10円玉に学ぶ武士道精神とは

10円玉に描かれた鳳凰堂。
いまではそれが世界遺産にまでなっていますが、その鳳凰堂から学ぶものは、贅沢三昧な暮らしではなく、実は、質素倹約を重んじ、魂をみがくことを第一とした武士道そのものにある。あるいはもっというなら、平時においては贅沢を慎み、いざというときのために常に備えを怠らないという日本精神そのものの象徴ともいえようかと思います。

20200820 平等院鳳凰堂
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小名木善行です。

コロナで家にいることが多くなり、断捨離をすることが広く行われるようになりました。
かくいう筆者も、ほんのすこしずつではありますが、室内の断捨離を進めています。

そういえば、小銭入れに入っている10円玉。

この10円玉は、昭和26年から用いられているものですが、昔は10円玉の周囲の縁にはギザギザがありました。
そのギザギザがなくなったのが昭和34年のことで、小学校時代、ギザギザのある10円玉を集めて喜んでいたことがあります。
そのギザギザのある10円玉の時代から、現在に至るまで、10円玉の表裏のデザイン(表面:平等院鳳凰堂、裏面:常盤木(ときわぎ))は、昭和26年の発行年から、ずっと変わっていません。かれこれ69年間もの間、同じデザインが用いられているわけです。

常盤木とは、常緑広葉樹のことで、普通は広葉樹は寒くなると落葉するのですが、その葉が散らない木のことを言いいます。
日本では常盤木といえば、その代表格がクスノキ(楠)で、楠(くすのき)といえば、我が国の歴史上登場する数多(あまた)の武官武将のなかで、唯一、皇居に銅像が飾られている楠正成(くすのきまさしげ)が想起されます。

一方、平等院鳳凰堂は、「この世をばわが世とぞ思ふ望月の かけたることもなしと思へば」の歌で有名な藤原道長の子である関白太政大臣・藤原頼通によって創建された建物です。
往時には他に、本堂や多数の宝塔が立ち並ぶ寺院だったそうですが、度重なる京の都の火災で消失し、現在往時のっまの姿で残っているのが、この鳳凰堂だけです。

建造されたのは天喜元年(1053年)、いまから967年もの昔。
もともとは阿弥陀堂とよばれていたのそうですが、建物を正面から見た姿が、まるで鳳凰が翼を広げた姿のようだということで、江戸時代の初め頃から鳳凰堂と呼ばれるようになりました。

そしてこの場所は、かつて河原左大臣と呼ばれた源融(みなもとのとおる)が別荘を建てた地です。
河原左大臣といえば百人一首に有名な

 みちのくの しのぶもぢずり たれゆえに
 乱れそめにし われならなくに

の歌があります。
そしてこの源融こそ、源氏物語の光源氏のモデルになった人物です。


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源氏物語の光源氏といえば、まさに貴公子であり、モテ系男子の典型で、下の絵は大和和紀さんの『源氏物語〜あさきゆめみし〜」からのものですが、おそらく下の絵のような、要するにイケメン男子というのが共通のイメージではないかと思います。

20200820 光源氏2

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ところが現実はなかなか厳しいもので、下は幕末から明治初期に活躍した菊池容斎が描いた河原左大臣《源融(みなもとのとおる)》ですが、おそらくまあ現実はこのようなものであったのかと。

20200820 源融

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さてこの源融ですが、お能の「融(とおる)」という演目が、この源融を題材に採った物語です。

このお能の演目の中で、実は源融が、左大臣まで昇りつめながら、藤原氏との政争に敗れ、六条河原に大邸宅を造営して、余生を風雅のうちに過ごたことが描かれています。
お能では、ひとりの旅の僧がこの六条河原を通りがかったところ、そこで源融の霊に出会う。

その霊は、かつてここにあった邸宅は、陸奥の塩釜の景観を模したもので、毎日難波から海水を汲んで屋敷まで運ばせ、院の庭で塩を焼かせて楽しみとするという贅沢が行われていたけれど、後を継ぐ人もなく、この河原院は荒れ果ててしまったと嘆きます。
そして最後は、その霊が、若々しい在りし日の姿・・・つまり「熱心に文武に励み、真剣に民を想って仕事をしていた純粋だった若き日の姿・・・となって月の都へと帰っていく、というのが、この「融」の物語です。

お能は武士に愛された芸能ですが、なかでもこの「融」は、毎日難波から海水を汲んで屋敷まで運ばせるという贅沢な暮らしが、権力の座から降りた者が行う、いわば「敗軍の将の暮らし」に他ならず、現職にある者はそのような華美な暮らしをするものではない、という、贅沢にひたることの愚かしさをあらわした物語です。
だからこそ「融」は、お能の代表的な作品として、毎年のように城内で演じられた能楽であったのです。

その昔、武士は刀槍と具足(ヨロイのこと)以外は何も持たず、屋敷は常にガランとしていることが最上とされました。
屋敷も贅沢な調度品も、時が建てばすべて失われていきます。
けれど、今生の武勇と、身に付けた知性は魂となって世代を超越します。
そしてその知性から生まれる和歌(うた)は、世代を越えて世に残る。
昭和の軍人も、そうした武士道精神を濃厚に保持した人たちでありました。

以前にも書きましたが、いまではお能といえば「侘び寂び幽玄の世界」などとばかり強調されますが、まったくこれは間違った見方です。
そうではなく、武士道の根幹を学ぶための芸能が、お能であったのです。

武士は子供の頃から、このお能に親しみ、そしてお能によって日本武士として必要な価値観を学び、そのうえで四書五経などの漢学を学びました。
四書五経で学んだのは、チャイナやコリアの高官たちも同じですが、彼らの国に武士道が育たず、日本に武士道が育った理由は、まさにお能にあったのです。

10円玉に描かれた鳳凰堂。
いまではそれが世界遺産にまでなっていますが、その鳳凰堂から学ぶものは、贅沢三昧な暮らしではなく、実は、質素倹約を重んじ、魂をみがくことを第一とした武士道そのものにある。
あるいはもっというなら、平時においては贅沢を慎み、いざというときのために常に備えを怠らないという日本精神そのものの象徴ともいえようかと思います。


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小名木善行でした。


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コメント

はらさり

一重まぶた
こんばんは。
連続の投稿をして申し訳ありません。
絵について話題になっているのを見て思い出しました。10円玉の話からは外れますが…。

私は経年劣化したのかまぶたが一重まぶたからシワのせいで二重まぶたへと変化してしまいました。畏多くも上皇后陛下、美智子さまの若い頃や山口百恵さんに似ているね。と言われてお気に入りだった切れ長の一重まぶた。
その当時は一重まぶたはブスと言われてアイプチというのり状の二重にする化粧品も流行りました。私は興味すらなかったのですが友人達は使ってクッキリな二重まぶたにしてましたし、私にも勧められてきて、丁重にお断り。
浮世絵の時代は切れ長一重まぶたが美人とされましたから、自信を失うこともありませんでした。

コリアの美容外科は安いから評判良いですが、日本人相手にするとわざと失敗させて、結局は日本の美容外科へ駆け込む人が多いとか。
妹もコリアの安い美容整形しましたが、見事に失敗してました。コリアの美容整形外科だけは入りたくないなぁ…。

-

ねず先生

宇治市の平等院ですか、ウトロ地区、ザイニ◯チのメッカですね…山科、醍醐の地域はそんな奴らばかりです。なぜ性根が反日なのに、日本に居座りる。なせ嫌いな日本から消えてくれないのでしょうか?


また、昔の大衆画の話になりますが、白人の友人とのエピソードがまた思い出されます。

友人『ゴッホは日本の浮世絵を、とてもリスペクトしてたよね!すごいね!蘭学もすごいね!でもその後、インドネシアの植民地を解放してオランダ人は日本嫌い多いよね!』
私『お、おぅ。』

友人『でも、これ見て!この有名な見返り美人なんて、お前これ美人に見える?まるで穢系の顔だよね!日本人は、東南アジア人を色白にしたイメージ、俺にはあるヨ!でも、こいつの顔は違うよね!小野小町なんて、アラブ人のハーフだったんだろ!こいつどこか美人なんだよ!』

私『ぃ、いやよく、見ろよ。見返り美人は、一重の吊り目の短い目の穢系と違って、切れ長、じゃないか。今でも、鶴田一郎さんの女性の絵は有名で人気だけど、彼の女性は現代の見返り美人なんだよ』

『ぉお!ツルタイチロウ画伯ですか!おぉ、この女性はセクシーですね!少し、日本人と三国系の顔の違いが分かりましたヨ!!』

…ねず先生、こんなんで良かったのでしょうか?
もし思い当たるエピソードがございましたら、あのようにブログにてご教授のほど、よろしくお願い申し上げます。
以上

松さん

馬耳東風?馬の耳に念仏?
源氏物語は随分昔に読みました。
光源氏を主人公とした作品は紫式部唯一の「物語」だそうです。

恋愛や栄光や政治欲望や権力闘争。
そして最後は没落。
少々呆れてしまう顛末です。
(平安時代の貴族社会ってこんなだったの?)

光源氏の家系は名門です。
上品で人柄も悪くはありません。
しかし、政治能力が全く無い。
で、哀れな末路を迎える訳です。
(こういう政治家って今も居ます)

作者は女性です。
物語と言えども、男を見抜く覚めた目線は本音だろうと思いますね。

光源氏だって、自分に関する情報の収集力や判断力や決断力は、それなりにあったと思います。
しかし、それらの感度を研ぎ澄ませる努力を怠ったんですね。
それに、かわいそうなことに「水先案内人」が居ません。

現実と物語、それに時代が違いますけど、平等院の顛末から学ぶことは、人としての道の問題が先で、武士道云々以前のレベルだと思います。

今時は「自己責任」が重視され、求められる風潮があります。
自己中が多過ぎますからね。
分からないでもありません。

はらさり

鳳凰堂
ねず先生
お早うございます。10円玉って昭和26年から発行されていたのですね。私の父が生まれる一年前…。

ギザギザ10円玉を見つけたらラッキー!と思っていました。昭和34年にギザギザ発行が無くなったのもここで初めて知りましたよ。

絵に描かれた鳳凰堂、かなり綺麗ですね。これを10円硬貨に描く事を決めた人、素晴らしい!
(鳳凰堂と見ると女優の土屋太鳳さんも出てきてしまいますが。)

硬貨の思い出…ギザギザ10円硬貨を見つけた時の感動もありますが、赤ん坊の娘とバスを降りようとしたら子供銀行みたいないつもとは全く違う500玉が落ちてきました。その場で運転士に「これ偽物?」と訊いたら、「平成十周年をお祝いして発行された記念の500円です。」と言われてひっくり返りそうになりました。銀色でしたが、記念に娘が大きく成長したら手渡そう!と心に誓いました。しかし誰かに見られていたらしく、ある日強盗に入られ集めていた記念硬貨だけが盗まれていました。500円硬貨もです。警察が来ましたが、、
罰当たりな事しましたね、その強盗。500円硬貨の価値に目が眩み、しでかしたんでしょうが…平成十周年に記念で出された硬貨も換金ショップで高額な価格で買い取られたとしても罰は一生付きまといます。強盗も悪い事だし、記念に発行された硬貨を盗んで行くのも悪いに加え不敬なことをした。と言う実感が無いのでしょう。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: nezu3344@gmail.com
電話:080-4358-3739
出身:静岡県浜松市
住所:千葉県野田市
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「明治150年真の日本の姿」、「日本と台湾の絆」、「奇跡の将軍樋口季一郎」、「南京事件は4度あった」、などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。
日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
《著書》
『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!和と結いの心と対等意識』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!日本はなぜ戦ったのか』
『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』日本図書館協会推薦
『ねずさんと語る古事記 壱〜序文、創生の神々、伊耶那岐と伊耶那美』
『ねずさんと語る古事記・弐〜天照大御神と須佐之男命、八俣遠呂智、大国主神』
『誰も言わない ねずさんの世界一誇れる国 日本』
最新刊
『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』
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