皇軍の軍紀の神髄は、おそれおおくも大元帥であらせられる陛下に対し奉り、絶対的に随順する、という崇高な精神にあります。

上下ひとしく陛下の統帥の尊厳を尊重し、感銘する。
上に立つ者は、陛下のご意思を承り、これを謹厳に実行する。
下の者は、謹んで陛下に服従する至誠をまっとうする。

そうすることで、軍人ひとりひとりの「忠」を尽くす真心(=赤誠)が重なり合う。脈絡が一貫する。
こうして全軍一致、一令のもとに、わずかの乱れもなく活動できる。
これこそが、戦いにあたって必須の要件であり、治安確保の要道です。

特に戦陣は、服従の精神実践の極致を発揮すべきところです。
戦陣は、死生困苦の間に在ります。
そこでは、命令一下、欣然として死地に身を投じ、黙々として献身服行の実を挙げるのが、皇軍兵士たる軍人の精神の精華です。

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第四 団結
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軍は、おそれおおくも大元帥陛下を頭首と仰ぎ奉ります。

ですから軍は、あつく陛下のお考えを身を以て体現し、忠誠の至情に和し、軍をあげて、全員が一心一体となるところです。

軍隊は統率の本義にのっとって、隊長を核心とし、強固であってしかも和気藹々とした団結をしなければなりません。

上下各々、その「分(ぶ)」を厳守し、常に隊長の意図に従い、誠心を仲間たち腹中に置き、生死利害を超越して、全体のために、己を没するの覚悟が必要です。


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第五 協同
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全兵士は、心をひとつに、自身の任務に邁進するとともに、全軍が戦いに勝つため、よろこび勇んで、我を忘れて協力しあう精神を発揮しなければなりません。

各隊はおたがいにその任務を重んじ、名誉を尊び、お互いに信じあい、お互いに援けあい、自ら進んで苦難に就き、力をあわせて目的達成のために力闘しましょう。

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第六 攻撃精神
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戦闘にあたっては、勇猛果敢、常に攻撃精神を以て一貫しましょう。

攻撃するときは、果断に、積極的に、相手の機先を制し、剛毅にして不屈、敵を粉砕するまでは決してとどまらず攻撃します。

防禦に際しても、常に攻勢の鋭気を包蔵し、必ず主動の地位を確保しなさい。
陣地は、たとえ死んでも敵に奪われてはならない。
追撃は、断固として、あくまでも徹底的に行います。

勇猛果敢に、何事にも恐れず、沈着にして大胆不敵、難局に際しても、固い決意を持って困苦に打ち勝ち、あらゆる障害を突破して、ただひたすらに勝利の獲得に邁進しましょう。

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第七 必勝の信念
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信じる心は力です。
自ら信じ、毅然として戦う者こそ、常に勝者となり得る。

そして必勝の信念というものは、日頃の千磨必死の訓練から生まれます。
寸暇を惜しんで肝胆を砕き、必ず敵に勝つの実力を養うのです。

勝敗は皇国の隆替に関することです。
光輝ある軍の歴史に鑑み、百戦百勝の伝統に対する己の責務を肝に銘じて、勝つまで戦いをやめない。
それが必ず勝つための唯一の要諦です。


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本訓 其の二

第一 敬神
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神霊は、天にあって、常に私たちを見ています。
心を正し、身を修め、あつく神を敬い、誠を捧げ、常に忠孝を心に念じ、誓って神仏のご加護に恥じないようにしましょう。

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第二 孝道
─────────
忠孝の道というのは、我が国の道義精粋の根幹をなすものです。
ですから忠誠の士は、同時に必ず純情で親孝行な子です。

最前線の戦陣にあって、深く父母の志を体し、よく忠の大義に徹して働き、祖先の遺風をみずからの働きで顕彰しましょう。

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第三 敬礼挙措
─────────
敬礼は純真な服従心の発露であり、かつ上下一致の表現です。
戦陣にいるときは、特に厳正な敬礼を行いましょう。

そうすることで礼節の精神が心の内に充満します。
謹厳であり、端正でいるのは、強き武人である証(あかし)です。

─────────
第四 戦友道
─────────
戦友の道義は、大義のもと、死ぬことも生きることも一緒となり、たがいに信頼の至情を結んで、互いに常に切磋琢磨し、緩急あれば互いに救い、間違いがあれば互いに戒(いま)しめて、ともに軍人の本分をまっとうするにあると心得なさい。

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第五 率先躬行
─────────
幹部は、常に誠意を尽くし、すべての行いについて、みんなの模範となるよう努めなさい。
上に立つ者が正しい振る舞いをしなければ、下の者は必ず乱れてしまいます。

戦陣は、実行を尊びます。
体をもって、みんなに先んじて毅然とした行動をとりなさい。

─────────
第六 責任
─────────
任務というものは、神聖なものだと心得なさい。
責任は、極めて重いのです。

一業一務、おろそかにせず、心魂を傾注して一切の手段を尽くし、その達成にあたって、後悔することのないようにしなさい。

責任を重んずる者こそが、真にして最大の勇者です。

─────────
第七 生死観
─────────
死ぬも生きるも、たいせつなことは、崇高な献身奉公の精神です。

生死を超越し、ひとすじに任務の完遂に邁進しなさい。
身心一切の力を尽くし、従容として悠久の大義に生くることを悦びとしなさい。

─────────
第八 名を惜しむ
─────────
恥を知る者は強い。
常に、親兄弟や祖先の面目を思い、ますます奮励して、その期待に答えなさい。
生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すことなかれ。

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第九 質実剛健
─────────
質実をもって陣中の起居を自分自身で律し、剛健な士風を自ら築き上げ、旺盛な士気を振起しなさい。

陣中の生活は、簡素でなければなりません。
いろいろなモノや時間など、さまざまな事柄が常に不自由であることが常態であると思い、何事にも節約に努めなさい。

奢侈というものは、勇猛の精神を蝕むものです。

─────────
第十 清廉潔白
─────────
清廉潔白は、武人気質のよって立つ所です。
おのれに克つことができなくて、物欲に心を捉えられてしまう者が、どうして皇国に身命を捧げることができましょう。
我が身を持するにあたっては、自分自身に対して、常に冷厳でいなさい。
そして事に対処するに際しては、常に公正であることを心がけなさい。
常に天地に恥じない行動をとりましょう。


─────────
本訓 其の三

第一 戦陣の戒(いましめ)
─────────

(1) 一瞬の油断が、不測の大事を招きます。
常に戦いに備え、自分をいましめましょう。
それと、大切なことは、敵や住民を、決して軽侮してはなりません。
また、小さな成功に安んじて、勤労を嫌がったりすることがないようにしなさい。
不注意も、災禍の原因となることをよくわきまえなさい。

(2) 軍機を守るには、常に細心でいなさい。
スパイは、常に身辺にいます。

(3) 哨戒の任務は、重大なものです。
それは一軍の安危を担(にな)い、、一隊の軍紀を代表するものです。
ですから身をもって、その重い任務に任じ、厳粛にこれを服行しなければなりません。

(4) 思想戦は、現代戦の重要な一面です。
皇国に対する不動の信念を以て、敵の宣伝や欺瞞を見破るだけでなく、進んで皇道の宣布に勉めなさい。

(5) 流言蜚語に惑わされるのは、信念が弱いからです。
惑ってはなりません。動じてもなりません。
皇軍の実力を確信し、篤く上官を信頼しなさい。

(6) 敵の産物や、敵の資産の保護に留意しなさい。
徴発、押収、物資の焼却等は、規定に従って、必ず指揮官の命に従いなさい。

(7) 皇軍の本義に鑑みて、無辜の住民を愛護しなさい。

(8) 戦陣において、酒色に心を奪われたり、あるいは欲情に駆られて本心を失い、皇軍の威信を損じ、奉公の身を過ぎるようなことは、決してしてはなりません。
深くいましめ、自ら慎み、断じて武人の清節を汚してはなりません。

(9) 怒(いかり)を抑え、不満を制しなさい。
「怒(いかり)の感情」こそ、敵だと思いなさいと、古人も教えています。
一瞬の激情は、悔(くい)を後日に残すこと多いものです。

軍法が厳しいのは、軍人の栄誉を保持し、皇軍の威信をまっとうするためです。
常に出征当時の決意と感激とを想い起こし、遙かに思いを父母妻子の真情に馳せ、仮初にも身を罪科に曝すことがないようにしましょう。

─────────
第二 戦陣の嗜(たしなみ)
─────────

(1) 尚武の伝統をつちかい、武徳を自分自身の中に育て上げ、技能の練磨に勉なさい。
「毎事退屈するなかれ」とは、古き武将の言葉にもあります。

(2) 後顧の憂いを絶ち、ひたすら奉公の道に励み、常に身辺を整え、死後を清くするの嗜(たしなみ)を肝要としなさい。
屍(しかばね)を戦野に曝すのは、もとより軍人の覚悟です。
たとえ遺骨が祖国に還れないことがあっても、あえて意としないよう、あらかじめ家族に含めておきなさい。

(3) 戦陣において病気で死ぬのは、まことに遺憾の極みです。
特に衛生を重んじ、おのれの不節制によって奉公に支障を来すようなことは、絶対にないようにしましょう。

(4) 刀を魂とし、馬を宝とした古武士の嗜(たしなみ)を心において、戦陣の間は、常に兵器資材を尊重し、軍馬、軍犬などを愛護しなさい。

(5) 陣中の徳義は、戦力のもとです。
常に他の部隊の便益を思って、宿舎や、物資の独占のようなまねは、厳に慎みましょう。
また「立つ鳥跡を濁さず」と言います。
雄々しく、古式ゆかしい皇軍の名を、異郷辺土にも永く伝へられるようにしましょう。

(6) 武勲は、誇るものではありません。
功を人に譲るのは、武人の高風です。
また、他の者の栄達を妬(ねた)むものではありません。
自分が認められないことを、恨むものではありません。
むしろ、自分自身の「誠」が足りないことを思うようにしなさい。

(7) あらゆることに正直を旨とし、誇張や虚言を恥としなさい。

(8) 常に大国民として襟をただし、正しいことを実戦し、義を貫いて、皇国の威風を世界に宣揚しなさい。
そして、国際の儀礼を、軽んじないようにしなさい。

(9) 万死に一生を得て、祖国に帰還することができたならば、思いを亡くなった護国の英霊に致し、言行を慎んで国民の範となりなりなさい。
そして帝国臣民として、いよいよ奉公の覚悟を固くしなさい。

─────────

─────────
以上に述べたことは、ことごとく軍人勅諭から出たものです。
ですから各自は、この「戦陣訓」を、戦陣における道義として実践し、もって任務の完璧を期すようにしなさい。
戦陣の将兵は、すべからくこの趣旨を実行し、いよいよ奉公の至誠をひときわぬきんでて実践し、よく軍人の本分をまっとうして、厚い皇恩に答へ奉りなさい。
============

以上が口語訳した「戦陣訓」の全文です。

一読してまず思うことは、とかく「生きて虜囚の辱を受けず」ばかりが強調されている戦陣訓だけれど、その本意とするところは、ぜんぜんそういうことばかりではなくて、人として、軍人としての規範そのものが書かれている。

特に、「無辜の住民を愛護しなさい」とするだけでなく、敵であっても、「屈服させたときは、降伏した敵は撃たず、従う敵には慈しみの心を持って接しなさい」と諭しています。
まさに、皇軍兵士の姿、ここにありの感があります。

また、「思想戦は、現代戦の重要な一面である」という一文は、考えさせられます。
保守の活動をしていると、いらざる中傷をまともに受けることが往々にしてあるけれど、何を言われても、「皇国に対する不動の信念を以て、敵の宣伝や欺瞞を見破り、進んで正しい道の宣布に勉めなさい」とあるは、なるほどと、おもわず膝を打ちたくなります。

そして「流言蜚語に惑わされるのは、信念が弱いからだ」と喝破している。
何事かを為そうとするとき、
「惑ってはなりません。動じてもなりません。皇軍の実力を確信し、篤く上官を信頼しなさい」という言葉は、流言飛語が飛び交う現代社会においても、深く教訓となるものであろうと思います。

以下に原文を示します。

===========
【戦陣訓】


 夫れ戦陣は、大命に基き、皇軍の神髄を発揮し、攻むれば必ず取り、戦へば必ず勝ち、遍く皇道を宣布し、敵をして仰いで御稜威の尊厳を感銘せしむる処なり。されば戦陣に臨む者は、深く皇国の使命を体し、堅く皇軍の道義を持し、皇国の威徳を四海に宣揚せんことを期せざるべからず。
 惟ふに軍人精神の根本義は、畏くも軍人に賜はりたる勅諭に炳乎として明かなり。而して戦闘並に練習等に関し準拠すべき要綱は、又典令の綱領に教示せられたり。然るに戦陣の環境たる、兎もすれば眼前の事象に促はれて大本を逸し、時に其の行動軍人の本分に戻るが如きことなしとせず。深く慎まざるべけんや。乃ち既往の経験に鑑み、常に戦陣に於て勅諭を仰ぎて之が服行の完璧を期せむが為、具体的行動の憑拠を示し、以て皇軍道義の昂揚を図らんとす。是戦陣訓の本旨とする所なり。

本訓 其の一

第一 皇国

 大日本は皇国なり。万世一系の天皇上に在しまし、肇国の皇謨を紹継して無窮に君臨し給ふ。皇恩万民に遍く、聖徳八紘に光被す。臣民亦忠孝勇武祖孫相承け、皇国の道義を宣揚して天業を翼賛し奉り、君民一体以て克く国運の隆昌を致せり。
 戦陣の将兵、宜しく我が国体の本義を体得し、牢固不抜の信念を堅持し、誓つて皇国守護の大任を完遂せんことを期すべし。

第二 皇軍

 軍は天皇統帥の下、神武の精神を体現し、以て皇国の威徳を顕揚し皇運の扶翼に任ず。常に大御心を奉じ、正にして武、武にして仁、克く世界の大和を現ずるもの是神武の精神なり。武は厳なるべし仁は遍きを要す。苟も皇軍に抗する敵あらば、烈々たる武威を振ひ断乎之を撃砕すべし。仮令峻厳の威克く敵を屈服せしむとも、服するは撃たず従ふは慈しむの徳に欠くるあらば、未だ以て全しとは言ひ難し。武は驕らず仁は飾らず、自ら溢るるを以て尊しとなす。皇軍の本領は恩威並び行はれ、遍く御綾威を仰がしむるに在り。

第三 皇紀

 皇軍軍紀の神髄は、畏くも大元帥陛下に対し奉る絶対随順の崇高なる精神に存す。
 上下斉しく統帥の尊厳なる所以を感銘し、上は大意の承行を謹厳にし、下は謹んで服従の至誠を致すべし。尽忠の赤誠相結び、脈絡一貫、全軍一令の下に寸毫紊るるなきは、是戦捷必須の要件にして、又実に治安確保の要道たり。
 特に戦陣は、服従の精神実践の極致を発揮すべき処とす。死生困苦の間に処し、命令一下欣然として死地に投じ、黙々として献身服行の実を挙ぐるもの、実に我が軍人精神の精華なり。

第四 団結

 軍は、畏くも大元帥陛下を頭首と仰ぎ奉る。渥き聖慮を体し、忠誠の至情に和し、挙軍一心一体の実を致さざるべからず。 軍隊は統率の本義に則り、隊長を核心とし、鞏固にして而も和気藹々たる団結を固成すべし。上下各々其の分を厳守し、常に隊長の意図に従ひ、誠心を他の腹中に置き、生死利害を超越して、全体の為己を没するの覚悟なかるべからず。

第五 協同

 諸兵心を一にし、己の任務に邁進すると共に、全軍戦捷の為欣然として没我協力の精神を発揮すべし。
 各隊は互に其の任務を重んじ、名誉を尊び、相信じ相援け、自ら進んで苦難に就き、戮力協心相携へて目的達成の為力闘せざるべからず。

第六 攻撃精神

 凡そ戦闘は勇猛果敢、常に攻撃精神を以て一貫すべし。
 攻撃に方りては果断積極機先を制し、剛毅不屈、敵を粉砕せずんば已まざるべし。防禦又克く攻勢の鋭気を包蔵し、必ず主動の地位を確保せよ。陣地は死すとも敵に委すること勿れ。追撃は断々乎として飽く迄も徹底的なるべし。
 勇往邁進百事懼れず、沈著大胆難局に処し、堅忍不抜困苦に克ち、有ゆる障碍を突破して一意勝利の獲得に邁進すべし。

第七 必勝の信念

 信は力なり。自ら信じ毅然として戦ふ者常に克く勝者たり。
 必勝の信念は千磨必死の訓練に生ず。須く寸暇を惜しみ肝胆を砕き、必ず敵に勝つの実力を涵養すべし。
 勝敗は皇国の隆替に関す。光輝ある軍の歴史に鑑み、百戦百勝の伝統に対する己の責務を銘肝し、勝たずば断じて已むべからず。

本訓 其の二

第一 敬神

 神霊上に在りて照覧し給ふ。
 心を正し身を修め篤く敬神の誠を捧げ、常に忠孝を心に念じ、仰いで神明の加護に恥ぢざるべし。

第二 孝道

 忠孝一本は我が国道義の精粋にして、忠誠の士は又必ず純情の孝子なり。
 戦陣深く父母の志を体して、克く尽忠の大義に徹し、以て祖先の遺風を顕彰せんことを期すべし。

第三 敬礼挙措

 敬礼は至純の服従心の発露にして、又上下一致の表現なり。戦陣の間特に厳正なる敬礼を行はざるべからず。
 礼節の精神内に充溢し、挙措謹厳にして端正なるは強き武人たるの証左なり。

第四 戦友道

 戦友の道義は、大義の下死生相結び、互に信頼の至情を致し、常に切磋琢磨し、緩急相救ひ、非違相戒めて、倶に軍人の本分を完うするに在り。

第五 率先躬行

 幹部は熱誠以て百行の範たるべし。上正しからざけば下必ず紊る。
 戦陣は実行を尚ぶ。躬を以て衆に先んじ毅然として行ふべし。

第六 責任

 任務は神聖なり。責任は極めて重し。一業一務忽せにせず、心魂を傾注して一切の手段を尽くし、之が達成に遺憾なきを期すべし。
 責任を重んずる者、是真に戦場に於ける最大の勇者なり。

第七 生死観

 死生を貫くものは崇高なる献身奉公の精神なり。
 生死を超越し一意任務の完遂に邁進すべし。身心一切の力を尽くし、従容として悠久の大義に生くることを悦びとすべし。

第八 名を惜しむ

 恥を知る者は強し。常に郷党家門の面目を思ひ、愈々奮励して其の期待に答ふべし。生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ。

第九 質実剛健

 質実以て陣中の起居を律し、剛健なる士風を作興し、旺盛なる士気を振起すべし。
 陣中の生活は簡素ならざるべからず。不自由は常なるを思ひ、毎事節約に努むべし。奢侈は勇猛の精神を蝕むものなり。

第十 清廉潔白

 清廉潔白は、武人気質の由つて立つ所なり。己に克つこと能はずして物慾に捉はるる者、争でか皇国に身命を捧ぐるを得ん。
 身を持するに冷厳なれ。事に処するに公正なれ。行ひて俯仰天地に愧ぢざるべし。

本訓 其の三

第一 戦陣の戒


一 一瞬の油断、不測の大事を生ず。常に備へ厳に警めざるべからず。
  敵及住民を軽侮するを止めよ。小成に安んじて労を厭ふこと勿れ。不注意も亦災禍の因と知るべし。
二 軍機を守るに細心なれ。諜者は常に身辺に在り。
三 哨務は重大なり。一軍の安危を担ひ、一隊の軍紀を代表す。宜しく身を以て其の重きに任じ、厳粛に之を服行すべし。哨兵の身分は又深く之を尊重せざるべからず。
四 思想戦は、現代戦の重要なる一面なり。皇国に対する不動の信念を以て、敵の宣伝欺瞞を破摧するのみならず、進んで皇道の宣布に勉むべし。
五 流言蜚語は信念の弱きに生ず。惑ふこと勿れ、動ずること勿れ。皇軍の実力を確信し、篤く上官を信頼すべし。
六 敵産、敵資の保護に留意するを要す。徴発、押収、物資の燼滅等は規定に従ひ、必ず指揮官の命に依るべし。
七 皇軍の本義に鑑み、仁恕の心能く無辜の住民を愛護すべし。
八 戦陣苟も酒色に心奪はれ、又は慾情に駆られて本心を失ひ、皇軍の威信を損じ、奉公の身を過るが如きことあるべからず。深く戒慎し、断じて武人の清節を汚さざらんことを期すべし。
九 怒を抑へ不満を制すべし。「怒は敵と思へ」と古人も教へたり。一瞬の激情悔を後日に残すこと多し。
  軍法の峻厳なるは特に軍人の栄誉を保持し、皇軍の威信を完うせんが為なり。常に出征当時の決意と感激とを想起し、遙かに思を父母妻子の真情に馳せ、仮初にも身を罪科に曝すこと勿れ。
第二 戦陣の嗜


一 尚武の伝統に培ひ、武徳の涵養、技能の練磨に勉むべし。「毎事退屈する勿れ」とは古き武将の言葉にも見えたり。
二 後顧の憂を絶ちて只管奉公の道に励み、常に身辺を整へて死後を清くするの嗜を肝要とす。
  屍を戦野に曝すは固より軍人の覚悟なり。縦ひ遺骨の還らざることあるも、敢て意とせざる様予て家人に含め置くべし。
三 戦陣病魔に斃るるは遺憾の極なり。特に衛生を重んじ、己の不節制に因り奉公に支障を来すが如きことあるべからず。
四 刀を魂とし馬を宝と為せる古武士の嗜を心とし、戦陣の間常に兵器資材を尊重し、馬匹を愛護せよ。
五 陣中の徳義は戦力の因なり。常に他隊の便益を思ひ、宿舎、物資の独占の如きは慎むべし。
  「立つ鳥跡を濁さず」と言へり。雄々しく床しき皇軍の名を、異郷辺土にも永く伝へられたきものなり。
六 総じて武勲を誇らず、功を人に譲るは武人の高風とする所なり。
  他の栄達を嫉まず己の認められざるを恨まず、省みて我が誠の足らざるを思ふべし。
七 諸事正直を旨とし、誇張虚言を恥とせよ。
八 常に大国民たるの襟度を持し、正を践み義を貫きて皇国の威風を世界に宣揚すべし。
  国際の儀礼亦軽んずべからず。
九 万死に一生を得て帰還の大命に浴することあらば、具に思を護国の英霊に致し、言行を慎みて国民の範となり、愈々奉公の覚悟を固くすべし。



 以上述ぶる所は、悉く勅諭に発し、又之に帰するものなり。されば之を戦陣道義の実践に資し、以て聖諭服行の完璧を期せざるべからず。
 戦陣の将兵、須く此趣旨を体し、愈々奉公の至誠を擢んで、克く軍人の本分を完うして、皇恩の渥きに答へ奉るべし。


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コメント

サンメリーダの梟(ふくろう)

No title
すいません、こちらの記事にリンクを貼らせてください。

 

No title
ありがとうございます!
非常に感動しました。

帝国時代の80年は人類史の奇跡!

日本精神とは何ぞや?
いつも勉強させて頂いてます。お返しにちょっぴりネタ提供(^.^)b
戦国武将の稲津掃部助(いなづかもんのすけ)と、その妻・雪江の危局時における生き様死に様にいたく感動しました。日本人の男と女はこうでなくちゃと思った次第。実際、日清日露や大東亜戦争では彼らのような精神が至る所で発揮されました。これぞ日本固有の精神の一端ではないかと。普段は温和なお人好しでもイザという時の心構え及び挙動が特殊であって、それは日本人の遺伝子に深く刻まれてるものではないかと思います。
僅か十五才の雪江に出来たのだから我々に出来ない訳ないんだけど…やっぱ自信無いなぁ(;^_^A

よし

読んでいて、日頃忘れがちな「心」や「魂」が蘇った気になりました。
ありがとうごさいます。

山吹

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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年生まれ。浜松市出身。上場信販会社を経て執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。またインターネット・ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。「歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに」という理念を掲げ活動する。古事記・日本書紀・万葉集などの原文を丁寧に読み解き、誰にでも納得できる日本論を発信。

《著書》日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、その他執筆多数。

《動画》「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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