新型コロナウイルスの時代だからこそ読む舒明天皇御製



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日本と台湾の絆


「民こそが国の宝」です。
「富を持つ者だけが国の宝」ではないのです。
新型コロナウイルス問題は、いま人類社会に、そうした根源的となる社会のあり方の再考を、人類に突きつけています。
時代は変わります。


舒明天皇陵(段ノ塚古墳)
20200319 舒明天皇陵
画像出所=https://74589594.at.webry.info/201409/article_5.html
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拙著『ねずさんの奇跡の国日本がわかる万葉集』で、一番最初にご紹介した歌が、舒明天皇(じょめいてんのう)の御製です。

実は、万葉集では、この舒明天皇の御製は巻一の二番目に紹介されている歌です。
一番は、雄略天皇の御製が掲載されています。

ものを書くときというのは、誰でもそうですが、はじめに何を書くか、歌集であれば、最初にどの歌を持ってくるかは、たいへんに頭を悩ませるものです。
ですから、本当なら、万葉集の本編に沿って雄略天皇の御製を最初に拙著でも掲載すべきだったのかもしれませんが、本書では、あえて雄略天皇の御製は、本の末尾のシメとして掲載し、最初に冒頭でご紹介する歌は意図して舒明天皇の御製としました。

理由は、舒明天皇のこの御製が、現代日本と同じ、ほんとうにいまでいうなら新型コロナウイルス問題で右往左往し、経済もこれから大幅な冷え込みとなるであろうとされるような、まさに混迷する時代にあって、新たな、そして本来あるべき日本の姿を明確に示された歌であるからです。

舒明天皇の時代というのは、蘇我氏が専横を極めた時代です。
現代の世界もそうですが、世界では1%のお金持ちが、残りの99%の人々から収奪して贅沢な暮らしをしている社会構造になっています。
舒明天皇の時代も、蘇我氏が富を独占し、大金持ちとなって政治さえも裏から動かし、みずから「みかど」を名乗ったりしていた時代でした。
「みかど」という呼称は、天皇にだけ許された呼称です。
それを自ら、「俺を『みかど』と呼べ」と周囲に命じた、あるいは周囲が蘇我氏をよいしょしてそのように呼んでいた、そういう時代であったわけです。

それは、当時の貴族が牛車(ぎゅうしゃ)に乗っていましたが、都の往来で蘇我氏の牛車と、ご皇族の牛車が鉢合わせになると、なんとご皇族の方が蘇我氏に道を譲らされたというほどのものでした。
力さえあれば、富があれば、何をやってもゆるされる。
力こそが正義、富こそが正義とされた時代であったわけです。
これは、考えようによっては、現代の世界構造と同じです。

こうした時代背景にあって舒明天皇が詠まれた歌が、有名な
「天皇が香具山に登って国望をされたときの御製」
(原文)天皇登香久山望国之時御製歌
です。

この歌は、一般には、天皇が香久山に登って国の様子をご覧になったとき、眼下に広がる大和の国の風景の美しさを詠まれたみやびな歌である、と紹介されています。
歌ですから、どのように解釈しても、それは読み手の自由であるという議論もあるでしょうけれど、天皇の御製というものは、そもそも皇国臣民に与えられた「示し」であるということを忘れてはいけません。

「示し」というのは、国家戦略とか国家目的とかよりも前に来る、根幹となる方向性のことを言います。
よく、戦略が大事だと言いますが、たとえばの話、「国防戦略を立てよ」と言われても、どの国を仮想敵国にするかによって、国防戦略はまるで異なるものになってしまいます。
つまり国家戦略よりも前に、根幹となる「示し」がなければ、世の中は動かないのです。

そして天皇は、臣民を代表して神々とつながるお役目です。
天皇の示しは、神々の御意思であるとされてきたのが、我が国の歴史です。
つまり天皇の御製(御製と書いて「おほみうた」と読みます)は、新たに示された国家像なのです。

では、蘇我氏専横の時代にあって、舒明天皇は、どのような御製を詠まれたのでしょうか。
歌を現代語に訳すと、次の意味となります。

***********
【舒明天皇が香具山に登って国望をされたときの御製】
恵みの山と広い原のある大和の国は、村々に山があり、豊かな食べ物に恵まれて人々がよろこび暮らす国です。
天の香具山に登り立って人々の暮らしの様子を見てみると、見下ろした平野部には、民たみの家からカマドの煙がたくさん立ち昇っています。
それはまるで果てしなく続く海の波のように、いくつあるのかわからないほどです。
大和の国は、民衆の心が澄んで賢く心根が良くて、おもしろい国です。
その大和の国は人と人とが出会い、広がり、また集う美しい国です。


《原文》
【天皇登香久山望国之時御製歌】
山常庭 村山有等 取与呂布 天乃香具山 騰立 国見乎為者 国原波 煙立龍 海原波 加万目立多都 国曽 蜻嶋 八間跡能国者

***********

ご一読しておわかりいただけるように、この歌は「やまとの国」、つまり日本の国柄を示された歌と拝します。
そのやまとの国は、民衆が豊かに暮らす国だと、舒明天皇は明確に示されています。
つまり我が国は、「一部の人」が富を独占して豊かに国ではなくて、「誰もが」豊かに暮らすことができる国であることに、我が国の国柄がある、ということを、舒明天皇は明確にお示しになられているのです。

このことは、たとえば大金持ちのある人が、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、
「簡易PCR検査を100万人分無償提供しようかな」とつぶやき、2時間後に「評判悪いからやめようかなぁ」と発言を撤回してみたり、「やっぱりマスク提供にしようかな」と発言してみたりして、都度、業者の方がその注文をいただきたいと、両手をすり合わせて頭を下げてその大金持ちに日参するという社会とは対局にある日本の姿を意味します。

どういうことかというと、富というのは、国民みんなの日々の研鑽と努力によって築かれているものなのです。
そうであれば、国富というのは、国民みんなの共有財産なのです。
そうであれば、それをいち民間人である私人が、勝手に独占するものではなく、みんなで生産した富は、どこまでもみんなのために使う。
そのためこそ存在しているのが、舒明天皇の時代であれば朝廷であり、現代でいえば行政府や国会であるわけです。

このことは、実は江戸時代の二宮尊徳が、わかりやすく説いています。
これを「報徳思想」といいます。
報徳思想は、「至誠・勤労・分度・推譲」の4つで成り立ちます。
簡単にまとめると、

「至誠」
道に沿った心を誠といい、我が心を誠・徳・仁の状態に置くこと。生きる上での第一となるもの。
「勤労」
至誠に基づいて日常生活を送ること。至誠が心の状態を指すのに対して、勤労は至誠に基づく行動を指す。
「分度(ぶんど)」
心に至誠を起き、日々勤労に励み、贅沢を慎むこと。
「推譲(すいじょう)」
分度して残った利益を他に譲ること。

人間「起きて半畳寝て一畳、天下取っても二合半」です。
一生かかっても使い切れないような財を、ひとりで握っていても、世の中には何の役にも立ちません。
むしろ富が生まれたのなら、その富は、進んでみんなのために使う。

そもそも「稼いだ富は俺のもの」ではないのです。
みんなの力と、みんなの支えによって富が生まれるのです。

だからこそ我が国では、長い間、お米が税金であり、給料もお米で支払われていました。
このことをもって、
「お金は政府の信頼に基づくもので
 信頼のおけない政府のもとではお金は信頼されない。
 だから日本では近代になるまで
 信頼される政府がなかったから
 お金が普及しなかったのだ」
と述べる学者の先生もおいでになります。

しかし日本では708年の和同開珎の時代から通貨が発行され、秀吉が黄金の小判の発行を開始すると、小判はまたたく間に日本中に普及していきました。
信頼されない政府どころか、日本では古来、政府や行政は、もっとも民衆から信頼されるお役所だったのです。
また、信頼されない政府というなら、いま米国でも英国でも、世界中の先進国では、中央銀行が通貨の発行を行っています。
政府が通貨を発行したら何をしでかすかわらかない(笑)から、機構を別々に分けているのですから、そういう意味からしたらむしろ現代世界の政府のほうが、かつての日本よりはるかに民衆の信頼がないことになります。

また室町後期に日本にやってきた朝鮮通信使は、
「我が国は旅行の度に衣食のための様々なものを持参しなければならないが、日本ではお金というものだけを持っていればどこにでも泊まることができるし食べることにも困らない」と、日本を絶賛した記述をしています。
要するに日本では古い時代から、貨幣経済が見事に実現していたわけです。

ところがそうであるにもかかわらず、ではどうして年貢も俸禄もお金ではなく、お米だったのかというと、これが非常に簡単な理屈です。
つまりお米は、「貯め込むことができない」のです。
お蔵に山積みしていても、何年かしたら傷んでしまいます。
つまり使わなければならないのです。

二宮金次郎の「推譲(すいじょう)」というのは、そういうことをいいます。
つまり、お金は、ただ貯め込むばかりではなく、積極的に世のために使えと、二宮金次郎は述べているわけです。

これがどういうことかというと、一般に、経済というのはお金の流れのことをいいます。
経済が発達するということは、お金が動き、その動くお金の量が増えることをいいいます。

現代社会は西洋の論理を取り入れていますから、お金を稼ぐこと、それを貯め込むことに価値があり、たくさん稼ぎ、たくさん貯め込んだ人が、いわゆるお金持ちです。
そしてお金持ちになることが、庶民の夢とされています。

現代社会は西洋の論理を取り入れていますから、お金を稼ぐこと、それを貯め込むことに価値があり、たくさん稼ぎ、たくさん貯め込んだ人が、いわゆるお金持ちです。
そしてお金持ちになることが、庶民の夢とされています。

一方、二宮金次郎がいう経済の「推譲(すいじょう)」は、働いて稼いだら、その稼いだお金は世のため人のために積極的に使いなさいというものです。
つまり世の中全体として、

「稼ぐためにお金を動かす」のではなく、
「稼いだものを世のため人のために使う」という、西洋型経済とは真逆の経済モデルです。

どちらもお金が動きます。
ただ違いは、前者の場合、お金は、単にお金持ちのお蔵に吸い込まれていきます。
ですから上の人は、どこまでも大金持ちになり、吸われるだけの庶民はいつまでも貧しいままに置かれます。

ところが後者は、お金をみんなが使います。
たくさん稼ぐ人はたくさん使うし、そうでない人もそれなりに使います。
要するに年貢米と同じです。
いってみれば、通貨が利用期限付きで発行されているようなものです。
使っても使わなくても失われてしまう。
ですから使わなければもったいないのです。

そうすることで社会にお金が回ります。
生産が増え、お金が増えれば経済規模が拡大し、みんなが豊かになっていきます。
そしてそのお金が公益のために使われれば、社会インフラが整い、国民は豊かさだけではなく、安全と安心を手に入れることができます。
これが二宮金次郎の唱えた報徳思想を経済からとらえた考え方です。

そしてこの思想を歌で述べられているのが、舒明天皇の御製です。

「民こそが国の宝」です。
「富を持つ者だけが国の宝」ではないのです。

新型コロナウイルス問題は、いま人類社会に、そうした根源的となる社会のあり方の再考を、人類に突きつけています。
なぜなら「稼ぐためにお金を動かす社会」では、お金を貯め込んだ一部の人が、さらに多くのお金を貯め込むために投資を行います。
その投資のなかには、もちろん儲けるための戦争も含まれます。
圧倒的多数を占める庶民の命など、ひとことで言ってしまえばどうでも良い。

自国の施設からウイルスが漏洩して世界的な大問題になったのなら、むしろ世界中をウイルス恐怖に陥れることによって、自国の責任を回避する。それくらいのことは当然に行われるようになるわけです。
また、政府にウイルス対策を迫り、政府が実際に対策を始めれば、やりすぎだと言って非難する。
それは正義の実現のためではなくて、裏に利権が動くからです。
1%の人が99%の人の富を収奪する社会では、結果、そのようになっていくのです。

一方、「稼いだものを世のため人のために使う社会」では、稼いだものはみんなのために費消されます。
すると稼ぐことが目的にならず、みんながよりよい暮らしができることが目的になります。
これを実現するためには、権力よりも上位に権威を置くこと。それによって民衆を国家最高権威のもとにある「おほみたから」とすること以外には、実現の方法はありません。
それが「知らす国」です。

今回の新型コロナウイルス問題をきっかけに、世界は、この社会の根源的な問題に目覚めることになります。
時代は変わります。

※舒明天皇の御製の詳しい解説は、拙著
『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』をお読みください。

お読みいただき、ありがとうございました。


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Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

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