天地(あめつち)と天壌(あめつち)の違いのお話



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現代日本の都会の土は、果たして
「やわらかな土」でしょうか。
「肥えた土」でしょうか。

20210723 田んぼ
画像出所=https://blog.goo.ne.jp/watariyamin/e/0975a533ab30ca07161f8904016f6fe7
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小名木善行です。

古事記や日本書紀の冒頭部分では、天地のことを天地(あめつち)と書いています。
ところが天壌無窮の神勅では、天壌(あめつち)と書いています。
古代の人は、そこにどのような意図を込めたのでしょうか。

記紀が書かれた時代というのは、
1 我が国にもとからある国字としての神代文字は、全国の豪族ごとに使う文字が異なること、
2 我が国の五十音が、もともと鹿骨占いの結果を判断するための記号としての一字一音一義からはじまっているため、音の意味が固定的となり、複雑な思い等を表現するためには、神代文字を組み合わせてできている漢字を用いたほうが合理的と考えられたこと、
3 全国の豪族たちを統一し、我が国が統一国家を形成するためには、新たな文字が必要であったこと、
などが真剣に検討された時代です。

全国の豪族たちというのは、それこそいまの県が、昔はクニと呼ばれたことにも明らかなように、まさにそれぞれのクニが独立国であり、その国ごとに異なる体制、異なる言語(いまふうにいえば方言)を用い、それぞれに異なる神を祀り、異なる習俗のもとにあったと考えるのが、普通です。

もちろん、豪族間の(つまりクニとクニとの)交易関係や、親戚関係はあったでしょうし、何百年か遡れば、全国の豪族たちは、皆、親戚です。
また、倭人たちは船を用いますので、相互の交流も激しく行われていたことと推察できます。

ただ、そうした時代の中にあって、秦の始皇帝の一族である秦氏などが来日し、秦の始皇帝が、チャイナで統一文字として漢字を用いようとしたことなどが伝えられ、その漢字を用いることで、さまざまな複雑な単語を新たに用いることができるようになってきていたわけです。

一方、その漢字は、もとをたどれば、倭国で用いられていた神代文字の記号の組み合わせです。
その意味では、漢字と神代文字は、たいへんに相性が良い。



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白村江の戦いでの敗戦後、どうしても日本を統一国家として再形成していかなければならない状況になったとき、クニごとに言語も使う文字もバラバラでは、我が国は、滅ぼされてしまいます。

そこで、統一文字として秦の始皇帝の成功に倣って漢字を用い、またその漢字の成り立ちが神代文字であることを利用して、漢字に大和言葉の訓読みを与え、これによって「あめつち」を「天地」という漢字に置き換えるといった作業が行われたわけです。

クニを統一するには、2つの方法があります。
ひとつは始皇帝がそうしたように、軍事的に国家を統一することです。
けれどそのために始皇帝は、国が傾くほどの激しい戦いを再三行い、ようやく軍事的に統一国家を築いたものの、その強大な軍事国家が、より強力な軍事国家ができることで、またたく間に崩壊したという歴史がありました。

そしてその秦では、統一国家を形成したあと、文字の統一によって中華の文化の統一を図ろうとしました。
それまで、バラバラだった諸国が、文字の統一によって、ひとつの国家になる。
つまり文字は文化であり、文字が統一されることによって、文化が統一され、国がひとつになるのです。
このことは、秦が滅んだあとに、漢が統一国家を形成したことにも明らかなことでした。

ならば、軍事的に統一国家を築くのではなく、文字による教育と文化によって国をひとつにまとめていく。
そのような選択と、試行錯誤が行われたのが、我が国の7世紀です。

ちなみに我が国の言語は、撞着語(どうちゃくご)といって、名詞や目的語などを、「の」などの接続詞でつなげていくことで成り立つ言語です。
「私の城下町」は、「わたし(の)城下(の)町」なのです。

これが古い大和言葉なら、「わたし」は「あ」であり、「城」は「や」であり、「町」はムラですから、
「あ(の)や(の)むら」となります。
漢字で書いたら
「吾の屋の村」あるいは「大屋敷の下にある吾(あ)の居(ゐ)る邑」、そこから「吾の城下町」などと記述されるわけです。
さらに漢字のみで記述したら、いまの繁体字風なら「私的城下町」、記紀風なら「吾乃城下町」となります。

「あのやのむら」と表記することと、「私的城下町」では、わかりやすさという意味では、後者に軍配があがるものと思います。

そうした背景のもとに、記紀の記述があります。
そして記紀は、その冒頭を次のように書いています。

《古事記》
あめつちの はじめのときに  天地初發之時
《日本書紀》
いにしへの あめつちいまだ  古天地未

どちらも「天地」と書いて「あめつち」と読み下しています。

「天」という字は、「人」の上に「一」があり、そこから頭上に広がる天をあらわします。
「地」という字は、蛇のようにうねうねとうねった大地のことをいいます。
山の稜線や、海岸線の形など、地球上にある神々の造形は、すべて蛇行する曲線によって形成されています。
だから「土」が「蛇行している=也」の組み合わせで、「地」という字ができています。

したがって、記紀の冒頭にある「天地」というのは、ここでは天と、蛇のように蛇行する大地を意味します。
さらにいうと、大地が蛇のように細長いといった意味が込められていたかもしれません。
万年の昔には、日本列島の本州からグアムやパラオまでが列島線であり、また九州から台湾までが細長い大地です。
フィリピン海を囲む形の広大な海が、海洋民族であった私達の祖先が住むエリアだったわけで、そういう意味からも、空に広がる「天」と、島々が蛇行して連なる列島という意味を、「地(つち)」という言葉に込めたのかもしれません。

ところがこの「地」が、天壌無窮の神勅(てんじょうむきゅうのしんちょく)では、「壌(つち)」という字に置き換えられています。
日本書紀ではここは
「それあめつちに きはまりの なかるべし(當興天壤無窮者矣)」
と書いて、「天地(あめつち)」を「天壌(あめつち)」と書いています。

「壌」という字は、「やわらかく肥えた土」を意味する漢字です。
天壌無窮の神勅は、我が国が稲作とともに未来永劫栄えていくとの天照大御神の御神勅ですから、みんなで土を柔らかく耕して暮らしていく限り、我が国は永遠に不滅だと、述べられているわけです。

つまり、天地(あめつち)は神々がお創(つく)りになられたけれど、人々がその地で暮らして行くためには、土を耕して、常にやわらかく肥えた土にしていかなければならない。
そういう人々の努力の結果として、我が国は未来永劫不滅です、と天照大御神様の御神勅があるわけです。

ふりかえって、戦後の現代日本はどうでしょうか。
都会の土は、果たして「やわらかな土」でしょうか。「肥えた土」でしょうか。

ある台湾の友人が言っていました。
「私はね、いまも台湾は日本の一部だと思っています。
 だから、自分に日本人名があることを誇りに思っています。
 台湾がね、昔のように日本に帰ることができたら、
 そのときはね、
 私は台湾を日本の中の農業地帯にしたいと思っています。
 なぜなら日本は、農業が基本なんです。
 みんなが幸せに食べていくことができる。
 そのためにみんなで笑顔で作物を育てる国。
 それが日本なんです。」


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コメント

石井利紗

あめつちのめぐみ
いつも宣長先生の和歌の後に「あめつちのめぐみ、いただきます」
を必ず唱えています。
日本の農業や食料の現状については思うことはたくさんありますが
私たちの責任です。できることをやっていこうと思っています。
最後の台湾のご友人の言葉、嬉しいですね。
私も日本と台湾は繋がっていると思います。
今、台湾から日本は学ぶことが沢山ありますね。
素晴らしいブログをいつもありがとうございます。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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