言葉の壁



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言葉は文化によって形成されます。
従って、それぞれの国の文化を、異なる言語に翻訳する時は、その語彙をしっかりとわきまえて説明する必要があります。
そうでなければ、とりかえしのつかない誤解を生むことになるからです。

20210924 通訳
画像出所=https://www.irasutoya.com/2015/10/blog-post_48.html
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歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに
小名木善行です。

日本では、古い昔から「権力と権威を分離してきた。これをシラス統治という」というお話を、いつもさせていただいています。
最近は、だいぶこのシラスやウシハクという日本古来の用語が復活してきて、これを唱える人も増えてきました。
たいへんありがたく、また嬉しく思っています。
こういうことは、常識化することが大事です。

さて、その「権威」ですが、そもそも権威とは何かというと、これは幕末に英語の「オーソリティ(Authority)」を翻訳してできた言葉です。
ですからもともと我が国に権威という言葉があったわけではなく、むしろ我が国では権威=神のような形で考えられていました。
ですから、戦前戦中まで天皇=神と説明されてきたのは、あながち嘘ではなく、この場合の神は、英語でいうならオーソリティ(Authority)のことであって、英語圏におけるGOD(絶対神)とは意味の異なるものです。
そういう語感の違い(語彙の違い)をわきまえずに議論するから、おかしなことになるのです。

さて、では英語圏の権威、すなわちオーソリティ(Authority)とは何かというと、この言葉はラテン語の「auctoritas」に由来します。
その意味は「保証、所有権、担保」で、一定の共通の価値観を共有する人々の間にあって、より上位の者が権威となります。
ですからたとえば、宗教はまさに一定の価値を共有する集団を形成しますが、そのなかでも最も上位の者が「auctoritas」となるわけです。
当然のことながら、宗教上、最上位にあるのは神(GOD)ですから、神の言葉は当然権威を持つし、神を代理する神官や、神から王権を授かった王もまた権威を持つことになります。

これに対し我が国の天皇は、異なる価値観を持つ者の間でも権威が生じるように設計(設計という言葉が妥当かどうかは別として)された存在ということができます。

我が国は、もともと海洋民族であったということは、当ブログで再三申し上げさせていただいていますが、海洋族というのは、船ごとに、いわば独立国のようなものであって、しかも船の中には役割分担はあっても、身分の上下、つまり階層社会のようなものは(すくなくとも小舟)の時代には存在することができません。

船長は、もちろん船の中の最高権力者ですが、さりとて船長が病気になれば、代わりになる者がいくらでもいる。
それぞれがそれぞれの役割を忠実にこなすだけでなく、複数の仕事を共有しなければ、安全な航海は不可能だからです。

このような生活で万年の時をすごしてきた日本人は、ですから船ごとに、あるいは島ごとに文化が異なります。
もっというなら、高天原文明圏と小笠原文明圏で異なるし、そのことはいわゆる天孫族と国津神系で文化はまるで異なります。
日本列島に定住するようになってからも、漁労生活者と山中で獣を獲って暮らす人々では生活様式も文化も異なるし、稲作文化と芋作文化でも、やはり生活習慣から村の文化に至るまでまったく異なるものとなります。
そしてそれらひとつひとつが、もともと海洋族であったことから、非常に独立性が高い。

宗教についても、そもそも宗教という概念が存在せず、神々さえも八百万の神々です。
統一された宗教を過去の日本は持っていなかったし、いまも持っていない。

このような日本では、西洋にあるように宗教による権威(auctoritas)を形成することはできなし、さりとてチャイナのように、皇帝の独裁と、言うことを聞かない者を一族皆殺しにして食べてしまうという内陸型の文化も成立することができません。

そこで日本が何をもって権威を確立しようとしたのかというと、それが「古いこと」です。
きわめてシンプルに、古いものに権威があるとしたのです。

ご先祖をずっとさかのぼっていくと、それはすべての民衆が、どこかでみんな血が繋がります。
そうしてたどった、本家の中の総本家を、我が国は最高権威としたのです。
それが天皇(すめらみこと)であり、権威という言葉の代わりに用いられたのが神という用語であったわけです。

ですから、天皇を「日本のオーソリティ(権威)だ」と英語で説明すると、これまた要らぬ誤解を与えます。
なぜなら、英語圏におけるオーソリティは、所有者を意味するからです。
また、天皇を「日本の神(GOD)だ」と英語で説明することも、やはり誤解を生みます。
西洋圏におけるGODは、人類とは異なる存在だからです。

言葉は文化によって形成されます。
従って、それぞれの国の文化を、異なる言語に翻訳する時は、その語彙をしっかりとわきまえて説明する必要があります。
そうでなければ、とりかえしのつかない誤解を生むことになるからです。

これから、AIによる自動翻訳の時代が始まろうとしています。
そうなる前にいま、私たち日本人が、しっかりとした日本語感覚や、歴史観を取り戻していかないと、なまじ日本が世界で最も古い歴史を持つ国だけに、要らぬ紛争の種を世界にばらまくことになりかねません。
学会が、偏った考えに凝り固まっている間にも、時代はどんどん先へと進んでいるのです。
日本はいま、目覚めのときを迎えたのです。


お読みいただき、ありがとうございました。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

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