能楽「弓八幡(ゆみやわた)」



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お能は、侘び寂び幽玄の世界であると説明されることが多いです。
しかし、お能の演目は、決して、わびしさや、静寂さや、霧がかかったようなよく見えない世界を描いたものではありません。
人が社会を営むにあたり、その基礎基盤となる根幹を、芸術を通じて見事に描き出すことで、武士道の根幹をなした、それが日本のお能です。

20210602 弓八幡
画像出所=https://jpsearch.go.jp/item/arc_nishikie-arcUP1468
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小名木善行です。

お能の定番の演目に「弓八幡(ゆみやわた)」があります。
京都府八幡市の男山にある石清水八幡宮を舞台とする演目です。

ある日、後宇多天皇の家臣が岩清水八幡宮に参拝し、そこで弓を錦の袋に入れた老人に出会います。
そこで「どこから来たのですか?」と尋ねると、
「自分は当社に永く仕えている者で、桑の弓を天皇に捧げようと待っていたのです」と答る。
そして、
「神代には桑の弓と蓬(よもぎ)の矢で天下を治めたというが,今は泰平の世なので袋に納めて捧げるのです」と言う。

このシーンです。
ねず式で、現代語に訳してみます。

家臣「今日当社御参詣に桑の弓を捧げることは、
   すなわち神慮なのですね」
老人「神の御代のときは、
   桑(くわ)できた弓と、
   蓬(よもぎ)でできた矢で
   世を治めたといいます。
   そこに泰平の御代のしるしがあります。
   この袋に入れたる弓を取り出して、
   神前で拝見しますか?」
家臣「いやいや弓を袋から取り出してしまっては、
   何の意味もありません」
老人「そうです。
   弓を袋から出してしまっては意味がありません。
   昔、チャイナの周の時代を治めた頃には・・・」
家臣「弓矢を包んで、干戈(かんか)を納めた!!
   弓を袋に入れ、剣を箱に収めることこそ・・・」
老人「そう。泰平の御代のしるしです。」

そこで老人はにっこり笑うと、
「自分は八幡宮の神託を伝えるために来た高良(たから)の神《宝の神》である」と言い姿を消します。
そののち、天界から妙なる音楽が聞こえてきて高良神(たからのかみ)が現れて、国土安全、平和の御世を讃えて舞う・・・




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これが、お能の「弓八幡」の物語であり、演目です。

「弓八幡」は、世阿弥の作であると伝えられますが、言わんとしているのは、弓矢や剣で世を治めるのではなく、弓矢や剣を持ち、それを袋に入れて納めておくことにこそ、大切な意味がある、という教えです。

石清水八幡宮の御祭神は、もちろん八幡神です。
八は、数え切れないくらいの
幡は、戦(いくさ)のときの幟(のぼり)です。
つまり八幡神は、武神であり、武神であるからこそ、源氏の神とされました。
(源氏の祖は、八幡太郎義家とも言いますよね?)

しかしその八幡神は、同時に、弓矢や剣で世を治めることを良しとしない。
武器を持っていても、それを袋に入れて、使わないでいることにこそ、天下の太平があり、世のしあわせがある、と説くのです。

武の道は、敵を斬り伏せ、叩きのめす道ではありません。
最強の武は、戦わずに、そもそも相手に「戦おう」という気持ちを与えないこと。
右の頬を打たれたら、左の頬を差し出すのでもなく、
右の頬を打たれたら、相手の頬をぶん殴るのでもなく、
そもそも、相手に頬を打とうという気持ちを起こさせない、それでいて喧嘩にならず、平和が保たれる。
そこにこそ、武の奥義があり、また八幡神の御心がある、ということが、この「弓八幡」というお能の演目のテーマです。

日本の武士は、幼少期から繰り返し、こうしたお能の演目を通じて、武とは何か、政(まつりごと)とは何か、人の道とは何かなどを学びました。
そして、その基礎土台の上に、四書五経などを学びました。

同じように四書五経を学びながら、チャイナやコリアに日本の武士道のような高貴な文化が育たなかった、日本にのみ武士道が育ったのは、日本の武士には、こうしたお能の演目による哲学が、その基礎にしっかりと根づいていたからです。

お能は、侘び寂び幽玄の世界であると説明されることが多いです。
しかし、お能の演目は、決して、わびしさや、静寂さや、霧がかかったようなよく見えない世界を描いたものではありません。
人が社会を営むにあたり、その基礎基盤となる根幹を、芸術を通じて見事に描き出すことで、武士道の根幹をなした、それが日本のお能です。

日本文化って、奥が深い!!


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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年生まれ。浜松市出身。上場信販会社を経て執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。またインターネット・ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。「歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに」という理念を掲げ活動する。古事記・日本書紀・万葉集などの原文を丁寧に読み解き、誰にでも納得できる日本論を発信。

《著書》日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、その他執筆多数。

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