小野道風(おののとうふう)



どんなに名人と言われる人でも、はじめから名人であったわけではありません。もっというなら、はじめから名人になろうと計画して、その計画に基づいて名人になったわけでもありません。かつて、ソ連がこれを行おうとして、まさに幼児のうちから計画的にスポーツ選手を養成するということを行いましたが、結果、破綻しています。
そうではないのです。俺はヘタだなあ。どうしてこんなにヘタなんだろうと悩みながらも、毎日少しづつ精進を積み重ねていくうちに、気がついたら、その道の名人になっているのです。


20200327 小野道風
画像出所=http://kotenshohou.com/bun/onomitikaze.htm
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書道の大家といえば、
 小野道風(おののとうふう)
 藤原佐理(ふじわらのすけまさ)
 藤原行成ふじわらのゆきなり)
この三人が三蹟(さんせき)と呼ばれる、10世紀の能書家(のうしょか)です。

この三人のうち、たいへんな呑ん兵衛さんだったのが藤原佐理(すけまさ)で、国宝となっている「離洛帖(りらくじょう)」などをみると、書がものすごく崩してあって、ほとんど抽象画のようです。

これに対して、一字一字がたいへんしっかりしているのが、藤原行成(ゆきなり)で、こちらは人物も沈着冷静で、天皇のおぼえもめでたく、晩年には正二位、権大納言の位にまで出世しています。

そんな行成(ゆきなり)が、まるで神様のように尊敬していた人物が、小野道風(おののどうふう)です。
実は少し前までは、この人物は、日本人なら当たり前に知っていた、たいへんな有名人でした。
理由は下の絵です。
雨に蛙


この花札に描かれている人物が、小野道風です。

札には上の方に黒く柳の枝が描かれ、真ん中に人物。
その人物は傘をさしていて、後ろに水が流れています。
で、手前にも川が流れていて、杭(くい)があり、その横でカエルが柳の枝に飛びつこうとしています。
実は、この絵柄は、小野道風の故事にちなんだものです。
ご存知の方もおいでかもしれませんが、簡単にご紹介すると、

小野道風は、子供の頃、勉強ができず、字もへたくそ、和歌も下手。
悔しいけれど、生まれつき出来がわるいのだから仕方がないと、自他ともにあきらめていたそうです。

叱られた後だったのかもしれません。
小野道風、しょんぼりと雨の中を歩いていたのです。

そのとき、ふとみると、一匹のカエルが地面から、垂れ下がった柳の枝に飛びつこうとして、何度もなんども跳ねているのをみかけました。
そんな光景を、傘をさしてボーっと眺めていたというのですから、小野道風、このとき、もう死んでしまいたい・・くらいに、よっぽど、へこんでいたのかもしれません。

カエルは、何度も何度も飛びつこうとしています。
でも、高さが足りない。
だから飛び付けない。
「バカなカエルだなあ・・・
 ハハ、俺と一緒か・・・」
なんて思ったのかもしれない。

ところが、そのとき、一陣の強い風が吹いて、柳がグイっとしなり、その瞬間、カエルが見事に柳に飛び移ったのです。

これを見た道風は、ハタと気がつきました。
「カエルは一生懸命努力をしていた。
 そうすることで偶然のチャンスを自分のものとした。
 けれど俺は何の努力もしていないではないか・・・」

目の覚める思いをした道風は、その後、精進を重ね、日本一の書家になりましたとさ・・・というのがこの絵札にまつわる物語です。

このお話が史実かどうかは不明です。
なぜなら、広まったのが江戸時代中期の浄瑠璃からだからです。
けれど戦前まで、このお話は国定教科書にも載っていました。
つまり日本人の常識となっていたお話でした。

記紀にある神話の物語などもそうなのですが、日本のこうした故事に関するお話の多くは、「成長」がキーワードになっています。
つまり、はじめはダメ人間だったけれど、機会を得て人間として大きく成長していく。

逆にいえば、はじめから全てを兼ね備えたような人などそうそうはいないわけで、みんな自分の至らなさ、足りなさに悩み苦しむのが普通です。
だからこそ努力するし、努力するから成長できます。

もちろん、何かに特別な才能を発揮できる子もいます。
けれどそういう子であっても、別な部分においては、やはり出来の悪い子と同じように悩むのです。
そういう意味では、みな、同じです。

戦前は、そういうことを、小学校の低学年のうちにキチンと教えていたし、それをあたりまえの常識にしていました。
だから庶民の遊戯札である花札に、小野道風が描かれていたのです。
ちなみにこの花札の絵柄の「雨にカエル」は、最高役の20点札です。

ここに日本文化の特徴があります。
例えば日本アニメでは、ほとんどの場合、主人公は10代の若者です。
「鬼滅の刃」もそうですし、先日公開されて大ヒットした「すずめの戸締り」もそうでした。
「キングダム」もまた、10代の青年が主人公です。

これに対し、米国アニメは、バットマン、スーパーマン、アイアンマン、マイティソーなど、数々いるヒーローたちは、全員、ウルトラスーパーな力を持ったおじさんたちです。
つまり「成長」がテーマになっているわけではなくて、完璧な主人公が敵を破壊し粉砕することがテーマとなっています。
ここに文化の違いがあります。

冷静に考えてみれば、どんな名人でも、はじめから名人だった人はいません。
あるいは、はじめから名人になろうと計画して、その計画に基づいて名人になったわけでもありません。
かつて、ソ連がこれを行おうとして、まさに幼児のうちから計画的にスポーツ選手を養成するということを行いましたが、結果、破綻しています。

そうではないのです。
俺はヘタだなあ。どうしてこんなにヘタなんだろう、と悩みながらも、毎日少しづつ精進を積み重ねていくうちに、気がついたら、その道の名人になっているのです。

オリンピックに出るようなスポーツ選手も、あるいは全国大会に出るような中高生のスポーツチームも、動機は様々だけれど、なんとなくバレーボールが好き、あるいは入学したとき、先輩からバスケットボールをやったら女の子にモテるぞと言われて、それでまじめに練習していたら、気がつけば強いチームになっている。
そこに優秀な、これまたどうしてコーチになったかわからないけれど、絶対に生徒たちに勝利の経験をさせてあげたいと思う先生が、毎日、いろいろに工夫しながら、一生懸命に生徒たちに教える。
それら全部の力が、合わさったときに、おそらく優勝という結果が生まれています。

天才は、はじめから天才ではないのです。
おもしろいから、楽しいから、探究心があるから、まじめだから、そのことを一生懸命に毎日やっているうちに、気がついたら周囲から天才と呼ばれるようになっているのです。

そして、そのことを、かつては誰もが小野道風の花札の絵柄から、学んでいたのです。


※この記事は2020年4月の記事のリニューアルです。
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にせん

誰しもが最初は赤ちゃんで
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Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年1月生まれ
国司啓蒙家
静岡県浜松市出身。上場信販会社を経て現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。
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