察する文化と、証拠がないという言い訳



次回倭塾は7月17日(土)13時半から富岡八幡宮婚儀殿、テーマは「幻の極東共和国と古代の日本」です。
詳細は→https://www.facebook.com/events/884676452313311


それこそが政治の役割であり、これを実現していのが行政の役割です。
ことが起きてから四の五のというのは、司法の役割であって、政治や行政の役割ではありません。
「証拠がない」という言い方は、ただの言い訳でしかないのです。

20210707 裁判
画像出所=https://www.irasutoya.com/2013/07/blog-post_3781.html
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)



人気ブログランキング
応援クリックこちらから。いつもありがとうございます。

歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行です。

日本の文化は「察する文化」の国です。
これは聖徳太子の十七条憲法の第11条に由来します。
そこには次のように書かれています。

《原文》
第十一条
 十一曰
 明察功過 罰賞必當
 日者
 賞不在功 罰不在罪
 執事群卿 宜明賞罰


《読み下し文》
十一にいわく。
功過(こうか)を明らかに察して、賞罰を必ず当てよ。
このごろ、賞は功においてせず、罰は罪においてせず。
事(こと)を執(と)る群卿、よろしく賞罰を明らかにすべし。


《現代語訳》
善い行いも悪い行いも、事前に察して、必ず先に賞罰を行いなさい。
このごろは、善い行いを表彰することせず、また罪があっても罰を与えないことが多々あります。
しかし政治や行政を行う者は、表彰と罰を、民衆によくわかるように明らかに行わなければなりません。


十七条憲法の各条文は、すべて「このように心がけなさい」という努力規定です。
ところが、この11条だけは、「群卿、よろしく賞罰を明らかにすべし」は、なるほど努力規定なのだけれど、
功過(こうか)を明らかに察し《明察功過》だけは、単に努力するだけではどうにもならず、これは自ら意識して鍛えなければ、できない事柄です。
つまり11条だけは、努力規定+学習規定になっているといえます。

悪い行いをした者に罰を与えるのは、あたりまえのことです。
ところが十七条憲法は、善い行いに対してもまた、ちゃんと論功行賞を行わなければならない、罰と論功行賞は、両者がそろってはじめてひとつ・・・つまりセットであるとしています。

そしてさらに、その善いことも悪い行いも、起きてから表彰したり罰を与えるのではなく、起きる前に賞罰を先に与えよ、としています。

このことは、悪事を働いた者への処罰を考えるとわかりやすいです。


 最新刊
 
仮になんらかの暴力事件があったとして、加害者を罰するのはあたりまえのことです。
しかし、加害行為が現実に行われ、死者やけが人が出てから処罰するのでは、現実には遅い。
事件が起きてからでは、被害者はもちろん、被害者の家族、あるいは加害者の側も、本人のみならずその家族や関係者一同、たったひとつの事件で、皆、不幸になるのです。

だから、そうなる前に手を打つ、事件や事故が起こる前に手を打つことが、そもそもの政治や行政の役割であり、人の上に立つ者の役割であるということを、この憲法17条の条文は明らかにしています。

そもそも普通に管理職になれば、自分の管轄する部下が不始末をしたら、自分の責任にもなるのです。
だから、そのような不始末が起こらないように、日頃から部下をしっかり監督する。
このような経験は、管理職経験のある方なら、誰しもお持ちのことと思います。

同様に、善い行いもまた、事前に褒める。
何か特別な親切があったから褒めるのではなく、日頃から親切をしている人を褒める。
そうすることで、親切をすることが、組織において、あるいは人間社会において、善いことであるということを、知らしめる。
それが、日本型の統治といえます。

ところが、明治以降に日本に輸入された西洋型の法治主義では、罪を法で特定し、その特定した内容を持つものでなければ人を裁いたり、逮捕したりしてはならない、ということになっています。
これは、人を裁くにあたって、悪事とは何か、裁くとは何かということを、先に明らかにしておこうという取り組みで、ここまでは、極めて合理的なものといえます。

ただし、これは「罪が起きてしまったとき」の、対策です。
そして罪が起これば、多くの不幸が生まれてしまうのです。

ですから、明察功過は、二段階を意味しているといえます。
つまり、
1 悪事が起こる前の対策(明察功過)
2 悪事が起きてからの対策(罪刑法定主義)

2の悪事が起きてからの対策は、すべて法に基づいて処罰しなければなりません。
そしてここで必要になるのが、証拠です。
客観的な、裏付けとなる証拠がなければ、人を裁いてはいけない。
これは当然のことです。

ところが、この後に、唯物主義なるものが生まれます。
これは共産主義者が、世間を混乱に陥れるためのもので、すべての意思決定は「証拠に基づかなければならない」とするものです。

ちょっと考えたらわかることですが、証拠がある、ということは、すでに事件が起きていて、現実の被害が生じているということです。
しかも現実に連続して被害が起きていても、証拠がなければ捕まえることもできない。
そして捕まえない限り、犯罪は、次々と連続して起きることになるわけです。

一方、「証拠がない」、もしくは「証拠を示してみろ」という言葉は、悪事を働く者を正当化します。
なぜなら、証拠さえなければ、何をしていても常に罪を逃れることができるという発想が根幹にあるからです。

しかもこの「証拠を示せ」という用語の持つおそろしさは、この正当化だけにとどまらず、どんなに明確な証拠があっても、それを証拠として認めなければ、もしくは認めさせさえしなければ、悪事が悪事として認知されなくなるという点にあります。

目の前で、店頭にある品物を、自分の持つずた袋に次々と入れ、その場にいた警察官に万引の現行犯で逮捕されたとします。
けれど、犯人は「俺はやっていない」という。
「だって、袋に品物が入っているではないか。これが動かぬ証拠だ」と言っても、
「俺はしていない。警察官が手柄をたてたくて、自分で品物を袋に入れたのだ」
「お前が袋に入れるところを店員が見ているのだ」
「店員は頭がおかしい。そもそもその袋は俺のものではない」
「じゃあ、どうして袋に品物が入っているのだ」
「知らない。自分とは関係ない。手柄をたてたい警察官か、売上をごまかしたい店員が、勝手に袋に入れたのではないか」等々。

嘘のような話ですが、昨今、このような問答は、多々起きています。

あるいは、ウイグルやチベットへの残酷な行為について、国会で問題にしようとすると、某政党が党をあげて、
「そのような証拠はなにもない」と言い張る。
「現実に、証言がいくらでもあるではないか」といっても、「それだけでは証拠にならない」という。
あるいは「状況証拠は証拠にならない」という。

古くからの日本的価値観から言えば、状況こそが証拠であり、まだ曖昧なうちに先に手を打つのが政治です。
地震が起きてから対策を講じるのではなく、いつ地震が起きても大丈夫なようにできる限りの手を打つ。
台風がやってきても大丈夫なように、日頃から備えを盤石にしておく。
日本が戦争に巻き込まれないように、あらゆる手を打っていく。

それこそが政治の役割であり、これを実現していのが行政の役割です。
こと起きてから四の五のというのは、司法の役割であって、政治や行政の役割ではありません。
「証拠がない」という言い方は、ただの言い訳でしかないのです。

そういうことを、私達は、もう一度、日本人としての原点に帰って、根本から考え直していかなければならない時代に来ているのではないでしょうか。


お読みいただき、ありがとうございました。
YOUTUBE 日本の心をつたえる会チャンネル


人気ブログランキング
↑ ↑
応援クリックありがとうございます。

講演や動画、記事などで有償で活用される場合は、メールでお申し出ください。
nezu3344@gmail.com

 最新刊
 

《塾・講演等の日程》
どなたでもご参加いただけます。
第82回倭塾 4月17日(土)13時〜 富岡八幡宮婚儀殿
第83回倭塾 5月23日(日)13:30〜 富岡八幡宮婚儀殿
第84回倭塾 6月26日(土)13:30〜 富岡八幡宮婚儀殿
第85回倭塾 7月17日(土)13:30〜 富岡八幡宮婚儀殿
靖国神社昇殿参拝 8月14日(土)14:00 靖国神社参集殿
第86回倭塾 9月18日(土)13:30〜 富岡八幡宮婚儀殿



20200401 日本書紀
◆ニュース◆
最新刊『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』2020/9/19発売。
『[復刻版]初等科国語 [高学年版]』絶賛発売中!!
『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』絶賛発売中!!
『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』絶賛発売中。


『ねずさんのひとりごとメールマガジン』
登録会員募集中 ¥864(税込)/月  初月無料!


             
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
\  SNSでみんなに教えよう! /
\  ねずさんのひとりごとの最新記事が届くよ! /

あわせて読みたい

こちらもオススメ

コメント

非公開コメント

検索フォーム

ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

講演のご依頼について

最低3週間程度の余裕をもって、以下のアドレスからメールでお申し込みください。
むすび大学事務局
E-mail info@musubi-ac.com
電話 072-807-7567
○受付時間 
9:00~12:00
15:00~19:00
定休日  木曜日

スポンサードリンク

カレンダー

11 | 2023/12 | 01
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

最新記事

*引用・転載・コメントについて

ブログ、SNS、ツイッター、動画や印刷物作成など、多数に公開するに際しては、必ず、当ブログからの転載であること、および記事のURLを付してくださいますようお願いします。
またいただきましたコメントはすべて読ませていただいていますが、個別のご回答は一切しておりません。あしからずご了承ください。

スポンサードリンク

月別アーカイブ

ねずさん(小名木善行)著書

ねずさんメルマガ

ご購読は↓コチラ↓から
ねずブロメルマガ

スポンサードリンク

コメントをくださる皆様へ

基本的にご意見は尊重し、削除も最低限にとどめますが、コメントは互いに尊敬と互譲の心をもってお願いします。汚い言葉遣いや他の人を揶揄するようなコメント、並びに他人への誹謗中傷にあたるコメント、および名無しコメントは、削除しますのであしからず。

スポンサードリンク