討ちてし止まん



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何かをするとき、誰もが「討ちてしやまん」の心を持つ。
最後までがんばる。
最後の最後まで戦い切る。
そんなひとりひとりが主役となる。
それが日本の形です。

20221101 神武東征
画像出所=https://nezu3344.com/blog-entry-2787.html
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「討ちてし止まん」という言葉は、戦時用語として先の大戦中にずいぶんと使われた言葉です。
そこから戦後は、戦前までの日本を否定するための言葉として用いられました。
そして日本は無責任社会になりました。

「討ちてし止まん」は、古事記の神武天皇記で久米歌(くめうた)として出てくる歌の中の言葉です。
神武天皇の軍団が八十健(やそたける)らを倒した後、登美那賀須泥毘古(とみのなかすねひこ)を討とうとしたとき、神武天皇ご自身が歌われた歌として登場します。
現代語訳すると、次のようになります。

1 いかめしくて強い久米の子らよ
  粟の畑にニラが一本生えてきた
  そんなものは根も芽も繋いで
  討ちてしやまん

2 いかめしくて強い久米の子らが
  垣根の下に飢えた山椒で
  お前たちの口がヒリヒリ疼いていたことを、
  私は決して忘れないから
  討ちてしやまん

3 神風が吹く伊勢の海
  大きな石に這いまわり
  巻き貝のように這い回わって
  討ちてしやまん

《原文》
将擊登美毘古之時、歌曰、
美都美都斯 久米能古良賀 阿波布爾波 賀美良比登母登 曾泥賀母登 曾泥米都那芸弖 宇知弖志夜麻牟
又歌曰、
美都美都斯 久米能古良賀 加岐母登爾 宇恵志波士加美 久知比比久 和礼波和須礼志 宇知弖斯夜麻牟
又歌曰、
加牟加是能 伊勢能宇美能 意斐志爾 波比母登富呂布 志多陀美能 伊波比母登富理 宇知弖志夜麻牟


ご一読しておわかりいただけますように、古事記の久米歌には「討ちてし止まん」という語が、三回繰り返して出てきます。
現代の歌謡曲なら、ただのサビですが、古典文学で三度繰り返されているということは、それが重要語であることを意味します。

歌全体は、一読すると「勝つまで戦うぞ、どこまでも戦うぞ」ということを歌っているように見えますが、実はそれだけではなく、もうすこし深い意味があります。
このことは普通に団体戦集を考えたらわかることです。

バレーボールでも野球やサッカー、バスケットボールでも、いま流行りのラグビーでも、団体戦では、必ず各人にポジションが与えられます。
そして各自が最後の最後まで、そのポジションを守りきり、自分に与えられた役割をしっかりと果たすことで、戦いが勝利に導かれます。
誰でも知っている、あたりまえのことです。
ただ勝つまで戦うぞというだけでは、集団戦は戦えないし、勝利もありません。

この簡単な理屈がわかれば「討ちてしやまん」の意味も明らかになります。
すべての兵員が、それぞれの役割を最後まできちんと責任を果たす。
それが「討ちてしやまん」です。

神武天皇は、我が国の初代の天皇であり、その初代天皇が、各人がそれぞれの持場において、しっかりと責任を持って最後までその責任を果たすことの必要を、こうして明らかにされたのです。
そしてこれが我が国の思想文化となりました。

誰もが、その人にふさわしい持ち場を持ちます。
そしてそれぞれが、それぞれの持ち場で、責任をきっちりと果たし、しっかりと最後まで責任を持って仕事をやり抜いて行く。
これこそが我が国の産業の強さの原点だし、我が国の最大の強みです。

欧米や大陸の文化は異なります。
特定個人が強力な権力を持ち、その権力の下でマニュアル化された仕事をこなす。
こなさなければ、あるいは少しでもマニュアルと異なる動き方をすれば、ペナルティがある。
言うとおりにすれば、報酬がもらえる。
この飴とムチによって人々をコントロールすることが常識ですし、このことによってたとえそれが多くの人々にとって理不尽な事柄であっても、強引にそのビジネスを進めることができます。
これは日本では考えられないことです。

なぜなら主役が異なるのです。
日本では、主役はあくまで「ひとりひとり」です。
久米歌も、歌っているのは神武天皇ですが、歌の主役は久米の子らです。
そのひとりひとりが、最後まで責任を持って戦うから、「討ちてしやまん」です。

欧米や大陸では、主役は大将ただひとりです。
そうなると「討ちてしやまん」は、大将だけが最後まで戦うことになるわけですが、大陸や欧米では現実はそうはなりません。
部下たちが戦い、戦況不利とみれば、大将がいの一番に逃げ出します。
兵は雑兵でしかないのです。

最近のテレビ番組が面白くないのがここで、かつての人気ドラマでは、水戸黄門にせよ、大岡越前にせよ、あるいは長編時代劇としての白虎隊にせよ、そこで描かれていたのは、主人公の水戸黄門だけが活躍するのではなく、登場人物のひとりひとりのことでした。
いま目の前で戦っている久米の子らも同じです。
ひとりひとりが、全員、自分が主役の人生を生きている。
敵の兵士も同じです。全員が自分が主役の人生を生きている。
その双方のひとりひとりが、全力でぶつかりあっているのです。
だから「討ちてしやまん」です。

このことは「討ちてし」の「し」にも明らかです。
「し」は、現代用語でも「ただし」「必ずしも」「果てしない」などと用いられます。
古文であれば、「寒くしあれば」とか「名にし負はば」などと用いられます。
このときの「し」は副助詞で、前の語の意味を強める意味を持ちます。
ですから「討ちてしやまん」は、「敵を討ってこそ」といった意味であり、敵を討ち終わるまで戦いを罷めないぞ〜!」というそこに決意があります。
その決意は、果たして神武天皇ご自身のご決意だけでしょうか。
そうではありません。
久米の子ら全員の、そして敵兵の全員の思いでもあるのです。

そして「勝つまで戦う」ということは、その戦いが、神武天皇ただひとりの戦いではないこと、戦いに参加している全員の、ひとりひとりの決意に裏付けられているからこそ、「討ちてしやまん」「敵を討ち終わるまで戦いを罷めないぞ」と描かれています。

そして、ひとりひとりがその決意のもとにあるということは、同時にひとりひとりが持ち場をしっかりと守り抜くこと、手を抜かないこと、持ち場に責任を持つことでもあります。

それだけの深い意味を、この歌は「討ちてしやまん」のひとことで表現しているわけです。

何かをするとき、誰もが「討ちてしやまん」の心を持つ。
最後までがんばる。
最後の最後まで戦い切る。
そんなひとりひとりが主役となる。
それが日本の形です。


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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。Youtubeの「むすび大学」では、100万再生の動画他、1年でチャンネル登録者数を25万人越えにしている。
他にCGS「目からウロコシリーズ」、ひらめきTV「明治150年 真の日本の姿シリーズ」など多数の動画あり。

《著書》 日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、『庶民の日本史』、『金融経済の裏側』、『子供たちに伝えたい 美しき日本人たち』その他執筆多数。

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