あやめと菖蒲とかきつばたの見分け方



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尾形光琳「燕子花図」


昨日の倭塾は、おかげさまで満員御礼となりました。
みなさまのおかげです。
ありがとうございます。

さて、今日は季節のお話です。
日本は四季折々に美しさを持つ国。そして今頃は美しいアヤメが、そこここで観られます。
ところで「アヤメ」と「ショウブ」と「カキツバタ」。
この3つ、どれがアヤメで、どれがカキツバタなのでしょうか。

「いずれアヤメかカキツバタ」というくらいで、似ていて見分けがつきにくいですが、ちょっとした手がかりで、三者はすぐにそれとわかるようになります。

今日はそんなお話です。


あやめと菖蒲とかきつばたの見分け方

まず、いちばんわかりやすいのが「あやめ」です。
「あやめ」は、漢字で「文目(あやめ)」と書きますが、まさに字のとおり、花の根元が「あみ目模様」になっています。
あやめ(文目)の編み目模様
文目の編み目模様


よく、「文子」さんと書いて、「あやこ」さんと読む方がおいでになりますが、「文(ふみ)読む子」ではなくて、あえて「あやこ」と読む名を付けた親御さんは、あやめ(文目)のように可憐で清楚、美しく育ってもらいたいという親心であっのかもしれません。

最近では、アヤメもショウブも、どちらも漢字で「菖蒲」とも書いたりしますが、これはとてもまぎらわしいことです。
ショウブは「菖蒲」で良いですが、アヤメはやっぱり「文目」と書いてもらったほうが、花を見分けるにも良いように思います。

「あやめ」の背丈はだいたい60cm以下で、あやめ、しょうぶ、かきつばたの中では、花も背丈も、いちばん小柄です。
「小柄でも、その美しさは群を抜く。」
また花の根元の編み目模様も、女性の複雑な心をあらわしているかのような感じがして、可憐でとても美しいです。


次に「菖蒲(しょうぶ)」です。
こちらは背丈が80〜100cmになります。
花も3種の中で、一番大きいです。
ですから、「大きいな、背が高いな」と思ったら、まずショウブである可能性が高くなります。

見分け方のポイントは、やはり花の根元です。
菖蒲は、花の根元に、はっきりした黄色いマークが付いています。
しょうぶ(菖蒲)の黄色いマーク
しょうぶの黄色いマーク



「かきつばた」は、漢字では「杜若」または「燕子花」です。
背丈は60〜80cmと、文目と菖蒲の中間くらいです。
見分け方のポイントは、やはり花の根元のマークで、「かきつばた」のマークは、「白」です。
かきつばた(燕子花、杜若)の白いマーク
かきつばたの白いマーク



ちなみに、「いずれあやめか、かきつばた」という言葉ですが、これは源頼政(みなもとのよりまさ)の故事に由来します。

源頼政といえば、源三位(げんざんみ)と称され、保元の乱と平治の乱を勝ち抜き、平氏政権下でも中央政界にその地敷を固め、最後は以仁王と結んで平氏打倒の挙兵するけれど平氏に追討されて、宇治平等院の戦いに敗れて自害した人として知られています。

たいへんな剛の人で、第76代近衛天皇(このえてんのう)のご治世のとき、都に出た鵺(ぬえ)と呼ばれる妖怪を退治したという逸話があります。
鵺(ぬえ)というのは、猿顔で、胴体は狸に似て、手足には虎の爪があり、尾は蛇のような姿をしているという恐ろしい妖怪です。
この退治のあと、近衛天皇から恩賞として源頼政に下賜された刀が「獅子王」で、いまではこの刀は重要文化財に指定されています。
こういうものが、いまでもしっかりと残っているというのが、どこぞの下品な国とは異なる日本の凄みです。

源頼政、鵺退治の図
源頼政、鵺退治の図
獅子王刀


鵺退治のあと、源頼政がいただいた恩賞は、実は刀だけではありません。
鳥羽院(第74代天皇、後に上皇)からは、天下に名高い美女の「あやめ御前」を与えられることになりました。
このように書くと、日本の中世社会は男尊女卑で女性は差別され、まるでモノのように扱われていたのだとか、すぐに言い出す人がいますが、全然違います。
当時も、女性の側が「嫌だ」といえばそれまでの話で、要するにこの故事は、源頼政という当代随一といって良い教養人で、かつ剛の者である源頼政に、鳥羽院が院に勤める美しい女性に、今風にいうなら「お見合い」を薦めたという話です。

このとき鳥羽院は美女二人に、あやめ御前と同じ服、同じ化粧をさせ、三人の美女を源頼政の前に出して、
「どれが本物のあやめ御前か、見事当てたら御前を譲ろう」と申されました。
三人とも、ものすごい美女です。
困った源頼政は、そこで即興で歌を詠みました。
それが次の歌です。

五月雨(さみだれ)に 沼の石垣水こえて
いずれかあやめ 引きぞわづらふ


こんな歌が即興で詠めてしまうのですから、すごいです。
歌の意味は、簡単に言ったら「あまりに美しくて感情がたかぶり、どの姫があやめ御前かわからず病になってしまいそうです」というものです。
鳥羽院はこの当意即妙の頼政の教養の高さにいたく感激され、あやめ御前を頼政に下賜されました。
この故事が講談などで語り継がれ「いずれあやめか、かきつばた」になりました。

百人一首には、源頼政の娘の二条院讃岐の歌が92番にあります。
父の源頼政は、世の中の平穏を取り戻したいという以仁王の情熱に打たれ、平氏の追討を計画し、敗れて自害しています。
つまりこの時代においては反乱者であり、娘の讃岐は、その意味では犯罪者の娘です。
けれど彼女はとても優秀で、頼政の人柄を惜しむ人も多かったため、なんと彼女は後鳥羽天皇の中宮任子(のちの宜 秋門院)に出仕を命ぜられました。
武家の女性としては、この上ない栄達です。
時代劇などでは、悪役として描かれることが多い源頼政ですが、どれだけ人望があったかということが、この一事でも分かります。

娘の讃岐は、
 わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の
 人こそ知らね かわく間もなし

と詠みました。
「潮干に見えぬ沖の石」は、引き潮になってもまだ見えない海面下の石のことです。
平家全盛の時代にあって、隠れて見えなくなってしまっているシラス国の本来の姿を、讃岐はこのように詠み、世に平穏が戻らないことを、涙が「かわく間もなし」と歌っています。


さて、今日の記事の冒頭にあるのは、尾形光琳の「燕子花図(かきつばたず)」です。
この絵がどうして「かきつばた」と特定できるのか。
みなさまには、もうおわかりかと思います。
花の根元が白色をしているからです。

それにしても、四季折々の花が咲く日本、長い歴史を持った国日本て、本当に素晴らしいですね。

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コメント

くすのきのこ

No title
こんにちは。楽しく拝読させていただいています。
今回のうたですが・・はて、おかみは本当に”女性”をえらび当てよと意図さ
れたのでしょうか?それとも・・。何がしかの政局の流れは既に予感されて
いたのでは?崩御のあとの・・。
ちなみにアヤメは乾いた所に、カキツバタは水中や湿った所に、ハナショウ
ブは湿った所に生息するとの事です。水が垣をこえるのですから、カキツバ
タってことかも?あるいは、浸水してしまえばどれがアヤメでどれがカキツ
バタか判らなくなってしまうということかも?武人らしく率直にわかりませ
~んというのが可笑しくていいですね。とりあえず頼政の子孫は太田道潅へ
と繋がるらしく、頼もしく逞しい血筋ですねww。
娘さんの讃のうたには~寄石恋といへる心を~という前振りがありますね。
石というのは磐石を連想させ、一家の要石であった父親を恋しく思うという
意味も兼ねているのかもしれませんね。こううたってご自身が70すぎまで
歌合わせに参加していたという・・凄いですね。
ところで、お猿さんの赤ちゃんの名前ですが、イギリス人にとっては問題な
いようですね・・無邪気な行為にすぎないと大人の判断でもあり、今までも
王家の者の名前は記念にといろ~んなものに付けられているので慣れもあり、
英国独特のユーモアにもよるのでしょう。どっかのテレビ局が変に煽ろうと
した下心には、どこかがからんでいるかもね。TBSでしたっけ?変です。


ポッポ

No title
大分市の高崎山自然動物園の赤ちゃん猿の命名について、大分市は「シャーロット」と英国王女と同じ名前にしました。
英国王室は、「あくまでもノーコメントだが、名前の付け方は所有者の自由だ」とのことですが、大人の対応だと思います。

しかし、これが近隣諸国ならば猛抗議をされる恐れがあったと考えます。そのとき、大分市は抗議されたからと名前を変えたのでしょうか? また、日本の皇室の方の名前ならば、どのような判断になったのでしょうか?

人間の名前ならば、問題にはならないでしょう。しかし、この問題は猿の名前なのです。
こんなときにこそ、相手を察することが必要だったのではないでしょうか?
そのときに、相手が構わないと言っているからと、王女の名前を猿につける。

世界最古の歴史を持つ日本国の対応について、(例えこれが一地方のことであったにしても)英国が日本は劣化したものだと考えても、やむを得ないと思います。

-

No title
【5月10日配信】戦後70年特別企画「説教ストロガノフ 掟破りの逆15年戦争~戦争責任とは敗戦責任である」第4回 東条内閣の対米交渉と真珠湾攻撃 上念司 倉山満【チャンネルくらら】
https://www.youtube.com/watch?v=8_s8ktUWxjI

大変参考になります。

えっちゃん

倭塾への参加
 昨日、倭塾に参加させていただきました。
 とても、充実した内容で、メモが追いつかないほどでした。(漢字がすぐに出てこないこともあり)
 継続は力なので、次回も参加させていただきます。
 お疲れのように見えましたので、何も言わずにサインだけ頂いて帰ってしまいました。
感動しましたとか、
いつもブログを拝読し、コメントしていますとか、
自分のブログで紹介しましたとか、
言ってもよかったなあと電車に乗って思いました。

 頂いた「玉響」5月号を拝読しながら車中を過ごしました。小麦の話は驚きました。「歴史から読み取る天皇と日本人」の対談・前編を読みたいので注文しようと思います。

 ありがとうございました。
 
 

愛信

創価学会と公明党の関係(政教一致の問題)
創価学会と公明党の関係(政教一致の問題)
https://twitter.com/kikuni_taenai2/status/597080776224575488

https://youtu.be/GZYbmtcl0IA
(動画)
詳細は
【創価学会の掲示板】
http://www.aixin.jp/axbbs/snt/snt0.cgi
【創価学会の掲示板タイトル一覧】はこちらをクリックして下さい。

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いつもありがとうございます。
ニューヨークのネイルサロンは、ほとんど韓国人が経営しているとの事。そこの韓国人経営者は、韓国人じゃない従業員に対して、客が少ないときは、時給を払わなかったり、韓国人じゃないから、狭い所で食事をするようにとか言ったりして酷い扱いをしているとニューヨークタイムズが伝えています。日頃、ウリ達は差別されているニダ!とか言っているくせに、お前らは韓国人じゃないから台所で飯を食え!とか言っているのが韓国人です。 日本なら従業員の為に働きやすいように食堂をつくり福利厚生にも気を使います。客が少ないから給与を払わないなどあり得ないです。 韓国人は己が差別意識が強いから差別されているなど叫ぶわけです。キチガイですね。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

講演のご依頼について

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