和菓子のお話



1月16日(土)倭塾開催します。

和菓子に合うのはやっぱり緑茶ですが、なんとなく不思議に思うことに、ケーキやカステラなどの洋菓子は、テレビを観ながら食べても美味しいけれど、和菓子はテレビがついていると、なんとなくもったいない気がします。せっかくの和菓子の味や見目の美しさを堪能できないような気がしてしまうのです。
和菓子には、そういう不思議な繊細さがあります。

皇室献上菓匠山梨県三省堂のお正月限定上生菓子
20200116 きんとん
画像出所=https://store.shopping.yahoo.co.jp/aionline-japan/vy-45.html
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小名木善行です。

お正月の「きんとん」は、白と緑のきんとんを配します。
これは雪の下から新芽が萌え出る様子を表わしているのだそうです。

梅の頃になると「きんとん」は、赤と白で梅の花となり、
11月には、茶色に白い粉糖が振りかけられて「初霜」になります。
同じ中味なのに、季節とともに見せ方がまるで違っているわけです。

そういえば小学校の頃、親が建て前の引き出物でいただいてきたお重の桜のきんとんを、ひとりで全部たいらげてしまって、「お行儀が悪い!」と叱られたことがあったなあ(笑)。

和菓子は、日本の伝統的製造法で作られたお菓子です。
この名前は、明治時代以降にヨーロッパなどから新しく日本に入ってきた「洋菓子」に対して使われるようになった名前です。
洋菓子、和菓子とも、ただ美味しいだけでなく、「美的鑑賞にも堪えることを期待されて発達したお菓子」ということができます。

元参議院議員の中山恭子先生が、拉致被害者の救出に北朝鮮に行ったときのことですが、このとき面白いエピソードがあります。
恭子先生は手みやげにと、ハンドバックの中に、横田早紀江さん(拉致被害者横田めぐみさんの母)が書いた「めぐみ」という本、それと二段重ねのお重に入れた和菓子を北朝鮮に持参されたのだそうです。

北朝鮮に到着し、空港の待ち合い(そこはずいぶんと広い部屋だったそうですが)で、被害者のみなさんをお待ちしている間、北朝鮮の官吏たちがやってきました。
官吏といっても、警察官や軍人のような人たちを大勢引き連れています。
いわゆる「ニラミをきかせ」に来たわけです。
そこで恭子先生、持参した和菓子のお重をひらいて、「どうぞ」とお勧めされました。

この後、先生は無事拉致被害者を救出して日本に戻られたのですが、その後に、実は北朝鮮から「きつい苦情」が寄せられたそうです。
その苦情というのが、
「二度と本と和菓子は持ってこないでください・・・」

本は、わかります。
なにせ「めぐみ」を持参したのです。
北朝鮮も、処置に困ったことでしょう。
けれど「和菓子を持参しないでください」とは・・・。

きっと、和菓子を食べた北の職員達が、その美しさと味のやさしさに、心まで溶かされてしまったのでしょう。
和菓子には、そんな不思議さがあります。

そういえば、和菓子に合うのはやっぱり緑茶ですが、なんとなく不思議に思うことに、
ケーキやカステラなどの洋菓子は、テレビを観ながら食べても美味しいけれど、
和菓子はテレビがついていると、なんとなくもったいない気がします。
せっかくの和菓子の味や見目の美しさを堪能できないような気がしてしまうのです。
そういう繊細さが、和菓子にはあるような気がします。

さてこの和菓子、実はとんでもなく歴史の古いものです。
古くは縄文時代にさかのぼり、どんぐりなどのアクの強い木の実を、砕いて水にさらして団子状にまるめて熱を加えたりして、お菓子として食べていたことが知れています。
これが有名な「縄文クッキー」で、実際にいただいたことがあるのですが、これがなんとも美味しい。
縄文時代の人たちも、現代日本人も、美味しいものはおいしいのだと確信しました(笑)

お米が作られるようになると、その米を発芽させて「米もやし」にし、そこからでんぷんを採取して、これを糖(水飴)に変えて甘味料として用いるようになりました。
こうしてできた水飴を、初代天皇の神武天皇が、戦勝を祈願して神様に奉納したという記録が日本書紀にあります。
いまから2680年以上前のことです。

お菓子の神様といえば、田道間守(たじまもり)で、お菓子の縁起の神社に祀られているのだけれど、この人は第11代、垂仁天皇の時代(紀元前70年頃)の時代の人です。
田道間守は、垂仁天皇の病を治すため、不老不死の菓子を求めて「常世の国(とこよのくに)」まで旅立ちました。
常世の国というのは、いまでいうブータンやチベットのあたりの国だと言われています。

彼は、艱難辛苦の末、9年後に日本に帰国したのですが、このときすでに垂仁天皇は亡くなっておいでになりました。
嘆き悲しんだ田道間守は、垂仁天皇の御陵に詣で、帰国の遅れたお詫びと約束を果たしたことを報告し、持ち帰ったお菓子を墓前に捧げると、その場で何日も絶食して、殉死を遂げたとあります。
田道間守は、いまから2400年くらい前の人ですが、目の前にある食べ物に手を付けずに死ぬということは、かつての日本の兵隊さんや、台湾の高砂義勇隊の人たちの中にもそうした逸話がありますが、自分の欲望よりも、他の人を優先するという日本人の思考と行動は、そんな古い時代から続いていたのですね。

ちなみにこのとき田道間守が持ち帰ったお菓子というのが「橘(たちばな)の木」で、これが長い歴史の中で品種改良されて「みかん」となっています。
このため「みかん」は、完全な日本品種で、外国でも「みかん」は「Mikan」として、ひとつの独立した地位を確立しています。

近年では、この「みかん」の品種の改良がものすごく進んでいて、見た目も味も、格段に美味しくなっています。
筆者の地元の「三ケ日みかん」も、半世紀前には器量が悪くて酸っぱいなどと言われたものですが、いまでは国内トップクラスのまで言われる甘みと、外観を手に入れて、しかも安く出荷できるようになりました。
また、もともと甘いと言われていた和歌山みかんや愛媛みかんなどでは、木の根元にシートを被せて根を保温することで、ありえない甘みを持った新しい「みかん」が栽培され、出荷されています。

大分みかんや、長崎みかんなど、それぞれの地域のみかんが、こうして互いに切磋琢磨して、近年、本当にみかんが劇的においしくなってきています。
そしてそのみかんは、もともとは和菓子のひとつであった・・・ということです。

さて、田道間守(たじまもり)の初期大和朝廷の時代から、時代が進んで奈良時代になると、734年の「淡路国正税帳(正倉院所蔵)」に、お餅のお菓子(大豆餅、小豆餅など)や、せんべい、あんこ餅などが紹介されています。
さらに平安時代の源氏物語には、椿餅(つばきもち)なんてのも出て来ます。

鎌倉時代になると、臨済宗の開祖の栄西禅師が、唐から茶を持ち帰り、やがてこれが「茶の湯」となって全国に大流行しました。
そして渋い茶の湯のあたりとして、甘いお菓子が大流行。
芋ようかんなどは、この時代に誕生しています。

そうして江戸時代、平和な社会の中で、庶民のお菓子として大ブレイクして発展したのが、いまの和菓子です。
なかでも京都の「京菓子」と、江戸の「上菓子」は、競い合うように発展し、さまざまな種類の和菓子が誕生しました。
ここではじまったのが、和菓子に織り込まれた繊細な季節感です。

その江戸時代。
幕府では毎年6月16日に、お目見え以上の武士(直参の旗本)に、江戸城大広間で和菓子を与えるという儀式がありました。
これは、平安中期の承和年間に国内に疫病が蔓延したときに、仁明天皇が年号を嘉祥と改め、その元年(848年)の6月16日に、16個の菓子や餅を神前に供えて、疾病よけと健康招福を祈ったという故事に倣ったもので、
「嘉祥(かよう)の日」と呼ばれて、いまでも和菓子の記念日となっています。

10月から11月にかけて、毎年、明治神宮で和菓子の奉献会が催されます。
この日は、全国から銘菓が奉献されるだけでなく、平安時代の衣装を身にまとった和菓子職人さんが、神前で直接菓子をこしらえて、奉献します。
お菓子は、ただ楽しんだり食べたりするだけでなく、そのお菓子そのものにも感謝するし、出してくれた方にも感謝するし、造ってくれた菓子職人さんにも感謝の心を捧げます。
日本文化ってやっぱり感謝の文化なんだなあとつくづく思います。

それにしても、見目うるわしく、食べておいしく、巧みに季節感を漂わせた日本の職人芸の和菓子。
渋いお茶で、おいしい和菓子を、おひとついかが?


※この記事は2011年11月のリニューアルです。
お読みいただき、ありがとうございました。
歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行でした。


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コメント

アッキー

和菓子の由来は韓国とかいうデマ
なにかと、こんな嘘を発明する輩が多いようです。気をつけてください。
歴史ある日本の誇る和菓子。人間関係の円滑化にも、最適です。

松さん

水飴の思い出
酒を止める迄は、甘いものが苦手で、滅多に食べませんでした。
今では時々食べたくなります。
(歳のせいですかね)

水飴と言えば紙芝居。
五円か十円の水飴を買って舐めながら、夢中で観ていた子供の頃。
昭和の風景。
懐かしく思い出しています。

紙芝居は子供の娯楽の王様でした。
紙芝居屋は自転車でやって来るので、大道芸人だとばかり思っていました。
紙芝居屋が飴の行商人(露天商)だと知ったのは随分大きくなってからのことです。

それにしても、駄菓子屋のサッカリン入り菓子とは違う水飴の甘さ。
忘れられません。

飴売りの歴史も長いそうです。
その辺りの話は、ねずさんにお任せしたいと思います。

桑畑明石

>ケーキやカステラなどの洋菓子は、テレビを観ながら食べても美味しいけれど、
>和菓子はテレビがついていると、なんとなくもったいない気がします。

本当にそうですね!
昨夜はドイツのバターと砂糖の塊のようなケーキを食べてしまったので、週末は少し贅沢な和菓子を嗜みたいと思います!

北朝鮮・・・和菓子を食べておれば良いのですが、味見もせず廃棄だったら本当に残念な国ですね。

フルーツバスケット

果子
> そしてそのみかんは、もともとは和菓子のひとつであった・・・ということです。

平安期には「菓子」という言葉がまだなく、「果物(くだもの)」の中に含まれていたのですね。もともと、「菓」と「果」は同字とされていましたが、日本では甘味の加工食品に「菓」の字を当てたようです。ただし、現在でも「果子」の表記を使う和菓子屋さんがあります。現代中国語でも果子(Guǒzi)が「くだもの」の意味です。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: nezu3344@gmail.com
電話:080-4358-3739
出身:静岡県浜松市
住所:千葉県野田市
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「明治150年真の日本の姿」、「日本と台湾の絆」、「奇跡の将軍樋口季一郎」、「南京事件は4度あった」、などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。
日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
《著書》
『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!和と結いの心と対等意識』
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!日本はなぜ戦ったのか』
『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』日本図書館協会推薦
『ねずさんと語る古事記 壱〜序文、創生の神々、伊耶那岐と伊耶那美』
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