天皇の四方拝に学ぶ戒(いまし)め



◆ニュース◆ 百人一首の本がオンデマンド版で購入できるようになりました。

人気ブログランキング応援クリックこちらから。いつもありがとうございます。

平成31年度倭塾動画配信サービス受講生募集中


どんなにつらくても踏みとどまって戦い続ける。なぜそうするのかといえば、天皇もそうしておいでだからです。我々臣民は、その天皇の万分の一でも、自ら率先して厄災を享受する覚悟を持つ。最後まで踏みとどまって戦い続けるのが防人であり日本の武士の道です。
これは不良にはできないことです。


20190928 四方拝
画像出所=https://ameblo.jp/fukutyaipuku/entry-12428259386.html
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


四方拝(しほうはい、よほうはい)は、毎年元旦に天皇が行われる行事です。
戦前戦中までは、四方節(よほうせつ)と呼ばれていました。
元旦の、まだ夜が明けない早朝に天皇陛下が特別の建物に入られ、四方の神々をお招きして、そこで祈りを捧げられる行事です。

どのような祈りかといいますと、ちょっとショッキングです。
天皇が神々に、
「国家国民の
 ありとあらゆる厄災は、
 すべて私に先に
 お与えください」

と祈られるのです。

少し詳しく述べます。
知らす国において、天皇は臣民を代表して神々と繋がる御役目です。その天皇が神々に、「ありとあらゆる厄災は、すべて我が身を通してください」と、年のはじめに神々に祈られます。
次の神々が皇居に招かれます。

 伊勢神宮(皇大神宮・豊受大神宮)
 天神地祇
 神武天皇の陵(みささぎ)
 先帝三代の陵(明治天皇、大正天皇、昭和天皇)
 武蔵国一宮(氷川神社)
 山城国一宮(賀茂神社)
 石清水八幡宮
 熱田神宮
 鹿島神宮
 香取神宮


そして次の祈りが捧げられます。

 賊冦之中過度我身
 毒魔之中過度我身
 毒氣之中過度我身
 毀厄之中過度我身
 五急六害之中過度我身
 五兵六舌之中過度我身
 厭魅之中過度我身
 萬病除癒
 所欲随心
 急急如律令



『ねずさんのひとりごとメールマガジン』
登録会員募集中 ¥864(税込)/月  初月無料!

20190317 MARTH


「中過度」の度という字は、古語では「篇」を省く習慣がありますから「渡る」の意です。
従って「中過度我身」は、「我が身の中(うち)を過ぎ渡れ」という意味になります。

「渡」ではなく、意図して「度」と書かれていることには理由があります。
「度」は、「广+廿+又」で成り立つ字です。
「广」は、建物の中。「廿」は、器、「又」は、人が手を交差している姿の象形です。
そこから「屋内で器を前に人が手を交差して何かをしている」姿を表します。
そこから、この漢字には大和言葉の「のり、おきて」、あるいはモノサシなどで計る度量衡や尺度などが当てられるようになりました。
従いまして、「中過度」の「度」は、「のり」とか「おきて」の意味ですから、そこには「かならずを過ぎ渡れ」という意味が重ねられて込められていることになります。

ということは「中過度我身」は、ただ身中を過ぎ渡れと述べているのではなくて、
「かならず我が身の中(うち)を過ぎ渡れ」
と述べているとわかります。
天皇は、あらゆる厄災を、何よりもまず自分にふりかけて下さいと、元旦の早朝に神々に祈られているのです。

この「中過度我身」を、
「我が身だけには降りかからないように願っている」
などと解釈をしている馬鹿者もいます。
誰とは言いませんが、そういうのを「ゲスの勘ぐり」といいます。
たとえ大学の教授であれ、巨万の年収を得ている者であれ、世の中の「ゲス」は「ゲス」です。
そもそもこの五文字のどこにも「降りかからないように」を意味する漢字は使われていません。

まして末尾では、
 萬病除癒(万病を取り除き癒せ)
 所欲随心(欲するところは神の御心のまにまにあり)
 急急如律令(その成就よ速まれ)
と祈られているのです。
そうであれば、「降りかからないこと」が「急急(はやまれ)」では、意味が通じませんし、「随心(神の御心のまにまに)」とも矛盾します。

要するに四方拝は、
あらゆる災害は、民衆がその厄災を受ける前に、まずは我が身を通してください。
そして万病を取り除いてください。
自分の心は常に神々の御心のまにまにあります。
そして「急急如律令(その成就よ速まれ)」と、
これを天皇が祈られておいでなのです。

陛下は、新年のはじまりにあたって、誰よりも早く起きて、
 ありとあらゆる厄災は、自分の身にこそ降りかかれ。
 そして万病が取り除かれ、民が癒やされるよう
 自分の心は神々のまにまにあるのだから
 厄災は我が身にのみ先に降りかかれ、

と祈られているわけです。
その厄災とは何かといえば、「賊冦、毒魔、毒氣、毀厄、五急六害、五兵六舌、厭魅」です。

「賊冦」は、危害を加えようとする悪い賊です。
「毒魔」は、この世に毒を撒き散らす魔です。いまの時代ならメディアかも。
「毒氣」は、人に害を与える悪意です。
「毀厄」は、人を傷つける苦しみや災難です。
「五急」は、五が森羅万象を示す五行(木火土金水)、これが急というのですから突然発生する自然災害のことです。
「六害」は、十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)の中の二つの支が、互いに争う害を言います。要するに先輩後輩や世代間の争いなどですから、ひとことでいえば人災です。
「五兵」は、戈戟鉞楯弓矢のことで、戦火のことです。
「六舌」は、二枚舌どころか六枚舌ですから、外交による害のようなものです。
「厭魅」は、「えんみ」と読みますが、人への呪いのことをいいます。

四方拝では、今上陛下が神々に、
「これらの厄災は、
 すべて我が身に
 先に振りかかるようにしてください」
と祈られているのです。

このことが意味することは重大です。
たとえばお隣のどこぞの国が、わが国の天皇のことを「日王」と呼び、ありもしない慰安婦問題で謝罪せよなどとファンタジーの歴史認識をわが国に押し付け、天皇に謝罪を要求したりしています。
一方、わが国の国民のひとりひとりは、名指しで、個人としてこの件について謝罪を要求された人は、誰もいません。
まさに四方拝の通りに、天皇のもとに厄災が降り掛かっているのです。

ただし天皇と国民は君民一体です。
天皇に降りかかる厄災は、そのまま個人ではないにせよ、臣民ひとりひとりに降り掛かっていることと実は同じです。
というよりも、そう考えなければならないことです。
これを遺憾ですとかいいながら漫然と放置することは、まさに万死に値する罪といえます。

さらにこのことは、ご皇室を外護しよう、臣民としての道を歩んで行こうととする人たちには、たとえばかつての帝国軍人さんたちがそうであったように、あるいは楠正成や児島高徳がそうであったように、天皇ほどとはいわないまでも、その万分の一、億兆分の一の厄災を我が身に受けることになります。
災難というのは、上に述べた賊冦、毒魔、毒氣、毀厄、五急六害、五兵六舌、厭魅です。

それは天皇が受ける億兆分の一、万分の一にすぎません。
にもかかわらず、多くの場合、ほんのわずかな厄災を受けただけで、人は右往左往し、そこから逃げ出そうとします。
しかし天皇は、逃げずに真正面からこれを受けておいでになります。
そうであれば、臣民たるもの、決して逃げてはいけない。
逃げないところに、魂の光が宿るのです。
そう考えられてきたのが、日本です。

逃げないのは、臣民としての自覚と、責任感と使命感です。
だから、どんなにつらくても踏みとどまって戦い続ける。
かつて硫黄島の戦いで、ペリリューの戦いで、ラモウの戦いで、逃げた兵士はいません。
なぜ逃げないのかと言えば、天皇が逃げないからです。

これがわかれば、臣民たる者、自ら率先して厄災を享受する覚悟を持つ。
これが日本の防人や武士、そして帝国軍人の強さの秘訣です。
不良にはできないことです。

外国人の方が、よく間違えることですが、
「日本人は自分たちを神と思い、優等民族であると思っているから傲慢だ」という人がいます。
それは日本人ではなく、日本人モドキの所業です。
日本人の道は、極めるほどに腰が低くなる。

さらにいえば、すでにこの時点で、外国人も日本人モドキも、どちらも対立軸を設けています。
もともと日本には、対立(たいりつ)という概念自体がありません。
対立という熟語はありますが、読みはもともとはこれで「ならびたつ」です。

責任感は、愛から生まれます。
ここを間違えると、日本人は鼻持ちならない傲慢な民族になってしまいます。
厳にいましめるべきことです。

※この記事は2009年12月の記事のリニューアルです。
お読みいただき、ありがとうございました。


人気ブログランキング
↑ ↑
応援クリックありがとうございます。


講演や動画、記事などで有償で活用される場合は、
メールでお申し出ください。

nezu3344@gmail.com

《公開講座等の予定》
10月5日 第41回 百人一首塾(富岡八幡宮)
 https://www.facebook.com/events/712281652570731/
10月12日(土)三重県津市講演
 http://nezu3344.com/blog-entry-4269.html
10月20日 日心会10周年記念感謝祭(東京丸の内アリスガーデン)
 https://www.facebook.com/events/1345677085590621/
2019/11/2(土)第42回 百人一首塾 江東区文化センター 第三研修室 18:30〜20:30
 https://www.facebook.com/events/602655457328350/
2019/11/24(日)第66回 倭塾 江東区文化センター 第三研修室 18:30〜20:30
 https://www.facebook.com/events/1200935093439011/
2019/12/14(土)第67回 倭塾 江東区文化センター 第1研修室 18:30〜20:30
 https://www.facebook.com/events/544111256338411/
2019/12/22(日) 第43回 百人一首塾 江東区文化センター 第三研修室 18:30〜20:30
 https://www.facebook.com/events/887694471605173/
2020/2/22(土)第69回 倭塾 富岡八幡宮 婚儀殿二階大広間 13:30~16:30
 https://www.facebook.com/events/2179999205630540/


◆ニュース◆ 百人一首の本がオンデマンド版で購入できるようになりました。




この記事が気に入ったら
いいね!しよう
\  SNSでみんなに教えよう! /
\  ねずさんのひとりごとの最新記事が届くよ! /

あわせて読みたい

こちらもオススメ

コメント

大阪市民(ケイシ)

大祓詞
ねず先生、いつもありがとうございます。
私は毎朝、神棚の前で大祓詞を一回から二回奏上しています。大祓詞を唱えることで毎日の日々を清々しく生活できるのを有難く思います。大祓詞には天皇陛下(スメミマノミコト)が、日本を統治し国民を幸せにするお働きから、臣民が犯した罪、穢れを祓え戸の神々様が祓って下さるお働きなど、美しい大和言葉で示されています。大祓詞を奏上すると気持ちが明るくなり、さあ、今日一日頑張るぞ!と気力が漲ってきます。日本国と日本人(大和人)は間違いなく八百万の神々様、皇祖皇霊の天皇様方に守られ生かされている事が、大祓詞を唱えていると自ずから分かってきます。日本に大祓詞があり、神様に感謝を捧げ通じる、伊勢神宮、一宮神社、氏神神社があることはほんとうに有難いですね。

Toshiro Akizuki

神仏の教え
娘が熱心な福音伝道派のキリスト教徒で、週末からアフリカの奥地に伝道旅行に出発です。どうしてキリストが偉大かと問うと、決まった答えは、人々を救うために神が自らの息子を地に遣わし、キリストは自分の命を捧げて人類の罪を救おうとした、といいます。実際、ローマ帝国の圧制に逆らったためにキリストははりつけになって死んだわけです。仏教にも似た話があり、例え悪漢につかまってのこぎりで手足を切り裂かれても恨んではいけない、慈愛の心で悪漢を改心させるよういのりなさい、それができなければ私の弟子ではない、と諭した話が上座部仏教に残っています。偉大な宗教には自己犠牲の話が必ずでてくる。神道にもそれがあるというのは初めてしりました。勉強になりました。

パオリンゴ

ねずさん。いつもブログを拝見しております。
有難い情報が満載で、いつも目からウロコが落ち放題です。

お国のお金の使い道…。
先日、低学年の長男が下校時間になっても、帰って来ず、児童相談所に保護されてしまいました。
薄っすら 顔に痣があり、虐待の可能性があるとのことでした。
親としては、大切な子供を取られて驚きやら腹立たしいやら。
まだ、赤ちゃんも、居るのに。
転勤族で、平日は ワンオペ育児です。

息子は、前日にどうしても叱らなければならない事があり、そこで手を出してしまった時の跡でした。
主人も驚いて、仕事を急遽退社してくれて、
主人と赤ちゃんを連れて児童相談所へ急ぎ向かいました。
相談所の方と話をして、直ぐに息子を返してもらいました。
後から別の方にお話を聞いた話しですと、直ぐに 子供を返してもらえるのは稀だそうです。

児童相談所の施設は、子供を1人保護する度に国から15万円補助金のようなお金を受け取るそうです。
息子は、保護されてたった数時間でした。
が、食事も与えられ、着ていた服は全て洗濯、乾燥され、別の衣服にきがえており、
更に、歯磨きも終わっておりました。
多分ですが、この様なものも全て税金で賄っていると思われます。
15万円の補助金目当てに 子供を連れていく施設もあるらしいのです。
施設の方が大切な命や未来と言いなが、
腹の中でお金に子供達が見えてきらたら恐い話です。

親も子供を連れて行かれたショックはとても後を引きます。学校との関係も拗れてしまい、子供の為の話しを普通に出来なくなってしまいます。
もちろん、子供をただ闇雲に痛めつけるのは絶対良くない事ですが、ちゃんとした愛のある理由が故の痛みは考えて欲しいものです。

この先、人間としてどうあるべきかという教育が必要。修身の授業を復活させたい。
と強く思う出来事でした。
話が脱線してしまいました。
長々と失礼しました。

岡 義雄

No title
こんにちは!
今日も拝読させていただきました。シェアさせていただきました。
ありがとうございます。

じろう

No title
口はばったい言い方を、お許しください。

 これは、個別性と一般性、求心性と遠心性、を超えて、

 いま風にいうと、アウフなんとかです。

 なんと、はるか昔から、日本は「世界標準」だったのですね。

 これ、どこかの宗教的コンセプトと共通していますね。

 あとさきはわかりません。
 ここではそう言っておきます。

 
May God bless my children and people !
             (なんかブロークン?)

   と理解します。
 その後の。個別の在り様はそれぞれ。

 ここでの people の部分にだけ反応して、選民意識、と言いたがる
 ムキは洋の東西を問わず、いるわけですよね。
 いっそのこと、ねずブログの英文サイトでもあれば、
 散発的で下手な外交よりも、よっぽど、有効、心にしみるかと。

 四方拝のご紹介も、ねず先生ならでは、
 と思います。
                 ww

takechiyo1949

自らも努力はしましょう
あらゆる厄介事に御自身を捧げて臣民を護る…逃げることは無い。
有り難き幸せ!
過分に存じます。

大きな愛に抱かれている臣民も逃げてはいけない。
当たり前のことだと思います。
今朝も心構えを頂戴しました。

ところで…fc2を拝見してると色々なレビューに出交します。
ねずさんは、ねずさんの感ずるところに従ってブログを書いていらっしゃる訳で、ねずブロを読んで何を想うか?は、読者それぞれで良いと思います。
私は「道標をいただいた」と感じたら、自分なりに調べたりします。
ねずさんを質問攻めにする?
甚だ宜しくないと思います。
自らも努力はしましょうよ。

さて、消費税が変わりました。
我家も益々「節約」強化!
私の書籍購入予算も仕分け!
半分にされてしまいました。
町の図書館や本屋の立読み。
国会図書館サイト活用優先。
あの手この手を考え中です。
非公開コメント

検索フォーム

ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

講演のご依頼について

最低3週間程度の余裕をもって、以下のアドレスからメールでお申し込みください。
むすび大学事務局
E-mail info@musubi-ac.com
電話 072-807-7567
○受付時間 
9:00~12:00
15:00~19:00
定休日  木曜日

スポンサードリンク

カレンダー

10 | 2023/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

最新記事

*引用・転載・コメントについて

ブログ、SNS、ツイッター、動画や印刷物作成など、多数に公開するに際しては、必ず、当ブログからの転載であること、および記事のURLを付してくださいますようお願いします。
またいただきましたコメントはすべて読ませていただいていますが、個別のご回答は一切しておりません。あしからずご了承ください。

スポンサードリンク

月別アーカイブ

ねずさん(小名木善行)著書

ねずさんメルマガ

ご購読は↓コチラ↓から
ねずブロメルマガ

スポンサードリンク

コメントをくださる皆様へ

基本的にご意見は尊重し、削除も最低限にとどめますが、コメントは互いに尊敬と互譲の心をもってお願いします。汚い言葉遣いや他の人を揶揄するようなコメント、並びに他人への誹謗中傷にあたるコメント、および名無しコメントは、削除しますのであしからず。

スポンサードリンク