1月8日は、「戦陣訓」が発布された日(昭和16年)です。 「戦陣訓」といえば、「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず」という一節だけが、やたらと強調されていますが、部分を切り取ってまったく別な趣旨のものにすり替えるのは、左翼のお家芸です。 本文を読めばわかりますが、これは本訓その二の「第八 名を惜しむ」に出てくる言葉です。 そこには、次のように書かれています。
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!!最新刊!! 一日遅れになってしまいましたら、1月8日は「戦陣訓」が発布された日(昭和16年)です。
「戦陣訓」といえば、「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず」という一節だけが、やたらと強調され、悪意に解釈されて流布されています。
しかし、部分を切り取ってまったく別な趣旨のものにすり替えるのは、左翼のお家芸です。
本文を読めばわかりますが、これは本訓その二の「第八 名を惜しむ」に出てくる言葉です。
そこには、次のように書かれています。
「恥を知る者は強い。
常に、親兄弟や祖先の面目を思い、
ますます奮励して、その期待に答えなさい。
生きて虜囚の辱を受けず、
死して罪禍の汚名を残すことなかれ」
つまり、親兄弟に顔向けできないような恥ずかしい振る舞いはするな、ということです。
そしてこのことは、昨日ご紹介した「戦陣訓」の「4:軍人は信義を重んずべし」を受けています。
「戦陣訓」には次のようにありました。
「軍人は、
信義がなくては一日でも
兵士の仲間の中に入っていることは難しいものです。
信とは自分が言ったことを実行し、
義とは自分の務めを尽くすことをいいます。
信義を尽くそうと思うならば、
はじめよりそのことを出来るかどうか
細かいところまで考えなければなりません。
出来るか出来ないかはっきりしないことをうっかり承知して、
つまらない関係を結び、
後になって信義を立てようとすれば、
途方に暮れ、身の置きどころに苦しむことになります。
悔いても手遅れです。
はじめによくよく正しいか正しくないかをわきまえ、
善し悪しを考え、
その約束は結局無理だと分かり、
その義理はとても守れないと悟ったら、
速やかに約束を思いとどまるべきです。」
この文脈のもとに、
「恥を知り、親兄弟や祖先の面目を思い、
その期待に答えるよう努力し、
生きて虜囚の辱を受けず、
死して罪禍の汚名を残すことなかれ」
と説いているのです。
左翼は、これをまるで「とんでもないこと」のように宣伝しましたが、世界的に見ても、すくなくとも非常識な破壊活動ばかりに精を出す左翼よりは、よほど立派な心構えだと思います。
「戦陣訓」は、人生という戦いを勝ち抜く知恵でもあろうかと思います。
ですから経営者の方や会社にお勤めの方であれば、「軍」を「我が社」に、「軍人」を「当社社員」と読み替えて読んでみてください。
学校関係者であれば、「軍」を「本校」、「軍人」を「本校生徒」と読み替えながら読んでみてください。
きっと何かを感じられることと思います
たとえば戦陣訓には、「戦場においては勇怯の差なんてのは、小さなものにすぎない」と書かれています。
勇気ある者、怯えがちな者の違いなんて、戦場では関係ないというのです。
それよりも大切なことは、「責任感」と説かれています。
「責任を重んずる者こそが、戦場ではもっとも勇気ある者となる」のです。
また「戦陣訓」には、知識や謀ごとなどよりも、実行力が大事と説かれています。
そして、その実行に際しては、道義を重んじることによつて、個人を美しくし全軍の戦力を至大ならしめる、と説いています。
わかりやすさを優先するために、先に現代語訳を掲載し、下に原文を掲載します。
===========
【戦陣訓】
─────────
序
─────────
戦陣は、
大命に基づき、
皇軍の神髄を発揮し、
攻むれば必ず取り、
戦えば必ず勝ち、
広く皇道を宣布し、
敵をして仰いで御稜威(=みいつ、天皇のご威光)の尊厳を感銘せしむる場所です。
ですから戦陣に臨む者は、
深く皇国の使命を体現する者です。
かたく皇軍の道義を保つ者です。
皇国の威徳を四海に宣揚する者です。
軍人精神の根本は、軍人勅諭に明らかに示されています。
戦闘ならびに練習等における要綱も、典令の綱領に教示されています。
けれども戦闘が行われる最前線の環境では、ともすれば眼の前の事象に心をうばわれてしまいがちです。
このため、しなければならないことの本義を忘れ、場合によっては軍人の行動が、軍人の本分にもとるようなことがあるかもしれません。
それは、皇軍兵士として、絶対に慎まなければならないことです。
そこでこれまでの経験をかえりみて、常に戦陣に於て勅諭を仰ぎ、その服行の完璧を期せんため、具体的行動の基準を示し、皇軍の道義の昂揚を図る。これが「戦陣訓」の趣旨です。
─────────
本訓 其の一
第一 皇国
─────────
大日本は皇国です。
日本には、万世一系の天皇がおわします。
天皇は、国のはじめからの皇謨(こうぼ=天皇が国を統治する計画)を紹継して、とだえることなく君臨されている。
天皇のご恩は、皇恩万民にあまねく、聖徳は世界に光を覆っています。
わたしたち皇国臣民は、忠孝勇武の血を、祖先から受け継いでいます。
わたしたちは、皇国の道義を宣揚し、天の業を補佐し、君民一体となって皇国の隆昌をはかっていかなければなりません。
戦陣の将兵は、わたしたちの日本の国体の本義を体得して、牢固で、決してくじけぬ信念を持って、誓って皇国守護の大任を完遂する者たちです。
─────────
第二 皇軍
─────────
日本の軍は、天皇が統帥し、神武天皇以来の精神を体現するための組織です。
ですから、軍の将兵はみな、皇国の威徳を天下万民に示す役割を担っています。
そのことによって、日本の未来を築くという役割を担っています。
わたしたち軍人は、ですから常に、陛下の大御心を奉じ、常に正しい道を歩み、武人として人にやさしく(=仁)、世界の平和を築く役割を担っています。
これが神武天皇以来の「日本国の武人」の基本精神です。
帝国軍人は、常に「武」は厳格に、「仁」は幅広くという精神が必要です。
いやしくも皇軍に敵対する者があれば、帝国軍人は烈々たる武威をふるい、断固、その者を撃破します。
敵を屈服させたときは、降伏した敵は撃たず、従う敵には慈しみの心を持って接する。
そうでなければ、皇軍兵士としての責務をまっとうしたことにりません。
「武」は驕(おご)らず、「仁」は飾らず。
その姿勢があふれんばかりに、常に行われることが尊いのです。
皇軍の本領は、「恩」と「威」が等しく並んで行われることです。
そうすることで、天下万民に陛下の大御心を広めて行くのです。
─────────
第三 皇紀
─────────
皇軍の軍紀の神髄は、おそれおおくも大元帥であらせられる陛下に対し奉り、絶対的に随順する、という崇高な精神にあります。
上下ひとしく陛下の統帥の尊厳を尊重し、感銘する。
上に立つ者は、陛下のご意思を承り、これを謹厳に実行する。
下の者は、謹んで陛下に服従する至誠をまっとうする。
そうすることで、軍人ひとりひとりの「忠」を尽くす真心(=赤誠)が重なり合う。脈絡が一貫する。
こうして全軍一致、一令のもとに、わずかの乱れもなく活動できる。
これこそが、戦いにあたって必須の要件であり、治安確保の要道です。
特に戦陣は、服従の精神実践の極致を発揮すべきところです。
戦陣は、死生困苦の間に在ります。
そこでは、命令一下、欣然として死地に身を投じ、黙々として献身服行の実を挙げるのが、皇軍兵士たる軍人の精神の精華です。
─────────
第四 団結
─────────
軍は、おそれおおくも大元帥陛下を頭首と仰ぎ奉ります。
ですから軍は、あつく陛下のお考えを身を以て体現し、忠誠の至情に和し、軍をあげて、全員が一心一体となるところです。
軍隊は統率の本義にのっとって、隊長を核心とし、強固であってしかも和気藹々とした団結をしなければなりません。
上下各々、その「分(ぶ)」を厳守し、常に隊長の意図に従い、誠心を仲間たち腹中に置き、生死利害を超越して、全体のために、己を没するの覚悟が必要です。
─────────
第五 協同
─────────
全兵士は、心をひとつに、自身の任務に邁進するとともに、全軍が戦いに勝つため、よろこび勇んで、我を忘れて協力しあう精神を発揮しなければなりません。
各隊はおたがいにその任務を重んじ、名誉を尊び、お互いに信じあい、お互いに援けあい、自ら進んで苦難に就き、力をあわせて目的達成のために力闘しましょう。
─────────
第六 攻撃精神
─────────
戦闘にあたっては、勇猛果敢、常に攻撃精神を以て一貫しましょう。
攻撃するときは、果断に、積極的に、相手の機先を制し、剛毅にして不屈、敵を粉砕するまでは決してとどまらず攻撃します。
防禦に際しても、常に攻勢の鋭気を包蔵し、必ず主動の地位を確保しなさい。
陣地は、たとえ死んでも敵に奪われてはならない。
追撃は、断固として、あくまでも徹底的に行います。
勇猛果敢に、何事にも恐れず、沈着にして大胆不敵、難局に際しても、固い決意を持って困苦に打ち勝ち、あらゆる障害を突破して、ただひたすらに勝利の獲得に邁進しましょう。
─────────
第七 必勝の信念
─────────
信じる心は力です。
自ら信じ、毅然として戦う者こそ、常に勝者となり得る。
そして必勝の信念というものは、日頃の千磨必死の訓練から生まれます。
寸暇を惜しんで肝胆を砕き、必ず敵に勝つの実力を養うのです。
勝敗は皇国の隆替に関することです。
光輝ある軍の歴史に鑑み、百戦百勝の伝統に対する己の責務を肝に銘じて、勝つまで戦いをやめない。
それが必ず勝つための唯一の要諦です。
─────────
本訓 其の二
第一 敬神
─────────
神霊は、天にあって、常に私たちを見ています。
心を正し、身を修め、あつく神を敬い、誠を捧げ、常に忠孝を心に念じ、誓って神仏のご加護に恥じないようにしましょう。
─────────
第二 孝道
─────────
忠孝の道というのは、我が国の道義精粋の根幹をなすものです。
ですから忠誠の士は、同時に必ず純情で親孝行な子です。
最前線の戦陣にあって、深く父母の志を体し、よく忠の大義に徹して働き、祖先の遺風をみずからの働きで顕彰しましょう。
─────────
第三 敬礼挙措
─────────
敬礼は純真な服従心の発露であり、かつ上下一致の表現です。
戦陣にいるときは、特に厳正な敬礼を行いましょう。
そうすることで礼節の精神が心の内に充満します。
謹厳であり、端正でいるのは、強き武人である証(あかし)です。
─────────
第四 戦友道
─────────
戦友の道義は、大義のもと、死ぬことも生きることも一緒となり、たがいに信頼の至情を結んで、互いに常に切磋琢磨し、緩急あれば互いに救い、間違いがあれば互いに戒(いま)しめて、ともに軍人の本分をまっとうするにあると心得なさい。
─────────
第五 率先躬行
─────────
幹部は、常に誠意を尽くし、すべての行いについて、みんなの模範となるよう努めなさい。
上に立つ者が正しい振る舞いをしなければ、下の者は必ず乱れてしまいます。
戦陣は、実行を尊びます。
体をもって、みんなに先んじて毅然とした行動をとりなさい。
─────────
第六 責任
─────────
任務というものは、神聖なものだと心得なさい。
責任は、極めて重いのです。
一業一務、おろそかにせず、心魂を傾注して一切の手段を尽くし、その達成にあたって、後悔することのないようにしなさい。
責任を重んずる者こそが、真にして最大の勇者です。
─────────
第七 生死観
─────────
死ぬも生きるも、たいせつなことは、崇高な献身奉公の精神です。
生死を超越し、ひとすじに任務の完遂に邁進しなさい。
身心一切の力を尽くし、従容として悠久の大義に生くることを悦びとしなさい。
─────────
第八 名を惜しむ
─────────
恥を知る者は強い。
常に、親兄弟や祖先の面目を思い、ますます奮励して、その期待に答えなさい。
生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すことなかれ。
─────────
第九 質実剛健
─────────
質実をもって陣中の起居を自分自身で律し、剛健な士風を自ら築き上げ、旺盛な士気を振起しなさい。
陣中の生活は、簡素でなければなりません。
いろいろなモノや時間など、さまざまな事柄が常に不自由であることが常態であると思い、何事にも節約に努めなさい。
奢侈というものは、勇猛の精神を蝕むものです。
─────────
第十 清廉潔白
─────────
清廉潔白は、武人気質のよって立つ所です。
おのれに克つことができなくて、物欲に心を捉えられてしまう者が、どうして皇国に身命を捧げることができましょう。
我が身を持するにあたっては、自分自身に対して、常に冷厳でいなさい。
そして事に対処するに際しては、常に公正であることを心がけなさい。
常に天地に恥じない行動をとりましょう。
─────────
本訓 其の三
第一 戦陣の戒(いましめ)
─────────
(1) 一瞬の油断が、不測の大事を招きます。
常に戦いに備え、自分をいましめましょう。
それと、大切なことは、敵や住民を、決して軽侮してはなりません。
また、小さな成功に安んじて、勤労を嫌がったりすることがないようにしなさい。
不注意も、災禍の原因となることをよくわきまえなさい。
(2) 軍機を守るには、常に細心でいなさい。
スパイは、常に身辺にいます。
(3) 哨戒の任務は、重大なものです。
それは一軍の安危を担(にな)い、、一隊の軍紀を代表するものです。
ですから身をもって、その重い任務に任じ、厳粛にこれを服行しなければなりません。
(4) 思想戦は、現代戦の重要な一面です。
皇国に対する不動の信念を以て、敵の宣伝や欺瞞を見破るだけでなく、進んで皇道の宣布に勉めなさい。
(5) 流言蜚語に惑わされるのは、信念が弱いからです。
惑ってはなりません。動じてもなりません。
皇軍の実力を確信し、篤く上官を信頼しなさい。
(6) 敵の産物や、敵の資産の保護に留意しなさい。
徴発、押収、物資の焼却等は、規定に従って、必ず指揮官の命に従いなさい。
(7) 皇軍の本義に鑑みて、無辜の住民を愛護しなさい。
(8) 戦陣において、酒色に心を奪われたり、あるいは欲情に駆られて本心を失い、皇軍の威信を損じ、奉公の身を過ぎるようなことは、決してしてはなりません。
深くいましめ、自ら慎み、断じて武人の清節を汚してはなりません。
(9) 怒(いかり)を抑え、不満を制しなさい。
「怒(いかり)の感情」こそ、敵だと思いなさいと、古人も教えています。
一瞬の激情は、悔(くい)を後日に残すこと多いものです。
軍法が厳しいのは、軍人の栄誉を保持し、皇軍の威信をまっとうするためです。
常に出征当時の決意と感激とを想い起こし、遙かに思いを父母妻子の真情に馳せ、仮初にも身を罪科に曝すことがないようにしましょう。
─────────
第二 戦陣の嗜(たしなみ)
─────────
(1) 尚武の伝統をつちかい、武徳を自分自身の中に育て上げ、技能の練磨に勉なさい。
「毎事退屈するなかれ」とは、古き武将の言葉にもあります。
(2) 後顧の憂いを絶ち、ひたすら奉公の道に励み、常に身辺を整え、死後を清くするの嗜(たしなみ)を肝要としなさい。
屍(しかばね)を戦野に曝すのは、もとより軍人の覚悟です。
たとえ遺骨が祖国に還れないことがあっても、あえて意としないよう、あらかじめ家族に含めておきなさい。
(3) 戦陣において病気で死ぬのは、まことに遺憾の極みです。
特に衛生を重んじ、おのれの不節制によって奉公に支障を来すようなことは、絶対にないようにしましょう。
(4) 刀を魂とし、馬を宝とした古武士の嗜(たしなみ)を心において、戦陣の間は、常に兵器資材を尊重し、軍馬、軍犬などを愛護しなさい。
(5) 陣中の徳義は、戦力のもとです。
常に他の部隊の便益を思って、宿舎や、物資の独占のようなまねは、厳に慎みましょう。
また「立つ鳥跡を濁さず」と言います。
雄々しく、古式ゆかしい皇軍の名を、異郷辺土にも永く伝へられるようにしましょう。
(6) 武勲は、誇るものではありません。
功を人に譲るのは、武人の高風です。
また、他の者の栄達を妬(ねた)むものではありません。
自分が認められないことを、恨むものではありません。
むしろ、自分自身の「誠」が足りないことを思うようにしなさい。
(7) あらゆることに正直を旨とし、誇張や虚言を恥としなさい。
(8) 常に大国民として襟をただし、正しいことを実戦し、義を貫いて、皇国の威風を世界に宣揚しなさい。
そして、国際の儀礼を、軽んじないようにしなさい。
(9) 万死に一生を得て、祖国に帰還することができたならば、思いを亡くなった護国の英霊に致し、言行を慎んで国民の範となりなりなさい。
そして帝国臣民として、いよいよ奉公の覚悟を固くしなさい。
─────────
結
─────────
以上に述べたことは、ことごとく軍人勅諭から出たものです。
ですから各自は、この「戦陣訓」を、戦陣における道義として実践し、もって任務の完璧を期すようにしなさい。
戦陣の将兵は、すべからくこの趣旨を実行し、いよいよ奉公の至誠をひときわぬきんでて実践し、よく軍人の本分をまっとうして、厚い皇恩に答へ奉りなさい。
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【戦陣訓】
序
夫れ戦陣は、大命に基き、皇軍の神髄を発揮し、攻むれば必ず取り、戦へば必ず勝ち、遍く皇道を宣布し、敵をして仰いで御稜威の尊厳を感銘せしむる処なり。されば戦陣に臨む者は、深く皇国の使命を体し、堅く皇軍の道義を持し、皇国の威徳を四海に宣揚せんことを期せざるべからず。
惟ふに軍人精神の根本義は、畏くも軍人に賜はりたる勅諭に炳乎として明かなり。而して戦闘並に練習等に関し準拠すべき要綱は、又典令の綱領に教示せられたり。然るに戦陣の環境たる、兎もすれば眼前の事象に促はれて大本を逸し、時に其の行動軍人の本分に戻るが如きことなしとせず。深く慎まざるべけんや。乃ち既往の経験に鑑み、常に戦陣に於て勅諭を仰ぎて之が服行の完璧を期せむが為、具体的行動の憑拠を示し、以て皇軍道義の昂揚を図らんとす。是戦陣訓の本旨とする所なり。
本訓 其の一
第一 皇国
大日本は皇国なり。万世一系の天皇上に在しまし、肇国の皇謨を紹継して無窮に君臨し給ふ。皇恩万民に遍く、聖徳八紘に光被す。臣民亦忠孝勇武祖孫相承け、皇国の道義を宣揚して天業を翼賛し奉り、君民一体以て克く国運の隆昌を致せり。
戦陣の将兵、宜しく我が国体の本義を体得し、牢固不抜の信念を堅持し、誓つて皇国守護の大任を完遂せんことを期すべし。
第二 皇軍
軍は天皇統帥の下、神武の精神を体現し、以て皇国の威徳を顕揚し皇運の扶翼に任ず。常に大御心を奉じ、正にして武、武にして仁、克く世界の大和を現ずるもの是神武の精神なり。武は厳なるべし仁は遍きを要す。苟も皇軍に抗する敵あらば、烈々たる武威を振ひ断乎之を撃砕すべし。仮令峻厳の威克く敵を屈服せしむとも、服するは撃たず従ふは慈しむの徳に欠くるあらば、未だ以て全しとは言ひ難し。武は驕らず仁は飾らず、自ら溢るるを以て貴しとなす。皇軍の本領は恩威並び行はれ、遍く御綾威を仰がしむるに在り。
第三 皇紀
皇軍軍紀の神髄は、畏くも大元帥陛下に対し奉る絶対随順の崇高なる精神に存す。
上下斉しく統帥の尊厳なる所以を感銘し、上は大意の承行を謹厳にし、下は謹んで服従の至誠を致すべし。尽忠の赤誠相結び、脈絡一貫、全軍一令の下に寸毫紊るるなきは、是戦捷必須の要件にして、又実に治安確保の要道たり。
特に戦陣は、服従の精神実践の極致を発揮すべき処とす。死生困苦の間に処し、命令一下欣然として死地に投じ、黙々として献身服行の実を挙ぐるもの、実に我が軍人精神の精華なり。
第四 団結
軍は、畏くも大元帥陛下を頭首と仰ぎ奉る。渥き聖慮を体し、忠誠の至情に和し、挙軍一心一体の実を致さざるべからず。 軍隊は統率の本義に則り、隊長を核心とし、鞏固にして而も和気藹々たる団結を固成すべし。上下各々其の分を厳守し、常に隊長の意図に従ひ、誠心を他の腹中に置き、生死利害を超越して、全体の為己を没するの覚悟なかるべからず。
第五 協同
諸兵心を一にし、己の任務に邁進すると共に、全軍戦捷の為欣然として没我協力の精神を発揮すべし。
各隊は互に其の任務を重んじ、名誉を尊び、相信じ相援け、自ら進んで苦難に就き、戮力協心相携へて目的達成の為力闘せざるべからず。
第六 攻撃精神
凡そ戦闘は勇猛果敢、常に攻撃精神を以て一貫すべし。
攻撃に方りては果断積極機先を制し、剛毅不屈、敵を粉砕せずんば已まざるべし。防禦又克く攻勢の鋭気を包蔵し、必ず主動の地位を確保せよ。陣地は死すとも敵に委すること勿れ。追撃は断々乎として飽く迄も徹底的なるべし。
勇往邁進百事懼れず、沈著大胆難局に処し、堅忍不抜困苦に克ち、有ゆる障碍を突破して一意勝利の獲得に邁進すべし。
第七 必勝の信念
信は力なり。自ら信じ毅然として戦ふ者常に克く勝者たり。
必勝の信念は千磨必死の訓練に生ず。須く寸暇を惜しみ肝胆を砕き、必ず敵に勝つの実力を涵養すべし。
勝敗は皇国の隆替に関す。光輝ある軍の歴史に鑑み、百戦百勝の伝統に対する己の責務を銘肝し、勝たずば断じて已むべからず。
本訓 其の二
第一 敬神
神霊上に在りて照覧し給ふ。
心を正し身を修め篤く敬神の誠を捧げ、常に忠孝を心に念じ、仰いで神明の加護に恥ぢざるべし。
第二 孝道
忠孝一本は我が国道義の精粋にして、忠誠の士は又必ず純情の孝子なり。
戦陣深く父母の志を体して、克く尽忠の大義に徹し、以て祖先の遺風を顕彰せんことを期すべし。
第三 敬礼挙措
敬礼は至純の服従心の発露にして、又上下一致の表現なり。戦陣の間特に厳正なる敬礼を行はざるべからず。
礼節の精神内に充溢し、挙措謹厳にして端正なるは強き武人たるの証左なり。
第四 戦友道
戦友の道義は、大義の下死生相結び、互に信頼の至情を致し、常に切磋琢磨し、緩急相救ひ、非違相戒めて、倶に軍人の本分を完うするに在り。
第五 率先躬行
幹部は熱誠以て百行の範たるべし。上正しからざけば下必ず紊る。
戦陣は実行を尚ぶ。躬を以て衆に先んじ毅然として行ふべし。
第六 責任
任務は神聖なり。責任は極めて重し。一業一務忽せにせず、心魂を傾注して一切の手段を尽くし、之が達成に遺憾なきを期すべし。
責任を重んずる者、是真に戦場に於ける最大の勇者なり。
第七 生死観
死生を貫くものは崇高なる献身奉公の精神なり。
生死を超越し一意任務の完遂に邁進すべし。身心一切の力を尽くし、従容として悠久の大義に生くることを悦びとすべし。
第八 名を惜しむ
恥を知る者は強し。常に郷党家門の面目を思ひ、愈々奮励して其の期待に答ふべし。生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ。
第九 質実剛健
質実以て陣中の起居を律し、剛健なる士風を作興し、旺盛なる士気を振起すべし。
陣中の生活は簡素ならざるべからず。不自由は常なるを思ひ、毎事節約に努むべし。奢侈は勇猛の精神を蝕むものなり。
第十 清廉潔白
清廉潔白は、武人気質の由つて立つ所なり。己に克つこと能はずして物慾に捉はるる者、争でか皇国に身命を捧ぐるを得ん。
身を持するに冷厳なれ。事に処するに公正なれ。行ひて俯仰天地に愧ぢざるべし。
本訓 其の三
第一 戦陣の戒
一 一瞬の油断、不測の大事を生ず。常に備へ厳に警めざるべからず。
敵及住民を軽侮するを止めよ。小成に安んじて労を厭ふこと勿れ。不注意も亦災禍の因と知るべし。
二 軍機を守るに細心なれ。諜者は常に身辺に在り。
三 哨務は重大なり。一軍の安危を担ひ、一隊の軍紀を代表す。宜しく身を以て其の重きに任じ、厳粛に之を服行すべし。哨兵の身分は又深く之を尊重せざるべからず。
四 思想戦は、現代戦の重要なる一面なり。皇国に対する不動の信念を以て、敵の宣伝欺瞞を破摧するのみならず、進んで皇道の宣布に勉むべし。
五 流言蜚語は信念の弱きに生ず。惑ふこと勿れ、動ずること勿れ。皇軍の実力を確信し、篤く上官を信頼すべし。
六 敵産、敵資の保護に留意するを要す。徴発、押収、物資の燼滅等は規定に従ひ、必ず指揮官の命に依るべし。
七 皇軍の本義に鑑み、仁恕の心能く無辜の住民を愛護すべし。
八 戦陣苟も酒色に心奪はれ、又は慾情に駆られて本心を失ひ、皇軍の威信を損じ、奉公の身を過るが如きことあるべからず。深く戒慎し、断じて武人の清節を汚さざらんことを期すべし。
九 怒を抑へ不満を制すべし。「怒は敵と思へ」と古人も教へたり。一瞬の激情悔を後日に残すこと多し。
軍法の峻厳なるは特に軍人の栄誉を保持し、皇軍の威信を完うせんが為なり。常に出征当時の決意と感激とを想起し、遙かに思を父母妻子の真情に馳せ、仮初にも身を罪科に曝すこと勿れ。
第二 戦陣の嗜
一 尚武の伝統に培ひ、武徳の涵養、技能の練磨に勉むべし。「毎事退屈する勿れ」とは古き武将の言葉にも見えたり。
二 後顧の憂を絶ちて只管奉公の道に励み、常に身辺を整へて死後を清くするの嗜を肝要とす。
屍を戦野に曝すは固より軍人の覚悟なり。縦ひ遺骨の還らざることあるも、敢て意とせざる様予て家人に含め置くべし。
三 戦陣病魔に斃るるは遺憾の極なり。特に衛生を重んじ、己の不節制に因り奉公に支障を来すが如きことあるべからず。
四 刀を魂とし馬を宝と為せる古武士の嗜を心とし、戦陣の間常に兵器資材を尊重し、馬匹を愛護せよ。
五 陣中の徳義は戦力の因なり。常に他隊の便益を思ひ、宿舎、物資の独占の如きは慎むべし。
「立つ鳥跡を濁さず」と言へり。雄々しく床しき皇軍の名を、異郷辺土にも永く伝へられたきものなり。
六 総じて武勲を誇らず、功を人に譲るは武人の高風とする所なり。
他の栄達を嫉まず己の認められざるを恨まず、省みて我が誠の足らざるを思ふべし。
七 諸事正直を旨とし、誇張虚言を恥とせよ。
八 常に大国民たるの襟度を持し、正を践み義を貫きて皇国の威風を世界に宣揚すべし。
国際の儀礼亦軽んずべからず。
九 万死に一生を得て帰還の大命に浴することあらば、具に思を護国の英霊に致し、言行を慎みて国民の範となり、愈々奉公の覚悟を固くすべし。
結
以上述ぶる所は、悉く勅諭に発し、又之に帰するものなり。されば之を戦陣道義の実践に資し、以て聖諭服行の完璧を期せざるべからず。
戦陣の将兵、須く此趣旨を体し、愈々奉公の至誠を擢んで、克く軍人の本分を完うして、皇恩の渥きに答へ奉るべし。
※この記事は2015年1月の記事の再掲です。
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