古事記予告編として



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天孫降臨
20151108 天孫降臨


倭塾にお越しの皆様、およびねずさんのメルマガをご購読の方には、すでにだいぶ前にお知らせ済なのですが、今度、古事記の解読本を出版します。
古典に関しては、先般の百人一首に継ぐ、第二弾になります。

その中から、ちょっとだけ、サワリをご紹介します。
まえがきの一部です。

 *

古事記には序文があり、日本書紀には序文がありません。そして古事記の序文には、太安万侶に古事記編纂を命じた天武天皇の問題意識として、歴史は「邦家之経緯、王化之鴻基焉」であると書かれています。

「邦家の経緯」とは、我が国の存立の経緯のことです。
「王化の鴻基」とは、国家の基本のことです。

そして、我が国の存立の経緯であり、国家の基本ということは、古事記は「国家組織の要素」であるということです。
これが古事記編纂にあたっての天武天皇の問題意識です。
そして古事記は、その求めに対する太安万侶の回答です。
つまり古事記は最初から「国家組織の要素であり、天皇の指導の基本書」として書かれているのです。


いまの小中学校の教科書に、たいてい序文はありません。
同様に日本書紀にも序文はありません。
なぜ序文がないのかといえば、日本書紀は当時の小中学校の教科書とすることを目的に書かれたものであり、実際、そのように用いられた書であるからです。

企業研修に、新入社員研修、ロアマネジメント研修、ミドルマネジメント研修、トップレベルマネジメント研修があるように、同じ題材であっても、それぞれの段階に応じて、研修の切り口や教育すべき内容の深さは異なります。
飛鳥、奈良、平安にかけて、貴族の子たちは、朝廷に出仕し、そこでハイレベルな教育を受けたのですが、そこで使われた教科書は、古事記ではなく日本書紀です。

いまでいう小学校の低学年のうちは、素読だけです。
なにせ物覚えの良い時期です。素読を進めると、どんどん暗記してくれる。
それが小学校の中学年になると、いよいよ解釈がはじまります。
漢文で書いてあるけれど、それがどのような物語なのかを教わります。
最初のうちは神話です。
そこには、ウサギさんとお話する大国主神さんや、海の宮殿で美しいお姫様と結婚する若者の物語などが出てきます。
なかには頭が八つある大蛇も出てきて、これを酒に酔わせてやっつけるという面白い物語も出てきます。
子供たちは興味津々、夢中になって学習してくれます。
小学校の高学年になると、歴代天皇記がはじまります。
各時代の天皇が、どのようにして国を運営してきたか。これもまた実に活き活きとした物語として子供たちの胸に染みこむお話となっています。

日本書紀は、こうした物語を、すべて美しい漢文で記しています。
日本書紀が書かれた時代は、日本は朝鮮半島で百済の救済を巡って、大きな戦い(白村江の戦い)を行ったすぐあとの時代です。
百済を滅ぼした新羅だけなら、たいした敵にはならない。
けれど、新羅は、滅ぼされてはかなわないと、支那にある強大な軍事大国である唐と結び、唐から大軍を派遣してもらって日本と対峙しました。

結果、白村江の戦いは、18万対5万の戦いとなりました。
日本は苦戦し、ついに白村江の戦いで、大きな敗北を喫しました。
兵の強さなら、数の違いがあっても、明らかに日本に歩がありました。
けれど、単一言語で統制のとれた唐軍に対し、日本は日本語であっても方言が強くて互いに言葉が通じない豪族連合軍でした。
しかも使っている文字は、各豪族ごとに異なる神代文字が使われ、情報伝達、意思伝達に疎漏が生じました。

敗れた日本は、朝鮮半島における権益を放棄し、国境を朝鮮半島南部から、対馬と朝鮮半島の間の海上へと後退させました。
ところが、唐の都に連行された日本人捕虜から、再び唐が、今度は「日本本土に攻め込む計画をしている」という決死の情報がもたらされたのです。

唐の大軍が日本本土に上陸し、本土決戦となったら、とんでもない事態になります。
ですからこの時代、日本にとって国防はたいへん重要な意味を持つものでした。また、白村江の敗戦の経験から、日本は統制のとれた言語、統一性のある文字を使用しなければならないという危機状況に直面しました。
緊急にそれを進めないと、日本が失くなる危険があったのです。

言葉が通じないという問題が、方言の問題だけなら、全国の豪族の跡継ぎの子を都で預かり、共同生活、共同教育を施すことによって、いまでいう標準語、同じ言葉を共用することができるようになります。
けれど文字は、各豪族ごとに誇りを持った歴史ある異なる文字を使用しています。
そのなかでどの豪族の文字を用いるかを調整することは困難です。
それぞれの豪族ごとに歴史があるのです。つまり、どの神代文字を採用するかを議論していたら、永遠に統一文字を日本は使えないのです。これは軍事的弱点です。

「ならば、敵の国の言語を、共通語にしてしまおう。」
これが漢文を、統一言語としての教育に取り入れた理由です。
こうすることにより、日本人は敵の言語を解読できます。
けれど敵には日本語がわからない。情報面で日本は有利に立つことができます。
しかも、日本全国の共通の敵である唐の言葉を学ぶと決めることは、どの豪族のどの神代文字を標準語にするかよりも、はるかに調整が容易です。
しかも漢字は、当時流行しはじめた仏教の経典でも使われています。普及が容易なのです。

だから日本書紀は漢文で編纂しました。
ただし、レ点などを入れ、大和言葉で読み下せるように、工夫が施されました。
そうすることで、日本書紀を通じて、漢文と大和言葉の両方をいっぺんに学ぶことができるように工夫されたのです。

日本書紀編纂運動は、いまでいう国定教科書つくりの運動です。
日本書紀は、続日本紀によれば、天武天皇によってその編纂が命ぜられたとあります。
出発点は古事記と同じなのです。

天武天皇がその詔を出したのが天武天皇10(681)年です。
日本書紀が完成したのが養老4(721)年です。
ですから日本書紀は、まる40年かけて出来上がったと、普通は解されています。

ところがこれは「続日本紀」の養老4年5月の項目に、
「先是一品舎人親王奉勅修日本紀 至是功成奏上」
(さきごろよりこの一品、舍人親王が天皇の奉勅によりて日本紀が成ったことを奏上した)とあることを言っているだけで、いまの学会においても、日本書紀の正確な成立年代というのは、現実のところ「よくわかっていない」といのが実情です。

当然のことです。
日本書紀は教科書なのだから、その後も改良に改良が重ねられ、書の名前も、日本書紀になったり、日本紀になったりしているのです。
「新らしい歴史教科書」が、「新版・新しい歴史教科書」になったり「新しい日本史」になったりするようなものです。

一方古事記は、同じく天武天皇の詔(681年)に始まり、和銅5(712)年には完成して元明天皇に献上されています。
完成まで31年です。たいへんな苦労があったものと拝察されます。

注意すべき点は、古事記が日本書紀よりも10年早く、完成に至っているということです。
逆にいえば日本書紀は、古事記より編纂にプラス10年、余計に時間がかかっているということです。

日本書紀が10年余計にかかった理由は、古事記に書かれた内容を、いかにして教育プログラムにしていくかが議論され、子供達に興味をもってもらうためには、どのようにしたら良いか、外国人にも読める漢文にするにあたり、何を伏せ、何を強調するかが深く検討されたためなのだとすれば、納得できます。

子供に教えるということと、大人の管理職が学ぶことでは、その意図も重さも異なります。
ですから古事記と日本書紀では、神様や人名に使われている漢字からして異なります。
たとえば日本書紀では神武天皇ですが、古事記では神倭伊波礼毘古天皇です。

古事記が先に書かれていたということは、日本書紀の編纂者たちは、神倭伊波礼毘古天皇という表記をちゃんと知った上で、あえて日本書紀には神武天皇と書いているわけです。
本書ではその理由も明確にしています。

冒頭に書きましたように、古事記は天武天皇の問題意識である「国家組織の要素であり、天皇の指導の基本書」として書かれたものです。
そうであれば、古事記はそのまま子供たちに公開文書として教えるわけにはいきません。
なぜなら子供たちの教科書になるということは、外国にもその書は公開されるということだからです。

もっと言えば、国家緊急権、非常大権を持つ天皇指導の根幹がわかるということは、日本が緊急時において、どのような意思決定をするかが、あらかじめ他国に読めてしまいかねないのです。
これは公開するわけにはいきません。
むしろトップシークレットの国家機密文書扱いになるのが当然です。
だからこそ、古事記は、天皇の側近の一部の国の高官にのみ、どこまでも大臣候補者研修資料として用いられたし、そうであれば、古事記とは別に、子供向けの教科書として、あとから日本書紀の編纂を行う必要があったのです。
そしてこのことが、同じ物語であっても、古事記と日本書紀の記述が微妙に違う理由となっています。



以上は、ほんの一部です。
けれど、上記の趣旨に添って、あらためて原文から解き明かした古事記は、おそらく私達がこれまでに持っていた古事記のイメージを180度反転させるインパクトを持ったものになっています。

乞うご期待です。



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コメント

ネコ太郎

楽しみにしています
古事記は訳本を一通り読んだだけでまともに原文に当たったことはありません。現在解釈本はほとんど出ていない状況です。
小名木先生の驚きの解釈楽しみにしています。
小生としてはホツマツタヱなどヲシテ文献が記紀以前の正統文献と信じておりますが。

白村江の戦いがいかに我が国に影響を与えたか分かりました。
当時はまさに大東亜戦争に敗戦してアメリカ文化が流入した時に匹敵する国難だったことが分かりました。

花田良春

No title
これから日本神話の勉強に取り掛かろうとしていたところです。

今、日本語は乱れに乱れています。どこか、日本を侵害しようとする、外国の勢力の力が入っているものと推察しますが、日本人は正しい日本語を受け継いでこそ、真の日本人でありえます。言霊あふれる正しいい日本語の基盤は、古事記にあると思います。心から、期待しています。

渡辺

心待ちにしております。あとは『ねずさん本』4巻もお願いしますね。

Supermum

No title
毎日有難うございます。
お聞きしたいことがあります。
それならなぜ、唐字ではなく、
漢字というのでしょうか?

ケイシ

楽しみです!
百人一首に続いて、日本最古の聖典であり神話である古事記のご解説本を出される事は素晴らしい事です。楽しみにしています。ねず先生、ありがとう御座います。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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