• 神社で鳴らす鈴のお話


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    法を作ったり、逮捕して無理やり従わせようとするのではなく、それらがマナーとして、あるいは作法として人々の間に定着する。そうすることで、平和で豊かで安定していて、誰もが安心してすごせる国を築いていく。
    それは、民度が相当に高くなければ、決してできないことです。
    私たちの祖先は、現実にそれを可能にする国を築いてきたのです。

    20190929 神社の鈴
    画像出所=http://www.bigme.jp/000-00-02-12/02-12-30/02-12-30.htm
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    多くの神社には、拝殿のところに鈴があり、そのすぐ下にお賽銭箱があります。
    作法は、まずお賽銭を入れてから、鈴に付いている紐でガランガランと鈴を鳴らして二礼二拍一礼するというものです。

    この鈴のことを本坪鈴(ほんつぼすず)といいます。
    坪というのは、土地の平らなところのことをいいます。
    そこから鈴は、平らかに神様にお出ましいただくための合図であるとか、参拝前に鈴の音によって悪霊を払うのだとか説明されます。
    ちなみにお寺さんの場合は、この鈴は鰐口(わにくち)といって、仏界とこの世を分ける門番を意味するとされています。
    門番さんにご挨拶をしてから、仏様にお参りする、というわけです。

    いずれにしても、流れとしては、まずお賽銭、次に鈴、そして参拝、という流れになります。
    ところが興味深いお話があります。
    以下はなにぶん古い時代の話なので、多少不快に思われる方がおいでになるかもしれませんが、そういう考え方もあったのだくらいに思っていただけるとありがたいです。

    実は本坪鈴は「たまたま」であって、その「たまたま」を竿(さお)を意味する紐(ひも)で、こちょこちょとすることで、先端からほとばしる「たま」の代わりにコインをお賽銭箱に入れるのだ、というのです。

    赤ちゃんは、こうすることで、新しい命を授かります。
    神社での参拝も同じで、こうすることで参拝の都度、新しい命もしくは新しい息吹(いぶき、生吹)をいただくというのです。
    また、そうすることで心身と御魂を浄化し、また新たな生命を得て、未来を拓く。
    神社の参拝とは、実はそういうものだといいます。
    というわけで、実は、大昔の参拝は鈴が先でお賽銭が後だったのだけれど、それですとあまりにも直接的すぎるということから、後に順番が入れ替わって、お賽銭が先、鈴が後になった・・という・・・これはお話です。

    真偽はわかりません。
    ただ、一面において、非常に興味深いのは、この短い作法の解釈の中に、男女とは何か、というひとつの命題についての、古代から続く日本的解釈が根底になっていると思えるのです。

    もともとわが国では、古来より生き物には「霊(ひ)」が宿ると考えられてきました。
    「霊(ひ)」というのは、言い方を変えれば御神体です。
    ですから、身よりも貴重です、
    なにせ「身(み)」は一代限りの、いわば使い捨てですが、「霊(ひ)」は永遠の存在です。
    そこから「たとえこの身が不浄に落ちても、我が魂だけは汚すものか」といった心が生まれたりもしています。

    子を産むときにも、この「ひ」と「み」の関係で説明されました。
    出産することができるのは、女性だけです。
    つまり女性は「身(み)」から、赤ちゃんという「身(み)」を生みます。
    けれど女性だけですと、毎月、その子種は流れてしまいます。

    ところが男性が「たままた」でつくった「たま」を成人した女性の胎内に注ぐことで、子種が本物の子となって生まれてきます。
    つまり子種が魂(霊(ひ))を授かるわけです。

    そこから霊統は、男性から子へと受け継がれると考えられてきました。
    霊統というのは「霊(ひ)」の流れです。

    ですからたとえばご皇室というのは、天照大御神から続く霊統です。
    なぜなら天照大御神は御神体、つまり「霊(ひ)」のご存在なのですから、何よりも霊(ひ)の流れを保つことが重要です。
    これが国家最高権威の理由となります。

    天皇の霊統に、女性のご皇族が一般人と結婚して生まれた子(つまり女系)です。
    つまり天照大御神から続く万世一系の流れというのは、「霊(ひ)」の流れのことを言います。
    その「霊(ひ)」は、男性の「たまたま」からつくられて女性の胎内に注がれるわけですから、「霊(ひ)」の流れは、男系でなければならないのです。

    繰り返しますが、女性だけしか出産することができないけれど、女性は母体という身(み)から、赤ちゃんという身(み)を生みます。
    その赤ちゃんに、「霊(ひ)」を授けるのは、男性の役割です。
    そして「霊(ひ)」と「身(み)」が合わさったときに、はじめて新しい命が生まれます。
    従って、天照大御神からの直系の霊統(霊(ひ)の流れ)は、誰の「たま」かが重要視されることになります。
    これが男系男子の理由です。
    つまり男系天皇という発想は、霊(ひ)の流れを途切れさせない、という思考から生まれているわけです。

    これに対し、女系という発想があります。
    女系というのは、サザエさんがフグ田マスオさんと結婚して生まれたタラちゃんが、女系になります。
    この場合、タラちゃんの霊(ひ)は、マスオさんのフグ田家の霊(ひ)の流れになります。
    サザエは、磯野波平さんの男系女子ですが、そのサザエさんがマスオさんと結婚して、マスオさんの子を生んでいるからです。
    これが女系です。

    仮に波平さんが、天照大御神からの霊統の人であったとして、サザエさんまでは、天照大御神の霊(ひ)の流れが維持されていますが、サザエさんはタラちゃんという身(み)を生んでいます。
    そのタラちゃんに乗っている霊(ひ)は、フグ田家の霊(ひ)ですから、仮にタラちゃんを天皇にしてしまうと、天照大御神からの霊(ひ)の流れが途絶えてしまうことになります。

    男系、女系をY遺伝子の流れで説明される方が多いですが、この仕組が完成した古代には、まだ遺伝子の存在は知られていません。
    知られていないのになぜ男系が重要視されたかといえば、上に述べたような背景があったからです。

    それほどまでに大切にされてきた霊(ひ)の流れ。
    その流れの中に、冒頭の神社での参拝作法があります。
    その意味から、個人的には、もちろん作法としてお賽銭を捧げてから鈴を鳴らしていますけれど、その一連の作法から、参拝の都度、たまを鳴らして子種を入れて新しい命をいただいてくるという仕組みを、なんとなく実感している次第です。

    最後にひとつ付け加えます。
    神社での「作法」と書きました。
    あたりまえすぎるほどあたりまえのことですが、神社でそんな作法に従わなかったからといって、罰金を取られたり、逮捕されることはありません。
    また、そうしなければならないという法律もありません。

    法を作ったり、逮捕して無理やり従わせようとするのではなく、それらがマナーとして、あるいは作法として人々の間に定着する。
    そうすることで、平和で豊かで安定していて、誰もが安心してすごせる国を築いていく。

    それは、民度が相当に高くなければ、決してできないことです。
    私たちの祖先は、現実にそれを可能にする国を築いてきたのです。
    だから、取り戻そうよ、と常々申し上げているのです。


    ※この記事は2019年10月の記事のリニューアルです。
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小名木善行(おなぎぜんこう)

Author:小名木善行(おなぎぜんこう)
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昭和31年生まれ。浜松市出身。上場信販会社を経て執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。またインターネット・ブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。「歴史を学ぶことでネガティブをポジティブに」という理念を掲げ活動する。古事記・日本書紀・万葉集などの原文を丁寧に読み解き、誰にでも納得できる日本論を発信。

《著書》日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、その他執筆多数。

《動画》「むすび大学シリーズ」、「ゆにわ塾シリーズ」「CGS目からウロコの日本の歴史シリーズ」、「明治150年 真の日本の姿シリーズ」、「優しい子を育てる小名木塾シリーズ」など多数。

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