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常に相手があり、相手の動きの先を読んで、戦いを制する。
現代日本人は、うわべだけの数値や出来事を単に「評価」することに馴れ、出来ごとの裏側にある深い「洞察」や「思考」といったものを、忘れているような気がします。
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画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)相手の出方をしっかりと読んで、陣を構築したり、敵将を追い詰めたり、運を天にまかせるギャンブルとも違う、人と人との駆け引きや勝負を行うのが将棋です。
将棋は、思考力や洞察力を養うといわれてます。
将棋といえば、大好きなプロ棋士に、升田幸三(ますだこうぞう)がいます。
大山名人とともにひとつの時代を築いた人で、将棋界では知らない人はいない実力制第四代名人です。
破天荒な人柄と独創的な指し手で、三冠独占を果たした天才棋士で、「魅せる将棋」、「新手一生」などの名言を残しています。
升田幸三は、大正7(1918)年の生まれ、広島県三次市の出身です。
この升田幸三が戦後間もない頃、GHQに呼ばれたときの対話が、本人の回顧録に残されています。
以下、引用します。
~~~~~~~~~~~~
『名人に香車を引いた男
―升田幸三自伝 』(中公文庫)
■缶ビール片手に放談
おなじ年の夏、私はGHQに呼び出され、大演説をブッておるんです。
対局とか、木見先生の代理で関西本部の仕事とか、東京へ出る機会がわりと多かった。
現在の朝日新聞顧問、当時は業務局長だった永井大三さんと意気投合して、上京すると朝日の本社に転がりこみ、永井さんの部屋をねぐらにしとったんだが、ある日、業務局次長の窪川さんが、
「GHQでお前にこいといっている。
いろいろ将棋の話が聞きたいそうだ」という。
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将棋界には大成会という組織があり、木村義雄という立派な会長がおられる。
将棋の話なら、そっちから聞くのが筋だろう。
だがアメリカさんのご指名とあれば、いやでも出向かなくちゃならん。
GHQの本部は皇居のお濠の手前、いまの第一生命のビルにあった。部屋に通されると、ベタ金の軍服を着たエラそうなのが4、5人、脇に通訳がいる。
「酒を飲ませてもらいたい」
開口一番、私はこういった。
自分は5歳の時から、酒を飲んで育っておる。
酒を飲みながら人と話をするのが、自分の習慣である。
「よろしい。
日本酒はないが、
ビールとウィスキーがある。
どちらがよいか」
「ビールをちょうだいする」
これはね、あらかじめ立てていった作戦なんです。
いったいなにを聞こうとするのか、相手の意図が分からん。
うかつにしゃべって、言葉じりでもつかまれたらアホくさい。
ビールを飲めば、必然的に小便が近くなる。
難しい質問をされたら便所へ立ち、じっくり返事を考えよう、というんです。
よろしいといいながら、なかなかビールを出してくれん。
催促すると、目の前に並んどるという。
なんのことはない。
缶ビールなんだ。
こっちは横文字が読めんし、ビールの缶詰があるなんて、夢にも知らない。
空けて、飲んでみる。まずい。
「まずいなあ。
これ、本物のビールか」
大声でそういったら、みんなビクッとした。
よし、この調子なら大丈夫だろう。
やがて質問が始まる。
「剣道とか柔道とか、
日本は武道というものがある。
おかげでわれわれは、
沖縄の戦いで手を焼いた。
武道とは危険なものではないのか」
「そんなことはない。
武道の武とはホコ(矛)を止めると書く。
身につけても外へは向けず、
おのれを磨くのが武道である。
武士道とは言葉づかいの道のことだ」
ビールをまずそうに飲みながら答えると、あちらさんも気をつかって、
「ナポレオンがある。
これはどうか」という。
ナポレオンが高級な洋酒であることを、これも私は知らない。
「ナポレオンなんて、
冬がくると負けちまうような将軍、
私ゃ好きになれん」
トンチンカンな返事をするから、通訳はオロオロしおる。
「われわれのたしなむチェスと違って、
日本の将棋は、
取った相手の駒を自分の兵隊として使用する。
これは捕虜の虐待であり、
人道に反するものではないか」
おいでなすったな、と思った。
たぶんこれをいってくるだろうと、覚悟しておった。
「冗談をいわれては困る。
チェスで取った駒をつかわんのこそ、
捕虜の虐殺である。
そこへ行くと日本の将棋は、
捕虜を虐待も虐殺もしない。
つねに全部の駒が生きておる。
これは能力を尊重し、
それぞれに働き場所を与えようという思想である。
しかも敵から味方に移ってきても、
金は金、飛車なら飛車と、
元の官位のままで仕事をさせる。
これこそ本当の民主主義ではないか」
こういうと、一気にまくし立てたようですが、一区切りごとに通訳が入って時間がかかる。
その間、こっちはまずいビールをグイグイ飲む。
「あなた方はしきりに民主主義を振り回すけれど、
チェスなんてなんだ。
王様が危なくなると、
女王を盾にしても逃げようとするじゃないか。
古来から日本の武将は、
落城にあたっては女や子供を間道から逃がし、
しかるのちにいさぎよく切腹したもんだ。
民主主義、民主主義と、
バカの一つ覚えみたいに唱えるより、
日本の将棋をよく勉強して、
政治に活用したらどうだ。」
酔いにまかせていいたい放題いうもんだから、ベタ金の将校さんも毒気に当てられ、苦笑するばかり。
こうなればホラの升田の独壇場です。
「お前らは日本をどうするつもりなんだ。
生かすのか殺すのか、
はっきりしてくれ。
生かすなら、
日本将棋にならって人材を登用するのがいい。
殺すというならオレは一人になっても抵抗する。
日本が負けたのは、
武器がなかったせいだ。
オレはよその飛行機を分捕ってきて、
お前らの陣地に突っ込んでやる。」
いやもう滅茶苦茶です。
酔いが回るにつれて、「あなた方」と呼んどったのが「お前ら」に変わり、おしまいには「おんどれら」になった。
これには通訳が困惑して、意味が分かりませんという。
「おんどれらとは、
大あなたという意味で、
これ以上はない尊敬の言葉だ。
こんなのを知らんどって、
よく通訳がつとまるな」
ハハアと通訳の奴、不思議そうな顔で納得した。
木村前名人のことも話題に出たので、
「戦争中、あの人が海軍大学などを講演して回り、
おかげで日本は戦争に負けた。
オレが代わりにやっとったら、
日本が勝っておる。
おんどれらにとっちゃ、
あの人は大恩人なんだぞ」といってやった。
■戦犯をうまく使え
かれこれ5、6時間も話とりましたかな。引き揚げていいというから、
「余計なことかも知らんが、
一つ注文がある。
巣鴨にいる戦犯の連中を
殺さんで欲しい。
彼らは万事よく知っており、
連中を殺すのは、
字引を殺すようなものである。
生かして役立てる道を考えてもらいたい」
こういったら、ベタ金の一人がフンフンとうなずいて、
「よくわかった。
沈黙は金とかで、
日本人は口が重い。
戦犯たちにいろいろ聞いても、
すっきりした返事をしてくれない。
だが貴公は実によくしゃべる。
珍しい日本人である」
といいおった。
シャクにさわったから、最後にこういって帰ってきた。
「日本人は菜食主義で、
元来がおとなしいんだ。
それをおんどれらは、
やれ肉を食え、牛乳を飲めと、
日本人の血圧を高くさせ、
短気にさせようと心がけよる。
いらんことをせんといてくれ」
帰りしなに、ウィスキーを持って行けという。
大風呂敷をひろげた男が、ヘイありがとうともらっては、コケンにかかわる。
のどから手が出るほど欲しかったが、いりませんと断った。
必要ならいつでも取りに来いと、感じはよかったです。
ライシャワーさんと一緒に講演したり、ロバート・ケネディにお説教するようになったのは、この時のお喋りが切っ掛けだったんでしょう。
大阪を本拠地にしとる私が、なぜGHQに指名されたのか、いまもって理由はわかりません。
思い出してみて、よくまあズケズケとしゃべりまくったもんだと、自分ながらあきれます。
私には、酔ってしゃべり出すと止まらないところがあるんです。
でも、よかったんじゃないかな。
私の放談のおかげで、吉田茂さんはやりやすくなったんだと思う。
~~~~~~~~~~~
「生かすなら、日本将棋にならって人材を登用するのがいい」
この言葉は、結果としてGHQによる「日本にもとからあった行政機構や人材の再登用」の道を開いています。
升田名人からのヒアリングは、単なる放言という枠を超えて、日本人による日本の独立を果たす一翼を担ったといえるのかもしれません。
昨今、いろいろな分野で「マニュアル化」などが叫ばれ、なんでもかんでもマニュアルを作り、マニュアル通りにやることが「正しいこと」とされるような風潮があります。
しかし碁や将棋には、マニュアルなどありません。
常に相手があり、相手の動きの先を読んで、戦いを制する。
現代日本人は、うわべだけの数値や出来事を単に「評価」することに馴れ、出来ごとの裏側にある深い「洞察」や「思考」といったものを、忘れているような気がします。
名人の碁や将棋にみるように、ここで「飛車」を取られても、最後に「王手」がかかるという、深く長い「読み」。そうしたものが、すくなくとも戦前や戦後の一定の時期までは、確実に、日本にあった。
すくなくとも、そうした「読み」に対する訓練があったなら、多くの日本人が「子供手当」などという露骨な利益誘導に釣られて、ろくに考えもせずにミンス党などに政権を渡すことはなかったのではないか。
日本にいま必要なことは、単に現象面に捉われた対処療法だけでなく、政治の根本を見直すもっと抜本的な根治療法なのではないかと思います。
※この記事は2010年3月の記事のリニューアルです。
お読みいただき、ありがとうございました。

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コメント
びろびろびん
残念ながら公職追放で多くの有能な駒が飛ばされてしまったのが本当に悔しいです!
2019/03/29 URL 編集
kaminari
目先の一喜一憂にとらわれてしまいがちです。
そこは素直に反省しなくてはいけません。
また、徴用工だのとイメージ操作された言葉で訴えている隣国の若者を
採用しているらしい日本の大企業?も、愚かとしか言いようがありません。
今は本国に仕事が無いことから、自ら希望して来ていても、数十年後には
強制されたとか騙されたとか、いいがかりをつけられ、訴えられかねない事を
認識しているのでしょうか?
2019/03/29 URL 編集
岡 義雄
今日も拝読させていただきました。シェアさせていただきました。
ありがとうございます。
僕はイベント屋で、音響、照明、美術、映像、制作、編集など、
外現場だけではなくホールも同様に生業として行っていますが、
常に考える、現場対応する、音や照明は持てる能力を駆使して
演出する、が日常です。そして、本番以外はモロに肉体労働です。
お客様のオーダーに如何に答えるか、オーダーから公演終了まで
息が抜けない仕事です。そして頭はフル回転!神経を研ぎ澄ませ
ないと、絶対ミスします。ボケる暇なし、なんですけど、最近は
言われたことが、何時までたっても満足に出来ない若者がいます。
頭でっかちが多いのも悩みのタネです。
時間はかかりますが、学校教育、家庭教育、全て見直ししないとと
切に思います。
2019/03/29 URL 編集
takechiyo1949
サラリーマン時代はマニュアル作りを散々やりました。
マニュアル化を望む人と嫌う人がいます。
良い面も悪い面もあります。
先ずは法令というマニュアルを守らねばなりませんが、法に触れなければ何をやっても良い訳ではありません。
マニュアルの範囲内での仕事は結果の責任を問われませんから、ある意味気楽です。
反面、品質や商いは安定しても自由な創意工夫は望めません。
マニュアルを有効活用して機能させる…正に至難の技です。
何よりも「明察功過」が基本だと思います。
2019/03/29 URL 編集