神話は民族のアイデンティティ

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20160206 古事記


古事記の最初の方に、イザナキ、イザナミのお話があります。
二柱の神様は、天の神様から天の沼矛(あめのぬぼこ)を授かって、オノコロ島を作るのですが、ここは原文では、次のように書かれています。

 於是天神、諸命以、
 詔伊邪那岐命・伊邪那美命二柱神
「修理固成是多陀用幣流之国」
 賜天沼矛而言依賜也

読み下しますと、次のようになります。
「ここにおいて天の神様は、諸々の命もちて、
 伊耶那岐命、伊耶那美命の二柱の神に
 この漂える国をつくり固めなせと詔(の)り、
 天の沼矛(あめのぬぼこ)をことよさせたもうなり」

現代語に訳すと、
天の神様は、様々な命令をもって伊耶那岐命、伊耶那美命の二柱の神に「この漂っている国を修理(つくり)固めなさい」と述べられて「天の沼矛(あめのぬぼこ)」を授けました。
といった感じになります。


ここに「修理固成」という語が出てきます。
読みは「しゅうりこせい」ではなく、「つくりかためなせ」です。
他に「をさめかためなせ」と読ませる本もあります。
古事記を代表する有名な言葉のひとつです。

おもしろいのは「つくり」や「をさめ」に「修理」という漢字を充てていることです。
古事記は、序文で、
1 漢字の持つ意味と上古の言葉の意味が一致する場合は漢字で。
2 漢字の持つ意味と上古の言葉の意味が一致しない場合は漢字を音として用いている
と書いています。

古事記にある「修理」が「つくり」と読むのが正しいのか「をさめ」と読むのが正しいのかはわかりませんが、いずれにせよ上古の大和言葉に「つくり」と「をさめる」という言葉があり、そのいずれか、もしくはその両方の意味が漢語の「修理」と一致するから、この字が充てられたというわけです。

「修理」は「いまあるものに手を加えてつくろい直すこと」を意味する漢語です。
ということは上古の人々にとって、大和言葉の「つくる」ことと「をさめる」ことは、何もないところからいきなり何かを生み出すのではなく、すでにあるものを加工したり変形したりすることが「つくる」ことであり、それらを上手にきちんと使うことが「をさめる」ことだという認識があった、ということであろうかと思います。

20151208 倭塾・動画配信サービス2


そもそも、何もないところから何かを生み出すのは神様の仕事です。
人間の仕事ではありません。
私たちは神様がおつくりになった様々なものを、加工して使わせていただいているだけです。
そうである以上、もともとはすべては神々がお生みになったものを使わせていただいているのですから・・・別な言い方をすれば神様そのものを生活に便利なように変形して活用させていただいているわけです。
これはとてもありがたいことですから、手を加えて修理しながら、どこまでも大切に使わなければならないという姿勢が自然とそこに備わります。

だからこそ「つくり」も「をさめ」も同じ漢字に訓として当てられているわけです。
しかもそれを「固成(かためなせ)」といっています。
「固成」とは、より使いやすい完成度の高いものにしていくということです。

最近では日本でも、なんでも「使い捨て」のがあたりまえになってきています。
しかしほんの百年前までの日本では、服装ひとつをとってみても、みんな和服でした。

洋服は体のサイズが変われば処分するしかなくなりますが、和服は糸をほぐせばもとの反物に戻ります。
しかもフリーサイズです。
人の体は、一生の内に大きくなったり、太ったり、しぼんだりしますが、都度、修理しながらいつまでも着られるように工夫されているのが和服です。

しかも、古くなって擦り切れてボロボロになって、もう反物に戻しても、どうにもならない状態になれば、裁断して手ぬぐいや雑巾に用いました。
それもまたボロボロになれば、もっと細かく裁断して水に漬けて、布を紙にしました。
そうしてできた丈夫な紙は、障子紙やフスマ紙になりました。

その障子やフスマ紙も老朽化したら、また水で溶いて、今度は薄い紙にして、習字などの練習紙に用いました。
その紙もまた真っ黒になったら、これをさらに水で溶いてトイレなどで使うチリ紙にしました。
ですからこれは再生紙だったので、たいていは黒っぽい紙でした。
そして紙は汚物と一緒に肥溜めで発酵させ、畑の肥料に使いました。
その肥料は、地味を肥やし絹糸を取るカイコの餌の桑になったり、麻になったりしました。

一枚の布が、反物に仕立てられてから最後にチリ紙になるまでおよそ三百年です。
そして絹や麻の肥料となって、そこからまた復活・再生していたのです。

このようにあらゆるものがリサイクルできるように作られてきたのは、日本人が「修理固成」の民族であり、あらゆるものは神々からの預かりものと考え、それを加工して使わせていただいているのだから、最後の最後まで感謝の気持ちをもってどこまでも大切につかわせていただかなければならないいう考え方が、日本人の常識だったからです。

そしてその常識の根拠を、私たちは千三百年前に書かれた古事記に見ることができるわけです。
しかもこれは神話ですから、古事記が書かれたのよりも、もっとはるかに古い上古の時代からある常識であるということがわかります。
つまり、何千年も(もしかすると何万年もの)昔から、私たちの祖先はそうやってあらゆるものに感謝の気持ちをもって暮らしてきたのです。

これはグーグル・アースなどでご欄いただければわかりますが、4〜5千年前に古代文明が栄えた世界の地域は、いまではどこもかしこもすっかり砂漠化しています。
その砂漠も、もともとは人が住める緑豊かな肥沃な大地です。
みどり豊かな肥沃な大地だから、そこで文明が発達できたのです。

いまでは、西洋の古代文明の姿を描いた映画などでは、あたかも砂漠に人が城塞を築いて住んでいたかのように描かれています。
しかし周囲が砂漠で農作物ができなければ、そこに大勢の人が住んで暮らすことはできません。
なぜなら人は、食べなければ生きていけないからです。

ところが食べるためには、人は火を使います。
鉄器や土器を作るためにも火を使う。
そのために木を伐採します。
木は燃やすのは一瞬ですが、生育するまでには植林して大事に育てても最短70年、自然放置なら林ができるまでに千年以上かかります。
このタイムラグが、結果として古代文明発祥の地に砂漠化をもたらしています。

ところが日本は、一万六千五百年前の土器が発見され、三万年前の世界最古の磨製石器が発見されているなど、古い時代からずっと文明が続いています。
にもかかわらず、いまでも豊富な緑に包まれています。
なぜかといえば、森の木を伐採すれば、木にも山にも感謝して、植林をしてきたからです。
なぜそうしてきたのかといえば、「修理固成」で、使わせていただいているのだという感謝の心が常識として定着していたからです。

ところがいまの日本はどうでしょう。
森や林はどんどん狭くなり、宅地が広がり、農地さえも草ボウボウです。
しかもその森は、人の手さえもはいらず放置され、下草も狩られず荒れ放題です。

一方宅地に住む住民たちには、もとからある国民感情がくすぐられて、ゴミの分別回収や、リサイクルへの協力が呼びかけられています。
どこのご家庭でもこれにしっかりと協力し、ゴミは細かく分別して、これは生ごみ、これは資源ごみ、これはペット、これは缶などと、細かく分けてゴミ出しをしています。

ところがなるほど生ごみは焼却施設で燃やされているけれど、たとえばある政令指定都市のでは、燃えないごみの処分は、有名な地域の暴力団が取り仕切っています。
そして市民からは見えにくい裏山に、そのゴミがトン袋に入れられて野ざらしで放置されています。
何十年か経てば、トン袋も劣化し、中のゴミの毒素が地面にしみ出します。
それが山奥なら、そこから湧く水は毒水になります。
ウチでは、そうした山から湧く水でできた小川の水で遊んだり、水を呑んだりしていた中型犬が、数ヶ月でガンになり、半年間病んで、死にました。

日本は、国土の大半が山野部であり、ほとんどの人々は極めて狭い平野部でひしめきあって暮らしています。
それが国土への感謝を忘れ、修理固成の気持ちを忘れ、ひとりひとりがわがままや独善に走り、モノでもヒトでもなんでも使い捨てにし、それがあたかも古い衣を脱ぎ捨てた文明の進化であるかのように勘違いする。
日本人も落ちたものです。

いまのままの状態が続けば、あと100年で日本列島では、地下水が劣化し汚染され、200年後には国中がゴミ屋敷のようになってしまうという試算もあるそうです。
日本人が日本人としての自覚と、日本人としてのアイデンティティを取り戻さないと、本当にたいへんなことになってしまいます。

神話は民族のアイデンティティの源です。
その意味するものを、私たちは、もういちど丁寧に掘り起こしてみる必要があるのではないかと思います。

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コメント

ネコ太郎

日本人の教典
世界一古く持続した文明を持つ日本のことをもっと知りたいと思っている方は多いと思います。できれば教典になるような書物が必要と思います。
小名木先生の古事記解説本を楽しみにしています。

小生からお勧めの本があります。
「はじめてのホツマツタヱ 天の巻」今村聰夫著

ホツマツタヱ解説本の決定版とも言える訳本です。
宇宙の始まりから日本の風習の始まり皇室の始まり、偉大な天照大神さまのことなどが記紀とはまったく別の角度から書いてあります。
常に正しい道が説かれていてこれこそ日本人の教典としてお勧めします。
これを読めばホツマツタヱが真書か江戸時代のものかなどどうでも良くなります。

one

No title
ワンちゃん、お気の毒でしたね。やくざが燃えないごみを取り仕切っっている地域のお話、初めて聞きました。
私、先日、たまたま通りすがり、新橋の列車の博物館に行きました。
駅弁の最初は、今のようなプラ製ではなく、陶器だったそうです。それを一回限りの使用で廃棄していたというので、日本の意外な側面に驚いた次第です。
ごく一部の人でしょうが、列車の窓から弁当のカラをブン投げる輩もいて、注意を促す記述も展示されていました。尤も、土に還るものではありますので、その意味では、空き缶をブン投げるより、マシだとも思いますが。

omitu

自然の全てに感謝するという気持ちは、 昔ながらの北海道の民話では、主役が必ずしも人間ではない お話しにも表れていると思います。イヨマンテ、熊の神送りは、全ての生き物は神様の生まれ変わりなのだから皆で神を天に送るそして又、生まれ変わる。
天孫降臨のお話も稲穂を受け取っていますよね。穀物への感謝ですよね。そして次々に生まれ変わる。
民族が平和に続いていく事の中には、自然に感謝し、自然と共に生きる大切さがどちらの神話にもしたためられています。

大切なメッセージが込められている「神話」を広く子供達にも伝えていきたいですね。

悲しい爺

わかりにくい日本
冬の年代を迎えてやっと、狂気の如く先祖の知恵を知りたいと長く模索をしています・・・
智弱な者の空回りで、如何ともしがたく、乱読に乱読を重ね、「ねずさんのブログ」を始めあらゆるブログを拝見して、凡そ自分なりの形が見えてきたのですが・・・
自分に好ましいものしか受け入れない錯誤もあろうかと、好ましからざる意見も散見しています。自分なりに反駁できるものは解決が付くのですが、反論する知識が無いことについては、今だ悩ましい限りです・・・
自らの心の中の断片(先祖の知識や感覚と思えるもの)に素直に感じるものを、『解』とする以外に方法が無く悲しい限りです・・・

最近、岩波の「日本歴史」原始・古代1を読みました。2013年と新しい書物なので、少しでも見解が変わっているかと興味がわき・・・しかし相変わらず『記紀』を否定しています。分かり難い些末な記述が多く、学者は明快に根拠を示さない。智弱な者の世迷言ですが・・・
環境・DNA・考古資料・年代測定の進化・等々総合した書物が必要ではないでしょうか。死ぬまでにスッキリしたい・・・

えっちゃん

No title
今日もありがとうございます。

環境について、勉強しているとき、
「大江戸リサイクル事情」石川英輔著を読みました。
江戸庶民の合理的でムダのない暮らしの知恵を知り、江戸時代への認識が変わりました。
さらに、このブログで、さらに江戸時代のことを教えていただき、
循環型の生活をしていく必要性も感じました。

まずは、足元からと、心がけています。

山への不法投棄を政令指定都市でしているのは、信じられません。。小学校では、社会で、清掃工場のことを扱い、見学したり、自分たちでできる環境にやさしい行動を学んでいるのですけど、、その市はどうなんでしょうね。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう) HN:ねず

Author:小名木善行(おなぎぜんこう) HN:ねず
連絡先: nezu3344@gmail.com
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんのひとりごと」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「奇跡の将軍樋口季一郎」、「古事記から読み解く経営の真髄」などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。

日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
(著書)

『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』

『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!和と結いの心と対等意識』

『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!日本はなぜ戦ったのか』

『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』日本図書館協会推薦

『ねずさんと語る古事記 壱〜序文、創生の神々、伊耶那岐と伊耶那美』
『ねずさんと語る古事記・弐〜天照大御神と須佐之男命、八俣遠呂智、大国主神』
『誰も言わない ねずさんの世界一誇れる国 日本』
最新刊
『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』
近日発売
『日本書紀』(タイトル未定)

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