憲法って大和言葉でなんて読むの?

さて、憲法って、大和言葉でなんて読むのでしょうか。
英語なら「Constitution」です。
では、その英語の意味と、日本語の憲法の意味は、果たして同じなのでしょうか。


人気ブログランキング ←いつも応援クリックをありがとうございます。

20180517 つつじ
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


先日も書いたことですが、日本人は「憲法」という言葉に二通りの意味を重ねているように思います。
ひとつは万古不易の変えてはならないもの、という意味です。
もうひとつは、単なる最高法規であって、時代のニーズに合わせて変化させるべきものという意味です。

多くの人が「憲法」という言葉に持っているイメージは、前者であると思います。
だから日本国憲法を変えようといっても、どうしても多くの人には抵抗感を持たれてしまう。

その「憲法」という語は、欧米における最高法規としての「constitution」を訳したものです。
もともと「constitution」は、フランス語と英語が同じ単語のもので、幕末には「律法」とか「律例」などと訳されていました。

ところがこれを明治6年に、元熊本藩士の林正明が合衆国憲法の訳本を、あるいは元津山藩士の箕作麟祥がフランス憲法の訳本を出すに際して「憲法」としたことから、帝国憲法がつくられる際にも、欧米への対抗上から(大日本帝国憲法はそのために作った)、そこでも「憲法」という用語が用いられることになり、それから150年経った現代においても、いまだに「憲法」と呼びならわす習慣が続いています。

▼「constitution」

欧米における「constitution」という語は、フランス革命当時のパリ市民たちの手で作られた造語だと言われています。
どのような意味かというと、
 con 主(共に)
 stitute 立つ(立たせる)
 ion 事(事)
が組み合わさった語で、要するに「共同して立てた事」といった意味の言葉です。

単に、人々が集まって共同して打ち立てた決まり、規約と言った意味の言葉で、なるほどフランス革命の際に、パリ市民たちが王権に対して、フランスは自分たちの国であることを打ち立てようとした歴史に基づいて作られた造語であることが、わかります。

要するに「constitution」というのは、共同体のための基本条項みたいなものなのです。
ですから、共同体の形が変化すれば、それに応じてどんどん変えていくのがあたりまえですし、そのことが言葉の上からも明確になっているわけです。

ドイツも日本と同じ第二次世界大戦の敗戦国ですが、その後、ドイツ憲法は60回を超える改定が行われています。
当然です。
時代が変化しているのです。
変えないほうがおかしいと、彼らは考えるわけです。
なぜなら彼らにとっての憲法は、どこまでも「constitution」、つまり共同体のための基本条項でしかないからです。

その意味では、幕末の翻訳語である「律法」とか「律例」の方が、実体に即していたように思います。


▼日本における憲法

では日本におけるもともとの憲法とはどのような意味なのでしょうか。
この言葉が使われたのは、西暦604年の聖徳太子の十七条憲法が始まりです。
これは日本書紀書かれていることです。

日本書紀は、次のように書いています。
(原文)皇太子親肇作憲法十七條
(読み下し文)戊辰、皇太子、親ら肇めて憲法十七条を作りたまふ
(読み方)
 つちのえたつのひ
 ひつぎのみこ
 みづからはじめて
 いつくしきのり
 とおあまりななをち
 つくりたまふ

というわけで、日本書紀では「憲法」と書いて「いつくしき、のり」と読んでいるということがわかります。
これは、もともと我が国の大和言葉として「いつくしき」とか「のり」という言葉があって、それに近い意味を持つ漢字を後から持ってきて、それぞれに「憲」と「法」という字を当てたから、そうなるのです。

では、「いつくしき」とはどのような意味かといえば、
「いつくし」は、威厳があって、おごそかで、端正で美しいことです。
つまり、いかめしいのです。

「のり」は、基準や規範、お手本、法律、人の道など、逸脱してはならないものです。
要するに糊(のり)でくっつくように、そこから離れてはいけないものが「のり」です。
ですから「のりと」といえば、絶対に離れてはいけない神聖なものへの入り口(とびら)を意味している大和言葉とわかります。

ですから「いつくしき、のり」とは、これを守ることが美しい人の道を示したものといった意味になります。

この「いつくしき、のり」に、聖徳太子は「憲法」の漢字を当てています。
「憲」という漢字は、害+目+心で成り立っている字です。目と害の象形は、実は目をえぐりとる刑罰を意味する字です。その心ということですから、これを破ったら目玉をえぐり取るぞ、ということの象形文字です。さすがはChinaで、かなり残酷です。

「法」という字は、実は旧字が「灋」というむつかしい漢字で、中にある「廌」という字は、もともと穢れた神獣を表します。
その穢れた神獣を「氵(さんずい)=水」で流し「去」るということで「灋」という字が生まれているのですが、戦後は略字の「法」だけが使われるようになった字です。
要するに正邪を識別して悪者を流して去らせるものが「法」だというわけです。

古代のChinaに、いわゆる「法家」と呼ばれる韓非や李斯などがいて、秦の始皇帝の時代には「法家思想による統治が行われた」などとよく言われますが、ここでいう法家というのは、本当ですと「灋家」で、要するに先に決まりをつくることで、悪を去らせようという思想の持ち主であったとわかります。
これが「法家」ですと、単に規則や決まりを大事にした人といった意味にしかなりません。

すこし前に、マニュアル統治がさまざまな企業で大流行し、社内の活動のあらゆるものがマニュアル化されて成分化されれる、そのために会社が莫大なコストを払ったという時代がありました。
そのマニュアルは、いわば業務上の法家思想みたいなイメージのものであったわけですが、もともとは「灋家」なのであって、何が悪かを明確にするのが「灋家思想」であるわけです。

つまりやり方を決めてマニュアルにすることが、あたかも正しい行動のようにもてはやされたのは、実は、まったく間違った物事の考え方であって、東洋思想における「灋家思想」なら、何をしたら罪に問うぞ、ということだけが決まっていればよいのであって、マニュアルはいりません。

この点、昨今の国会の様子を見ても、まるではき違えている人が多くて、なんでもかんでも、やりかた手段方法まで、法で決めようとしている傾向があります。
現実には、何が起きるかわからないのが世の中ですし、その予定していなかったことにも対処しなければならないのが政治なのです。
これをはき違えた人が多いのは、なんだか文字や言葉の混乱に起因しいているような気がします。

さて、いまにして思えば、我が国が大日本帝国憲法を作成したときに、そもそも「憲法」という用語を用いたことが、大きな過ちのもとであったとわかります。
いまさら言ってもはじまりませんが、本当なら江戸時代の翻訳にならって「大日本帝国律例」くらいにしておけばよかったのです。

これを直す機会が、先の大戦の終戦後にやってきたのですが、そのときも、みすみす「憲法」という用語を残してしまいました。
せめて、このときに英語名である「Constitution and Government of Japan」の日本語訳を、「日本国憲法」ではなくて「日本の政府のための法律」くらいにしておけばよかったのです。

なぜなら日本人は「憲法」と聞けば、自動的に聖徳太子の十七条憲法を思い浮かべ、「万古不易の守るべき人の道」と思ってしまうからです。
無理も無いことです。
十七条憲法は、誕生してから1400年間も、皇国臣民に親しまれてきたのです。

しかし日本国憲法の、どこをどう読んでも、そこには「万古不易の守るべき人の道」など書いてありません。
当然です。なぜなら日本人でない人がそもそも英文で作ったものを、日本人が翻訳したものだからです。

つくづく、翻訳というのは大事なことだと思います。
その意味では、大学に語彙学研究所なんてものがあっても良いくらいに思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

人気ブログランキング
↑ ↑
応援クリックありがとうございます。

講演や動画、記事などで有償で活用される場合は、
メールでお申し出ください。

nezu3344@gmail.com

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
\  SNSでみんなに教えよう! /
\  ねずさんのひとりごとの最新記事が届くよ! /

あわせて読みたい

こちらもオススメ

コメント

takechiyo1949

悪しき前法を破る!
『憲法は聖書では無い!』
他の「ねずブロ」にもコメントしましたが、憲法は金科玉条ではありません。

変えてはいけない?
そんなこと有り得ません。
人が作ったものですから。

軍事力
資金力
政治力
どれが欠けても国家の独立は達成も維持もできません。

『後法は前法を破る』
豈國を目指したいならば、悪しき前法を破る時は今だと思います。
非公開コメント

検索フォーム

ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう) HN:ねず

Author:小名木善行(おなぎぜんこう) HN:ねず
連絡先: nezu3344@gmail.com
電話:080-4358-3739
出身:静岡県浜松市
住所:千葉県野田市
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんのひとりごと」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「明治150年真の日本の姿」、「日本と台湾の絆」、「奇跡の将軍樋口季一郎」、「南京事件は4度あった」、などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。
日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
《著書》
『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!和と結いの心と対等意識』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!日本はなぜ戦ったのか』
『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』日本図書館協会推薦
『ねずさんと語る古事記 壱〜序文、創生の神々、伊耶那岐と伊耶那美』
『ねずさんと語る古事記・弐〜天照大御神と須佐之男命、八俣遠呂智、大国主神』
『誰も言わない ねずさんの世界一誇れる国 日本』
最新刊
『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』
『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』

スポンサードリンク

カレンダー

06 | 2020/07 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

最新記事

*引用・転載・コメントについて

ブログ、SNS、ツイッター、動画や印刷物作成など、多数に公開するに際しては、必ず、当ブログからの転載であること、および記事のURLを付してくださいますようお願いします。
またいただきましたコメントはすべて読ませていただいていますが、個別のご回答は一切しておりません。あしからずご了承ください。

スポンサードリンク

月別アーカイブ

ねずさん(小名木善行)著書

ねずさんメルマガ

ご購読は↓コチラ↓から
ねずブロメルマガ

講演のご依頼について

最低3週間程度の余裕をもって、以下のアドレスからメールでお申し込みください。
テーマは、ご自由に設定いただいて結構です。
講演時間は90分が基準ですが、会場のご都合に合わせます。
E-mail nezu3344@gmail.com

電話  080-4358-3739

スポンサードリンク

コメントをくださる皆様へ

基本的にご意見は尊重し、削除も最低限にとどめますが、コメントは互いに尊敬と互譲の心をもってお願いします。汚い言葉遣いや他の人を揶揄するようなコメント、並びに他人への誹謗中傷にあたるコメント、および名無しコメントは、削除しますのであしからず。

スポンサードリンク