日本書紀講義6 陽神左旋 陰神右旋(修正版)

現代の企業社会などにおいても、ただ上意下達では、必ず面従腹背が起こります。
現実に組織を動かそうとするならば、上下一体の合意形成が不可欠。
このことは、人の上に立つ職務に就いたご経験をお持ちの方なら、誰もが経験したことであるはずです。
そういうことの根幹となるものが、日本書紀の冒頭の神話にはっきり語られていることは、もっと多くの日本人が知る必要があることではないかと思います。

伊弉諾神宮
20200915 伊弉諾神宮
画像出所=https://matome.naver.jp/odai/2143547536817485101/2143547907821444303
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日本書紀講義1 清陽(すみあきらか)
日本書紀講義2 国之常立尊
日本書紀講義3 創生の男女神
日本書紀講義4 磤馭慮嶋(おのごろじま)
日本書紀講義5 陽神左旋・陰神右旋
日本書紀講義6 陽神左旋・陰神右旋(修正版)

《これまでのあらすじ》
清陽と重濁から生まれた天地から、造化三神がお化(な)りになり、続けて5組の男女神が生(な)られ、その最後にイザナギ(伊弉諾尊)、伊弉冉尊(イザナミ)がお生まれになられます。イザナギとイザナミは、ともに天の浮橋の上に立たれると、豈國(よろこびあふれる楽しい国)はないだろうか、と図られ、二神で力をあわせて磤馭慮嶋(おのごろじま)を造ります。

本抄は、こうしてできた「よろこびあふれる楽しい嶋」である磤馭慮嶋(おのごろじま)で、二神が結ばれる様子を通じて、物事の根幹となる道理(条理)が明かされた抄です。
物事の条理・道理の根幹をなすものとは、
「何事も霊(ひ)が先、身(み)が後(あと)」ということです。
この条理こそ、歴史を通じて我が国の道徳ないし国体の中心の核であると言えます。

いつもの通り、読み下しと原文を示します。
ひらがなで書いてある読み下しのところは、是非、声に出してお読みいただきたいところです。
日本語の美しい響きとともに、何か感じるところがあるものと思います。

《読み下しと原文》
ふたかみここに しまにおり    二神於是降居彼嶋因欲
めをととなりて くにすうむ     共為夫婦産生洲国
このおのごろの しまもちて    便以磤馭慮嶋
くにのまなかの みはしらと    為国中之柱(柱、此云美簸旨邏)
をかみひだりに まわられて   而陽神左旋
めかみみぎから まわりたる   陰神右旋

わかれてまわる くにはしら    分巡国柱
おもてをあわせ めかみから   同会一面時陰神
さきにとなへて いはくには    先唱曰
あなうれしきや えをとこよ    憙哉遇可美少男焉(少男、此云烏等孤)

をかみはこれを よろこばず   陽神不悦曰
をのこがさきに となふなり    吾是男子理当先唱
なにゆゑめかみ さきにいふ   如何婦人反先言乎
ことすでにあし またまわる    事既不祥宜以改旋

ふたかみさらに あひまみゆ   於是二神却更相遇
ここにてをかみ まずとなふ    是行也陽神先唱曰
あなうれしきや えをとめよ    憙哉、遇可美少女焉(少女、此云烏等咩)

めかみにとうて いはくには    因問陰神曰
ながみはいかに なりたるや   汝身有何成耶
こたへていはく わがみには   對曰吾身
めのもとところ ひとつあり    有一雌元之處

をかみがいはく わがみには   陽神曰吾身亦
をとこのもとの ところあり    有雄元之處
わがみのもとに あるところ   思欲以吾身元處
ながみのもとに あはせむと   合汝身之元處
かくしてめをは はじめてあひて 於是陰陽始遘
めをととなれり            合為夫婦



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《現代語訳》
イザナギとイザナミは、磤馭慮嶋に降り立つと、その嶋を国の真ん中の御柱として、
陽神(をかみ)が左から、
陰神(めかみ)が右から嶋を回りました。

そして二神が出会ったところで、陰神(めかみ)が、
「あら、うれしいこと。よい男だわ」と述べました。
ところが陽神(をかみ)はこれを悦(よろこ)ばず、
「先には男子が唱えるべきである。
 なにゆえ婦人が先に言うのか。
 ことはすでによろしくない」

と仰られて、もう一度、嶋を回るところからやりなおされました。
そして今度は陽神(をかみ)から
「あら、うれしいことよ。よい少女だ」と述べられ、陰神(めかみ)に
「あなたの身は、どのようにできていますか?」と問われました。
これに答えて陰神(めかみ)は、
「わが身には、女性の元になるところがひとつあります」と答えます。
陽神(をかみ)は
「わが身には、男性の元になるところがあります。
 わが身の元にあるところを、
 汝が身の元にあるところに
 合わせよう」
と申されました。
かくして陰陽は、はじめてあいまみえて、夫婦(めおと)となりました。

《解説》

磤馭慮嶋(おのごろじま)とは、前回解説しましたが、矛の先から滴(したた)った塩の雫(しずく)が固まったものです。
古語で「塩」とは「海」のことを言いますから、これは海水でできた球体であり、そうであれば磤馭慮嶋とは、地球のことを言うとわかります。

その球体を、陽神(をかみ)が左から、陰神(めかみ)が右から回ったとあります。
球体を回るのに、どちらから回れば左回りになり、どちらから回れば右回りになるかなど、わかるものではありません。
もしわかる人がいるのなら、是非、説得力のある説明をしていただきたいものです。
つまりここで大事なことは、物理的に右回り、左回りのことを述べているのではなくて、左から回った、右から回ったという「ひだり」と「みぎ」ということが重要語であるということにあります。

古来「ひだり(左)」の「ひ」は、霊(ひ)をあらわします。
「みぎ(右)」の「み」は、身をあらわします。
つまり日本書紀は、ここで「霊(ひ)が大事」と述べているわけです。

ところが二神が出会ったときに、先に声をかけたのは陰神(めかみ)です。
これでは、せっかく霊(ひ)を大切にしたことが、無に帰してしまいます。
だから陽神は、もういちど左右から回り直すことを、あらためて行い、今度は陽神(をかみ)から、
「あら、うれしいことよ。よい少女だ」
と声をかけています。

これが世の秩序です。
どこまでも霊(ひ)が上、身が下です。
ですから声をかけるのも、あくまで霊(ひ)からです。
身から声をかけてはいけない。

神社で参拝するときに二礼二拍手一礼をしますが、この二拍のとき、右手を左手の第一関節まで、ちょっと下げます。
つまり霊(ひ)を前に出します。
神社にお祀りされている神様は御神体であり、霊(ひ)の存在です。
その神様にお参りするのは、あくまでも自分の霊(ひ)であるからです。
身は、その霊(ひ)を神様の前まで運ぶ乗り物でしかありません。

同様に、律令体制の左大臣、右大臣なら、左大臣が上、右大臣が下です。
左弁官、右弁官といった役職も、左弁官が上、右弁官が下です。
何事も霊(ひ)が上、身が下なのです。

天皇と征夷大将軍の関係もまた同じです。
天皇は霊(ひ)を代表する御存在であり、征夷大将軍は国の民の身を預かるお役目です。
ですからどこまでも天皇が上、将軍が下です。

陽神(をかみ)であるイザナギは、ここで
「うれしいことよ。よい少女だ」と声をかけています。
ここで「うれしい」を日本書紀では「憙哉」と書いています。
「憙」は、「喜(よろこ)ぶ心」と書く字ですが、歓迎するとか、好感するといった語感を含みます。

そして男女の元になるところを合わせることについて、陰神(めかみ)から許可をもらいます。

これもまたたいへんに重要なところです。
何事も霊(ひ)が上、身が下でありながら、だからといって上に立つものが問答無用で下のものに無理やり言うことを聞かせる(これを蹂躙(じゅうりん)すると言います)ということは、決してあってはならない。
どこまでも下の者の合意が必要であるということが明かされているからです。

世界中、どこの国であっても、上に立つ者は権力者であり、下の者を蹂躙しても構わないし、むしろそれが当然であるかのようにされてきた歴史を持ちます。
けれども日本では、上古の昔の神語(かむがたり)から、上下の秩序を重んじながら、同時に下の者を蹂躙してはならない。
よくよく合意を重ねた上でなければ、事を急いではならないとしているのです。

現代日本では、かなり外国文化による汚鮮(おせん)が進み、上下関係が絶対という、まるで王様ゲームのようなことがかなりのひろがりをみせていますが、大きな履き違えです。
秩序(上下)を重んじながらも、どこまでも合意の形成を大切にする。

このことは、現代の企業社会などにおいても、ただ上意下達では、必ず面従腹背が起こります。

現実に組織を動かそうとするならば、上下一体の合意形成が不可欠。

このことは、人の上に立つ職務に就いたご経験をお持ちの方なら、誰もが経験したことであるはずです。

そういうことの根幹となるものが、日本書紀の冒頭の神話にはっきり語られていることは、もっと多くの日本人が知る必要があることではないかと思います。



お読みいただき、ありがとうございました。
歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行でした。


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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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出身:静岡県浜松市
住所:千葉県野田市
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「明治150年真の日本の姿」、「日本と台湾の絆」、「奇跡の将軍樋口季一郎」、「南京事件は4度あった」、などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。
日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
《著書》
『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』
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