着衣は左前か右前か



どんな些細なことにも、そこには歴史があり、文化の裏付けがあります。
逆に言えば、「文化の裏付けが成立したときに、それが歴史になる」ということです。
つまり「文化が歴史をつくる」のです。

20210425 右前
画像出所=https://kimono-story.com/317.html
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昨日の参議院大分選挙区補欠選挙で、自民党の新人・白坂亜紀さんが196,122票を得票して当選しました。
対立候補は前職の立憲民主党・吉田忠智さんでした。
得票差は、わずか341票での当選でした。
白坂さんは、本物の実力を持つ女性です。
当選を心からお慶び申し上げます。


白坂亜紀さん
20230420 白坂さん当選
画像出所=https://newsdig.tbs.co.jp/articles/obs/450068
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さて、着物の着方で、よく問題にされるのが、右前(みぎまえ)か左前(ひだりまえ)かです。
俗説に、男は右前、女は左前という人もいますが、実は「男女とも右前」が正解です。
これは「右を前(さき)に身につける」ことを意味します。
つまり、着終わったときには、左側が外側になります。

これが古い言い方ですと、
「先に右側の身頃、続いて左側の身頃を重ねながら着る」という言い方になります。
このように着ると、前から見たとき襟元が「y」字のようになります。

女性の振り袖や小袖などの着物も、よく見れば、柄がそのように着たほうが映えるようにできています。
男性のアンサンブルでも、柔道着や空手着などでも、男女を問わず、すべて右前です。

ではどうして右前なのでしょうか。
実はこのことには、明確な決まりがあります。

時は養老3年(719年)の元正天皇の御世にさかのぼります。
元正天皇というのは、奈良時代においでになられた女性の天皇で、歴代御皇室の女性の中でも、最も美しかったと伝えられている女性天皇です。

そしてこの年に発せられたのが
右衽着装法(うじんちゃくそうほう)」
です。
これによって、すべての衣服は右前で着装することが、要するに「法で定められた」のです。

「衽」という字は、訓読みが「おくみ」で、和服の前幅を広くする前身頃(まえみごろ)に縫いつける細長い布のことです。
つまり着物を着るときには、右の「おくみ」を先に身につけなさい、という意味になります。

このようなお触れが出されたことには理由があります。
この翌年(720年)の5月に、『日本書紀』が成立(元正天皇に提出)されることになっていたからです。

日本書紀の編纂は、681年の天武天皇の詔(みことのり)に端を発します。
以来、39年の歳月をかけて編纂が進められ、いよいよそれが天皇に献上されるという段階になって、これに先立って出されたお触れが「右衽着装法」なのです。

日本書紀は、その全巻を通じて、
「なにごとも霊(ひ)が上、身が下」
という考え方が貫かれています。
人(ひと)は「霊止(ひと)」
あるいは「霊留(ひと)」です。
肉体(身)は霊(ひ)の乗り物だ、ということが日本書紀を通底する考え方です。

ですから、着物を着るときも右前、つまり着物の右側を先に体に巻きつけ、その上から着物の左側が外側になるように体をおおうことにしました。
「何事も左が上、右が下」
このように定義することで、我が国最初の史書の内容が、しっかりと伝わるようにしたのです。

着物の着方について、俗説では
・世の中には右利きの人が多いせいだ
・たくさんの柄が書かれている方が外側だ
・男は右前、女は左前だ
などなど、さまざまな俗説がまかり通っていますが、意味がわかれば、それら俗説はすべて吹っ飛ぶのです。

ちなみに左前の着方というのは、仏式の葬儀において仏様に着せる経帷子(きょうかたびら)の着せ方です。
これは仏教が、今生きている世界と死後の世界は真逆になるという考え方に基づくものです。
女性が着物を着るときに、「お前は女だから左前に着ろ」というのは、死ねと言っているのと同じことになります。

一方、洋装の場合は、女性のブラウスは、最初からボタンが左前に付けられています。
これは、和服とは、また違った歴史によるものです。
日本に洋装が入ってきた時代は、いわゆる植民地全盛の時代です。
当時、はるばる日本までやってくるような西洋人女性は、大金持ちの高官の妻女や娘たちでした。
そのような西洋の高貴な女性たちは、この時代「自分の手で」ブラウスを着たりはしません。
そのようなことは、すべて召使いにやらせる・・・つまり着せてもらうのが慣習でした。
そこで召使がボタンをかけやすいようにブラウスのボタンが左前に作られるようになったのです。
つまり洋服における女性の左前は、それだけで
「私は高貴なセレブの女性よ」
と言っているのと同じ意味になっていたのです。

ところが西洋式でも、男服は右前です。
なぜかというと、男は貴族であっても戦場に出ます。
戦場では、メイドに軍服を着せてもらうわけにはいきません。
自分で軍服を着なければならないのです。
ですから洋装でも、男物は自分でボタンを留めやすいように、右前になっています。

どんな些細なことにも、そこには歴史があり、文化の裏付けがあります。
逆に言えば、「文化の裏付けが成立したときに、それが歴史になる」ということです。
つまり「文化が歴史をつくる」のです。


※この記事は2021年4月の記事の再掲です。
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コメント

にせん

なるほど。ヒだりとミぎで言うと
左が上で、右が下。まさに参拝するときに
右手をずらして下に下ろすのと
似てますね。天照大御神さまも女性神という
お話も聞いたことがありますし。

たくさんの学びを
ありがとうございます!
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
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