たいへんに濃い文章でが、実はこの文は「特高(とっこう)」と呼ばれた、特別高等警察官の職務手帳である「特高必携」の冒頭序文に書かれているものです。
戦前の「特高警察」といえば、思想取締警察として有名で、苛酷な拷問や尋問を行った恐怖の機構組織と、いまどきの多くの方が思っておいでです。
特別高等警察は、一般の警察機構が都道府県単位に独立した警察組織と異なり、
内務省の直接指揮下に置かれ、全国規模で思想の取締を行っていました。
そのように聞くと、なるほど特高警察は、怖い組織と思えてしまいます。
けれど、そこは警察なのです。
悪人から怖がられる存在でなければ、その勤めは果たせません。
特高警察がおかれたのは、大正12(1923)年です。
この時期になぜそういう機構がおかれたのかは、時代を考えるとわかります。
その前年の大正11(1922)年に、
「日本共産党」が結成されたのです。
大正6年(1917)にはじまる共産主義のロシア革命で、ロシア皇帝のニコライ二世を筆頭に、ロマノフ王朝の王族、貴族たちがことごとく殺されました。
さらにその余波は、大正9年(1920)には、日本人まで被害に巻き込んでいます。
それがロシアのニコライエフスクで起きた「尼港事件」です。
この事件では、ソ連の共産主義者たちによって、日本人居留民約700人が全員虐殺されています。
大正11年(1922)になりますと、ソ連が世界の共産化を目指してコミンテルン組織をつくり、そのコミンテルンは、世界から君主を廃絶すること、を活動の大目標に掲げています。
ソ連はとうの昔に国家が崩壊して失くなり、共産主義のいかがわしさも世界中の知れ渡るところとなったのですが、不思議な事に日本では、日本が民主主義の国でありながら、いまだに共産主義を標榜し、天皇廃絶を活動目標に掲げている不思議な団体があります。
彼らは日本に住んでいますが、日本語がよくわからないのかもしれません。
共産主義の恐ろしさは、どれだけの人の命を奪っても、「革命のため」であれば、すべてそれが正当化されるという、極めて誤った独善性にあります。
思想信条は自由ですし、いろいろな考え方を持つ人が、いろいろな切り口で経綸を行い、すこでもみんながよく慣れるように研鑽するなら、それは大歓迎です。
けれど、あらゆる事物や現象を、ことごとく対立ととらえ、敵となったものに対しては、どこまでも容赦ない攻撃を加えるという姿勢は、人としてあるまじき行動です。
そのような思想的傾向や、発言、行動は、国家として治安維持のために「取り締まらない方がどうかしています」。
大正時代の終わり頃、こうした事情から、世界中で共産主義者に対する逮捕や投獄がさかんに行われるようになりました。
ちなみにこの時代、Chinaでは、「共産主義者かもしれない」というだけで、銃殺の対象でした。
その共産党が、日本でも結成されたわけです。
当然、これを取り締まるための警察機構が必要になりました。
そしてまず大正14年(1925)に「治安維持法」が制定されました。
これにより特高警察の取締に法的根拠が明示されました。
そして昭和初期にあった無政府主義者や、朝鮮独立運動と称するテロ組織、あるいは似非宗教などの反政府的団体も、取締の対象に加えられました。
特高警察は、おかしな思想に染まったと思われる人に警告を与え、必要に応じて逮捕し、ひとりひとりを誠実に説諭しました。
戦後、特高によって逮捕投獄された政治犯の人たちが、GHQの解放政策によって、牢獄からゾロゾロと出てきました。
彼らは、口を揃えて、
「私は平和のために国家権力による逮捕弾圧にも屈せずに信念を貫き通した」
と叫びました。
なるほど、これが世界の諸国であれば、獄中ではひどい拷問が加えられたであろうし、李氏朝鮮時代なら、体中の骨を一本ずつ折られたりしたであろうし、清國なら、体の肉を少しずつ削り取られたことでしょう。
そうした拷問にも耐えながら改心せずに信念を貫き通したのであるならば、日本人のみならず、世界中の誰もが仰天します。
もちろん彼らが戦後的ヒーローになるためには、特高による取り調べが厳しいものであったと思われれば思われるほど、都合がよかったという一面もあったことでしょう。
けれど、そのように物事を対立的に見る考え方そのものが、もうすでに間違っているのです。
「自分は正義であり、特高は悪である。」
と、このような二極分化して、対立的にものごとを把握しようとする姿勢そのものが、すでに子供じみているのです。
どんなことにも良し悪しがある。
良いことと悪いことは、常に紙の裏表である。
どんなことにも良い面はあるし、どんなことにも悪い面もある。
その両方を背負いながら生きるのが人間だし、人々の集合体である国家なのです。
だからこそ地面に足をつけて、他国の猿真似ではない日本の歴史伝統文化を踏まえて、外来のものからできるだけ良いものを国風化していくという努力が必要なのです。
特高警察はGHQによって解散させられました。
ですからどんなに特高警察を悪し様に言っても、元特高警察の人たちは、反論しませんでした。
しかし、彼らが逮捕した犯人に行ったことは、冒頭の特高必携に書かれた日本人としての必要を、彼ら政治犯とされた人たちとしっかりと話し合い、説諭することでした。
話してわかる相手でなくても、わかるまで教導する。
ときに涙を流しながら、一生懸命に彼らと向かい合い、話し合ったのです。
実際、日本の特高警察に逮捕されて獄死した人は、小林多喜二1名です。
世界の思想警察と比べたら、これは限りなくゼロに近い数字です。
しかも、このことは写真を見れば一目瞭然なのですが、当時食糧難となっていた日本において、なぜか特高警察解散に伴って牢屋から出てきた思想犯たちは、全員、極めて良好な栄養状態にありました。
特高の刑務所は食事が良い。
これは当時の社会の常識でした。
冒頭でご紹介した「特高必携序文」には、続けて次の記述があります。
「特高警察官は、
彼等に対してよき薫陶を与え、
よき反省のための伴侶であり、
師であり、
友であることによって、
職務の実を挙げ得るよう心掛くべきである。
それは独りその人々の幸福たるのみならず、
国家のための至福たるべきものである。」
もし本当に、特高警察が、苛烈で鬼のような恐ろしい殺人鬼集団であったのなら、特高に逮捕された人たちは、そもそも出所できていません。
実際、共産主義国で政治犯として逮捕された人たちは、誰も出て来ていません。
なぜなら、裁判もなく、皆殺しにされているからです。
また仮に出てきても、五体満足で出所できた者は誰もいなかったことでしょう。
戦後、GHQによって特高警察は解散させられました。
そして特高警察に逮捕投獄されていた人たちは、口をそろえて特高を「恐怖の国家権力集団」という印象操作を行い、悪しざまに罵りました。
かつて特高警察官として、涙を流して説得にあたっていた、まじめで正義感の強い警察官たちの思いは、いかばかりだったことでしょうか。
お読みいただき、ありがとうございました。
※この記事は2014/6のリニューアルです。

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コメント
にゃんこ
2017/01/12 URL 編集
西
勿論、一部には「反資本主義(労組活動)」を標榜しただけで、暴力的な共産革命に賛同していたわけではないのに(小林多喜二などは、労組活動に共感していただけで、暴力主義者では無かったと思います)、特高に拘束された者もいたのかもしれませんが、あの時代の情勢を考えれば、ある程度はやむを得なかったところもあったと思われます。
実際に、ソ連を司令部として、各資本主義国で工作員などを駆使して、「暴力的共産革命」を煽るように国内工作していたのですから。
その日本代表が「共産党」だったわけですね。
逆に、特高や治安維持法が無かった方が「日本破滅」になっていたのではないかと思うくらいです。
あの時代、労組の活動などはありましたが、共産党や共産主義に共感する者達とは、根無し草やどうしようもないドラ息子、出自や両親に強く反発する者、熱心に本を読み、勉強する一方で、世俗には疎かった帝大生などが大半だったようで、どう考えても「一般人」までが共産主義に共感していたとは思いません。
元炭鉱や造船所などの肉体労働者であっても、共産主義に共感していたという話は、ほぼ聞きませんね。
やはり、どう考えても詐欺的思想(提唱者のマルクス自体が、根無し草の浮浪者である事を知らなかった)である共産主義に染まった「一部の狂人達」が、ソ連の工作員などが煽った被害妄想(労働者が資本家によって搾取されている、国家が貴方達を戦争に駆り出そうとしているなど)によって、過激主義に発展しただけというのが、日本の「共産主義」ではないかと思います。
特高にも不手際はあったでしょうが、趣旨というか、特高は非民主主義者、統制経済派である、共産主義者(主に暴力革命派)を取り締まる事を目的としていたわけで、存在自体まで否定するのはおかしいのではないかと思うという事です。
2016/12/30 URL 編集
すみれ
2016/12/26 URL 編集
-
日本の大学は、The Times Higher Educationの世界大学
ランキングを気にして、無理して国際化しようとしてい
ます。そのため、留学生に占める漢族学生の率が高くな
り、横浜国立大学ではそれが98%になっており、異常だと
言えます。異常の例として、本拠地に学生がいなく、神
田にサテライト校を設置し、漢族留学生で存立している、
東北地方の短大があります。これでは、国際化ではなく、
漢族化です。
刷り込まれた反日思想を潜在意識下に持つ漢族留学生を、
税金かけて招待することは、国益にかなっていません。
主要大学以外への漢族留学生は、就労目的を持つことが
明らかで、不法移民、犯罪集団形成につながります。
以上の状況は、問題民族に、国家の重要分野の人材育成
に影響を与える機会を提供することで、大問題です。
よって、留学生の出身国別配分率を設け、親日民族を優
先するのが妥当です。その場合、ヨーロッパとロシアで
かなりの日本留学希望者数があるそうなので、これらの
地域を最優先すべきです。アメリカ人は戦勝国として優
越感を日本人に対し持っており、漢族系も多いので、前
述地域ほど優先すべきではありません。
留学生にとっての障壁は、日本語での講義です。特に
ヨーロッパとロシアの学生にとって、漢字習得がこの障
壁の最大要因です。一方、簡体字使用の漢族学生にとっ
て、日本語の漢字習得が容易なので、対留学生比が高い
理由となっています。よって、英語での講義を導入すれ
ば、問題改善につながります。実際、英語での講義を導
入した神奈川大学では、フランス、ドイツ、ロシア、イ
タリア、スペインからの留学生比率が、過去5年で5%か
ら40%と8倍の増加がありました。ただし、英語の講義が
あることにより、日本人学生の学力低下の危惧も生じま
す。
日本は、現状維持で漢族侵透を許すか、大学講義の英語
化でバランスよい留学生比率を得るか、いっそのこと留
学生を拒絶するかを選択しなければなりません。
2016/12/24 URL 編集
紫陽花
あの時代ですから、かなりの策略を持っていて(計画していて)、自白しなかった彼の純粋さ故の悲劇であったのでしょう、そう信じたい所ですが、坂本竜馬しかり、自らの志は民の為を思いつつも、実質は政治利用されて、結果的には日本国体を破壊しうる危険な思想とまでは本人は思い至らずに、残念な死を遂げてしまったように思います。 事実、多喜二氏も竜馬氏も生きていたら日本も相当難儀な事態になっていたように思えてなりません。
2016/12/24 URL 編集
ガンダー
2016/12/24 URL 編集
コウ
「特高が恐ろしい存在」ってイメージを植え付けたのって実は「はだしのゲン」なのではないかと思います。
特高に捕まったゲンの父親が苛烈な暴力に晒される。私は40代なのですが、幼少の頃読んだこの作品の影響は大きかったですね。今にして思うとプロバガンダ…だったんだろうなとは思いますが。
ねずさんにとって、この作品はどう捉えてますか?特高の場面や天皇陛下への捉え方など感想を頂けると嬉しいです。
長くなりましたが、よろしくお願いします。
2016/12/24 URL 編集