二宮金次郎が説く世界観の要約と新しい経済とは



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現代社会は西洋の論理を取り入れていますから、お金を稼ぐこと、それを貯め込むことに価値があり、たくさん稼ぎ、たくさん貯め込んだ人が、いわゆるお金持ちです。
そしてお金持ちになることが、庶民の夢とされています。
一方、二宮金次郎がいう経済の「推譲(すいじょう)」は、働いて稼いだら、その稼いだお金は世のため人のために積極的に使いなさいというものです。
つまり世の中全体として、
「稼ぐためにお金を動かす」のではなく、
「稼いだものを世のため人のために使う」
という、西洋型経済とは真逆の経済モデルです。


20180904 二宮金次郎
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


あるところに書かれていた文章を、そのまま引用します。
(仮名遣いと漢字は現代仮名遣いに直してあります)

────────
二宮金次郎は、
家がたいそう貧乏であったので、
小さいときから
父母の手助けをしました。

金次郎が十四のとき
父が亡くなりました。
母は暮らしに困って、
金次郎と次の子を家におき、
末の乳飲み子を
親類に預けました。

しかし母は、
その日から預けた子のことが気にかかって、
夜もよく眠れません。

「今頃は、
 目を覚まして
 乳を探して
 泣いているであろう」
と思うと、
かわいそうでならなくなり、
いつもこっそり泣いていました。

金次郎はそれに気がついて、
「おかあさん。
 どうしてお休みになりませんか。」
と聞きましたが、母は、
「心配しないでおやすみ。」
と言うだけでした。

金次郎は、
「これはきっと
 預けた弟のことを
 心配していらっしゃるのに違いない」
と思って、
「おかあさん、
 弟をうちへ連れて帰りましょう。
 赤ん坊がひとりぐらいいたって、
 なんでもありません。
 私が一生懸命に働きますから」
と言いました。

母はたいそう喜んで
すぐに親類へ行って、
赤ん坊を連れて
戻りました。

親子四人は、
一緒に集まって喜び合いました。
────────

何の本に書かれている文かといいますと、戦前の尋常小学校三年生向けの修身教科書です。
その「4,孝行」として、この少文が掲載されています。

以前にも述べましたが、修身教育というのは、特定の価値観を子供たちに植え付けるものではなくて、子供たちが自己の価値観を確立するための「価値観の元(もと)」になるものを育むものです。

ですから、もちろんこの抄のタイトルは「孝行」ですが、読んで頂ければわかることですが、単に親孝行のことのみを語っているわけではありません。
自分がその当事者となって考えることによって、では自分ならどうするのか。それによって何ができるのか、どうしたら良いかを子供たちに考えさせることによって、その子の持つ傾向性をより伸ばそうとしたのです。

この少文においても、女子児童なら、自分がその母の立場として考える。
男の子なら父として、あるいは金次郎の身の上となって考える。
対象学童は小3ですから、14歳の金次郎といえば、兄の年齢かもしれません。
兄がそうして、家族を支えようとするとき、では弟の自分なら、いま何をしなければならないのか。
そして家族のよろこびとはなにか。

そういったことを小3の子供たちから引き出していったわけです。
そのどこが価値観の押しつけなのでしょうか。

ここで扱われている二宮金次郎は、江戸時代後期の経世家、農政家、思想家で、自ら社会に実績をあげて貢献しただけでなく、「至誠・勤労・分度・推譲」という報徳思想を唱えました。
簡単にまとめると、

「至誠」
道に沿った心を誠といい、我が心を誠・徳・仁の状態に置くこと。
生きる上での第一となるもの。
「勤労」
至誠に基づいて日常生活を送ること。
至誠が心の状態を指すのに対して、勤労は至誠に基づく行動を指す。
「分度(ぶんど)」
心に至誠を起き、日々勤労に励み、贅沢を慎むこと。
「推譲(すいじょう)」
分度して残った利益を他に譲ること。

我が国では、長い間、お米が税金であり、給料もお米で支払われていました。
このことをもって、
「お金は政府の信頼に基づくもので
 信頼のおけない政府のもとではお金は信頼されない。
 だから日本では近代になるまで
 信頼される政府がなかったから
 お金が普及しなかったのだ」
と述べる学者の先生もおいでになります。

しかし日本では708年の和同開珎の時代から通貨が発行され、秀吉が黄金の小判の発行を開始すると、小判はまたたく間に日本中に普及していきました。
信頼されない政府どころか、日本では古来、政府や行政は、もっとも民衆から信頼されるお役所だったのです。
また、信頼されない政府というなら、いま米国でも英国でも、世界中の先進国では、中央銀行が通貨の発行を行っています。
政府が通貨を発行したら何をしでかすかわらかない(笑)から、機構を別々に分けているのですから、そういう意味からしたらむしろ現代世界の政府のほうが、かつての日本よりはるかに民衆の信頼がないことになります。

また室町後期に日本にやってきた朝鮮通信使は、
「我が国は旅行の度に衣食のための様々なものを持参しなければならないが、日本ではお金というものだけを持っていればどこにでも泊まることができるし食べることにも困らない」と、日本を絶賛した記述をしています。
要するに日本では古い時代から、貨幣経済が見事に実現していたわけです。

ところがそうであるにもかかわらず、ではどうして年貢も俸禄もお金ではなく、お米だったのかというと、これが非常に簡単な理屈です。
つまりお米は、「貯め込むことができない」のです。
お蔵に山積みしていても、何年かしたら傷んでしまいます。
つまり使わなければならないのです。

二宮金次郎の「推譲(すいじょう)」というのは、そういうことをいいます。
つまり、お金は、ただ貯め込むばかりではなく、積極的に世のために使えと、二宮金次郎は述べているわけです。

これがどういうことかというと、一般に、経済というのはお金の流れのことをいいます。
経済が発達するということは、お金が動き、その動くお金の量が増えることをいいいます。

現代社会は西洋の論理を取り入れていますから、お金を稼ぐこと、それを貯め込むことに価値があり、たくさん稼ぎ、たくさん貯め込んだ人が、いわゆるお金持ちです。
そしてお金持ちになることが、庶民の夢とされています。

現代社会は西洋の論理を取り入れていますから、お金を稼ぐこと、それを貯め込むことに価値があり、たくさん稼ぎ、たくさん貯め込んだ人が、いわゆるお金持ちです。
そしてお金持ちになることが、庶民の夢とされています。

一方、二宮金次郎がいう経済の「推譲(すいじょう)」は、働いて稼いだら、その稼いだお金は世のため人のために積極的に使いなさいというものです。
つまり世の中全体として、

「稼ぐためにお金を動かす」のではなく、
「稼いだものを世のため人のために使う」
という、西洋型経済とは真逆の経済モデルです。

どちらもお金が動きます。
ただ違いは、前者の場合、お金は、単にお金持ちのお蔵に吸い込まれていきます。
ですから上の人は、どこまでも大金持ちになり、吸われるだけの庶民はいつまでも貧しいままに置かれます。

ところが後者は、お金をみんなが使います。
たくさん稼ぐ人はたくさん使うし、そうでない人もそれなりに使います。
要するに年貢米と同じです。
いってみれば、通貨が利用期限付きで発行されているようなものです。
使っても使わなくても失われてしまう。
ですから使わなければもったいないのです。

そうすることで社会にお金が回ります。
生産が増え、お金が増えれば経済規模が拡大し、みんなが豊かになっていきます。
そしてそのお金が公益のために使われれば、社会インフラが整い、国民は豊かさだけではなく、安全と安心を手に入れることができます。

これが二宮金次郎の唱えた報徳思想を経済から捕らえた考え方です。
そんなものは理想論にすぎないと言う人がいるかもしれません。
しかし、これは江戸時代までの年貢米で実際に行われてきたことだし、社会の発展とは、人々の理想に現実を近づけていくことをいいます。

お読みいただき、ありがとうございました。

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コメント

takechiyo1949

修身教育は必須です
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また、電車の中で。
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Netでも。
『金次郎の歩き読書はいいんかい!』
こんな書き込みがあり、斯くして学校の銅像は座ってしまいました。

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-

No title
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皆さま、どうぞご協力をお願いいたします。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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