かんながら



『ねずさんと語る古事記 壱』新発売(発売日:3月15日)
おかげさまでAmazonベストセラー1位です。ご予約はお早目に。

     20170226 古事記壱

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3月25日(土)15:00 苫小牧講演 
4月 1日(土)14:00 名古屋講演 

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20170316 高千穂
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「諸命以」は、これで「もろもろのみこともちて」と読みます。
古事記の伊耶那岐、伊耶那美のお話のはじまりの冒頭に出てくる言葉です。

原文と読み下し文は次のように書かれています。

 於是天神   ここに天つ神(あまつかみ)
 諸命以    もろもろの命(みこと)もちて、
 詔伊耶那岐命 いさなきのみこと
 伊耶那美命  いさなみのみこと
 二柱神    二柱(ふたはしら)の神に詔(の)らさく、
「修理固成是多陀用幣流之国」
        「このただよへるくにをつくりかためなせ」
 賜天沼矛而  天の沼矛(あめのぬぼこ)を賜(たま)ひて、
 言依賜也   言依(ことよ)さし賜ひき。


20161026 倭塾バナー

この「諸命以」は、古事記を通じての大変重要な言葉です。
なぜかというと、我々が住むこの宇宙は、すべて創世の神々が造られたものであり、男女の根源神であるイザナキ、イザナミのニ神さえも、その創世の神々の「もろもろの命(みこと)」のまにまに、地球を造り、また生命を育んでいるということが、古事記のその前の段に書かれていて、それを受けての「諸命以」だからです。

つまり、すべての思考や行為行動は、ことごとく神々の命(みこと)のままにある、もしくは、あらねばならない、ということが、この三字「諸命以」という語に込められています。
これを、もうすこし砕いて言うと
「神のまにまに」
という言葉になります。
「まにまに」という言い方は、現代日本語では「〜ままに」という語に変化していてあまり用いられることはありませんが、もともとは「神々の御心のままに」という表現は、「神のまにまに」という言葉で言い表されていたものです。

この「神のまにまに」を漢字で書くと、「随神」、または「惟神」となります。
このように書いて、「かみのまにまに」と訓読みしたのです。
そしてこの二つ(随神、惟神)は、どちらも「かんながら」とも読みます。
つまり、
「諸命以」は「神のまにまに」であり、
「神のまにまに」は、漢字で書いたら随神、惟神であり、
「随神、惟神」は、どちらも「かんながら」と読むのです。

なんだかジャンケンポンみたいにややこしいですが、もともと大和言葉に「かみ」や「まにまに」、「かんながら」という言葉があり、あとからそれらの言葉に、もっとも意味が近いであろう漢字を当てたから、そうなったのです。
ですから日本語は、「漢字を輸入してからできた」というのは大きな間違いで、日本語(大和言葉)が先に確立されていて、後から漢字を輸入したから、このような現象が起きているのです。

さて、「随神」という熟語は、「随」という字が「〜のままに」といったことを意味する漢字です。
「惟神」にある「惟」という字は、「忄(りっしんべん)」が心臓を現し、「隹」は「維」と同じで「つなぐ」ことを意味します。
そこから「何かに心を繋ぎ止めて思う」という意味になり、神々と心を通じさせるという意味で「惟神」という熟語になっています。

ここからわかることは、私たち日本人は古くから、「森羅万象、あらゆるものは、神々によって創成されたと考えてきた」のです。
これを「神々」ではなく、「一柱の神が」とすると、キリスト教のような一神教になります。
我が国は、多神教の国ですから、ここを「神々の」としているわけです。

要するに、森羅万象、あらゆるものを造ったのは神々です。
ですからすべては、もともとは「神々のもの」なのだというのが、基本となる考え方になります。
一神教では、その唯一絶対神と人は、契約関係と説かれます。
対象となる神様が一柱ですから、そのような考え方が成り立ちます。
ところが日本では、多神教ですから、契約するといっても、ではどの神様との契約なの?という話になってしまいますから、「神との契約関係」というのは成立しません。

むしろ、「私たちは神々が造られたものを利用し、加工して、机や椅子や、本やノートやパソコンや自動車など、様々な加工品をつくり、利用させていただいているのだ」という思考に至ります。
そしてそこから、「人が作った」という考え方は傲慢だという考え方が生まれます。

あらゆるものは、神々がお造りになられたのです。
それを私たちが、生活を便利に豊かにするために、いろいろと加工して使わせていただいているのだと考えられてきたのです。
そしてそのように考えますと、「無から人が造った」ものなど、何一つないのです。
すべては神々からの借り物を、組み合わせたり加工したりして、使わせていただいているのです。
そういう理解が日本の文化の根底にあります。

もともとはすべてが神々のものです。
私たちはその神々のものを使わせていただいているのですから、使い終わったら、ちゃんと元通りにしてお返ししなければならない。
それができないのならば、できないようなモノは造ってはならないと考え行動する。
それが日本人の文化意識の根幹です。

形而上学的な考えや学問も同じです。
知識を得るということは、神々の知恵をいただくということです。
神々の知恵なのですから、粗略にしてはなりません。
学問をするということは、神々の知恵をお借りするということです。
ですから学ぶときは、姿勢をただし、背筋を伸ばして学びました。
そうすることが当然と考えられました。
最近では、幼児教育や小中教育で、「授業中姿勢を正す」ということが言われなくなりましたが、昭和30年代頃までは、まだ昔からの伝統が残っていて、授業中は背筋を伸ばして正しい姿勢で座ること、先生に指名されて立って答えるときは不動の姿勢をとること、立った姿勢で本を音読するときは、両手を水平にいっぱいに伸ばして教科書を持って音読すること、などが厳しく言われたものです。

最近では、ものを使い捨てにすることも、あたりまえになりました。
この「使い捨て」という文化は、戦後に日本にはいってきたものです。
戦後社会を慄然とさせたCMがあります。
昭和40年代のCMですが、自動車に乗って浜辺に着いた白人の若者たちが、車から降りて海に向かって走りながら、次々と着衣を脱ぎ捨てて行くのです。
そうして水着で海に入っていくのですが、これを観た子どもたちは、
「あんなことをして、脱いだ着物には、ちゃんと名前が書いてあるのだろうか」
「脱いだものを、たたまなくて良いの?」
「浜に脱ぎ捨てたりしたら、誰かに持って行かれて、帰りに困らない?」
「でも、かっこいいよねー」
などと、話題になったものです。

結局、使い捨て、脱ぎ捨ての文化が、日本を席巻していくことになるのですが、それでも私たちが子供の頃は、お年寄りから、
「ものを大切にしなければならない」
と、くどいくらいに言われました。

でも、加工して再利用できるものの方が、いまでは少ないし、しかもモノが豊富です。
気がつけば、燃やすこともできないゴミで、日本中、すっかりいまではゴミの山です。

すべては神々のものであり、私たちが授かっている命さえも、もともとは「諸命以」授かった命です。
その命を、何に使うのか。どう使うのか。
それが、人が生きるということなのかもしれません。

お読みいただき、ありがとうございました。

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20160810 目からウロコの日本の歴史


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「お詫びと訂正」
第一巻八十三ページに「これは千葉の常若神社の渡邊宮司から教えていただいた話なのですが、聖徳太子の十七条憲法の各条文は、それぞれ創成の神々の神名と関連付けて書かれているからこそ、十七条なのです」とありますが、私が教わったことは古事記と聖徳太子に関するお話であり、聖徳太子の十七条憲法と神々の神名との関連付けは教えていただいたことではなく、私の考えであると、渡邊宮司をはじめ、関係各位に深くお詫びして訂正いたします。

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コメント

くすのきのこ

No title
こんにちは。人の頭脳では神羅万象を感じるだけではなく理解しようとする
働き方があるらしく・・そこで名づけが始まったりするようです。カミと呼
ぶのもその一つ。しかしながら、それは人間側の勝手な理屈でしかないのも
わかっていなければね。だから・・森羅万象。地上では植物の光合成のみが
太陽エネルギーを化学エネルギー(ATP)に変換し、有機生命体(知られ
ている生命体は全て有機生命体。炭素を基本とする有機物で生命維持する)
の生命活動を支える。つまり植物なくして動物は発生できなかった。タカミ
ムスビが樹木のカミであるのにも一理あり・・コレも人間という有機生命体
の立場による小理屈ですwでは有機生命体ではない生命体はあり得ないのか?
・・それは人間の理屈の及ぶところではない所に存在しているのではないか
な?そのことを古事記を始め世界中のふる~い書物は言おうとしているのか
もしれません。理屈で納得したり安心したりしたいという欲求に甘んじてし
まうと宗教騒動へと繋がったりするわけで・・w神羅万象をあるがままに捉
える気持ちが大事かもw

日本軍の英霊を思い出すことは大事です

疾風迅雷の音から
今日は、お話には関係ないかもしれませんが、今日は、疾風迅雷の由来から神雷部隊の音をとった第721海軍航空隊が、九州沖航空戦において四国沖の敵機動部隊に向けて、第一回神雷桜花特別攻撃隊が出撃した日です。

一式陸上攻攻撃機 18機には、人間爆弾でありました桜花15機を搭載(腹に抱えながらですが)していきました。

零戦も護衛を含め32機でした。

本来は、護衛機も100機以上はいないと大変厳しい特攻であったと言われておりました。

結果は、母機の一式陸上攻撃機18機とその子機の桜花全機全て撃墜されました。

戦果なしです。

一式陸上攻撃機は、元々800kgの魚雷を載せて、敵空母などを撃滅する働きをしておりましたが、レーダーによる事前察知により、ほとんど夜間戦闘を余儀され、最後は、桜花を吊って、特攻となります。

この名機には、6-7名の搭乗員が乗れましたので、おそらく126名近い歴戦の勇士が搭乗して、敵に辿りつく前に、撃墜されたと思います。

桜花には、当然1人乗りしか乗れませんので、15名の勇士が、撃墜される一式陸上攻撃機につるされたまま運命を共にされました。



本当に、本当に、無念であったと思います。



悔しかったと思います。



撃墜されると分かっていて、特攻した訳ですから。



しかし、この特攻には、無頼の勇士が出撃していきました。
その指揮官が、野中五郎少佐(戦死後に、大佐に昇進)でした。
わずか35歳でした。

その野中五郎少佐がいたからこその神雷部隊であったように思います。

そんな鬼司令官ともいわれる姿から想像もできないほどの愛しい愛する息子に宛てたお手紙を書かれていました。


ぼー まいにち おとなちく ちてるか
おばあちゃまや おじちゃまが
いらっちゃるから うれちいだろう

おたんじょうび みんなに かわいがられて
よかったね おめでとう おめでとう

おとうちゃまは まいにち あぶーにのって
はたらいている

ぼーが おとなちくして みんなに 
かわいがられているときいて うれちい

もうちょろちょろ あるかなければいけない
はやくあるきなちゃい

おかうちゃまの いうことをよくきいて 
うんと えいようをとって ぢょうぶな よいこどもに
ならなくてはいけない

ちゅき きらいのないように なんでも 
おいちいおいちいってたべなちゃい

でわ さようなら 

おとうちゃまより
ぼーへ



今の日本人に足りないものは、誠です。

70年前とは言え、多くの日本軍人の類まれなる勇敢さに、白人至上主義世界を蹴散らした訳です。

そんな誇らしげに思わなければならない我が日本軍の将兵の御霊に対して、ほんの一瞬でも、「ありがとうございます」ときちんと自分の魂から伝えることー祈ることが大事だと思います。

長文失礼いたしました。

ラベンダー

おはようございます♪

「神のまにまに」で思い浮かべるのは

道真公の

「このたびは 幣も取りあへず 手向山

紅葉の錦 神のまにまに」

です。


http://ameblo.jp/inukayh777/entry-12068851264.html

家の近所の天神様で、⬆︎の和歌を上げさせていただきました。
心の中で、「神のまにまにと詠まれた時には、まさかご自分が神様になられるなんて想像なさってましたか?」
とお尋ねしてしまいました。

ねず先生の百人一首や古事記を読ませていただくと、神様や歌人の方々が本当に身近に感じられます。

とても美しい言霊で書かれた伊耶那美様や
日本男子のお手本として書かれた須佐之男命様、ねず先生の古事記には、美しく立派に解説されてますので、ゆかりの神社で天神様と同じようにお知らせさせていただきたいものです(^.^)

junn

No title
もっと深刻な政治介入を取り上げよ ! / 朝鮮学校への支援を素通りする二枚舌
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68632343.html
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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