多くの人は十七条憲法の第一条「和をもって貴しとなせ」を誤解している



第81回 倭塾開催 令和3年3月21日(日)13:30開講 場所:東京・富岡八幡宮・婚儀殿

十七条憲法においても、その第一条の文意は、「和」そのものにあるのではなく、むしろ「論(あげつら)ふ」ことにあるといえます。
そのあたりの読み違えは、今後の日本でしっかりと正していきたいものだと思います。

20201018 十七条憲法



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小名木善行です。

十七条憲法は、我が国のアイデンティティの、いわば原典を構成した偉大な憲法(いつくしきのり)です。
そこで、第一条から順に、何がどのように書かれているのかを、一度、皆様とともに、しっかりと読んでみたいと思います。

今回は、第一条です。

第一条
《原文》
 一曰
 以和為貴 無忤為宗
 人皆有黨 亦少達者
 是以
 或不順君父 乍違于隣里
 然上和下睦 諧於論事
 則事理自通 何事不成


《読み下し文》
一にいわく。
和(わ)を以(も)ちて貴(たっと)しとなし、
忤(さから)うこと無きを宗(むね)とせよ。
人みな党あり、また達(さと)れるもの少なし。
ここをもって、あるいは君父(くんぷ)に順(したが)わず、また隣里(りんり)に違(たが)う。
しかれども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて
事を論(あげつら)うに諧(かな)うときは
すなわち事理(じり)おのずから通ず。
何事(なにごと)か成(な)らざらん。


《現代語訳》
第一条
和をもって貴しとして、
人を恨んだりしてはなりません。
人には誰にも信じるものがあります。
また、達した人、つまり悟りを得たような人は、すくないものです。
だから、人によっては主君や父の言葉に従わなかったり、また隣の人や、村同士で意見が異なったりします。
けれども、上に立つ人から率先してやわらぎ、下の人たちもまずは仲良くすることを第一にして、様々な事柄をみんなで議論するときにこそ、大切な主張も通じるし、あらゆることが成就していくのです。



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《解説》

この第一条にある「和をもって貴しとなせ」という言葉は、おそらく十七条憲法の代名詞として、ひろく世間に知れ渡った、いわば日本人の常識語ともなっているものといえます。
ただし聖徳太子は、この第一条で、人々がただ闇雲に仲良くしさえすれば良いと述べているのではありません。
なるほど書き出しは「和をもって貴しとなせ」ですが、続く言葉は「忤(さから)うこと無きを宗(むね)とせよ」です。

「忤(さから)う」という漢字は、見慣れない字ですけれど、この字の意味することは「呪道具の杵(きね)」です。
これをつかって悪霊から身を護るとされている道具を指す漢字で、そこから転じて邪悪なものに拮抗し抵抗することを意味します。
つまりここで言わんとしていることは、「相手を呪っちゃいけないよ」ということです。

「人みな党あり」の「党」は、訓読みが「たむら」で、人がたむろしている様子を意味します。
人は、自分の思想信条に近い人達と集団を形成し、そうしてできた集団は、また個人に一定の志向を与えます。
「また達(さと)れるもの少なし」では、「達する」という漢字を用いていますが、ここでいう「達する」は、何かを極めた人、一定の高みに達した人のことを意味します。

要するに人には党があるし、達している人など、めったにいるわけではないのだから、人によっては主君や父の言葉に従わなかったり、また隣の人や、村同士で意見が異なったりしてしまうわけです。
さらに、そうなったときに個人攻撃をする。
個人や団体の名誉を損ねるような言動をとり、これによって互いに感情的な対立が生まれ、あげくは相手を呪ったりまでしてしまうわけです。
呪うということは、相手が滅びることを願う行為ですから、つまり言論による対立が、ゆくゆくは物理的な紛争にまで至ってしまうわけです。

だからこそ、上に立つ人から率先してやわらぎ、下の人たちもまずは仲良くすることを第一にして、様々な事柄をみんなで議論する。
その議論のことを、十七条憲法では「論(あげつら)ふ」と呼んでいます。
「論(あげつら)ふ」というのは、顔《面(おもて)といいます》をあげて議論することを言います。

すこし解説が必要です。
十七条憲法の制定に先駆けて、我が国では「冠位十二階」の制度が始まりました。
これは、身分の上下を厳格に定めたもので、上の人の前では、下の者は常に顔を伏せていなければなりません。
「おもてをあげよ」
と言われて、はじめて顔をあげて良いわけです。
ただしその場合も、相手(つまり上司)と直接目を合わせることはNGです。
「おもてをあげよ」という言葉は、ただ、顔をあげてよい、というだけのことで、上司の方を向け、と言っているのではないからです。

これだけの厳格な身分制を前提として、次のステップとして十七条憲法が存在します。
そして十七条憲法では、
「身分制はあるけれど、
 大事なことは
 上下の境なく、
 互いに顔をあげて
 ちゃんと議論しなさい」
と述べているわけです。
だから「論(あげつら)ふ」なのです。

よく聞く言葉に、「日本人は議論が下手だ」というものがあります。
実はとんでもない話で、幕末の志士たちも、明治の人たちも、軍人さんであっても、必要なときには必要なだけ、ときに激しく議論する、ということが普通に行われていました。
だからこそ日本人は、鎖国以前の時代にも欧米列強に対して「タフ・ネゴシエーター」であったし、だからこそ日本は植民地支配を受けることなく鎖国することもできたのです。

それを聖徳太子の十七条憲法の、第一条の最初の言葉だけを切り取って、
「日本人は和をもって貴しとなす民族なのだから、
 議論がヘタで苦手である」
などと、もっともらしい事を言う。
これを左の人たちの「自作自演」といいます。

欧米ではディベートが盛んで、賛成派となって議論したら、今度は反対派となって議論するということが、訓練として盛んに行われています。
実はかつての日本でも同じで、ひとりひとりが歴史の当事者となって・・・つまり家康や信長になって、一定の決断をどうしてくだしたのかを、考え、披露し、互いに磨きあうということが普通に行われていました。
これはつまり、ディベートそのものでもあるわけです。

そして十七条憲法においても、その第一条の文意は、「和」そのものにあるのではなく、むしろ「論(あげつら)ふ」ことにあるといえます。
そのあたりの読み違えは、今後の日本でしっかりと正していきたいものだと思います。


お読みいただき、ありがとうございました。
歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行でした。


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日本の憲法
ねず先生

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この2つだと確信しています。
今の日本国憲法は、民定でも欽定でもない、
仮定憲法にしています。

ゆえに、上の二つに合わない政策をする、
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には1票を入れません。

アンチ票でも良い、白票や、選挙に行かない事が
最も罪なのだと。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年生まれ。浜松市出身。上場信販会社を経て執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。またインターネット・ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。「歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに」という理念を掲げ活動する。古事記・日本書紀・万葉集などの原文を丁寧に読み解き、誰にでも納得できる日本論を発信。

《著書》日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、その他執筆多数。

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