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孟子の『告子下・第十五』にある言葉です。
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故に天の将に大任を是の人に降さんとするや 故天将降大任於是人也
必ず先づその心志(しんし)を苦しめ 必先苦其心志
その筋骨を労し 労其筋骨
その体膚(たいひ)を餓やし 餓其体膚
その身が行ところを空乏せしめ 空乏其身
行ひ為すところを払乱せしむ 行仏乱其所爲所
心を動かし性を忍ぶを以って 以動心忍性
その能はざる所を曽益せしむる所以なり 曽増其所不能
人は恒に過ち、しかる後に能く改む 人恒過然後能改
心に困しみ、慮に衡(はか)りて 困於心衡於慮
しかる後に作(おこ)る 而後作
色に徴(あら)はし、声に発し 徴於色発於声
しかる後に喩(さと)る。 而後喩
入りては則ち法家、払士(ひっし)無く 入則無法家仏士
出でては則ち敵国、外患無くば 出則無敵国外患者
国は恒(つひ)に亡ぶ。 國恒亡
然る後に憂患に生き、 然後知生於憂患
安楽に死するを知るなり 而死於安樂也
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意訳すると次のようになります。
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神々が、その人に何らかの使命を与えようとするときは
必ず、先にその人を苦しめます。
どのように苦しめるかというと、
その人の心を苦しめ
志が挫折するような事態を起こし
過剰な肉体労働を強い
体力を使い果たさせ
餓えに苦しませ
その身を極貧にまで追い落し
その人の行おうとすることに
ことごとく反する事態を招き起こします。
神々はなぜそのようなことをするのでしょう。
それは、
その人の心を鍛え
その人を忍耐強くし
できないことを
できるようにさせるためです。
人は誰でも過ちをおかします。
過ちを犯す自分を自覚して、
それを改めることで人は成長します。
千々に乱れる心
激高し、いたたまれない感情
それが、弱さです。
その自分の弱さを自覚して
はじめて人は成長できる。
神々は、その人の苦悶が顔にまで出て
思わず悲痛な叫び声をあげざるをえないところまで
徹底してその人を追い詰めます。
それを乗り越えたとき
はじめて天は
その人に使命を与えるのです。
国家も同じです。
内に厳しく法を守る臣下がなく
身を以て諌言する賢臣もなく
外に強大な敵国がなく
脅かしてくる外患さえもないならば
その国はやがて滅んでしまいます。
人が生きるということは、
悩み苦しむイバラの道です。
死は安楽の道でしかないのです。
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孟子は紀元前300年頃のChinaの戦国時代の人です。
「孔孟の教え」というくらいで、孔子と並んで高い評価を与えられています。
ところがこの教えと同じ教えが、実は、まるごと『古事記』にあります。
それが大国主神神話です。
大国主神は、まだ大穴牟遅(おおなむち)と呼ばれた時代、八十神(やそがみ)たちから酷いイジメを受けました。
あまりの執拗さに、彼は須佐之男命のいる根の堅州国に逃げて行きます。
そこで大穴牟遅は須佐之男命(すさのおのみこと)の娘の須勢理毘売(すせりひめ)と出会います。
このとき須佐之男命から、
「おまえは葦原色許男命(あしはらのしこおのみこと)だ!」といわれます。
どういう意味かというと、これは「色を許した」、つまり娘の須勢理毘売との結婚を許した、ということが名前で明らかにされているわけです。
ところがその娘の旦那に、須佐之男命は、蛇の部屋、ムカデの部屋、蜂の部屋などに押しこめ、またある日は野原の真ん中に行かせて周囲から火を放つなど、手厳しい試練を与えます。
蛇が象徴しているのは、手も足も出ない苦難です。
ムカデが象徴しているのは、たくさんの足、つまり葛藤です。
蜂が象徴しているのは、心と体の辛酸です。
そして紅蓮の炎が象徴しているのは、今生の業火です。
そして、ひとりでは乗り越えられない苦難、葛藤、辛酸を乗り越えるときに必要なことは、愛の力であることが須勢理毘売の活躍によって描かれています。
さらに野火の中では小さなネズミによって、どんなに辛い業火の中にあっても、そこに小さな活路を見出しながら生きている民の姿が描かれます。
これを守るのが、守護者としての国の主のすべきことであることが明らかにされています。
そしてこれらすべてを乗り越えたとき、須佐之男命は
「お前は大国主神となれ。
また宇都志国玉(うつしくにたまの)神となれ。
そして我が女(むすめ)須勢理毘売を正妻にして
出雲国の宇迦能郷の山の本で、
立派な宮殿を築いて住むがよい。
この奴(やっこ)め!」
と深い愛情を込めた言葉を大国主神に贈っているのです。
このことは、上にある孟子の有名な言葉と、実は同じことを述べています。
大穴牟遅は、菟(と)を助けて治療をするという、もともと、やさしさと知恵を持つ者でした。
けれど、やさしさと知恵だけでは、理不尽な暴力の前に太刀打ちできないわけです。
だからこそ試練を受けます。
その試練を乗り越える力は、愛によって得られると説かれています。
そしてその愛は、人から受ける愛だけでなく、ネズミに代表される小さな民草が、業火の中でもたくましく生きていること、その民草への愛を知ることによって、はじめて大穴牟遅は、大いなる国の主へと成長しています。
これはつまり、愛される自分になることと、小さな民草を守れる自分になること、この二つが揃って試練は成長へとつながっていく、ということが述べられているのだと思います。


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コメント
junn
http://realjapanese.blog.fc2.com/blog-entry-866.html
2016/03/28 URL 編集
桐一葉
私事で恐縮ですが、会社の同僚が仕事中交通事故に遭いまして、各所骨折他で今まで赤十字病院に入院し、来月よりリハビリ病院に転院することになりました。
若いながら仕事熱心で責任感もあり、人手不足の折大切なメンバーが休んでしまうのは、会社にとって非常に痛手ですし、ご本人も忸怩たる思いで過ごしていると時折の電話連絡での声に察しています。下のお子さんがこの春小学校に入学ですし、きっと式にも出席したかっだろうなと心から同情致す日々です。
連絡の合間にさりげない言葉で小さく励ましておりますが、今度今回の先生の記事を丸ごと送って差し上げようと思いました。まだ寝たきりなので、一年位かかるかな、と上司は申しますから、長い日々の支えになればと祈っています。
長々私事で失礼いたしました。ありがとうございました。
2016/03/28 URL 編集
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我慢にも限度ってものがあります
小名木さんが受けた試練がどういったものだったか、そこは、敢えて問いませんが、さすがに、いい加減にしろと言いたい人も(小名木さんへでは無いですよ)いるんですよ
まあ、ここで言ってるのは国家論だと思うので、これ以上言いませんけどね
2016/03/28 URL 編集
ミール
2016/03/28 URL 編集
junn
http://ameblo.jp/kororin5556/theme-10026883965.html
2016/03/28 URL 編集