神話と神語(かむかた)り



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20170516 因幡の白兎
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています)


スティーブン・R. コヴィー博士の『7つの習慣』は、すでにお読みになられた方も多いかと思います。
この本を1996年の日本語版の初版で購入しましたが、この本、現在までに53刷り、なんと1,000万部以上を売り上げているベストセラーなのだそうです。
結構厚手のハードカバーの本ですから、印税を計算してみると・・・すごいですね。

買った頃は、システム手帳が流行っていた頃で、出版社から「7つの習慣のためのシステム手帳用リファイル」が出ていて、ついでにこれもまとめて買ってしまいました。
もっとも、実際にその後長く役に立ったのは、そのシステム手帳のサイズに、自分で要約してまとめた箇条書きテキストの方でしたが・・・。

実はこの本、読んでみるとわかるのですが、各章のテーマごとに、非常に細かく、関連した物語が記述されています。
読者は、その物語を通じて、これをケーススタディとして、7つの習慣の大事なところを体感的に学んでいくというスタイルで本が記述されています。
実際、この本から、そのケーススタディとしての物語を省いたら、おそらくページ数が3分の1以下になるのではないかと思えるほど、多くのケースが紹介されています。

その中には、数多くの失敗談もあるし、苦心して成長する物語もあります。
読者は、そうした物語を通じて、体感的に必要な知識を学んで行くのです。

なんだか似ているのです。
古事記に、です。


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この表現は、『7つの習慣』をお読みになられたことのある方にしかわからないかもしれませんが、『7つの習慣』から解説を全部消して、ケーススタディだけを抜き出すと、古事記に似たイメージになるかもしれません。
何を言いたいのかというと、古事記に描かれてる物語、特に神話の章は、まさに「学びの書」となっているということです。

もっというと、『7つの習慣』は、すごい本ではありますが、幼児には理解できません。話してもたぶんわかりません。
ところが古事記神話は、幼児にも神様童話として、わかりやすく話せるように書かれ、大人になればなったで、そこに描かれた深みから、神話を人生の指針や、国家の教典とすることまで可能です。

これはすごいことです。
どの年齢にあっても、男女いずれの性別にあっても、どんな世代であっても、そこから様々な学びを得ることができる書、というのは、世界の歴史の中でも、そうそう生まれたわけではないと言えるからです。


「寓話(ぐうわ)」という言葉があります。
これは、童話(どうわ)と異なり、教訓や教えを含んだ物語のことを指す言葉で、代表的なものがイソップ物語です。
「北風と太陽」、「金のたまご」、「ろばをかついだ親子」など、たくさんの有名な物語があり、そのいずれもが、様々な教訓を得ることができる物語となっています。これが寓話です。

古事記にも、寓話のような側面があります。
因幡の白兎は、ワニをだまして海を渡りますが、渡り終える頃に嘘がバレて大怪我をします。
怪我に痛がっていたところを、今度は通りがかった八十神に騙されて、さらに痛い思いをします。
「だから嘘をついてはいけませんよ、自分が痛い思いをすることになるのだよ」
と読めば、これは寓話です。

ところが古事記は、その序文に「国家の典教とすることを目的として編纂が開始された」ということが書かれているわけです。(原文:照今以補典教(今を照らし以て補うための典教))
もちろん、そのような正直であることを大切にする国家国民となっていくことにも意味があると思います。

けれど、その因幡の白兎の物語が挿話となっている大国主神話は、優秀な若者というのは数あるけれど、大いなる国の主となっていくためには、人として何が必要なのかとうことが、一連の大国主神の成長を通じて、その要諦を学ぶことができるようになっており、しかもそれだけではなくて、困った時、悩んだ時、苦境や苦難に陥ったときにそこを抜け出すために必要な古代からの日本人の大いなる知恵が、そこに描かれています。

つまり、ただの寓話ではないのです。
古事記は、個人の人生指南書となっているだけでなく、まさに国家諌暁(こっかかんぎょう)の書となっているのです。
(諌暁=いさめ,さとすこと、仏教用語)

ここが、対外的な史書として、漢文だけによって書かれた日本書紀と、古事記が大きく異る点です。
日本書紀は、日本とはこのような国であるということを、内外に示すことを目的に書かれています。
ですから日本書紀は、当時の国際共用文言葉であった漢文で、しかも丁寧で美しく綴られています。
ところが古事記は、漢字で書かれてはいますが、頻繁に大和言葉が用いられています。
このため、漢文に通じた外国人が読んでも、まったく意味がわからない。

たとえば「ヤマタノオロチ」なら、日本書紀は「八岐大蛇」と書いています。
これはどうみても、いかにも恐ろしげな頭が八つある大蛇です。
ところが古事記は「八俣遠呂智」です。
八俣は漢文の素養のある外国人でも意味がわかりますが、「遠呂智」は大和言葉の「おろち」をただ当て字で書いているだけですので(これはちゃんと注釈にそのように書いてあります)、アメリカ人に交番のことをローマ字で「koban」と書いても意味がわからないのと同じように、遠呂智では、外国人にはさっぱり意味がわかりません。

これはつまり、古事記は国内向けに書かれているのだ、ということを意味していると考えられます。
漢字で意味をちゃんと表記できるものは、漢語でちゃんと書いているのです。
ところが漢字では表現できない何かがそこにあるときには、漢字をただの読みのためのカナとして用いて、古事記は記述をしているわけです。
ということは、古事記に書かれた「遠呂智(おろち)」は、日本書紀に書かれたような「大蛇(おろち)」ではない、ということになります。

様々な国や民族が神話を持っています。
ホメロスの『イリアス』や『オデッセア』、ヘシオドスの『神統記』などのギリシャ神話は、もともとは霊感を受けた詩人が神々の行為を権力者に語る歌として成立し、それが市民政治と重なって、いつの間にか真実とされるに至ったものといわれています。
ですから、明治20年代に、英語の「myth」の日本語訳として「神話」という言葉がつくられました。

言い換えると、もともと日本には、「神話」という言葉はなかったのです。
では、それまでは、いま私達が日本神話と呼んでいる物語がなんと呼ばれていたかというと、「神語(かんがた)り」です。
神語りという語には、神様の時代からの語り継がれたものという語感があります。

日本には、12万年前の旧石器時代の遺物が出土しています。
これはつまり、12万年前に、この日本列島に住む人々がいた、ということです。
そして2万年前の縄文時代から、3千年前の弥生時代、1300年前の奈良時代、1200年前の平安時代、800年前の鎌倉時代、400年前からはじまる江戸時代、145年前に始まる明治時代、92年前に始まった昭和時代、29年前にはじまる平成時代と、日本列島に住む日本人は、民族が滅びることなく、ずっと血のつながりと、蓄積された文化を保持してきている国です。

少し言い方を変えると、
日本列島では、
120,000年前 石器 (砂原遺跡・島根県)
 30,000年前 磨製石器(岩宿遺跡・栃木県)
 16,500年前 世界最古の土器(大平山元1遺跡・青森県)
 13,000年前 人の形をした土偶(相谷熊原遺跡・滋賀県)
 12,500年前 漆の栽培(鳥浜貝塚・福井県)
  8,000年前 稲の生育(朝寝鼻貝塚・岡山県)
  7,000年前 稲の水耕栽培集落跡(菜畑遺跡・佐賀県)
と続き、その文化文明が、いまなお持続しています。

魏志倭人伝には、1〜2世紀頃の日本人の様子が描かれています。
月に一度、老若男女、村のみんなが集まって食事をし、酒を飲む。
規律正しく、盗みをする者が少ないなどと書いてあります。
仏教伝来までは、我が国では、稲作の際の苗の配布や、天然災害時の非常時の食料の備蓄は、神社がこれを担っていましたが、いまでもすこし田舎の方にいけば、月に一度氏子会館に村人たちが集まって食事をし、盗みなど考えられない生活が保持されています。
二千年前もいまも、日本人は変わらず日本人なのです。

そしてその大昔から蓄積された日本人の知恵が、「神語り」です。
要するに日本人は、旧石器、縄文から、古代大和朝廷、飛鳥、奈良、平安から現代へと、民族が滅ぼされたり皆殺しにされたりすることなく、ずっと長い間、文化を持続させ、その持続された文化の根幹になっていたのが「神語り」であるということです。

おそらく、神語りは、万年単位の長い歳月を生き抜いた物語であろうと思います。
そしてその、猛烈に長い歳月のなかで、物語は取捨選択され、本当に学びのある大切な神語りだけが生き残り、それが元正天皇の時代に書にまとめられた提出されたものが、古事記であるわけです。

書の読み方というのは、人によって様々であって良いと思います。
古事記の中に、史書としての事実を見出そうとする人もいるかもしれません。
教訓を得ようとする方もおいでかもしれません。
どのような読み方をするかは、人それぞれです。
ですから、ヤマタノオロチを、あくまで怪獣だとして読むことも、もちろんOKです。
神語りは、誰もが、その器に従って、様々に受け止めることができるから良いのです。

ですから、古事記を読むのに際して、「このように読まなければならない」、「これが正しい読み方であって、この読み方は間違っている」というように、良し悪しや正邪、正しいか間違っているかといった闘争的な読み方は、もったいないと思います。
なぜなら、同じ事柄でも、人によってそこから得る学びは様々あるからです。

そしてこれこそが、日本文化だと思います。
日本の文化は、その全てが、誰が強いか、誰が正しいかに価値を置きません。
あらゆるものを知恵として自らの魂の成長へと結びつけていく、情報の供給者ではなく、情報の受け手が主役というのが日本の文化です。
絵画や庭園、料理も同じです。
主役は作り手ではなく、絵画を見る側、庭園を鑑賞する人々、食べる人の満足こそが大事とされてきたのが日本です。
文学も同じ、主役は登場人物ではなく、読み手が主役です。
国家も同じです。
日本は、王や貴族のための国家ではありません。
古い昔から、民こそが主役、民こそが「おほみたから」とされてきたのが日本です。
それが、神話の時代から続く、日本人の知恵であり、日本文化の根幹をなすものであると思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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「お詫びと訂正」
第一巻八十三ページに「これは千葉の常若神社の渡邊宮司から教えていただいた話なのですが、聖徳太子の十七条憲法の各条文は、それぞれ創成の神々の神名と関連付けて書かれているからこそ、十七条なのです」とありますが、私が教わったことは古事記と聖徳太子に関するお話であり、聖徳太子の十七条憲法と神々の神名との関連付けは教えていただいたことではなく、私の考えであると、渡邊宮司をはじめ、関係各位に深くお詫びして訂正いたします。

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コメント

くすのきのこ

No title
こんにちは。呑み屋の江戸猫モドキが喋り足りなかったようです・・
・・天の岩戸の前で神さん達がやった大宴会w宴会というか、演芸会という
か・・神さん達の発想ってのはwでもってちょ~いとアマテラスオオミカミ
様自身がが隙間を開けなきゃ、ど~しようもなかったってわけで、その隙間
を逃さずにグイっと腕力自慢が岩戸を開けて戸をぶ~んと投げちまうw止め
れない災いってのはあるが引き籠っても仕方ない・・笑い飛ばしててまた始
めるっきゃない・・笑う門には福来たる~ってねww

石見神楽なんか見ていると、なんだか神さん達の演芸会の名残りのような気
もw明治時代に神職のお神楽駄目になったら村々で始まったと。オロチなん
て本当に面白い蛇だか竜だかわからない造りものでw YouTube"ひろしま
安芸高田神楽「八岐大蛇」”などはオロチがウゴウゴしている。”大滝山のお
神楽2015年4月26日 四国の阿讃山脈”なんて雑音が無いし短縮されてるか
ら却ってオロチの動きがよく見れていいw演芸会好き~という日本人気質は
神さん達のお陰かもしれない。旧ソの強制収容所でさえ場所によっては演芸
会やった事もあったらしい・・お客様はカミさまですの御方もという噂・・。元々、人間のやる演芸は神様たちに捧げるために、神さん達の真似をして始
まったのかも?







junn

No title
文化マルクス主義が(偽)フェミニスト運動の背後にある 真の力である
http://www.dcsociety.org/2012/info2012/170517.pdf
非公開コメント

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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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