ネイションとエスニック



民族主義(最近では種族主義とも言われるようですが)は、良い結果を生みません。
そうではなく、国柄という、国民共通の理想をキチンと立てること。
それが、古代においては、日本書紀であり、万葉集であったとは、これまで何度も説明してきた通りです。
これからの私たちに必要なことは、日本という国が古代に築いてきたネイションとしての日本の形を、いまあらためて学ぶことで、未来を切り開くことです。

20200617 高天原
画像出所=https://www.pmiyazaki.com/takachiho/takamagahara.htm
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小名木善行です。

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昨日の記事で、冠位十二階と十七条憲法が、うるさくて仕方のない栲衾(たくぶすま)の新羅(しらぎ)問題がひとつの契機となって、この2つがセットとなって詔されたのだ、というお話を書かせていただきました。

詳細はその記事に書いたので、その意味は前の記事に譲るとして(まだお読みでない方は是非先にそちらの記事のご一読を)、このようなまったく対象的なものを2つ合わせて公布するといったことは、昔の日本ではよく行われたことであり、日本の知恵と呼ぶべきものです。

つまり、
冠位十二階は、世の中の秩序を目的としています。秩序というのは、上下関係のことを言います。
十七条憲法は、身分を越えた話し合いを規定しています。
しかしこの二つは、対立概念ではありません。
すぐにおわかりいただけると思いますが、両者は二つあってひとつのものです。
それは、私たち日本人にとっては、何の不思議もない、当然の事柄に思えます。

世の中を落ち着かせるために秩序は必要です。
上の人や国が乗り出してきたら、下は黙る他ないくらいでなければ、世の中のおさまりはつきません。
なんだかんだ文句があったとしても、部長が「やれ」と言ったら、やらなくちゃいけない。
それが秩序です。

その秩序は、支配体制とも置き換えることができます。
つまり世の中のすべてが支配と被支配の関係によって成り立つ。
そして支配される側は、いかなる矛盾があったとしても、支配する側の言いなりになるしかない。
なぜならそれが秩序だからです。

そしてこうした秩序を明確にすることは、戦時徴用においてきわめて有効です。
命令一下、すべての物事が整然と進むからです。
けれど問題もあります。
支配する側とされる側では、常に圧倒的多数が支配される側です。
そして支配される側は、常に不利益を被ることになります。

たとえば国連秩序がそれです。
国連(United nations)は、世界の軍事を米英仏露中が安全保障理事国として寡占する秩序体制です。
その国連秩序において、日本は敵国です。
ですから武装した国連安全保障理事国の中共の漁船が日本に大量にやってきて赤珊瑚を根こそぎ持っていってしまっても、それは日本から見れば許しがたい暴挙ですが、国連秩序の上からは、中共こそが安全保障理事国なのですから、敵国である日本がこれに抵抗するならば、日本に向けて軍事的反撃を行って構わないという理屈になります。
これに対し日本は抵抗することができない。
そんなバカなと思われるかもしれませんが、それが世界でオーサライズされた世界共同体としての国連が、国連憲章として定めた秩序であり、日本もそれを批准しているのですから、法理上はそういうことになる。これが現実です。

昔の米国の南部で、黒人奴隷が雇い主のセガレをボコボコにした。
その理由が、そのセガレが、ボコボコにした黒人男性の娘を強姦致傷したことへの報復であった。
にも関わらず黒人奴隷が悪いとされて、その黒人が公開処刑される。
これは実際にあった話ですし、幕末に日本にやってきたペリーも、当時の琉球においてこれとまったく同じ事件を起こしています。
秩序というのは、かくも残酷なものなのです。

しかし天然の災害の多い日本では、古くからの世襲による身分も尊重されたけれど、それ以上に、実務能力が重視されてきました。
人間の社会の秩序など、自然災害の前にはひとたまりもないのです。
ですから、日本が秩序だけでなく、別な何かを必要としたことは、容易にご理解いただけると思います。

その「別な何か」が、理解と納得です。
災害の多い日本では、みんながその対策の必要性を理解し、納得した上で全員の力を総結集して事にあたる必要があったのです。
そしてそのために必要なことが、和と論と承詔必謹です。

和は、わかりやすいと思います。
一致団結のことを一揆と言いますが、みんなで一致団結して、みんなでなしうる総力を発揮して、みんなのために災害対策にあたるのです。

論は、こう書いて「あげつらふ」と読みます。
みんなで一致団結するために、身分の上下を越えて、みんなで話し合うのです。

そしてみんなが納得して、話が決まったら、それが詔(みことのり)として示されます。
ひとたび詔が出されたら、個々の意見はさておいて、とにもかくにもそれに従って、みんなで事を成し遂げていく。

こうしたことが書かれているのが十七条憲法です。
ですから十七条憲法は、冠位十二階とセットなのです。

ここに日本の国柄があります。
単に身分の上下だけでなく、どこまでも理解と納得を重視していく。
そしてそのためには、民衆に知性が必要です。
その民衆の高い知性のことを、民度と言います。

昨今の日本が、欧米や中共風の上下の秩序ばかりが目立つようになってきているのは、裏返しにいえば、日本人が天然の災害の恐怖を忘れ、民度を失っていることによるといえます。

良い大学を出たから高い知性を持っているのではないのです。
詰め込みの知識をいくら持っていても、その知識を活用するにあたっては、基本となる価値観が備わっていなければならないのです。

その価値観のことを「国民精神」と言います。
国民が国民精神を失うといことは、価値観を失うということです。
そして価値観を失えば、残るのは上下の秩序だけです。

私たち日本人は、上下の支配からの自由を、はるか上古の昔から手に入れてきた国柄を持ちます。
しかしそれは、日本民族(エスニック)だからということではありません。
日本が、そのような国柄(ネイション)を目指してきたことが重要なのです。

その意味で、民族主義(最近では種族主義とも言われるようですが)は、良い結果を生みません。
そうではなく、国柄という、国民共通の理想をキチンと立てること。
それが、古代においては、日本書紀であり、万葉集であったとは、これまで何度も説明してきた通りです。

これからの私たちに必要なことは、日本という国が古代に築いてきたネイションとしての日本の形を、いまあらためて学ぶことで、未来を切り開くことです。

日本をかっこよく!
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コメント

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いつも拝見させていただいてます。

下記の件ですが、世界中が認められている自衛権の行使はできると思います。
武力で戦うのが望ましいが、宣伝戦など戦う方法はいくらでもあると思います。
秩序を守って、領土、国民、財産が守れないのなら本末転倒です。
こちらが譲れば、chinaはどんどん侵略をしてきます。


たとえば国連秩序がそれです。
国連(United nations)は、世界の軍事を米英仏露中が安全保障理事国として寡占する秩序体制です。
その国連秩序において、日本は敵国です。
ですから武装した国連安全保障理事国の中共の漁船が日本に大量にやってきて赤珊瑚を根こそぎ持っていってしまっても、それは日本から見れば許しがたい暴挙ですが、国連秩序の上からは、中共こそが安全保障理事国なのですから、敵国である日本がこれに抵抗するならば、日本に向けて軍事的反撃を行って構わないという理屈になります。
これに対し日本は抵抗することができない。
そんなバカなと思われるかもしれませんが、それが世界でオーサライズされた世界共同体としての国連が、国連憲章として定めた秩序であり、日本もそれを批准しているのですから、法理上はそういうことになる。これが現実です。

ねずさんファン

ありがとうございました。
うーむ、今日のお話もまた、私の中では永久保存版にしたい、唸るしかない素晴らしい内容でした。
ネイション、国柄、国民共通の理想、論 あげつらう、身分を超えて話し合う、など、など、・・・・
ありがとうございました。
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
連絡先: info@musubi-ac.com
昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

《動画》 「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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