混迷と外圧と、還るべき原点



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アメリカでは大統領選挙が混乱し、日本ではコロナという「外圧」が起きています。混迷は次の新展開を生みます。
必要なことはあとひとつ。還るべき「原点」です。

20201110 秋
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歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行です。

ヨーロッパにおけるルネッサンス(Renaissance)は、再生・復活を意味し、古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとした西洋における一大運動でした。
一般には14世紀にイタリアで始まり、西欧全域に広がった運動と、たいていの教科書は書いていますが、そこにはすこしだけ嘘があります。

といいますのは、14世紀というのは、14世紀の末に、ダンテが復古運動を唱えたことを指しています。
これは単に言論であって、実際には15世紀半ばのコンスタンティノープルの陥落によって東ローマ帝国が滅亡したときに、多くのギリシャ系知識人が東ローマからイタリアに亡命してきたところから運動が始まっています。
つまり本来ならルネッサンス運動の開始は、15世紀になってからと、ここは記述すべきところです。

さらにいうと、それを14世紀と意図して書いているところが、実は面白いことなのです。
というのは、モンゴルによる西洋社会の征服を、意図して西洋人達が隠しているからです。
彼らにとって、イエローの東洋人によって征服されたということが、歴史を隠さなければならないほど、悔しいできごとであったし、絶対に認めたくない出来事であったわけです。
けれど実は、ルネッサンス運動が起きたことも、原因はモンゴルにあります。

モンゴルのひらいた元の大帝国は、東ヨーロッパまで席巻しました。
西洋方面戦線を担当したオゴデイがもし急死しなければ、あと2ヶ月でおそらくフランスあたりまでモンゴルの支配下になったであろうと言われていますし、あと半年オゴデイが長生きしていたら、英国もモンゴルの支配下に陥ちたであろうともいわれています。
それほどまでにモンゴルは強かったのです。

また一般の庶民(特に商人)たちは、モンゴルによる支配を歓迎したし、諸豪族たちも自国の王より、モンゴルの軍隊に加わることを歓迎したのです。
といいますのは、当時の西洋から中央アジアにかけての広大な領域は、まだまだ城塞都市国家の時代であったわけです。
そして城塞が国であり、その周囲は、いわば無主地に近い状態にありました。
言い換えると、国境なんてなかった時代であったわけです。




その城塞都市間を、多数の商人たちが往来していました。
商人たちはお金を持っていますが、ところが城塞ごとに出入りの際の税が異なる。
ひどいところでは、武力にものをいわせて法外な税を徴収したりもしていたわけです。
こうなると、商人たちは安全な商売ができないし、そもそも儲からない。

それをモンゴルは、統一した安価な税率へと変更したのです。
このため、モンゴルの支配下なら、商人たちは通行の安全と、安い税率が保障される。
ですから黄金を持つ商人たちにとっては、モンゴルの版図が広がることは大歓迎であったのです。

もちろん一般の民衆も大歓迎です。
流通の発展によって経済は活性化するし、王侯貴族たちによる収奪はなくなるし、税率も一定です。
なにより、いままで見たこともないような東西のさまざまな文物が町にあふれるのです。
消費が刺激され、経済が活況を呈し、旅行通行の安全が保障されるのです。
歓迎されないわけがありません。

王国の城塞外に住む豪族たちも歓迎でした。
モンゴルの軍団では、戦いに勝てば賞金が確実にもらえました。
モンゴルの軍隊は、日本の源氏と同じ、10人一組の体制でした。
その大将が2割の報酬をもらい、残りをそれぞれ10人で分ける。
分けられた10人は、自分が2割をもらい、残りを部下の10人に均等に分ける。
こうして大軍隊の隅々にまで定率で報奨が与えられたのです。

そしてモンゴルは強い。
戦いは常に勝利の連続です。
ということは、毎回莫大な報奨を得ることができたわけです。
また、たとえ戦いで死んだとしても、ちゃんと報奨は配当され国元の家族に配当が届けられました。
そういうところが武人たちに歓迎されましたから、城塞都市国家である王国と王国の間にある諸豪族たちは、こぞってモンゴルの味方になりました。

困ったのは城塞に住む王侯貴族たちだけです。
彼らは、モンゴルに抵抗して死ぬか、モンゴルに恭順して全てを奪われるかという二つの選択肢を与えられました。
恭順すれば、今持っている財は失いますが、次の戦いに参戦すれば、一夜にして元の財以上の財を手に入れることができました。
ですからモンゴルの進撃は止まず、諸国はこぞってモンゴルの傘下に入り、それがわずかな間にモンゴルをして大帝国に成長させていったわけです。

ちなみにモンゴルの大帝国は、滅んだのではありません。
これまたモンゴルは、日本の源氏と同じで相続を息子たちの均等配分方式を採用していました。
日本の鎌倉時代は、まさにこの均等配分方式によって田んぼが世代交代の都度分割され、7代目になる頃には、相続財産の田んぼでは誰も食えなくなってしまって、鎌倉政権が崩壊しました。
ですからこれを「たわけ(タワケ)」と言います。
「たわけ者めが!」の「田分け」です。

実はモンゴルが行った相続制度も、これとまったく同じものでした。
このため、広大なモンゴルの版図は、ジンギス・カンの亡き後、まず4人の子たちに均等に分けられ、その子が死ぬと、またその子達に均等に分けられ、次第に国家が分割していって、現代に続く西洋から中央アジアにかけての諸国の起源になっています。
インドのムガール帝国の「ムガール」というは、「ムガル」つまり、モンゴルのことですし、西洋の王族も、モンゴルの血筋であることが、王家の権威となったのです。

そのモンゴルが、14世紀半ば以降、相続によって細分化されるときに発達したのが為替を行う金融業です。
金貸しは人類最古の職業といわれるくらい古い業種ですが、モンゴルが遺したのは、モンゴルが制圧した諸国間で、現金等の送金を、現物を動かすのではなくて、互いの貸し借りによって相殺していくという仕組みでした。

城塞都市国家間の通行が便利になるということは、城塞都市国家間の資金決済の需要も増すということです。
この為替を行う金融屋は、それまでの高利貸し業からさらに一歩発展して、莫大な資金決済を請け負うことになり、結果として巨額の財を築いていきました。
そしてこうして14世紀のモンゴルの大帝国内で生まれた民間の金融屋が、15世紀になって元が小国に分離していく課程で、一層需要を増し、この金融屋が以後、外洋航海をする白人船乗りたちのスポンサーとなり、西洋の大航海時代を切り開き、また西洋国内的には、ルネッサンス運動の資金主となっていくわけです。

我々日本人は、現代商法の規定が、企業は株主のものであり、株主が経営者を取締役として雇っているという形になっていることに、なんとはなしに違和感を覚える方が多いと思います。
西洋では、15世紀以降、金融為替屋が船主となり、船長を雇って外洋航海をさせ、アフリカやアジアからの宝物を持ってこさせることが、株式会社のはじまりとなりました。

船は高額の出資であり、船が沈めば全てがパアですから、船主となる金融為替屋は、リスクヘッジのために、複数の金融為替屋で、共同出資をしてリスクの分散を計りました。
実はこれはいまでも、たとえば航空機のリースなどで行われていることで、航空会社が飛行機を買おうとするときは、複数の銀行がジョイント(共同)して、資金を供出します。
この仕組も、国際的には14世紀の元の影響で生まれた方法です。

西洋諸国は、こうして15世紀以降、大発展を遂げ、いまなお世界の先進国となっています。
その大元をたどれば元に行き着くのですが、彼らは後に東洋人を支配しているわけで、心情的にも東洋人の下に付いていたことが認められない。
そうした間隙に、ルネッサンス運動が近世以降の西洋のアイデンティティとなっていくわけです。
そのルネッサンス運動を彼らの還るべき原点としたのが、古代ローマ帝国です。
そして古代ローマ帝国の活躍は、現代においても再三映画化されています。

旧ソ連が行った共産主義革命も、根っこにあるのはロシア正教のユートピア思想です。
実はこれもまた15世紀の末に広がった宗教で、これがスラブ系の人々の住むウクライナ地方に広がって、大きな勢力を持つに至りました。

ウクライナは、もともとキリル文字を使用する東スラブ語群に属する言語です。
つまり、ウクライナの人々は、もともとがスラブ系だということです。
スラブは、スレイブの語源にもなった用語で、帝政ロシアにおける被支配民族となりましたが、それ以前は、キエフ公国というれっきとした民族国家を形成していました。

そのウクライナ地方は、たいへんに肥沃な大地を持ち、ヨーロッパきっての穀倉地帯でもあったわけです。
そして、穀倉地帯であるということは、キエフは農業国でもあったわけで、そして農業国というのは、集団性を重んじ、同時に戦いを嫌うのは、これまた世界共通項です。
そして彼らの持つ神話が、古代における牧歌的かつ平和で、人々が互いに助け合い、慈しみ合う古代ウクライナのユートピアであったわけです。

共産主義は、結局のところ、特権階級である一部の支配層が反対勢力を殺戮して権力を保持するという悪魔イズムとなりましたが、こうした悪魔イズムの共通事項としてあるのが、上辺だけは綺麗ごとを並べ立てるという点です。
そしてソビエト共産主義の綺麗ごとに使われたのが、まさにユートピア思想であったわけです。

もっとも、本当のユートピアを知る人々、つまりロシアのスラブ系の人々は、ソ連指導部にとっては、邪魔な存在です。
本当のことを知るということは、洗脳革命を実現しようとするソ連指導部には邪魔な存在だったのです。

ですから旧ソ連は、ウクライナの人々を餓死させ、思想も過去の一切も破壊しました。
それがウクライナで行なわれた人工的大飢饉のホモドールです。
ホモドールによって、ウクライナでは1,400万人を越えるスラブ系の人々が餓死し、また600万人以上に強制堕胎が行われました。
まさに共産主義の恐怖政治そのものが、ウクライナで起こったわけです。

いわゆる洗脳工作を実施しようとするとき、これを行おうとする権力者が行ってきたのが、このような大量殺戮です。
幸い日本は、天皇の存在によって占領統治を行う米国人の良心を目覚めさせ、結果として大量殺戮が行われずに、現代に至っています。
戦後72年経過して、いまだに取り戻すべき日本が語られるということは、大量殺戮がなかったからです。

なぜ大量殺戮がなかったかのもうひとつの理由が、戦時中の日本軍の活躍があまりにすさまじいものであったからです。
特攻隊は「神風」の異名を持ちますが、そういう意味では、特攻隊は、他の玉砕の戦場の日本の将兵の活躍も含めて、彼らの凄まじい限りの活躍が、その後の日本、つまり戦後の日本に神風を吹かせて、大量殺戮を経験することのない戦後日本を築き上げたといえると思います。

Chinaは易姓革命の国です。
その易姓革命は、常に「堯舜の時代に還れ」が合言葉です。
Chinaは、現代に至ってから、共産主義革命が行われましたが、その共産主義も、国民の洗脳工作に際して、大衆文化としての京劇を利用しました。
Chinaの大衆は、本当に京劇が大好きで、この京劇がChineseのアイデンティティ構築に、たいへんな影響力を持っています。

堯舜というのは、儒家により神聖視され、聖人として崇められたChinaの古代における伝説の尭と舜という帝王のことで、『史記』によれば、「その仁は天のごとく、その知は神のごとく」というくらいですから、最大級の賛辞が与えられている、紀元前2千年ごろ、つまりいまからおよそ4千年前のChinaの皇帝です。
京劇の特に時代劇では、常にこの堯舜の時代に還ろうとする者が正義の人で、現世において個人的な利得を狙う悪者と対峙します。

そしてこうした民間芸能である京劇によって、現実には堯舜の時代のChineseと、現代Chineseでは、人種も民族も言語もまるで違うのに、あたかも自分たちは堯舜の時代の子孫であるということが、彼らにとっての誇りであり、アイデンティティとなっています。
従って、彼らの生活に利益をもたらす者が、彼らにとっては堯舜です。

他の国々のことをいろいろと述べてきましたが、我が国は7世紀と19世紀に二度の大きな改革を経験しています。
7世紀の改革は、Chinaに隋や唐といった強大な軍事帝国が生まれた脅威への対抗として大化の改新が行なわれたし、19世紀はペリー来航がきっかけとなって明治維新が行われました。
そのどちらも、合言葉は「神武創業に還れ」です。

つまり私たちの国・日本は、神武創業こそが還るべき原点です。
そしてその創業は世界最古の国民国家の成立を意味するものでもあります。
以来、日本は2680年の歳月を刻んできています。

このことを振り返れば、我が国が本当に「日本を取り戻す」のであれば、そもそもの神武創業とは何か、また、天皇によるシラス(知らす、Shirasu)国とは何かを、我が国国民が自覚しなければ、我が国は還るべき原点を見失ったままでは、変わりようがない、ということがわかります。

すでに外圧はあるのです。
時代の混迷も、従前より指摘されています。
外圧が現実の脅威としてありながら、先般の選挙でも、ミサイルが上空を飛んだ北海道でさえ、反日政党の候補者ばかりが当選するという事態が起こるのは、まさに、現代日本人が「還るべき原点」を見失っていることによります。
つまり、ひらたく言うならば、我が国の転換には、なんらかの「外圧」と、還るべき「原点」という二つのことが必要だということです。

ちなみに還るべき原点を失っている国が、日本のすぐ近くにもあります。
その国は、戦前の日本統治に対する対抗国家として成立しました。
ですから、とにもかくにも日本憎しが国家の原点となっていて、これに逆らう者は、まさに大量虐殺されました。
従ってその国では、いくら北朝鮮の脅威を目の前にしても、決して北には目が向きません。
敵は日本しかないからです。

これはあたりまえのことで、半島が国家となったのは、日韓併合の少し前、日清戦争のあとに成立した大韓帝国が最初です。
それまではチャイナ王朝に支配された王族が半島内を牛耳っていただけで、国として必要な法もなければ行政システムもありません。
それがはじめて近代国家となったのが大韓帝国ですが、その大韓帝国は日本の力によって創られた国であって、自力で建国した国ではありません。
その意味では、半島の民衆がほんとうの意味で国家の一員となったのは、日韓併合時代の35年間だけであったということができます。
その後に大韓民国が成立して現在に至りますが、この大韓民国は米国によって造られた人造国家です。やはりここでも自力自前で国民国家となったわけではない。
これに加えて、大韓民国は日本統治というひとつの時代に対するカウンター国家(日本に対する対抗国家)として成立した国です。
国家の出発点が、反日というきわめてシンプルな理由にあるわけですから、彼の国では反日だけが国是であって、実は他にはなにもない。
要するに残念なことに、国家が失われても、大韓民国としては反日以外に還るべきところがないし、韓国民としての還るべき原点も持たないのです。


さて、アメリカでは大統領選挙が混乱し、日本ではコロナという「外圧」が起きています。
混迷は次の新展開を生みます。
日本にとっては、必要なことはひとつ。
還るべき「原点」です。


※モンゴルと西洋の関係については、宮脇淳子著『どの教科書にも書かれていない 日本人のための世界史』をもとに、筆者なりに考察を加えて書かせていただきました。
それにしても宮脇先生のご著書は、毎度勉強になります。


※この記事は2018年11月の記事のリニューアルです。

お読みいただき、ありがとうございました。
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小名木善行でした。


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コメント

松さん

飢えることの無い国を築く
今回の「ねずブロ」は盛り沢山で、何度も読む返しました。

世界の富裕層や資本家には、国や民の「益」を守るという概念は無さ気です。
国柄や人種や主義思想に関わらず、グローバル化と称して、ひたすら富の独り占めに専念してる様に見えます。
武力にものを言わせるのもその為としか思えません。
商業主義を否定はしません。
しかし、これで良いのでしょうか?

神武天皇は、稲作中心の我国を開かれ、誰もが豊かに安心安全に暮らせることを願いました。
稲を作る人がいる。
だから誰もが食べられる。
我国は、そうした方々を「黎元(おほみたから)」と位置付け、農業を主体に国を営んできました。

米を得るためには、土地を開き、田を造って稲を植え育て刈り、加工して食糧にしなければなりません。

皆で力を合わせる。
生きる為の万事に皆が取り組む。
そして、飢えることのない国を築く。
これが八紘一宇であり、我国が還るべき原点だと思います。

湘南童子

なるほど・・

・・毎度の事ながら大変興味深く
実に面白う読ませて頂きましたでござる

ありがとうございました



日本国を始め万国全地域が平和でありますように
私達生きとし生ける全ての物の天命が完うされますように
地球を司る神々様 八百萬の大神たち様 ありがとうございます

偽ヴォルテール

啓蒙思想
> そのルネッサンス運動を彼らの還るべき原点としたのが、古代ローマ帝国です。

古代ギリシア・ローマがヨーロッパの原点、モデルとなったのは啓蒙時代です。ルネサンスは本文で書かれている通り、東ローマ帝国の知識・文化の流入です。これで文化が花開いたのは間違いないでしょうが、当時のイタリア人が古代を原点とするアイデンティティを確立したかというと疑問があります。このころにイタリア人は東ローマ帝国人を「ギリシア人」と呼んでいました。公用語がギリシア語だからです。持ち込まれた書物もギリシア語でした。当の東ローマ帝国人は自分たちを「ローマ人」だと思っていました。国号がローマ帝国だから同然です。ルネサンス期のギリシア・ローマとはそのくらいの意味だと思います。

啓蒙時代になって、モデルとしてピックアップされたが古代ギリシア・ローマです。古代ギリシア・ローマは共和制だったと思われていた(今でも思われているけど、実際は奴隷の存在する貴族制)ので共和制や民主政治を志向する人々に高く持ち上げられました。アメリカの国会議事堂やリンカーン記念館などの施設がグレコ・ローマンなのはそういう気風に影響を受けたものです。古代ギリシア・ローマでは議会政治は行われていたのでそれに即したローマ法の再発見がヨーロッパに大きな影響を与えているなど、確かに爪痕と言えるものがあり、それゆえに西洋近代文明の理想に古代ギリシア・ローマを置いたのは納得のいくものがあります。でもそれは啓蒙時代の話なのです。

そもそも「ルネサンス」という用語がフランスの歴史家ジュール・ミシュレが1855年『フランス史』(1855年)で使ったのが最初とされ、15~16世紀の北イタリアの東ローマ・ブームを「復興」「再発見」と見立てたのは、啓蒙思想の洗礼を受けたあとの時代の人なのです。ルネサンスと啓蒙主義の間には長い宗教戦争の時代があり、連続性があるようには思えません。啓蒙思想が古代ギリシア・ローマに続いて、ルネサンスを「発見」したのです。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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