信長の天下統一と庶民の願い



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日本の未来を築くのは私達、いまを生きる日本人です。
その未来を、より良い未来にしたいのなら、私達自身が、より良い未来のために、建設的な意思を持つ必要があります。
誰かがやってくれるのを待つとかいった他力本願ではなく、私達自身が歴史の当事者として目覚めていく。
そこに、私達庶民のための未来が拓けるのです。

20220119 織田信長
画像出所=https://mag.japaaan.com/archives/139521
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足利義満が明国皇帝から「日本国王」の称号をもらうよう運動を始めたのが応永7年(1400年)です。
これにより日本には、旧来の天皇を中心とする天下と、明国から任じられた日本国王を中心とする経済大国であるという、異なる二つの価値観が生まれ、それが価値観の混乱となって戦国時代が始まりました。
応仁の乱が起こったのが、その66年後の応仁元年(1467年)のことです。

最終的にこれを鎮め、日本がふたたび天皇を中心とする天下として、天下布武(天下に武(たける)を布(し)く)ことが、弾正家である織田信長によって明言され、その信長が天下をほぼ平定し、続く秀吉が関白に任じられたのが天正13年(1585年)です。
それは義満の時代から185年目のことでした。

信長の天下統一は、当時にあっては「弾正家が立ち上がった」というものでした。
自国の経済的利益を最優先してきた戦国大名たちの、自国経済優先、そのためには戦いも辞さずという時代下にあって、多くの庶民が、武者となって信長のもとに馳せ参じて信長の軍団に参加し、また信長とともに戦う道を選んだのは、多くの庶民の中に、古くからある日本的価値観を取り戻すべきという明確な意思が生まれていたからです。

これはそう解釈するしかないのです。
なぜなら、信長の軍団に入っても、武者たちは土地を与えられるわけでもなく、ただ「兵」として戦わされるだけなのです。
特別な贅沢ができるわけでもない。
特別たくさんの賃金がもらえるわけでもない。

もちろん、働き口を求めてという人も中にはいたでしょうけれど、当時にあって土地をもらえない(耕作地を与えられない)にも関わらず、そこに多くの人材が集まり、大軍団が構築されたということは、そこには個人の欲得を超えた何かがなければ、そのようなことは起こり得ないのです。

つまり、長く続く戦乱の世を終わらせたい。平和な国にしていきたい。そのために自己の命を犠牲にしてでも、歴史の中の一員として、自己の最大を尽くしたい。
そう思う人達が、信長の軍団に、自ら手弁当で参加したのだし、そうした人たちが、圧倒的多数になってきたから、信長の軍団は、常に大軍を構成することができたのです。

そもそもこの時代、土地を持たず、耕作期に縛られずに、一年中戦うことができる軍団を持つことができたのは、信長だけです。
ところが信長は、チャイナやロシアのように、村に兵がやってきて、無理やり若者を兵として拉致するようなことなどしていません。
信長のもとに、諸国から陸続と武者が集まってきたことを、単に腕自慢の乱暴者たちが集っただけだとか、諸国で食いっぱぐれた、盗賊団のような浪人者(乱暴者)たちが集まっただけだったなどと解釈することは無理があります。
志を持つ若者が集ったのです。
だから信長の軍団は強かったのです。

つまり、我が国の歴史は、庶民によって築かれてきた、という視点を忘れてはいけないのです。
信長による天下統一の事業は、信長の野心によって、無理やり村から兵を集めてきて、戦(いくさ)に狩り出すというものではありません。
むしろ事実は逆で、自分も戦国乱世を終わらせるために一役買いたいと思う教養ある若者達が全国に現れ、そういう若者たちを支援する大人たちがいて、その若者たちが、世を正すべき弾正(弾正というのは、宮中にあって不条理を正す役割を与えられた官職)が立ち上がったことを好感して、信長の元に陸続と集ったことで、信長の軍団が肥大化し、強力な天下布武が実現されるに至ったというのが、歴史の流れです。

日本には、上に立つ人が勝手な采配をふるって、世の中を変えるという慣習がありません。
チャイナや欧米は逆で、上に立つ人が、強大な武力や財力を背景に、自己の権力や財力を背景に、無理やり世の中に仕掛けを行って、時代を前にすすめるということが、歴史を通じて行われてきました。
ただ、この場合、上から命令されたことを、下の人たちが(多くの場合)自己の意に反して実施しますから、仕事が粗い。
ですから、手口が見え見えだし、個々の仕事が乱暴で、そこいらじゅうに穴が空きます。

これに対し、庶民の側が中心になって、自らの思いを実現しようと馳せ参じる我が国は、ひとりひとりが完璧な仕事をしようと努力しますから、いきおい個々の仕事が丁寧に行われます。
そうして丁寧に行われた仕事の集大成が、世を動かす力となる。

これは、
 庶民が先か
 権力者が先か
という問題です。

誰もそんなことをする気がないのに、権力者が権力にものをいわせて、無理やり時代を前にすすめる。
このやり方は、短期間に事を成就できる魅力がありますが、下の人達の気持ちが付いて行かないため、結局は、また新たな権力が誕生すると、それによって滅ぼされるという情況が生まれます。

庶民の気根が整って、ことが前に進む場合は、とにもかくにも、その他大勢である庶民の中に、共通意識が育たなければなりませんから、これにはものすごく時間がかかる。
けれど、多くの庶民が、ひとつの方向に目覚めたとき、そこから生まれる未来は、まさに庶民のためのものとなります。

こういう話をしますと、すぐに「いや、フランス革命は庶民の革命だった」などと言い出す人がいますが、フランス革命の実態はそうではありません。ルイ16世に替わって政権を取りたい貴族と、米国の独立戦争で植民地を無理やり手放されることになった英国によって、米独立戦争で財力が疲弊したフランス王室を倒すという工作のもとに扇動され、武器を与えられたパリ市民が、武力暴動を起こしたというのが、フランス革命の実態です。

パリ市民の、みずからの考えではなく、ほかから与えられ、扇動された革命だったから、王を倒したあとに殺し合いが起こり、65万人もの人の命が断頭台に消えることになったのです。
よそから与えられた革命、改革が、どれだけ大きな社会的混乱を生むのか、我々は再確認する必要があります。

さて、義満から秀吉までが185年と書きました。
黒船がやってきて、日本が欧風化をすすめることになったきっかけとなるパリ万博への参加と、開国派の堀田正睦(まさよし)の老中就任が安政元年(1855年)のことです。
それから180年後なら、2035年です。

日本は確実に変わっていくし、変わり続けていくものと思います。
そしてその変わる方向が、単に一部の権力者や金持ちにとって都合が良いだけの、西洋やチャイナのような歴史にするのか、それとも、庶民が主役となって、庶民の、庶民のための、庶民の国を築くのか。
後者の庶民の国を築きたいなら、庶民が目覚め、庶民が誇りを持ち、庶民が理性で論理的に考え、行動できる国になっていかなければなりません。

日本の未来を築くのは私達、いまを生きる日本人です。
その未来を、より良い未来にしたいのなら、私達自身が、より良い未来のために、建設的な意思を持つ必要があります。
誰かがやってくれるのを待つとかいった他力本願ではなく、私達自身が歴史の当事者として目覚めていく。
そこに、私達庶民のための未来が拓けるのです。


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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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