死者の軍勢



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先の大戦で命を失った我が日本の英霊諸氏もまた、いまや日本の守り神として、この日本を守り続けてくれています。
戦後の日本は、一時的に「はしか」のような流行病に侵されたけれど、そんな日本をあたたかく見守りながら、彼らは日本人が正気を取り戻すときを、じっと待っていてくれている、私はそのように思っています。

20210304 死者の軍勢
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小名木善行です。

小説も映画も大ヒットした『指輪物語』シリーズのペレンノール野の合戦で、「死者の軍」という大軍が登場し、主人公たちを助けるという物語がありました。
また、映画『ハムナプトラ』の第三作『呪われた皇帝の秘宝』では、ジェット・リーこと李連杰(り・れんぼく)演じるハン皇帝が、死者の軍を率いてこの世界を乗っ取ろうと大戦を仕掛けるという設定がありました。
どちらも大ヒットした映画なので、ご覧になられた方も多いかと思います。

どちらも、ただの空想の物語です。
けれど意外と、そういうことは「あり」なのかもしれません。

時は1185年のことです。
本州の山口県と、九州の福岡県を隔てる関門海峡で行われたのが、有名な「壇ノ浦の戦い」です。
平家物語によれば、この戦いに動員した平家一門の船舶数はおよそ3千艘で、1船あたり、平均20名の乗船とすると、その兵力はおよそ6千名です(諸説あります)。
その6千の軍勢が、一般には壇ノ浦で海の藻屑と消えたとされているわけですが、どっこい、人は魂の乗り物です。
魂が本体、肉体はただの乗り物にすぎない、というのが縄文以来の我が国の知恵です。

この戦いの後に行われたのが元寇です。
一度目が文永の役(ぶんえいのえき・1274年)で89年後。
二度目が弘安の役(こうあんのえき・1281年)で96年後です。

特に二度目の弘安の役においては、日本の博多湾めがけて押し寄せた14万の元の大軍を、鎌倉御家人たち6万の軍勢が、見事打ち破っているのですが、一点、不思議なことがあります。
それは、
「なぜ元軍は、大軍を博多湾だけに集結させたのか」
という疑問です。

彼らは、遠路はるばる船を連ねて日本に攻め込んできたのです。
もし、目指す上陸地点が博多湾ではなく、京都府の北の若狭湾であったとしたら、その後の歴史はどのように変化したことでしょうか。


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それこそ恐怖のシナリオになるのですが、この疑問への答えといえそうなことは、多分にカルト的になるけれども、元寇の100年前に沈んだ平家軍の将兵たちの亡霊が、海の守り神となって元軍が関門海峡以東に押し寄せることを断固阻んだ、とでも考える以外に、他に解釈のしようがないのです。

実はこのことは私が思いついたことではなくて、むすび大学のこがさんが気付いてClubhouseでお話されていたことなのですが、聞いて、思わず「なるほど!」と納得しました。

人の人生というのは、肉体はなるほど今生限りのものですが、魂は永遠の存在であり、むしろ肉体はその魂の乗り物にすぎない、というのが、日本の縄文以来の知恵です。
そして縄文時代の集落跡を調べると、だいたい集落の真ん中にご先祖たちの墓地がある。
このことはつまり、縄文人たちは、死者と共存していた、と考えられているわけです。

実はこうした「集落の真ん中に墓地を持つ」という村落の構成は、いまでも南米や南太平洋の島々などに古くからの習慣として残っています。
そして彼らは、共通のご祖先が倭人たちであるという。
つまり、日本における古くからの万年の単位で行われ続けてきた習慣が、いまでも存続しているわけですが、このことが示す意味は、現代においても日本は、生者と死者が共存している国である、ということです。

このように申し上げると、現代日本人には少しわかりにくいかもしれませんが、もともと仏教では、死んだ人の魂は濁悪の娑婆世界、つまりこの世を離れて、理想の国である極楽浄土へと旅立つとされています。
その極楽浄土のひとつが、須弥山であり、東の果てにある扶桑国であり、ユートピアの蓬莱山、あるいは崑崙(こんろん)であるとされているわけです。
だから、人が亡くなると、その魂は浄土へと旅立ちますから、お別れを告げる「告別式」が行われます。

ところが日本古来の神道では、亡くなった人の魂は、家や村の守り神となって、子々孫々の幸せをずっと守り続けてくれると考えられています。
つまり、日本は縄文以来、ずっと死者と共存する国であったし、それはおそらく今もなお、続いていると考えられるわけです。

そうであれば、厳島神社で平家納経まで行った平家が、ただ闇雲に壇ノ浦で滅んだとばかりは、考えられない。
なるほど彼らは、壇ノ浦の戦いで海に沈んだけれど、そこは海の守り神の宗像三女神のすぐお膝元でもあるわけです。
なにしろ、元寇のときの元軍は、まったく不思議なことに、宗像神社(御旅所)から沖合に浮かぶ宗像大社沖津宮を結ぶラインを、ただの一艘も越えていないのです。

海に沈んだ平家の武士たちは、宗像三女神の指揮のもとで、こんどは海の守り神となって死者の軍を起こし、元寇においては、元の大軍が関門海峡以東に移動するのを阻止し、また大東亜戦争においては、北九州に原爆を落とそうとしたB29を、南へと追い払うという、重要な働きをいまもなお、されている・・・のかもしれません。

先の大戦で命を失った我が日本の英霊諸氏もまた、いまや日本の守り神として、この日本を守り続けてくれています。
戦後の日本は、一時的に「はしか」のような流行病に侵されたけれど、そんな日本をあたたかく見守りながら、彼らは日本人が正気を取り戻すときを、じっと待っていてくれている、私はそのように思っています。


お読みいただき、ありがとうございました。
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小名木善行でした。


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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年生まれ。浜松市出身。上場信販会社を経て執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。またインターネット・ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。「歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに」という理念を掲げ活動する。古事記・日本書紀・万葉集などの原文を丁寧に読み解き、誰にでも納得できる日本論を発信。

《著書》日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、その他執筆多数。

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