万葉集と日本書紀とその時代

全国におよぶ統一国家を形成するためには、そもそもの歴史から「我が国は最初から統一国家だったのだ」という神話が必要になるし、それを理解できるだけの知性と教養が、民間の側に育っていなければなりません。
こうした大事業を成し遂げられたのが、まさに持統天皇であり、だからこそ持統天皇は歴代天皇で唯一「高天原廣野姫天皇(たかまのはらひろのひめのすめらみこと)」と、諡(おくりな)に天上界を示す「高天原」の文字が入った天皇となられたのであろうと思います。

20201114 日の出
画像出所=https://www.mag2.com/p/news/232496
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歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行です。

国内に、敵対し国を破壊し治安を脅かす不届きかつ不逞な勢力があったとき、これを政治が駆逐するのは世界の常識です。
政治そのものが、国民に背を向けたものであれば、なおさらです。
国は平気で警察や軍を動員して、平和や安全や豊かさを望む国民を粛清していきます。
なかには、若い女性を警察が逮捕して繰り返し強姦するといったことも、世界では起こります。
残念なことですが、世界は恐ろしいところでもあるのです。

では日本ではどうでしょう。
いま多くの日本人が、日本に巣食う悪魔のような人たちに、大きな怒(いか)りを覚えています。
書店で、そうした人や国を特集した書籍が売上の上位となるのも、おそらくはそのためであろうと思います。

けれど、だからといって非合法にそうした人たちを日本国内で虐殺したり、それこそ口蹄疫(こうていえき)事件などのときの牛や豚のように殺処分したり、酷い拷問を科したり、それこそ警察によって強制強姦をしたりすることを望むような日本人は、すくなくとも生粋の日本人のなかには、誰一人いないと思います。

「罪を憎んで人を憎まず」は、孔子の『孔叢子・刑論』にある言葉ですが、まさしく日本人は、その言葉を額面通りに理解しています。
どこかの国では、「罪を憎んで人を憎まないから殺してしまう」ということがなかば公然と行われていることを考えれば、日本人がいかに正しい道を得ようと生きる国民であるかがわかろうというものです。

では、日本が大きな敗戦を経由して、政体がひっくり返りそうなくらいの大きな事態が起きたときはどうでしょうか。
私達は、先の大戦のときに、これを経験しています。

なるほどこのとき、一部には愚連隊なるものが登場したり、どこかの戦勝国を気取る異民族の人たちによる暴力行為が公然と行われたりしましたが、それでいてなお、多くの日本人は、ただしい道を生きようと努力を重ね、焼け野原となった日本の復興に務めました。

この当時は、まだまだ明治生まれの人たちが現役だった時代で、当時よく言われたことが「明治の気骨」です。
なにがあっても、すべてを失っても、心は絶対に折れない。
そういう人としての強さを、明治生まれのお父さんやお母さんたちが見事に体現してくださいました。
そして日本は短期間のうちに見事なまでに復興を遂げています。

東日本大震災や阪神淡路大震災などの大規模災害のときにも、日本人は家族や財産を失った悲しみを乗り越え、たいへんな努力をして災害復興にあたっています。
そうしなければ、雨露をしのぐ住まいさえもないのです。
ですから官民をあげて、復興のための努力が行われています。

では、国のハードが壊れず、人の命だけが、それも青年期の若い男性の命が、一瞬にして100万人規模で失われたとしたら、果たしてどのように対処したら良いでしょうか。

実は、過去において日本は、そういう経験をしています。
それが663年の白村江(はくすきのえ)事件です。

白村江事件については、このブログで何度もご紹介していますので、すでにどういう時代で何が起きたのかはご承知のことと思います。
失われた若い命は、およそ1万ですが、当時の人口は日本全国でおよそ600万人です。
平均寿命がいまの半分以下だった時代のことですから、ひと世代の人口は男子だけならおよそ7万人です。
そのうちの1万人の命が、外地で失われたのです。

このとき失われた命の多くが、地方豪族の息子さんたちの命でした。
当時の日本は、全国の豪族たちのゆるやかな結合体です。
もちろん中央に朝廷はありますが、その朝廷は、地方豪族からみれば、いまでいうなら損保会社のようなもので、いざ凶作となったときに助けてくれたり、災害対策のための大規模公共工事の際に、力になってくれる大手ゼネコンといった意味あいの存在でしかないと言っても良い存在であったということができます。

その損保会社か大手ゼネコンが、力を貸してくれというから、ウチの息子に郎党を付けて外地に送り出したら、その全員が皆殺しにされてしまったわけです。
みなさんが、地方豪族の長であったとしたならば、その損保会社か大手ゼネコン社に対して、どのような感情をいだくでしょうか。
しかも軍事力だけなら、地方豪族の方が力が強かったりもするのです。

みなさんの答えはいかがでしょうか。
地方豪族の全員がとは言いません。
しかし決して少なからざる豪族たちが、中央に対してあまり良からぬ感情を持つのが人情というものではないでしょうか。

しかも半島で倭国軍と実際に干戈を交えていたのは、唐軍でした。
そしてその唐は、あらためて日本本土に向けて攻撃を仕掛ける準備をしているとの報も、唐で捕虜になった倭人から当時の朝廷にもたらされていました。

この唐の日本本土攻撃は、唐が吐蕃(当時のチベット)との戦いに大敗することで実現こそしませんでしたが、唐が敵対する高句麗を攻め滅ぼし、次いで半島の新羅を傘下に収めれば、次に攻撃を仕掛けてくるのは日本です。
日本がそうした中にあって自立自存を図るためには、軍事的・外交的に、とにもかくにも日本を強化していかなければなりません。
つまり当時の日本には内部崩壊や内部敵対をしている暇などなかった。
それでも、人の感情というものは、どうしようもないのです。
そしてそうした感情は、容易に敵国による分断工作に利用されてしまうものです。

さて、もしみなさまが当時の朝廷あって、唐の脅威に際して、どうしても国をひとつにまとめあげ、敵対する勢力をなくさなければならない立場にあったら、どのように対処するでしょうか。

(A案)言うことを聞かない豪族を討ち滅ぼす。
(B案)豪族たちを説得する。
(C案)相互扶助と魅力的な文化を形成することで国をひとつにまとめる。

(A案)は、諸外国では普通に行われてきたことです。
いまでもそれをやっている国もあるくらいです。
しかし我が国の全国の豪族たちは、もともとみんな親戚です。
そして身内内で粛清などすれば、未来永劫、恨みを買い続けることになることは、一度親戚を怒らせると、何十年経ってもそのことをずっと言われ続けなければならないというご経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。
つまり、我が国にはなじまないのです。

(B案)は、一見すると平和的な解決手段に思えるかもしれません。
しかし可愛いの息子の命を失う現実の悲しい経験の前に、果たして説得が効果を発揮するでしょうか。
当時の豪族関係は、いまの時代でいうなら国際関係に近いものがあります。
そして説得で効果てきめんならば、国と国が争うことなど世界的に起こりえません。
しかし現実には国際関係は紛争だらけですし、GS○MIA破棄などと我がままを言って困らせる馬鹿者もいるのが現実です。

(C案)は、このとき我が国が採った方法です。
相互扶助というのは、災害発生時のお米の流通のことを言います。
地方全体が打撃を被るような大規模災害や天然の凶作があったとき、これを救えるのは、全国的なお米の流通を可能にすることができる朝廷の力だけでした。
また、堤防工事などの大規模土木工事においても、その経験と資金力を持つのは中央の朝廷の力に負うところが大きかったのです。
つまりこのことによって、中央と地方は、常に一帯となっていかなければならないという、もとからのレールが我が国には形成されていました。

しかしそれだけでは、朝廷は損保会社兼大手ゼネコン社というだけの存在になります。
それ以上に、国が、たんなる遠い血縁関係にある豪族たちのゆるやかな集合体から、ひとつの国家としてまとまっていくためには、魅力ある国家としての気高く誇り高い文化を形成していかなければなりません。

そのために編纂された書こそ、日本書紀と万葉集です。
双方とも、持統天皇が皇后の時代から天皇に、そして我が国初の上皇となられてからもずっと編纂されたものです。(万葉集は全巻のうち、巻1の前半部分が、持統天皇の指示で柿本人麻呂の手によって編纂。巻1の後半部分から巻2にかけては古事記編纂に深く関わった元明天皇や太安万侶が関与し、それ以降は元正天皇や大伴家持らの手によって編纂されました。
いずれも先鞭を付けたのは持統天皇です。

このことが意味することは、日本書紀も万葉集も、新たな時代を築くための、当時における新しい日本文化の創造であったということです。
日本書紀は、我が国の統一的な史書として。
万葉集は、我が国の文化の育成として。

とりわけ日本書紀は、我が国が神代の時代から稲作を中心にして相互扶助を行う国として形成されてきたことを強く主張しました。
ですから日本書紀では「シラス」も「治(し)らす」と書きます。治は稲作を意味する漢字です。

よく日本書紀には、日本の古くからの神である瀬織津姫(せおりつひめ)の記述がないと言われます。
だから中央朝廷の国家権力によって歴史を書き換えたのだという先生もおいでになります。それは違うと思います。
思うに瀬織津姫は、我が国の縄文以前から続く漁労民(海人)の信仰を広く集めた神様であったのであろうと見ています。
というのは、日本民族は、もともとは海洋民族であったことが各種史料で明らかといえるからです。
漁労民は、日本全国に存在します。そして漁労から山中に営みを移した人々もあります。なにせ万年の単位の古い民族なのです。いろいろな変化がその時代毎にあったわけです。

大和言葉としての「セヲリツ」を分解すると、

 セ 引き寄せる
 ヲ 奥に出現する
 リ 離れる
 ツ 集まる

となります。
潮来一枚下は地獄の底という海に生きる男たちにとって、陸にいる女性たちは女神そのものです。
その女性たちを象徴したのが、おそらくは瀬織津姫という神様なのではないかと。

しかし大和朝廷が、ふたたび日本全国をひとつに統一するためには、稲作と災害時の助け合いという原点を明確にしていく必要があったことでしょう。
そのために創られた史書が日本書紀です。

日本は八百万の神の国ですが、そうはいっても中央集権を確立するためには、その中央に権威を授ける神は一柱でなければなりません。(このことは西欧における王権神授と同じことです)
そしてそのために天照大御神を立てるなら、瀬織津姫のような古い神様は、むしろ創生の神々か天照大御神に統合してしまう必要があったのではないか。
日本書紀は、全国の神々をあまねく網羅しているわけではありません。
そして日本書紀が稲作を中心とした統一国家を目指すなら、古い神々は何らかの形で統合していく必要があったのではないかとも考えられるわけです。

一方、万葉集も、全国の一般の庶民から歌を広く集めるという工夫がなされました。
しかもそれを漢字で記すという、ある意味前代未聞の取り組みがなされました。
なにしろ一般に流通している歌を漢字で記すのです。

このことは、たとえば柳ヶ瀬ブルースなら、

♪雨の降る夜は 心も濡れる
 ましてひとりじゃ なおさみしい

と唄われるところを、

 雨降夜 濡心
 増孤独 尚寂

と記すようなものです。
そして「雨降夜」を仮に「天降臨夜 濡神心」と書けば、ただ雨が降っているだけではなくて、「神様が何らかのお悲しみの心をもって天から降臨した夜」といった意味を重ねることができます。

そしてそのような歌を、一般庶民の若い女性が詠んだ・・・つまりものと歌は、ただの普通の歌でも、それを柿本人麻呂が漢字に直し、その漢字で書かれた歌が世に出ると、一般人が高い教養を持っているということになる・・・とすると、地方豪族たちも、庶民の民度がそれほどまでに高いなら、自分たちも、アホでは勤まらないと自覚し、日本を文化の国、教養の国にしていくことができるわけです。

なにしろ地方豪族たちにしても、「俺は古い家柄だ」からと威張ってばかりいられなくなるのです。
民間に負けないだけの文化力を持たなければ、当該地方の人々の尊敬を集めることなどできないからです。

こうして日本は、官民をあげて独自の気高い文化を育成することに成功するのです。
もちろんその成功の背景には、日本人が1万4千年続いた縄文以来、そもそも人が人を殺す文化を持っていなかったということも、大きな要因です。

しかし、全国におよぶ統一国家を形成するためには、そもそもの歴史から「我が国は最初から統一国家だったのだ」という神話が必要になるし、それを理解できるだけの知性と教養が、民間の側に育っていなければなりません。

こうした大事業を成し遂げられたのが、まさに持統天皇であり、だからこそ持統天皇は歴代天皇で唯一「高天原廣野姫天皇(たかまのはらひろのひめのすめらみこと)」と、諡(おくりな)に天上界を示す「高天原」の文字が入った天皇となられたのであろうと思います。

ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』は、いずれも、そうした万葉集や日本書紀の真の姿を明確にしようとして書いた本です。


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小名木善行でした。


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コメント

松さん

心ある庶民は見ています
万葉集や日本書紀の原書を与えられても、殆どの現代庶民は、読むことも解釈することもできないと思います。
ですから、有象無象の蘊蓄本が山程出回り、激論もあります。
論戦には勝ち負けがあり、例え勝っても逆恨みを背負います。
一筋に生き、老いても尚、論客はそんな宿命から逃れられません。
優れた論客には、正攻法で勝ち抜いてほしいと思っています。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: nezu3344@gmail.com
電話:080-4358-3739
出身:静岡県浜松市
住所:千葉県野田市
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「明治150年真の日本の姿」、「日本と台湾の絆」、「奇跡の将軍樋口季一郎」、「南京事件は4度あった」、などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。
日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
《著書》
『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!和と結いの心と対等意識』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!日本はなぜ戦ったのか』
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