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先人たちが目指した日本の姿。それは私達の国が常に「よろこびあふれる楽しい国(=豈国)」であり続けることです。


みかんのお話

20191123 万葉集表紙1200
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冬の寒い時期、温かな地方で獲れたおいしいみかんを、コタツに入って家族で楽しむ。
それは貴族や武家から庶民にいたるまで、誰もが愛した日本の普通の家庭の姿であったこと、実はそこが大事なところです。


20200108 みかん
画像出所=https://item.rakuten.co.jp/rainbow246/307/
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


お正月といえば、お餅にみかん。
最近では、そのみかんの製法がずいぶんと工夫されるようになり、糖度の高い実においしいみかんが市場に出されるようになりました。
冬の寒い時期にはみかんを食べると風邪をひかないなどと言われ、子供の頃は指先が黄色くなるほどみかんを食べたなどという記憶がある方も多いかと思います。

そのみかん、実は大昔に、お菓子として栽培されるようになったものです。

お菓子そのものの歴史は縄文時代にさかのぼり、どんぐりなどのアクの強い木の実を、砕いて水にさらして団子状にまるめて熱を加えてお弁当やお菓子としていただきました。
これが「縄文クッキー」で、まさに自然食品そのもので、おそらく当時と同じ製法で作って焼いたこの縄文クッキーをいただいたことがあるのですが、いやはやこれが実に美味しい。
縄文時代の食事をご専門に研究されている方もいて、他にも様々な料理をいただいたのですが、どれをいただいても、ものすごく美味しい。
縄文時代の日本人は、意外とグルメ嗜好だったのかも、なんて思ったりしました。

その縄文時代に、災害対策用としてお米が作られるようになると、その米を発芽させて「米もやし」にし、そこからでんぷんを採取して水飴にし、これを甘味料に用いるという技術が開発されています。
この水飴、初代・神武天皇が、戦勝を祈願して神様に奉納したという記録が日本書紀に書かれています。

「お菓子」というのは、「果」という字が木の実を表す字で、ですからみかんやリンゴなど、樹木から採集される木の実のことを果実(かじつ)とか果物(くだもの)といいます。
その果物の神様が田道間守(たじまもり)で、お菓子の縁起の神社に祀られているのですが、第11代、垂仁天皇(すいにんてんのう)の時代(紀元前70年頃)の時代の実在の人物です。

田道間守は、垂仁天皇の病を治すため、不老不死の果物を求めて「常世国(とこよのくに)」まで旅だつのです。
この時代、常世国というのは、いまでいうブータンやチベットのあたりを言いました。
田道間守は、艱難辛苦の末、9年後に日本に帰国します。
ところがすでに垂仁天皇は崩御された後でした。

嘆き悲しんだ田道間守は、垂仁天皇の御陵に詣(もう)で、帰国の遅れたお詫びと約束を果たしたことを報告しました。
そして持ち帰った菓子を墓前に捧げ、その場で何日も絶食して、殉死を遂げたのです。
このとき田道間守が持ち帰った菓子(つまり果物(くだもの)の子)が、橘の木で、その橘の木の果実を美味しく改良したものが、みかんの木です。/font>


20191006 ねずラジ
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こうしてみかんは、実は日本の在来種であり個生種となりました。
よく、みかんと、外国生まれのオレンジが同じものと思ってらっしゃる方がいますが、実は両者はまったくの別物です。
どちらももともとはインド奥地のブータンやチベットあたりが原産地なのですが、これがヨーロッパに広まって広く栽培されるようになったのがオレンジです。
ちなみにみかんは、ブータン・チベットあたりからインド、チャイナ、朝鮮半島を経由して日本に入ってきたのだと説明しているものをよく見かけますが、まったくの間違いであることは、上に述べた通りです。

ちなみにみかんといえば「温州みかん」が有名で、温州(うんしゅう)というのはチャイナの地名ですから、みかんの原産地(つまり橘の木からみかんの木へと改良した地)は、チャイナの温州だと思いこんでいる人がいるようですけれど、それはまったくの誤りです。
天津甘栗と同じで、外国かぶれで、なんでも外国産(舶来品)なら良いものだとされた明治期に、日本産のみかんを高く売るために付けた名前が「温州みかん」です。
なるほど温州でもみかんの栽培がさかんですが、それは日本からもたらされたものです。

みかんとオレンジの違いは、簡単にいうと、皮の厚さと香りの勁さにあります。
ヨーロッパで栽培されて進化したオレンジは、ヨーロッパの空気が乾燥しているために、中身の水分を逃さないために皮が厚くなり、中身の果実(じょうのう)の袋も厚く、中身のつぶつぶ(砂じょう)も、ひとつぶひとつぶかしっかしていて張りがあって固いです。
とにかく実の水分を逃さないために、皮も袋もつぶつぶも、みんなしっかりしているのです。
こうして中の果肉がしっかりと閉じ込められたオレンジは、香りがとても強い果物になりました。
その香りの強さを利用してジャムにしたものが、ママレードだったりします。

これに対してみかんは、日本が高温多湿であるために、その温暖性によって糖度が高くて、酸っぱいというよりも甘い果物になりました。
またそれほど皮や袋を強くしなくても、そもそも湿度が高い国土ですから、それほど防備を固める必要もないということで、みかんは簡単に手で剥くことができる果物となりました。
こうして甘くておいしいみかんとして成長したわけです。

ちなみにみかんは、種無しの種類が多いために、いっとき「男性が食べると種がなくなる、女性が食べると種を受けづらくなる」などと言われて、栽培が激減したことがあるなどという俗説がありますが、大嘘のコンコンチキの作り話にすぎません。
それが事実なら、紀伊国屋文左衛門の逸話など存在するはずもないし(紀伊国屋文左衛門は嵐の中を紀州から江戸にみかんを船で運んだことで有名)、江戸の鍛冶屋といえば「ふいご祭り」のときに、鍛冶屋の屋根からみかんをばらまいて地域の人に振る舞うというお祭りが有名ですけれど、そんな祭りが生まれるはずもありません。

冬の寒い時期、温かな地方で獲れたおいしいみかんを、コタツに入って家族で楽しむ。
それは貴族や武家から庶民にいたるまで、誰もが愛した日本の普通の家庭の姿であったこと、実はそこが大事なところです。

上に述べました通り、もともとみかんは天皇の不老不死を求めて、遠く海外にまで足を伸ばして持ち込まれた果物(くだもの)です。
垂仁天皇がすでにお亡くなりになられていることを知った田道間守は、死さえも選んでいる。
それくらいみかん(持ち込まれた当時は、タチバナの木の果実)は貴重な品であったわけです。
そんな故事から、京都御所には、桜と対(つい)でタチバナの木が植えられています。

そしてそのタチバナが、日本の高温多湿な風土の中で改良されて、日本産のみかんとなりました。
そのみかんは、秋から冬にかけて、「コタツにみかん」というくらいで、上は貴族から下は庶民に至るまで、日本人なら誰もが楽しむ家庭の味になっています。

「特別なものを、
 一部の大金持ちや高級貴族で独占や寡占をしない。
 いちばん良いものは、常に庶民とともにある」

日本食も同じです。
日本食でもっともおいしいものは、釣り上げたばかりの船上でいただく魚や、採れたての木の実、新鮮な野菜など、すべて産地でいただくものとされています。
大名や武士、古くからの貴族、古い神社の宮司さんなどは、たとえばお米を食べるにしても、3年前の古古米です。
新米など、よほど特別な、よそで食べるとき以外、まず口にすることさえない。
大名の食べる料理がマズかったことは、落語の「目黒のさんま」などでも有名です。
一番良いものこそ、庶民とともにある。

人の上に立つ者は、そういう意味では世間の余り物をいただいて生きているわけです。
だから自分のこと(一人称)を、「余(あま)り」と書いて「よ」と言います。
世の中の余り物だというわけです。

人が生きるには、食べ物が必要です。
その食べ物を生産している人が、いちばん偉い。
末端の庶民こそが、天子様の「おほみたから」。
そういうことが社会の隅々まで浸透した国だから、みかんが庶民のお菓子になったのです。
こういうことが、実は本当の意味での、日本の誇りです。

100人で生産して得た100の富を、ひとりが50取り、残りの50を99人で分けるようにすれば、50を取ったひとりは大金持ちです。
誰よりもよい衣装を着、誰よりも美味しいものを食べ、誰よりも偉い存在になります。
けれどそれは、99の人たちにとっては、不幸なことです。

だから我が国では、古来、ひとりが得た知識や知見、富などは、常に多くの人に還元することが正しいこととされてきました。
ラグビー精神とされる、
「one for all, all for one」
(一人はみんなのために、
 みんなは一人のために)
は、まさに日本精神そのものであり、また日本の社会慣習であり、日本社会の常識だったのです。

明治に入って欧米文化が日本にやってきたとき、日本人が驚いたのは、西洋の貴族たちが、まるで王侯貴族のような生活をしていることでした。
当時は彼らは船で日本にやってきます。
それには莫大な費用がかかります。
つまり、爵位を持った貴族でなければ、日本にやってくることはできないし、西洋貴族は贅沢な暮らしをしています。

国の富を、社会のみんなでわかちあう社会であった日本では、社会的富は国民に分散されています。
それは、みんながお金持ちであり、みんなが等しく貧乏だということです。
そこに、王侯貴族のようなお金持ちがやってくれば、それはショッキングな出来事です。
しかも世界中の有色人種を奴隷化して、その富を奪っているのですから、すさまじい。
豊かさは、誰もが持つ憧れです。
だから日本人は、洋風化すれば誰もが贅沢な暮らしができるようになると考えた、というか騙されてしまったわけです。
特に戦後は、それが著しい。

もう一度、本当にたいせつなことは何なのか。
一部の王侯貴族だけが、みかんを食べることができる社会なのか。
それとも、一般庶民の誰もが、暖かな部屋でみかんを感謝していただくことができる社会なのか。
私達は考えてみる必要があるのではないかと思います。

さて、まったくどうでもいいことですが、孫のところにみかんを5kgの箱で買って持っていったら、4人の孫たちがなんと3日で箱を空にしてしまいました。
まあ、じいちゃんとしては、みかんの食べすぎよりも、風邪をひかないでいてくれる方がうれしいので、それもありかな、と・・・(笑)

そういえば、近年ではみかんの栽培にあたって、マルチシート栽培といって、地面にシートを敷いてみかんの栽培をすることで、ものすごく糖度が高くておいしいみかんが栽培されるようになったのだそうです。
昨年、そうして栽培されたみかんのジュースを飲んで、そのあまりのおいしさにびっくりし、冷凍してあったマルチシートみかんを解凍してひとついただいたのですが、そのあまりのおいしさに、またまたびっくり!!

いやはや日本の農家のおいしさの追求というのは、すごいものだなあと、あらためて感心した次第でした。

お読みいただき、ありがとうございました。


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コメント
アベタチバナ
ウンシュウはキシュウ(紀州)とクネンボ(九年母)の交雑だと推定されており、タチバナ(大和橘)とは別の系譜に属するようです。

https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nifts/072687.html

クネンボは古くはアベタチバナ(阿倍橘)と呼ばれていた――と解説されることがあるので、それと混同しているのかもしれません。ただし、クネンボは室町時代の後半に琉球経由で日本に伝えられた品種ともいわれ、万葉のころから知られるアベタチバナとは時代が合いません。アベタチバナにはユズ説、ダイダイ説もあるので、タチバナ以外の柑橘類の総称だった可能性はあります。
2020/01/12(日) 12:09 | URL | キトルス #-[ 編集]
♪みかんの花咲く丘♪
「みかん」と言えば…この歌を思い出します。
♪みかんの花咲く丘♪
終戦直後の昭和21年(1946年)8月25日に発表された童謡です。
川田正子さんは私より10歳年長のお方で、戦前から有名な少女歌手だったそうですね。
若い頃の母が、村祭りの演芸大会で唄ってました。
とても懐かしいです。
2020/01/12(日) 09:56 | URL | takechiyo1949 #VCU7f5e.[ 編集]
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Author:小名木善行(おなぎぜんこう) HN:ねず
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執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんのひとりごと」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「奇跡の将軍樋口季一郎」、「古事記から読み解く経営の真髄」などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。

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日本史検定講座講師&教務。
(著書)

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