貨幣経済、コメ経済



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20150907 貨幣経済


上にあるのは、新しい歴史教科書をつくる会の「新板・新しい歴史教科書」にある富本銭と、和同開珎の写真です。
私などは学生時代に「日本最古の貨幣は和同開珎で708年のこと」と教わったものですが、富本銭は西暦683年に鋳造が公式にはじまっていて、これが学会ではいちおう、現存する我が国最古の鋳造銭とされています。
(ですから教科書にもそのように掲載されています)

そうなると、まるで富本銭以前には日本には貨幣がなかったかのようなのですが、実際にはもっと古い時代から、銅よりももっと価値のある銀が銭として使われていました。
これを「無文銀銭」といいます。
それが存在した証拠としては、現時点で全国17の遺跡から120枚、この無文銀銭が出土してます。

さらに『日本書紀』の顕宗天皇2(486)年には、「稲斛銀銭一文」という記述があります。
この時点で「文(もん)」という単位が使われていたことがわかります。
一文(いちもん)、二文(にもん)といった貨幣単位の呼称は、明治初期まで約1400年間、日本で使われていたわけです。



さらにいいますと、日本書紀の天武天皇12(683)年には、「今より以後、必ず銅銭を用いよ。銀銭を用いることなかれ」とあります。
ここでいう「銅銭」というのは、上の写真にある「和同開珎」のことで、使うなと書かれている「銀銭」は、おそらく富本銭のことを指しています。
つまり通貨が「実際に使われ、流通していた」ということです。

無文銀銭
20150907 無文銀銭


ちなみに銀銭といえば、古代のシュメール文明(約4千年前)では、銀銭が使われていて、通貨の単位は「ギン」と呼ばれていたのだそうです。
シュメール語と日本語の共通点を指摘する人は多いのですが、もしそうであるとすれば、日本本土でも同じ時代に銀貨が使われていたわけで、なんだか古代のロマンが広がります。

ところがこうなると不思議なことがあります。
お金、つまり通貨が現にあったにも関わらず、どうして日本では年貢、つまり税の支払いが米であり、あるいはまた江戸時代の武士の給料も「俸禄」と呼ばれるくらいで米で支払われていたのか、ということです。

繰り返しになりますが、すくなくとも日本には、7世紀の中頃には貨幣があったわけです。
江戸時代には、みなさまよくご存知の慶長小判など大判小判がザックザク、神田明神下では銭形平次が寛永通宝をピシリと投げていた(ほんとかどうかは知りませんが)なんてシーンが出てきているわけです。
実際に通貨が使われていたのです。

弥次喜多道中では、やじさん、きたさんが、旅の途中で行き倒れたときの用心に、着物の襟に小判を縫いこんで旅をしていました。
小判一枚で、いまの6万円相当です。
そのお金で、万一何かあったら、オイラの遺体の処分をしてくだせえよ、というわけです。
通貨は庶民の間でもちゃんと使われていたのです。
にもかかわらず、給料は米だった・・・「どうして?」という素朴な疑問です。

飛鳥、奈良、平安の昔も同じです。
鎌倉時代も、室町時代も同じです。
我が国では、ずっと一貫して、税はお米で支払われ、官庁の給料もすべてお米での支払いです。
剣術道場に納める月謝も、寺子屋の月謝も、支払いは多くの場合、米でした。
すべてが全部、貨幣で支払われるようになるのは、明治以降のことです。
どうしてでしょうか。

理由があるのです。
通貨は「貯め込める」けれど、米は「貯め込めない」からです。
富を社会資本と考えたとき、通貨なら一握りの大金持ちが独占して貯めこむことができますが、米は貯めこんだら腐ってしまうのです。
だから、どんどん世の中に還元していかなければなりません。
しかも、お米は食べればなくなってしまいますから、次々に生産していかなければならないのです。
そしてお米が経済の中心である場合、お米は人々が生産しなければならないものだけに、働くことや、つくること、共同することを大切にする社会が自然と熟成されていくのです。

もちろんコメ経済には弊害もあります。
お米は財布にはいらないし、支払いもたいへんです。
支払いのためには、一時的に保管しなければなりませんが、古くなれば痛んでしまうし、虫害も起きます。

これに対し、貨幣は便利です。
なんたってお財布に入ります。
いまどきは電子化までされていて、ネット上で、決済することもできます。

ところが、貨幣を経済の中心にすると、実は思わぬ弊害が生まれるのです。
何かというと、通貨は「貯めこむことができる」ということです。
ひとりが何十両、何百両と貯めこむことができる。
信じられないことに、いまでは、ひとりで兆単位の年収がある人までいるくらいです。

つまり、貨幣経済のもとでは、誰かが何兆円も貯めこむことができてしまうのです。
これは電子マネー経済になると実はもっと顕著になります。
そしてこのことは、富の偏在を生みます。
富が偏在すれば、一部の大金持ちは贅沢三昧の暮らしをし、大多数を占める民衆は、残りの富をめぐって貨幣を奪い合うことになります。
もっと貨幣を得ようとすることが社会活動の中心となるわけです。
そしてこれは人々の欲望となり、その欲望と欲望が(富を得るために)常時衝突し、世の中が喧騒状態となります。
そしてその富を最も多く独占する者、つまりもっとも強欲で欲の深い者による富の独占が始まり、そうなるとますます富の偏在が進んでいきます。
中共でも、米国でも、南米でも、中東でも、いわゆるお金持ちは権力者であり、そこに多くの人がぶら下がり、誰もが富を得るために、騙し合い、奪い合い、叩き合う、そんな社会が育成されていきます。

人が一生を生きるには、1.5億円程度の費用がかかるといわれていますが、ひとりの人が数兆円の資産を持ったりもするわけです。
そして、何回人生を生きるのだ?と思うほど巨額のお金を持っていると、今度は、自分のお金を奪われるのではないかと神経過敏になり、カネを得るために人を殺し、カネを守るためにまた人を殺すようになります。
まさ守銭奴になるわけです。
言いかえれば、貨幣経済下における最高の人生の過ごし方は、守銭奴になること、お金の奴隷になること、になるわけです。

「金は天下のまわりもの」という言葉がありますが、実はこれは江戸時代の言葉です。
貨幣経済下では、カネは天下をまわりません。
どこかで吸い上げられ、奪い合って、誰かが独占していきます。
独占する者は、それを放出しませんから、人々の価値観が貨幣経済中心になると、カネは天下をまわらず、誰かの金庫に入って鍵をかけて保管され、そこに屈強なボディーガードが付くようになるわけです。

実は、古代の日本人には、そのことの良し悪しがはっきりと認識されていました。
だからこそ、コメ本位制が敷かれていました。
通貨は便利だから、日常用には使うけれど、経済の柱はあくまで「コメ」という体制を崩さなかったのです。

お米は重たいから、通貨とくらべたら、不便なものです。
それでもお米を経済、財政の中心に置いたのは、そこに意図があるからです。
銭は貯め込めるけれど、お米は貯め込めないからです。
お米は、貯めこんだら腐ります。
つまり、天下に流通させなければなりません。

天下人であろうが、そこいらのおっさんだろうが、一日に食べれる量は決まっています。
そして経済の中心が貨幣ではなく、お米なら、お米は貯めこんだら腐ってしまいますから、もしたくさんのお米を入手できたなら、それを世のため人のために還元していかなければなりません。
そういうことが普通に起きるのが、お米経済です。
つまり富が偏在しないのです。

ところが貨幣経済だと違います。
ひとりで何兆円も貯めこむ奴が出たかと思えば、明日の食い扶持さえない貧しい人がたくさんできてしまいます。
世界一の大金持ちというのは、実は世界一自分のカネが出て行くことにアレルギーを持った人達でもあります。

時代は進化しているといいますが、そういう点では、いまの日本よりも、昔の日本人の方がはるかに頭も良くて優れていたといえそうです。


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コメント

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お米を貨幣とした場合、溜め込むと価値が減っていく→マイルドなインフレが強制される、という点を強調されても良いかと思います。

それにしても、昔の人のレベルに早く回復しなければ。

こんばんわ。

貨幣経済について
現代版、米本位制として、公務員の給料の内、例えば400万円をこえた分の給料はプレミアム商品券で支給するといいと思います。期限が半年の分には+1割増、2年物には+0,2割増というふうにすると、いいと思います。

渡辺

国全体を良くしようというのではなく、自分だけが人より多く持ちたい裕福になりたいというものが今の日本を支配しているということですね。
私は現行の『民主主義』が日本の平和と安全を担保するとは思えません。一部のアジテーターがメディアを使って煽動できてしまう社会です。戦前戦中の様な全体主義に陥る危険を感じます。しかも真に日本に殉じようとする日本人は激減しています。日本人というアイデンティティーを持てない様刷り込まれた結果です。
私は国民としての主権を天皇陛下にお返ししたいと願っています。

w

No title
貨幣経済の弊害でしょうねぇ…
時限有効の紙幣なんか登場すると良いかも。
何年毎に紙幣変更して、前の紙幣は無効。
でも、世界経済の中にいる日本はもう無理かなとも思います。

名無しさん@ニュース2ch

No title
農家でも無いのですが
ことあるごとに年貢復活を唱えてきました。
米価変動で苦しむ農家は一定量米を納めれば済むほうが楽でしょうし
公務員の給料の一部を米で支給すれば米消費の安定化も図れる。
地方復権はこの位しないと無理だろ思います。

会社員(30)

No title
コメ経済は富が偏在しないのですね。知りませんでした。

beany

米本位制の別の側面
租税が米の場合、軽減税率も特別税も科すひつようがないのです。
飢饉になれば公の取り分は自動的に減り、豊作になれば公の取り分は自動的に増えます。
もちろん、溜め込めない穀物を通商の軸に据えたからこそ成り立つ自動調整機能です。
穀物を軸にしない場合には穀物を租税にしてうまくいくことはないように思います。

子無零 すこぴお

減価するお金
日銀券と併用して、納税に使える減価する電子マネーの公共通貨を考案されています。

http://bijp.net/studybi/article/150

ポッポ

No title
一人の人間が消費する主食の米の量はほぼ一定ですから、これを経済の中心に置くとき、富の偏在に差が少なくなることは、考え方として面白いと思いました。

日本で国内消費する米を生産できるようになったのは、昭和30年代でそれまでは不足していました。
そのために、食糧管理制度で米の価格が高騰しないように政府が米の価格を管理していたのですが、米の生産に余裕が出たとたんに生産調整で減反政策をやったり、その次は、ガット・ウルグアイ・ラウンドで米の輸入義務。おまけにTPPが締結されればさらに米の輸入を迫られます。
人口減少で必要量が減少するのに米を輸入して、そのための余剰対策が必要になるとは何とも贅沢な話です。

子供の頃、闇米を買うために親が苦労していたのを覚えていますし、就職のために親元を離れたとき、米穀通帳を持って行ったことを思い出します。(米穀通帳の必要なくなったのは、いつ頃だったのかは覚えていません。)



9月6日のフジTV「新報道2001」で稲田朋美衆議院議員は、中国共産党は盧溝橋で(日本と国民党の)両方に鉄砲を撃ってることは今や明らかになっていると述べられました。
彼女は自民党政調会長であるとともに弁護士ですから、根拠を持って発言されます(私もこのことはねずさんに教えられています。)。
この盧溝橋事件は、戦後、日本が中国を侵略したとする歴史観の根幹となるものです。

この事件を契機として、大山事件、廊坊事件、通州事件そして第二次上海事件から南京事件へと続くのですが、この盧溝橋事件発生の原因に対する認識が変われば、日本が侵略と言われる理由がなくなると言っても過言ではありません。
このことが、教科書に掲載されることを願います。
また、このことが国連で公表されれば、中共が常任理事国である理由がなくなります。(これまでは日本が侵略したとされましたが、これが中共が戦争を引き起こしたために、日本が戦争に引き込まれたのです。)

少なくとも日本が侵略国であるとの、誤った歴史認識は修正されるべきだと思います。

くすのきのこ

No title
こんにちは。
明治になって、農民は貨幣で税金を払う羽目になり難儀して子供を売る事に
なった者もいたとか・・農村における強者弱者の差がでたとか・・そういう
話もありますね。この事にも良し悪しがあるようで、勉強熱心にならざるを
得なかったかも・・古いやり方に安住できなくなり、新しい方向へと・・今
も日本の農家さんは勉強熱心だったりしますね。
旧ソ崩壊時も、彼らは皆ダーチャという菜園でジャガイモを作り、物々交換
などして凌いだという話です。いつでも自給自足できる体制。これがつよ~
い。焦りさえしなければ、ロシアは伸びると思わせる所以です。例えば、旧
ソのコミンテルンの手は、アメリカのユダヤを通じ日本の憲法草案まで伸び
ていたそうです。旧ソトップの大半はユダヤでしたしね。ww大国というの
は、焦らないで100年先を見据えられる国であるべきだな~と思うのです
よ。日本国憲法施行70年。いつまでしがみ付いているんだ~・・と欧米が
あきれていますが、それもまた日本というノンビリ組の生理のような気がし
ますよ。ですが、大抵の共産国が70年で崩れていくのと同様、日本国憲法
も崩れていくと思います。日本の事ですから、良いとこ取りしてね。という
のも、共産主義を作ったのはユダヤ(マルクスに資本論を方針付きで注文し、
援助していたのはユダヤ)であり、同じコミンテルンが日本国憲法を作った
からです。原本はワイマール憲法だそうで、廃れましたが・・ww。
また、共産主義の対である資本主義も改変せざるを得ない。利潤追求だけで
は循環しない。循環なくして生存はない。これは生体も社会も地球環境も、
多分・・宇宙環境もです。例えば人間は血が巡り、酸素交換と栄養と老廃物
の交換なしでは生きれない。植物は水を吸い上げ空気を湿らせる、太陽エネ
ルギーを一番効率的に利用し実をならせ、動物を養っていく・・大きな循環
の輪の一部。貨幣経済と米経済の両立が、手堅い国の基本だと思います。例
えばスイス。金融国家ですが、中小企業者が使う地域通貨WIRを持ってい
ます。これはカード決済もできる代物で、手堅く自国企業を保護?ww
国際通貨と地域通貨の併用。それにお米が使われてもいい。ロシアはジャガ
イモですね。苦境に立った国をよ~く見るのは勉強になります。最近ロシア
は、北方領土について日本に強く対してきているようですが、彼らにしてみ
れば、血で贖った領土なのです。法や金で決着をつけようと言う日本側の腰
が据わってない。今後100年位で戦わずして共同統治か、こちらへの返還
を狙う位のしたたかさを身につけるには、被害者意識を振り払ってクールに
交渉をし続ける事だと思いますよww明治は遠くになりにけり。心が縮みす
ぎかも・・平和ボケとは妥協ボケって事ですからwwそうですね・・欧州へ
のシリア難民の怒涛の流入・・コレは露がこ~っそり煽ってませんかwwシ
リアと交流ありで入り込んでますし・・EUが揺れて、おかげでウクライナ
方面への工作が捗るかも?・・難民は使い捨て・・庶民に対し冷淡なのは日
常な国々・・米中露。
米も大概ですよ。世界のリッチ層の大半が住んでおり、政治に影響しドル利
権のために庶民を戦場に送り込んでいるわけですから。で、わざわざ世界恐
慌を起こし、その片付けは日本にも・・プラザ合意もリーマンも・・カネを
追っては循環不全繰り返す・・まるでWW1後の国際連盟を提唱したが自ら
は入らず、国際紛争を日本に任せまくり自らは勝手をほざいてた時とお・ん・
な・じ。アメさんは当時からアメさんですww今回の難民騒動・・シリアや
アフリカに租借して新興産業地を造り、UN軍で防衛。いずれ高度自治都市
連合を作る方向へ・・という難民帰還事業の提言とか日本はしたらいい。ク
ルドは攻撃を受けながら自治区での石油採ってますが・・ここはあえて農業
で・・日本の海水淡水化技術や感慨技術が役立ちますしね。こんな夢はいか
が・・食糧危機に備えなくてはね。・・金持ちにはわからないかもね・・。

7C

石高
江戸時代には大名家の経済力を示す指標として、「石高」が使われました。これはその大名家が治める国の生産力を示します。ストックではなく、フローです。

単に金持ちの指標であれば総資産の方が確実に「今現在の金持ち度」を表せるわけですが、大名家の実力は金持ちかどうかで計られるのではありません。石高が示すのは、「軍事的動員力」です。いざというとき、どれだけの兵力を出せるか、逆にいうと反逆したらどれくらいの脅威になるかを示すものです。つまり、たくさん人を養える大名が偉いのです。

大阪市民

更新ありがとうございます。
米は溜め込めない。金(貨幣)は流通させないで溜め込める事ができて金持ちと貧乏人との極端な身分差別を生むとの事は成る程と想いました。支配階級の武士は米の禄高として給与が支給されているのもシラス国ならではの制度ですね。 天皇の大御宝である日本国民は極端に富める者も極端に貧しい者もあってはならない国柄なんだとよく分かりました。

昆布

貨幣経済の弊害を少しでも除くにはインフレターゲット政策
日本はバブルが破裂してから20年にわたるデフレ経済で苦しみました。
速水、福井、白川という日銀総裁の貨幣の発行量を減らすデフレ金融政策をおこないました。貨幣の量が減っていくため貨幣をめぐる争奪戦が展開し、金のかかる従業員のリストラや工場の海外移転等を経験してきました。昭和恐慌も井上準之助による金本位制への回帰による貨幣量の突然の縮小によって国民を途端の苦悩に追いやりました。その意味で僅かなインフレを恒常的に維持することが必要と考えます。次世代の党の掲げているインフレターゲット政策に賛成です。

junn

No title
吉田茂首席全権、講和条約に署名(9/8)




■きょうの出来事
アメリカ合衆国をはじめとする連合国諸国と日本国とが、第二次世界大戦の戦争状態を終結させるための講和条約に署名。正式名称は「日本国との平和条約 Treaty of Peace with Japan 」、
全七章二七条で構成される。効力発生(発効)は翌1952年4月28日。


(1951年=昭和26年)

『“押しつけ憲法”破棄の好機を逸した日本』


憲法九条について、「日本を亡国へと自壊せしめていくことを狙って米国が押しつけた」というのは、反米運動からの牽強付会的な謬説である。気をつけた方がよい。占領下の敗戦国は主権を喪失しているのであるから、それは物理的国防(軍隊)も、情報的国防(諜報・防諜の機関)も占領軍が代行する以上、第九条のような契約(協定)は締結されておかしくない。GHQが、この第九条とともに、日本が占領期間中は諜報・防諜機関をもてぬよう刑法第八十三~六条の削除も命じたとの話は事実かどうかはっきりしないが、もしそうなら主権喪失に伴う占領側の当然の措置といいうる。



 実際に、一九五〇年の年頭、まだ朝鮮戦争が始まる前、ダレス特使が来日し、米国は、主権回復と同時に第九条の改正をするよう吉田茂総理に迫っている。これを拒否し、日本を占領下と同じ憲法でよいとしたのは、日本側(吉田)であって、米国ではない。憲法第九条は、一九五二年四月二十八日以降も、日本の自由意思において、積極的に堅持されたのである。


 第九条が一九五二年以降にも存在し続けたことに関する、すべての責任は日本のみにある。この点で米国を責めるとすれば、自我が未発達の幼児的な精神の未熟からくる責任転嫁である。現に、日本は主権回復に欠くことのできない、防諜という国家安全保障の要である刑法八三~六条の復活すら忘れたのである。日本こそが、一九五二年四月の主権回復で、誰にも干渉されず”半国家”の道を選択したのである。


ダレスがわざわざ来日しての憲法九条改正要求を吉田茂が一九五〇年の年頭に蹴ったのは、共産主義やソ連から日本を守るために、日本人からなる日本の軍隊を信用できず米国を信用したからである。だがそれは、必ずしも間違ってはいない。二〇〇二年十月に北朝鮮の拉致が公的に確定した後ですら、日本人被害者の奪還で日本の外務省より米国政府のほうが信用できると考えた日本人は多数派ではなかったか。これと同じである。



中川八洋『国民の憲法改正』ビジネス社

-

No title
確かにその通りかも知れません。
米本位制の流通面の利点について、今まで全く気づきませんでした。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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