ハラとムラと国家戦略(上)



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新潟県立歴史博物館(長岡市)の縄文時代の生活のジオラマ
20170821 新潟県立歴史博物館
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【お知らせ】
 9月 2日(土)18:30 第18回 百人一首塾 公開講座(百人一首)
 9月17日(日)13:30 第43回 倭塾 公開講座(古事記)
 9月21日(木)13:00 埼玉縣護國神社奉納揮毫
10月 1日(日)11:00 日心会『ねずさんと古事記』出版を祝う会(古事記)
10月15日(日)13:30 古事記に学ぶ25の経営学
10月26日(木)18:30 第19回 百人一首塾 公開講座(百人一首)
11月 3日(金・文化の日)第2回 名古屋倭塾 公開講座(古事記)
 *****


エイヴラム・ノーム・チョムスキー(Avram Noam Chomsky)は、アメリカ人で、「現代言語学の父」と評される人です。
実は、私はこの人のことを、國學院大學名誉教授の小林先生によって知ったのですが、このチョムスキーは、
「人類は生まれながらにしてコトバを操(あやつ)る基本的文法能力を備(そな)えていた」という革命的な仮説を発表しました。

日本では縄文時代、人々がどのような食料を利用していたのか、その全容を知ることはできないけれど、貝塚などから出土する魚介類や動物の骨、あるいは土器に付着した木の実や穀類などから、何百という種類の食材が出土しています。

次は、小林教授の論考からです。これを、
「食い意地が強くて
 手当たり次第に口に入れていた
 効果がもたらす当然の帰結とみるようでは
 真髄を見逃す。
 まずは可食物を特定し、
 毒物や食毒不明な種類を区別する必要がある。
 そのためには「名付け」が不可欠である。
 それぞれが持つ名前によって記憶を確かなものとし、
 万人共通の知識となるのだ。
 ここに言語、ことばの基本的な機能がある。
 さらにその名の生育場所、旬の季節や調理法にまで
 知識が広がっていくのである。」

聖書にも「はじめに言葉ありき」という言葉があるのだそうですが、要するに人類は相当早い段階・・もしかしたら縄文時代よりももっと古い旧石器時代から、人として生きるために言葉を持ち、それを操り、言葉によって得た知恵を子や孫に伝えてきたのかもしれないと思うのです。
そして言葉があるから文化が熟成されていきます。
もっというなら、サルとヒトを分けるものは、まさに言葉を発することができる咽頭部の違いと進化であったかもしれない。




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「ハラ」「ムラ」などの縄文期にはすでに使われていた古い日本語を題材に、国家戦略を考えてみたいと思います。

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20170526 古事記弐


その言葉なのですけれど、いわゆる縄文時代から続く日本語の中に、たいへん特徴的な言葉として、
「ムラ」
「ハラ」
「ソラ」
という言葉があるのだそうです。
この言葉は、いまでも日本語として使われています。
村、原、空です。

縄文時代の我々の祖先にとって、「ムラ」は人々の生活の拠点です。
そこは人々が太陽の恵みを受けて互いに調和を持って支え合い、生きる空間です。
「ハラ」は、「ムラ」の外にあって、様々な恵みを与えてくれるところです。
そして、その「ハラ」や「ムラ」を等しく覆うものが「ソラ」です。

いずれも「ラ」が付きます。
ラは、古い大和言葉では太陽の恵みを意味していたとされています。
エジプトの太陽神「ラー」と、なぜか同じです。

「ム」は、調和をとることを意味します。
したがって「ムラ」は、人々が太陽の恵みのもとで調和をとっているところ、という意味になります。

「ハ」は、新たに生えるもの、食に欠かせないものを意味します。
ハラ(腹)いっぱいの飯は、ハラ(原)の恵みによって授かります。
食べるときには子供の頃に生えたハ(歯)が欠かせません。
ですから「ハラ」は、太陽の恵みのもとで食を得るところ、です。

「ソ」は、全てを覆うものです。
太陽の恵みのもとですべてを覆うものが「ソラ」です。

古事記は、「ムラ」には村、「ハラ」には原、ソラには「虚空」の文字が充てています。
もともと大和言葉があり、あとから漢字が輸入されたわけです。
ということは、漢字の「村、原、虚空」と、大和言葉の「ムラ、ハラ、ソラ」は、すくなくとも古事記が書かれた時代には、同じ意味と考えられていたということがわかります。

「村」という字は、「木+寸」でできています。
「木」は大地を覆う木、「寸」は右手の手首に親指をあてて脈をはかる動作を示す象形から、ヒトを意味するようになった文字です。
この二つの組み合わせから、人が多く集まる場所を示すようになった字です。
音読みは「ソン」です。
しかし我々日本人にとっては「むら」です。

古事記での初出は、イザナキが妻であるイザナミの命を奪ったヒノカグツチを斬ったときの描写です。
「其御刀前之血、走就湯津石、所成神名」という形で「ムラ」が出てきます。
ここでいう「湯津石村」の「湯津」は「斎(ゆ)つ」ですから「尊い石のあるムラ」という意味になります。
石は、古来、長い歳月の記憶を宿し、霊力が備わるとされてきたものです。
そこから村には、尊い石が配備されていたとわかります。

「原」は、「厂+泉」です。
「厂」は削りとられた崖の象形、「泉」は岩の穴から湧き出す水の象形です。
ですから「原」は、崖から出て来る湧き水を意味します。
湧き水はすべての源(みなもと)です。
そこから、原本、原稿、原石、原理など、すべての源を示す意味の漢字となりました。
この字に私たちの祖先は、わたしたちにとって生活に欠かせない太陽の恵みのもとで食材を得る「ハラ」の語を当てています。
つまり「ハラ(原)」を、私たちの祖先は、生きるために欠かせない食の源を得るところと考えていたとわかります。

ところが中国語では、同じ「命のみなもと(=原)」であっても、私たち日本人と異なる見方がされています。
そこは命の源ですから、奪い、そして私的に支配した者が生き残れるのです。
ひとりでは、その泉を独占しきれないとなれば、一緒にその泉の恩恵に預かっている人たちとともに、その泉を武力で守ります。
つまり「原」は、奪うもの、独占するもの、支配するものという考え方になります。
そしてまさに、彼らはその「原」を奪い合い、結果として、原は破壊され、付近の自然は失われて砂漠化を招いています。

ところが日本人にとっては、「原」は、大和言葉の「ハラ」です。
上に述べましたように「ハラ」は太陽の恵みのもとで食を得るところですから、そこに自然に共存の意識が働きました。
ヒトは、自然と共存し、自然を大切にすることで、自然の恵みを授かり生きることができるわけです。
これを「トヨウケ(豊受)」と呼びました。

古事記では、この「原」の字の初出が「高天」です。
以後、「葦中國」、「豊葦之水穂國」として使われています。
高天原は、神々の住む聖地であり、人の住む中つ国の源流です。
葦原中國も、原の字にあえて強くて成長の早い植物の「葦(あし)」を重ねることで、豊かな「ハラ」を描いています。
つまり「豊葦原」です。
そこは、征服したり支配したり独占するところではなく、どこまでも尊重し共存するところです。
これが日本人の知恵となります。

「ソラ」は、漢字では「空」、古事記では「虚空(そら)」という表現で出てきます。
漢字の「空」は「穴+工」で、穴ぐらの象形の穴と、大工道具の「さしがね」の象形の「工」から、岩にぽっかりと開けた穴を意味します。中身はカラ(空)です。
要するに何もない、ぽっかり空いた、空(から)っぽのただの穴です。「虚」も同じ意味です。

大和言葉では、「ソラ」は、太陽の恵みのもとですべてを覆うものです。
何もないのではなくて、逆に、そこにあらゆるものがある、と考えます。
ここから日本人には、ただの穴にも、そこから何ものかを見出そうとする姿勢が生まれます。
ただの空っぽでも、おろそかにしないのです。

ですから古事記では「虚空」は、「虛空津日高(そらつひこ)」として出てきます。
これは「高天原の血をひく気高い天の皇子」という意味です。
「虚空」が、中国語的な意味で、ただの空っぽという意味なら、天の皇子(みこ)の一般名称にはなりません。
つまり、大和言葉には、あらゆる恵みのもととなる太陽のある虚空、つまり大空の御子(みこ)という語感があるから、「虛空津日高(そらつひこ)」という呼び方をしていることになります。

そして我々日本人は、いまも、太陽の恵みのもと、「ソラ」の下で、「ハラ」と共存しながら、互いを慈しみあう「ムラ」に生きているのです。

日本人も日本語も、ある意味「世界の奇跡」と評せられることがあります。
日本人が、世界から高く評価されるようになった原因のひとつに、新渡戸稲造博士の「武士道」、杉本鉞子の「武家の娘」があります。
近年では、Japanアニメが世界中から評価されています。

こうした文化の発信は、その国の命運を左右します。
世界の理解を得、世界の国々と仲良くやっていき、繁栄を育むためには、文化の発信がモノをいいます。
ですから、良い悪いは別として、KoreaやChinaは、映画や映画俳優、POPなど、あらゆる分野で、自国を国をあげて必死に売り込んでいます。
韓流ドラマやDVDは、面白いから売れているのではなくて、韓国が国策として補助金まで出して格安で普及促進に勤めたから、レンタルビデオ店の一角を征しているのです。
Chinaは、ハリウッド映画のスポンサーとして、どれだけ多額の資金をバラまいているか。
そしてChinese俳優を必死でハリウッド映画に売り込んでいます。

なぜそこまでするかといえば、映画やDVDなど、ソフト分野の市場規模は、いまや自動車産業をはるかに凌駕しているからです。
しかも世界に向けて自国民を高く評価してもらうことに一役買うことになります。

まったく国がこうした工作に配慮しないのは、日本くらいなものです。
国家戦略がないのです。
この国家戦略については、明後日また書きます。


お読みいただき、ありがとうございました。

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20160810 目からウロコの日本の歴史


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コメント

くすのきのこ

No title
こんにちは。補足です。
東亜古代史研究 古代史レポートで検索・・古代史レポートというブログを
開き、縄文の逆襲という項目を見ますと・・言語の研究にも言及してありま
す。また様々な渡来人が混在していた事も述べてあります。弥生時代の日本
列島は人種の坩堝であったとwだからこそ文化的発展が起きたのだと。
これとは別にミトコンドリアDNA検査による一説では、
中央アジア(バイカル湖周辺)チャイナ東部(上海、蘇州、南京周辺)チャ
イナ南部、東南アジア(北ベトナム・ラオス周辺)ヒマラヤ・チベット周辺
東北アジア、チャイナ起源渡来人?・・がルーツにあるというのもあります。
ルーツに拘りすぎるよりも、この国土ですったもんだと歴史を織りなしてき
た事のほうが、やはり大事でしょうね。

くすのきのこ

No title
こんにちは。ちょっと面白い話。
日本列島には新石器から続いたと思われる土着の縄文系・・鬼界カルデラの
破局噴火で壊滅状態のなかで東進し生き抜いた人々・・およびアジアのほぼ
全域からの渡来人が帰化した人々が混在し、多民族多文化多神教のイザコザ
の中で、やがて大和朝廷を中心とした共存へと歴史を辿ったと。
その縄文系の人々の中にはオーストロネシアのラピタ人もいたという事です。
この地域のポリネシア系の単語が日本語に残っていると。そして日本語の文
法はアルタイ語系であり、当時は新参wの古代モンゴル辺りのものだと。ア
イヌも比較的新参者であったようですw縄文時代はなが~いですからw
戦いの無い時代はありません。すったもんだしつつ互いの生存協定を結び、
その結が歴史の中に織り込まれていったと。少なくとも千年余にわたり結
を続け、歴史を織り続ける努力は皇室と共にあったことが大事ですね。
古代ポリネシア語(茂在寅男氏より)
 イ(定冠詞)サナ(聖なる)キ(男)
 イ(定冠詞)サナ(聖なる)ミ(女)
男女の交わりにて国土を生む話はポリネシアに広がっているそうです。
DNAのミトコンドリア解析により、日本人にはアジア各地のルーツが言われ
ていますが、千年余をかけて同じ国の民族として結ばれ溶け込んできた事の
価値を重視したいですねw途中で時折新たな渡来人が来ては帰化してますがw
皇室の権威とは、千年余にわたる継続努力の結果です。これを軽視する事な
かれという事ですね。


kaminari

No title
反日国のプロパガンダ対策をはじめ、日本のコンテンツやそのファンの活用などに政府は関心がないのでしょうか?
まあ、麻生さんが秋葉原にアニメの殿堂を創ると言った時、箱物行政ということで批判していたのはマスゴミでした。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

講演のご依頼について

最低3週間程度の余裕をもって、以下のアドレスからメールでお申し込みください。
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E-mail info@musubi-ac.com
電話 072-807-7567
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