神社の手水はなぜ使う



20191123 万葉集表紙1200
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日本は災害対策のために、歴代天皇とともに、災害や病理をひとつひとつ乗り越え、国の形を整えてきた歴史を持つ国です。その日本を大事にするということは、とりもなおさず国民が国民を大切にするということです。


手水舎(ちょうずしゃ)
20200118 手水舎2
画像出所=https://matome.naver.jp/odai/2145517191201581801/2145517856312652003
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


このところ、何度か繰り返して、少しづつ切り口を変えながら、初代神武天皇の時代に、大きな天変地異によって日本の人口が26万人から8万人に減少したこと。
その災害対策として、常温で数年の備蓄に耐える唯一の食料である稲作の普及促進を神武天皇が行われたこと。
さらにその備蓄米を、災害時に全国でお互いに融通し合うことで、国民の命を護るという仕組みを神武天皇が作られたこと。
そのためには公正な機関が必要で、これを行う政庁として橿原に都が築造され、神武天皇が初代天皇として即位なされたこと、などをお話させていただいています。

ついでに言うと、「都」は「みやこ」で、「みやこ」は「宮の庫(くら)」のことを言います。
そこから「みや・こ」という言葉が生まれています。

ところが我が国は、それだけではすごせない(生き残れない)国なのです。

それは第10代崇神天皇(すじんてんのう)の時代のことです。
国内に疫病が流行り、なんと人口の大半が失われてしまうのです。
これについて古事記は国民の過半数が失われたと書き、日本書紀はほとんどの国民が失われたと書いています。

これだけの死者が出ると、埋葬が間に合いません。
遺体はそこら中に転がり、ハエがたかり、ウジがわき、遺体は皮膚の下のウジのために、もぞもぞと動いているような様子になります。
腐臭は街をおおい、遺体にたかったハエや鳥などがさらに病原菌をはこび、ますます死者が出るようになるわけです。

このときの疫病が、何であったのかはわかりません。
コレラか、赤痢か、ペストだったのか。
ペストについていえば、時代は異なりますが、14世紀にチャイナで発生したペストがユーラシア大陸全体に広がり、ついにはヨーロッパにまで至って「黒死病」と呼ばれ、西洋を含め、ユーラシア大陸の人々の過半数の命を奪ったことが歴史に残っています。
それだけ伝染病の威力は、計り知れないたいへんなことであったのです。

いまでは、世界中の政府機関によって、これらの伝染病への対策が図られるようになりましたが、昔は、本当におそろしいものであったわけです。
そのおそろしい疫病(伝染病)が、崇神天皇の時代に起きたわけです。



20191006 ねずラジ
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各家に造られた手水舎(ちょうずしゃ)
20200119 手水
画像出所=https://power-mania.com/jinja-sanpaide-kuti/
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)



事態に苦慮された崇神天皇は、真剣に神々に祈り、対策のための知恵を授かろうと努力を重ねられます。
そして、ようやく祈りが通じて疫病がおさまり、国内に平穏が戻ったとき、崇神天皇が行われたのが、国内に、
天社(あまつやしろ)、国社(くにつやしろ)、神地(かむどころ)、神戸(かむべ)という、中央政庁から地方の村落に至るまでを総合管理する新たな制度でした。

それが、
天社(あまつやしろ)、国社(くにつやしろ)、神地(かむどころ)、神戸(かむべ)です。

天社とは、いわば中央政庁です。
国社とは、地方の県庁です。
神地とは、市区郡役場です。
神戸とは、町村役場です。

そして国社、神地、神戸には、それぞれ神社が任命されました。
所属する人たちは、月に一度、定期的に神社に集まります。
あるいはなにか問題が起きたら、やはり神社に集まって協議します。

そしてこのとき、全国の神社の作法として定着したのが、手水(てみず)の作法です。
手水は穢(けがれ)を祓(はら)うものですから、崇神天皇よりももっとずっと古い昔からあったものかもしれません。
けれど、それが全国的に徹底されたのは、疫病対策に心を砕かれたまさに崇神天皇の御事績です。

二度と伝染病が普及しないようにと、中央政庁である天社から率先して、政庁に入る人たちが全員、手水を使って手を洗い、口をゆすぐ。
権威ある政庁が率先してこれらを慣習化することで、日本全国津々浦々、誰もが会同(かいどう)と言って人と会ったり、人々が集うとき、あるいは帰宅して家に入るときに、手を洗い、口をゆすぐことを習慣化していく。
そうすることによって、二度と伝染病が蔓延しないようにしたのです。

ですから少し古い、たとえば明治・大正の頃から営業しているような老舗のそば屋さんや食堂などに行きますと、店内の入り口のそばに、手洗いのための小さな水道が設置してあったりします。
最近の新しい外食屋さんなどでは、あまり見かけなくなりましたが、要するに、人々が集うところでは、入室や入店の前に、まずは手を洗い、口をゆすぐということが、つい近代までの日本人の常識となっていたことが、神社のみならず、街の食堂にまで徹底していたのです。

またあるいは、ちょっと古い時代に造られた日本庭園などに行きますと、上の画像にあるような小さな手水舎(ちょうずしゃ)が作られていることがあります。
これらは庭のあるお屋敷には必ずあったもので、コーンと音がする鹿威(ししおど)しなどとセットになっていたりもしていました。
けれど本来の目的は、手洗い用です。

崇神天皇(すじんてんのう)は、こうして全国的な行政組織を築き、国内の衛生管理を強化されることで、伝染病の抑止を図られた結果、後に「御肇国天皇(はつくにしらすすめらみこと)」と呼ばれるようになりました。
神武天皇が、「やまとの神といわれた男(毘古)」なら、崇神天皇は「はじめて国の形を整えた天皇」というわけです。

崇神天皇によって初められた手水の作法は、いまでもちゃんと伝わっています。
これは我が国において、およそ二千年続く作法だということになります。

ちなみに、現代病といえばたとえば花粉症が問題視されています。
花粉症は、死に至る病ではありませんが、それでも現代日本人の半数以上が花粉症に苦しめられているといいます。
原因はスギ花粉で、戦前戦中も杉はあったのに、どうして現代ではその花粉が問題になるようになったのかというと、理由があります。

杉は、成長が早い樹木なので、およそ30年経つと、昔は伐採されて材木として使われていたのです。
そして戦後、焼け野原で住宅難になったとき、率先して山に植えられたのが杉でした。
ところがその杉は、これまで30年経つと伐採されていましたから、おおむね30年経ったところから、猛烈に花粉を飛ばして、自己保存を図ろうとします。

けれど、ちょうど戦争から30年経過した頃から、日本の行政は、建築資材として外材を使うように指導しました。
さらに昔からの日本建築を否定して、外国風の建築のみに建築許可を出すようにしました。
結果、杉は伐採されなくなり、猛烈に花粉を飛ばし続けるというようになったわけです。
その飛ばす花粉の量は、杉の成長に従って、ますます増えて行きます。
つまり花粉症患者も増えていくわけです。

そうであれば対策は明確です。
国内の建築需要に国内産の杉材を用いるように行政が方針を確定すること。
そして国内の林業を振興し、植林事業を国の大切な柱としていくことです。
そうすることによって、花粉症も抑止できるようになります。

ところがそうとわかっていながら、国は何の対策も打つことができない。
すでに花粉症が国民病とまで言われるようになっていながら、何の対策もない。
果たしてそれは本来の政治や行政の姿といえるものなのでしょうか。

日本は災害対策のために、歴代天皇とともに、災害や病理をひとつひとつ乗り越え、国の形を整えてきた歴史を持つ国です。
その日本を大事にするということは、とりもなおさず国民が国民を大切にするということです。

お読みいただき、ありがとうございました。


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コメント

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崇神天皇と大神神社
いつもありがとう御座います。
崇神天皇の時代は疫病が流行り
大御宝である国民、臣民が多く亡くなった事を苦慮された崇神天皇の枕元に霊夢として現れたのが
日本最古の神社と言われる奈良の大神神社の三輪明神様です。我を崇めよ。我を崇めればたちどころに疫病は止むであろうとのお告げを三輪明神は崇神天皇にされたそうです。崇神天皇は早速勅使を大神神社に派遣して篤く祭儀を行わせたところ、ぴたっと疫病は鎮まったと古記に記されています。大神神社のご祭神は出雲大社の大国主之命の幸魂、奇魂とも言われる大蛇神を使いとする神様です。古代は霊肉一体の不思議な時代ですね。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

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