古事記における天迦久神(あめのかぐのかみ)とお地蔵さんについて



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世界を見渡せば、人類社会は力さえあれば、強ければ、何をやっても赦されるということがほんの十九世紀まで常識でしたし、そういう国はいまでもあります。
しかし我が国では、1300年前に書かれた古事記において、武は、どこまでも慈愛を根幹としなければならないと説いているのです。
これはものすごいことです。


20190824 お地蔵さん
画像出所=http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/12/31.htm
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


書いたものというのは、研究の結果ではありますけれど、同時に、書いた時点が「新たな出発点」になります。そこを土台にして新たな研究を進めていくからです。
『ねずさんと語る古事記』を書き上げたときは、それがその時点における自分なりの最高峰だったわけだけれど、その後にたとえば「隠身」というものすごく重要な用語にあらためて気付かされたりするわけです。

「知(し)る」ということは、神様から大切なお知恵をいただくということだというのが、我が国の古くからの考えです。
何かを知った、何かの研究成果があがった(これは文学や歴史に限らず科学などの理工系も同じです)というのは、もちろん個人の努力もさりながら、それ以上に、周囲の助けを借りながら神様からお知恵をお下げいただいたということだと考えられてきたのです。

素晴らしい発見や発明であっても、我が国では、その発明や発見をした個人に、何かの賞を与えるということはしてきませんでした。
あくまでもその人を通じて、その開発や発明発見に関わった人たちみんな、つまりその一族やその家にお褒めがあったものでした。

周囲への感謝を忘れ、「俺の考えだ!」と天狗になれば、その人がどんなに優秀な人であったとしても、神様はその人にそれ以上の知恵をお授けになることはありません。
要するに、それで打ち止めになります。



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20190317 MARTH


神々が知恵を授けてくださるときは、その人に応じて、これは必ず、小出しに行われます。
はじめから全部を与えてくれることは決してありません。

知恵をいただきますと、それはものすごい感激があります。
世界を見る目が変わってしまうほどの驚きと感動があります。
しかしそれで天狗になり、「俺のおかげさ」などと思うようになったら、神様はその瞬間にその人を見捨てます。
見捨てられたら、それ以上の知恵は一切授けられなくなります。

逆に、神様から教えていただいたことに感謝し、またそういう教えをいただけるように協力してくれた周囲のみなさんや家族に感謝し、謙虚な気持ちで、日々の研鑽を重ねていくと、神様は、次のステップの教えをくださいます。

さて、本題です。
これは古事記の葦原の中つ国の平定のところに出てくるお話です。
高天原は、大国主神がおさめる葦原の中つ国を平定するために、天菩日神、天若日子を中つ国に派遣し、いずれも失敗に終わります。

そこで高天原では八百万の神々が三度(みたび)集って会議を行ない、次に天尾羽張神(あめのをははりのかみ)を派遣しようと決めます。

そしてその尾羽張神がおいでになる場所は、天の安河(やすかわ)の川上にある急流であり、そこは「天の安河の水が塞(せ)き止められていて、川の道が塞(ふさ)がれ、他の神が行くことができない場所」と描写されています。
天尾羽張神というのは、剣の神様です。

そしてその剣の神様がおいでになる場所は、なかなか行けない場所なので、「天迦久神(あめのかぐのかみ)」が遣(つかわ)されることになるのです。

この「天迦久神」について、『ねずさんの古事記』では、岩波の日本古典文学大系に基づいて、
 「迦久」は「鹿久」のことで、
  鹿の神であろうとか、
 「加久」は「輝く」で
  剣が光り輝くという意味

という従来からある説を本の中でご紹介させていただきました。

けれど、今回、それは間違っていると気付かせていただきました。
全然違うのです。

まず「迦」という字は、祝詞(のりと)を唱えながら進むことを意味する漢字です。
長く久しく祝詞を唱え続ける神様だから、神々に守ってもらえるから、安全に尾羽張神のところまで行ける・・・とこれがひとつ。

もうひとつ(こちらが大事なのですが)、この「迦」に当てられた音読みの「カ」は、チャイナにおいて、昔、梵字の「カ」を訳したものとして造られた漢字です。

その梵字の「カ」は、サンスクリット語の「クシティ・ガルバ」のことです。
「クシティ・ガルバ」とは、
  クシティが大地
  ガルバが子宮、
つまり「大地の母胎」を意味します。
その「大地の母胎」を、漢字二字で「地蔵」と表現するようになりました。
「大地のお蔵」だから「地蔵」です。
ですからお地蔵さんは慈愛の象徴です。

どうしても最後に剣(つるぎ)の神様を迎えに行かなければならなくなったということは、最後の手段として「武力を用いなければならなくなった」ということです。
それは滅多なことでは用いてはならないものだから、激流の先の、誰も行くことができないような難所に天尾羽張神がおわすと書いているのです。

そしてその天尾羽張神をお迎えに行く神様は、武神ではなく、どこまでも慈愛を象徴するお地蔵様のお仕事であると古事記は描写しているわけです。
世界を見渡せば、人類社会は力さえあれば、強ければ、何をやっても赦されるということがほんの十九世紀まで常識でしたし、そういう国はいまでもあります。

しかし我が国では、1300年前に書かれた古事記において、武は、どこまでも慈愛を根幹としなければならないと説いているのです。
これはものすごいことです。

お読みいただき、ありがとうございました。


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コメント

Toshiro Akizuki

歴史のミステリーゾーン
ねずブロは目からうろこ、が定評ですが、さらに、ミステリーゾーンへと誘われる。本稿も歴史のミステリーへの知的な刺激をうけます。般若心経のモチーフは、八正道の悟りを得たときに、川の向こう(上流の涅槃)へとわたっていき、彼岸にたどりつくという心象です。悟りの中身は慈愛、慈悲、知恵などの感得ですが、仏教と同じモチーフが古事記の中にあるというのは、興味をそそられます。仏教の方が古いので仏教の話を編入したとも考えられますが、古事記では、神代の話ですので、古神道の時代から伝承があったとも考えられます。私説ですが、古神道の一派が、超古代(5000年以上前)に大陸に渡ってヒマラヤ山中に住み着き、釈迦族となって仏陀を生んだのではないか?というのは、まず、パーリ語が音声学的に日本語に極めてにていること。巻き舌、帯気音の強いインド諸語と全く違う。子音と母音が一音節をつくり、すべての単語が母音または、んで終わることなど、聴覚的には日本語と全くおなじです。文化的にも、腐肉のにおいがして男根像をご神体とするヒンズー教の寺院などと全く違い、仏教は清浄な気風が日本的で、だからこそ、仏陀の時代にはインド人に外来文化として尊重され、しかし、長期的には異質な文化だからこそ排除されてしまった。あめのかぐのかみ(地蔵)が、あめのをははりのかみ(剣の神)を急流をさかのぼって迎えにいき、慈愛で説得するというのは、仏教的ですが、むしろ古神道がオリジンのナレーションではないか、というような、ミステリーゾーンにひたっています。地蔵(子供を守る菩薩、神)という概念は、ちょっと日本以外の文化では存在しえない。若い頃何度もインドに行き、それ以来、半世紀、あれこれ時にふれ、興味をもって趣味で研究しております。

takechiyo1949

日本人の本質
今朝の「ねずブロ」は、とても重要なので、印刷して『古事記』に貼り付けました。

『…日本人にとっては、道徳的であること自体が空気のようにあたりまえのものであった…』
ねずさんのお言葉です。

実に慈悲深く、家族を守り公に奉仕し、先祖先人を祀り、更に武(たける)の心も持っています。
それが日本人の本質です。

豈國を目指すためには政治も変えなければなりません。
大変な年月が掛かる遠回りですが、本来の姿を取り戻す教宣を引き継いでいくことこそ肝要だと思います。

毎朝…ねずブロを読みながら、あれこれ考え事をしています。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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