心あてに折らばや折らむ



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政治のことを「色物(いろもの)」と言います。
虹を見たらわかります。
虹は七色と言われ、虹を見ると赤から黄色、青の色があるのがわかりますが、ではどこまでが赤で、どこから黄色になり、青になるのか、その境界線はきわめて曖昧です。
しかし境界は曖昧でも、それでもやっぱり赤は赤、青は青です。


20190425 凡河内躬恒
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


百人一首の29番に凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の歌があります。

 心あてに折らばや折らむ
 初霜の置きまどはせる白菊の花

(こころあてに おらはやおらむ はつしもの
 おきまとはせる しらきくのはな)

歌を現代語訳すると、
 あてずっぽうにでも、折れるなら折ってしまおう。
 初霜が降りているのと見惑わせる白菊の花
となります。

凡河内躬恒は、身分は決して高くなかった人ですが、後年、藤原公任(ふじわらの きんとう)によって、三十六歌仙のひとりに選ばれました。
紀貫之(きの つらゆき)とも親交のあった和歌の世界のエリートです。
そしてこの凡河内躬恒は、たいへんに思慮深い、深みのある歌を多く詠む大歌人(詠み口深く思入りたる方は、又類なき者なり)と言われた人でもあります。

ところがこの歌を正岡子規は、
「初霜が降りたくらいで
 白菊が見えなくなるわけがないじゃないか」
と酷評しています。
このため多くの訳も「霜の降る寒い朝に、白菊の花を折ろうと思っても、霜か白菊か区別がつかないよ。仕方がないから、あてずっぽうに折ってしまおう」といった、あくまでも霜と白菊に限定した解釈しかなされていいないようです。


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20190317 MARTH



正岡子規が指摘しているように、いくら霜が白いといっても、菊の花と霜の区別くらい、誰だって簡単に見分けがつくことです。
では、そんな歌のどこが名歌といえるのでしょうか。

実はこの歌を読み解く最大のキーワードは「白菊」です。
菊の御紋は、いったいどういう人たちが用いるものでしょうか。
わたしたちがよく知る「錦の御旗」に代表される菊の御紋は、皇室の御紋で、正式名称は「十六八重表菊」といいます。
戦前までは、皇族になると同じ「菊の御紋」であっても花びらの数が違っていて「十四一重裏菊」の御紋になります。

また、有栖川宮様、高松宮様、三笠宮様、常陸宮様、高円宮様、桂宮様、秋篠宮様なども、それぞれ菊の御紋をお使いになっておいでになりますが、それぞれ図案はご皇室の「十六八重表菊」とはデザインが異なるものになっています。
ご興味のある方は、ネットなどでお調べいただいたら良いですが、要するに菊の花というのは、そのままご皇室を暗示させる用語になります。

そして「霜(しも)」は、同じ音が「下(しも)」です。
つまり凡河内躬恒は、たとえご皇族であったとしても、下との境目の見分けがつかないなら、手折ってしまえ!と言っているのです。
凡河内躬恒は、日頃はとてもおだやかな人であったと伝えられています。
けれどその穏やかな人が、この歌では実はものすごく過激な発言をしているのです。

所有を前提とする社会では、上の人は下の人を所有(私有)しますから、下の人が上の人を批判したり、「手折ってしまえ」などと過激な発言をしたら、その時点で殺されても仕方がないことになります。
ところが、歌がうまいとはいっても、身分は下級役人でしかない凡河内躬恒が、このような過激な発言をしても、まったく罪に問われることはない。
つまり、この歌は、ひとつには凡河内躬恒が生きた9世紀の後半から10世紀の前半にかけての日本、つまり千年前の日本に、ちゃんと言論の自由があったことを証明しています。

この歌の意味は、詠み手の凡河内躬恒が「白菊と霜の見分けがつかない阿呆」なのではありません。
菊の御紋は、一般の民衆を「おほみたから」としているのです。
ですから権力者が統治する下々の人々は、権力者から見たときに、それを「おほみたから」とするご皇室の方々と同じ位置にあるのです。
そういうことがわからないなら、それがたとえ御皇族の方であったとしても、「手折ってしまえ」と凡河内躬恒は詠んでいるのです。

初霜と白菊は、同じようにみえるものであっても、その本質がまるで異なるものです。
そして民衆は「支配するもの」ではなくて、
民衆は、天皇の「おほみたから」です。
ところが、権力を得ようとする人や、権力に安住する人、あるいは権力を行使する人は、ややもすれば、自分よりも下の人を、自分の所有物と履き違えます。
その区別は、実はとてもむつかしい・・つまり両者はとても似ているのです。

言葉にすれば「シラス」と「ウシハク」の違いです。
けれど、その違いは、権力に目がくらむと、まったく見えないものになります。
なぜなら「シラス」も「ウシハク」も、どちらも統治の基本姿勢のことであり、「統治」という意味においては、白菊と霜の白い色のように、同じ色をしているからです。

政治のことを「色物(いろもの)」と言います。
虹を見たらわかります。
虹は七色と言われ、虹を見ると赤から黄色、青の色があるのがわかりますが、ではどこまでが赤で、どこから黄色になり、青になるのか、その境界線はきわめて曖昧です。
しかし境界は曖昧でも、それでもやっぱり赤は赤、青は青です。

だからこそ我が国は、古来から「シラス」を統治の根本としてきました。
けれど、いつの時代にも「ウシハク」人はいるのです。
その違いがわからないなら、「心あてに折らばや折らむ」、
つまり当てずっぽうでも良いから折ってしまえ(放逐してしまえ!)と凡河内躬恒は詠んでいます。

これを我が国の高位高官の人が言ったというのなら、いささか傲慢さを感じてしまうのですけれど、身分の低い凡河内躬恒が、うたいあげたところに、この歌の凄みがあります。

百人一首の歌の順番には、歌を解する上において、とても大きな意味があるのです。
そしてこの歌は28番歌の源宗于(みなもとのむねゆき)と並んで、我が国の統治の在り方の本質を、わたしたちに厳しくもやさしく教えてくれている歌なのです。

(出典:『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』)

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『手折ってしまえ』
気持ちは良く分かります。

条項

皇籍をGHQに剥奪されて、皇籍降下される皇族に対して昭和天皇は 「またいつ皇室に復帰されるかも知れないので慎ましく生活していてください」 との趣旨を述べられたことは周知の事実



これまで国民には、
ここに提示した皇族に復帰できる立派な男子の皇族の存在情報が
封印されてきました。!!

大塚耕平議員が、同書の旧皇族の家系図のフリップを示されて、
東久邇家にいらっしゃる悠仁親王殿下と又従兄弟の同世代の五名の男子を
説明されていたのなら、その内の二家族が皇籍復帰していただけるだけで、
悠仁親王殿下が天皇になられて男子の御子様が誕生されなくても、
悠仁親王殿下と同世代の東久邇家五名の男子には
すでに三名の男子の御子様がいらっしゃるので、
皇室は100年安泰になることを国民は一瞬で理解できたと思われます。

安倍首相等国会議員は、
旧皇族に触れると戦後70年を過ぎ民間人云々と発言しますが、
皇籍をGHQに剥奪されて、皇籍降下される皇族に対して昭和天皇は
「またいつ皇室に復帰されるかも知れないので慎ましく生活していてください」
との趣旨を述べられたことは周知の事実です。

それに対して、安倍首相等国会議員のひとつ覚えのような
「70年を過ぎ民間人云々」のことばは通用しません。

GX

古今の人と新古今の人
菊花が皇室の紋章となるのは、後鳥羽天皇(上皇)が菊を大変好まれたことに由来するとされておりまして、凡河内躬恒の時代に菊花を以て皇室をあらわすことはなかったのではないかと愚考いたしますがいかがでしょうか。

ただし、百人一首の選出は後鳥羽上皇が破れ、流された後ですから、藤原定家が本文の御主張の意味を込めてこの歌を選んだのだということならあり得るかもしれません。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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